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IPA未踏事業 プロジェクト一覧

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573 件のプロジェクト
2008年度未踏IT

現実の料理で見えない調理状態の推測を支援する料理シミュレータの提案

「家でステーキを焼くと、どうしても硬くなっちゃう」と嘆いている人はいないだろうか。 我々人間はさまざまな調理加工を行ってきた。しかし、食べたい料理を思った通りに作ることはたやすいことではない。これは、調理が直接目に見えない要素が複雑に絡み合った物理化学的反応の集合であるためである。調理のプロは経験からこれらの調理状況を推測して調理行動を決定しているが、調理の初心者にとってこの経験を獲得する過程では失敗体験を積みやすく、なかなか楽しく調理を行うことができない。 そこで本提案では、食材の調理特性について現実よりも多くの情報を提示された状態で調理行動決定を繰り返す体験を積む調理支援シミュレータソフトを提案する。シミュレータを用いて原因を探りながら上手くいく経験を積むことで、現実の料理でも経験則を生かした調理ができる。 この支援ソフトにより、初心者でも調理行動のもたらす効果を知った上で調理ができる。調理を楽しみながら美味しい料理を作れるようになることで、個人的なもの作りに革新を起こす。また、食品の調理特性の理解をもたらし食育の推進にも貢献する。

PM: 安村 通晃クリエータ: 加藤 史洋
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

混合検索システムRhythMiXearchの開発

本プロジェクトでは、「宇多田ヒカルとMr.Childrenを足して2で割ったようなアーティスト」「モネとピカソを混ぜたような画家」といった複数のものを混ぜ合わせたものを検索するシステムを提案する。その中でも、混ぜるものをミュージシャンに限定した「RhythMiXearch」を実装することを目的とする。 現在、Web上には様々なオブジェクトが溢れている。例えば、Amazonや楽天などのオンラインショッッピングサイトでは、CDやDVD、電化製品など、多くの商品が販売されており、また、人物や国、機関、出来事などに関する情報は個人のWebページやWikipediaなどに細かく記載されている。これらの具体的な事物や抽象的な概念のまとまりは、オブジェクトとして捉えることができる。これらを検索する際に、具体的な名称を知っているのならば、その名称を入力すればよい。しかし、もっと漠然とした意図をもって検索したい場合、例えば、自分の趣味に合うような音楽のCD、このような感じの映画のDVDを検索したいと考えた場合、どのようなキーワードを入力すればよいかわからない。 しかし、探したいオブジェクトが知っているオブジェクトを使って表せることは日常生活においてよくあることである。冒頭で示した例、ユーザが既知のオブジェクトを選んでそれらを混ぜ合わせたオブジェクトを要求することが、それである。選ばれたものが自分の好きなミュージシャンであれば、自分の好みに近いミュージシャンが、恋愛を含んだ映画とアクションを含んだ映画を選んで入力すれば、両方の特徴を含んだ映画が検索されるというものである。  このように「RhythMiXearch」は通常のキーワード検索では検索しにくいものを、例を与えることによって、検索できる実用性と、複数のオブジェクトを混ぜ合わせたときにいったいどのようなものが検索されるかというエンターテイメント性を含んだ全く新しい検索システムである。

PM: 安村 通晃クリエータ: 加藤 誠
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

インテリジェントカードデバイスを用いた統合管理インターフェイスの開発

時代は、情報を媒介としてあらゆるものを結ぼうとしている。 それは計算機同士だけにとどまらず、あらゆる電子製品を結びつつある。 同時に、人間が電子製品に対して情報を与え操作しなければならないことを示している。 本提案では新しいインターフェイスを使用することで直感的且つシンプルな操作によってそれらをコントロールすることを目指す。 実装としてはソフトウェア、ハードウェア双方の面から見直す。 まず、シンプルに操作するためには従来のようなボタンだらけのインターフェイスではなく、直感的な操作性、可搬性という特徴を併せ持つインターフェイスとしてカードタイプの物を使用する。 カードにはいくつかのセンサが実装してあり、カードを回転したり、振動させたり、重ね合わせる等のあらゆるアクションを検知する。 これらの情報はワイヤレスモジュールを通してホストマシンに渡される。 ソフトウェア側の実装としては、カードに「ハードウェア」、「ソフトウェア」、「データ」を関連づけ各アプリケーションをコントロール、ハードウェアに対して命令を出す物を作成する。 また、視覚的なフィードバックを得るための機構をソフトウェア側で実装する。 ごく簡単な具体例として、特定のページを閲覧しているデジタルカメラーカードをプリンタと関連づけられたカードに重ねた場合、表示されている画像がプリンタから印刷されるというものである。 このようにして、オブジェクトをカードに関連づけて各操作を実行するのが本提案の核である。 このシステムによって、ユーザーがソフトウェア、データ、ハードウェアを区別なく扱うことをサポートし、それらを直感的なインターフェイスを用いてコントロールしたり組み合わせたりする事を可能とする。 これによって、インターフェイスの面からディジタルデバイドを解決する。

PM: 安村 通晃クリエータ: 古平 晃洋
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

「特許請求の範囲」のモデル化と可視化及び入出力システムの開発

近年、自社の発明に対して特許権を取得し、その権利を利用して他者との競争を勝ち抜こうとする動きがますます活発になってきた。そのため各者は、他者よりも早く自身の発明を権利化することが必要になってきている。特許を利活用するためには、その前提として、他の特許に対する調査を行う必要がある。特許調査とは、特許電子図書館などで公開されている公開特許から、詳細を読み解くといった作業である。しかし、現在の特許調査は、特許権の利活用を行っている者と別の人物や機関が行っている場合が多い。これは、新規特許申請が年間40万件を超えることや発明の詳細を記した「特許請求の範囲」が独特の書式で記述されていることから、調査に専門的な知識や経験が必要とされているためである。このままでは、特許調査に多くのコストがかかってしまう。そこで、「特許請求の範囲」は、常に名詞句の修飾を行っていることを利用して、ユーザにとって必要な名詞句に関する情報のみを効率的に提示し、ユーザの調査負担を減らすことを目的とした、ソフトウェア開発を提案する。 本提案では、まず、「特許請求の範囲」を名詞句と修飾語句単位に請求項にこだわらず分割し、名詞句をノード、修飾語句をリンクとした階層構造で表現する。階層構造は、同じ意味の名詞句を保持したノードを保持しないようにし、そして全体や一部というようにユーザが得たい情報に効率的にアクセスできるよう保持する。次に、通常の表示として、「特許請求の範囲」全文を名詞句ノードと修飾語リンクを用いて可視化する。そして、ある名詞句の下の階層の関係や、その名詞句を参照している他の請求項の下の階層の関係を可視化することで、特定の名詞句を中心とした修飾関係を再現する。 以上の機能から、ある部品がどういう状態の時に何をするものなのかといった情報を解りやすくユーザに提示するソフトウェアを作成する。

PM: 竹内 郁雄クリエータ: 増満 光
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

音楽的表現における技術的問題を解決するエキスパートシステムの開発

誰もが作曲、演奏に挑戦できる世界へ。 これはバークリー音楽大学で教えられている"バークリーメソッド"を応用したシーケンサ一体型のエキスパートシステムである。このソフトウェアは、作曲・演奏において音楽理論の知識が必要とされる部分をソフトウェアにアシストしてもらうことで、理論の知識が不要な、極めて直感的な音楽的表現が可能になる。 視覚的なコード進行の入力と、色の濃淡によって次に遷移すべきコードを表すコード進行アシスタントがセットになっている。様々な音楽様式に対応するため、楽曲のジャンルや曲調に応じた"スタイル"を読み込むことでコード進行のアシスト内容も変化する(Jazz スタイルを読み込めばジャジーなコード進行作りをアシスト、Classicスタイルでクラシカルに、それらを複合的に扱うことも可能) コード進行の入力が完了したら、次はメロディーラインの打ち込みである。"バークリーメソッド"で定義された"アヴェイラブル・ノート・スケール"の概念では、メロディーを考えるにあたって必要となる音階とコードを対応させる。この特性を利用し、シーケンサは曲(コード)が進行するのとともにキーボードに割り当てる音階もマッチしたものに変化させてゆく。これにより、どのキーを叩いても不協和が生じない状態を作り出すことができる。これが"浮動音程キー配列MEQ"である。 音楽ゲームにヒントを得た"ヒューマンシーケンサ"システムによる演奏機能のアシストでは、ホームポジションを維持したまま演奏が可能。キーボードを本格的に楽器化することができる。複数人数で一つの楽曲を同時に演奏するセッションモードもサポート。 他社製のDAWとの連携にも対応。例えばリズムトラックを他のシーケンサで作り上げ、再生/一時停止/巻き戻しといった操作を含め完全に再生位置の同期を取ることもできる。 初心者にはもちろんのこと、コード進行を素早く作成できるこのシステムは、玄人にもコード進行のブレインストーミングツールとして有用である。 シーケンサ一体型のエキスパートシステムmequencerは、ニコニコ動画の登場により今再注目されているDTMをよりホットなものにする。

PM: 筧 捷彦クリエータ: 大谷 暢秀
採択金額: 2,967,000
2008年度未踏IT

Webアプリケーション・セキュリティの自動検証フレームワーク

Webアプリケーションのセキュリティに関する設定やプログラムの多くは、開発者によって手作業で記述され、さらにそれらの記述の正しさの検証も手作業で行われている。 そのため、間違いや見落としが発生しやすい。 さらに近年においては、Web2.0と呼ばれる技術の登場によって、Webアプリケーションのメカニズムは複雑化し、手作業による安全性の確保はより一層難しくなっている。 こうした現状から、セキュリティに関する処理がWebアプリケーションに正しく組み込まれ、実際に安全性が確保されているかを検証する必要がある。 本プロジェクトでは、Web2.0の技術を使用して動的にコンテンツを配信するようなWebアプリケーションに対し、セキュリティの自動検証を行うフレームワーク:Amberateの開発を行う。 AmberateはそれぞれのWebアプリケーションに適した攻撃を動的に自動生成し、攻撃テストを実行するためシステムである。 さらに、攻撃後の反応を自動検証することで、脆弱性や設定ミスなどを自動検出するための環境を提供する。 また、本プロジェクトにおいては、Amberateに組み込み可能な脆弱性検出を行うプラグインの開発も行う。 今回、開発を行うのは、SQLインジェクション攻撃、クロスサイト・スクリプティング、JavaScript Hijackingに対する脆弱性を検出するプラグインである。 それぞれの攻撃生成や脆弱性検出の手法は、既存の手法では検出できなかった脆弱性を効率よく検知することを目的とした、新規性のある検知手法を開発することを目指す。

PM: 竹内 郁雄クリエータ: 小菅 祐史
採択金額: 2,700,000
2008年度未踏IT

WEB2.0次世代イーラーニングシステムの開発

近年、WEB上での漢字検定、ゲームソフトやWEBイーラニングが普及している。 しかしながらコンテンツプロバイダーにとって、学習コンテンツDB等作成はコストがかかるために有料であるサイトが殆どである。 コンテンツプロバイダーの問題、学習者の有料問題を一気に解決するシステムが本テーマ「WEB2.0次世代イーラニングシステムの開発」である。 仕組みは、インターネットを利用して、PCや携帯電話等の複数クライアントが共同してWEBの学習コンテンツ(より具体的には問題集)を作成し、誰もが利用できる無料の問題集を作成する。 提案者が2006年に特許出願を行っている、「クライアント参加型WEB学習システム」を用いて問題の登録プロセスを構成する、これはユーザが問題案(誰でも提出できる)を提案した際に、他ユーザよる投票を行い、データベースに登録するかを多数決によって決する。 参加するクライアントの数が増えることで、このようなWEB共有問題集は質と量をもつことになる。 しかしながら、現状の学習システムでは、最適問題表示の仕組み、問題数の不足、PCインターフェイスがないなど解決しなければならない課題が多い。 これらの問題を解決し本テーマでは、目標である「無料でどこでも学習できる日本一の質と量を持つ教育メディアとなる」に値する、効率的な学習システム改良・開発する。 具体的には、

PM: 筧 捷彦クリエータ: 山本 圭太
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

柔軟な検索結果再ランキングインタフェースの開発

近年、ウェブ検索をはじめとして、論文、商品、ニュースといった様々なコンテンツを検索サービスから入手することが一般的となっている。しかし、現状の検索エンジンはユーザの検索意図に合った検索結果を返すことは困難である。例えば、異なるユーザが同じクエリを入力した場合、ユーザの求める検索結果はユーザの興味や嗜好によって当然異なる。また、同じユーザが同じクエリを入力したとしても、その時の検索タスクによって求める検索結果は多岐にわたる。特に、検索エンジンから受け取った検索結果を閲覧しているときに、「もっとこういった結果が欲しい」とか、「こういう結果はいらないといった検索意図が表出することが多い。このように、ユーザが検索時に入力するクエリのみを用いて、検索エンジン側がユーザの検索意図を把握することは容易ではない。 検索エンジンがユーザの検索意図を把握することが困難な原因のひとつとして、検索結果閲覧ページとユーザとのインタラクションの少なさが考えられる。現状ではユーザはクエリを入力した検索エンジンに検索意図を伝達できないが、複雑なクエリを作成することはユーザにとって敷居が高い。 そこで、本プロジェクトではユーザの検索結果閲覧中に、シンプルなインタラクションを行うだけで、検索結果をユーザの意図に合わせて再ランキングする仕組みを実現する。提案するシステムは強調・削除という二つのインタラクションを検索結果の閲覧中に導入する。ユーザは検索結果中のキーワードに対して削除操作を行うことにより「検索結果のこの部分がいらない」、強調操作を行うことにより「このような検索結果をもっと上位に表示して欲しい」といった意図をシステムに伝えることができる。システムはユーザの明示的な強調・削除操作に応じて検索結果の再ランキングを行う。この仕組みによりユーザは柔軟に検索結果を再ランキングすることが可能となる。

PM: 安村 通晃クリエータ: 山本 岳洋
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

多言語ブログにおける文化間ギャップ発見システム

近年、多くの人が海外に出かけ、また多くの外国人が日本を訪れるようになった。また、それに伴って、異文化交流の機会も増えてきた。そのような際に、自分の知っている知識や考えと相手が知っている知識や考えのギャップに驚く人も多いのではないだろうか。 従来、何かのトピックにおける海外での意見や情報は、海外の情報を買ってきたり、特派員を派遣しなければ得られないものであった。しかし、インターネットの爆発的普及により、世界中の情報を日本にいながら得られるようになった。また、ブログやSNS、Wikipediaに代表される、Web2.0的コンテンツの登場により、多くの人々が手軽にコンテンツを作成することが可能になった。特にブログは世界中の人によって書かれ、多くの意見や情報が日々更新されている。ブログから同一トピックにおける日本と海外の比較を行うためには、英語と日本語両方の言語のブログを読む必要がある。しかし、両言語でトピックについて特徴的記事が書かれたブログを取得するのは困難であり、またどのような観点でブログを読むべきかを明確にしておく必要がある。そこで、我々は、ユーザがトピックを入力すると、日本語と英語両方のブログから関連するキーワードや文を取得し、ユーザに提示するシステムを作成する。関連するキーワードや文章があれば、特徴的な意見はどのようなものか、どのような観点でブログが書かれているか、などを知る手助けが出来る。 たとえば、「遺伝子組み換え食品」について検索したとする。そのとき、検索結果のウェブページだけでなく「加工食品」「健康」「農薬」「品質管理」「体に悪い」などのキーワードや「どういう影響が出てくるか分からないから怖い」といった文章がまとめて表示される。同様に英語で「Genetically modified organism」に関連する「cloned food」や「bio-technology」「environmental」「genetic engineering」などのキーワードや「In the U.S., the use of GM crops is already widespread. As new discoveries are made, bio-engineers could be the world's first-line defense against hunger」のような文章が表示される。 すると、日本では遺伝子組み換え食品に対して否定的な意見が多く、外国では否定だけでなく、食料危機の問題に対する遺伝子組み換え技術への期待などの肯定的な意見も見られる、ということが分かる。 そして、これらのキーワードや文章を比較することで、日本語と英語で遺伝子組み換え食品に対して、どのような意見の違いがあるのかを発見することが出来る。 我々はユーザが何かトピックについて検索すると、そのトピックに特徴的なキーワードや段落などを抽出し、日本語と英語両方を一度に提示するシステムを作成する。 日本と海外の意見を得るための情報源としては、ニュースやウェブページなど様々な物が考えられるが、今回は、日々増え続け、かつ主観的な意見、客観的な考察の両方が多く記述される、ブログを使用する。 また、関連するキーワードなどを抜き出したり、段落を抽出したりするためにはあらかじめトピックにおけるブログを検索しておかなければならない。 そのためトピックのリストをあらかじめ用意しておく必要があるが、人間の思いつく限りの細かさであらゆる分野を網羅してあり、さらに、トピックが整理され、体系化されている必要がある。 また、日本語と英語で両方の訳を得られるものが良い。よって、トピックのリストとしてWikipediaのカテゴリ体系を利用する。 Wikipediaは世界中で利用されるWeb百科事典として有名であり、現在日本語で40万記事、英語で200万記事ある。 また、日々増え続けているために新語などにも対応できるという利点もある。

PM: 筧 捷彦クリエータ: 川場 真理子・中崎 寛之
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

インタラクティブUIを備えた統合型設計解析ソフトウェアの開発

近年のものづくりの現場はIT化が進み、コンピュータ上で設計を行うCADや解析つまりシミュレーションを行うCAEなどのソフトウェアが必要不可欠となっている。このようなツールは製造業を基幹産業とする日本にとって最も重要なソフトウェアの一つとして位置づけられる。 しかしながら、これらのソフトのほとんどは欧米製で非常に高価である上、使用するためには高度な習熟が必要である。また大抵の場合において設計と解析は異なるソフトウェア上で実行され、入力データの移動や作成に多大な時間と労力がかかってしまう。僅かな数の形状しか試すことができず、解析結果に基づいた設計が十分行われていなかった。 そこで本プロジェクトでは設計と解析機能を高度に統合したソフトウェアをオープンソースで開発する。高度な統合とは単に同じソフト上で設計と解析機能を実現しただけではない。例えば設計変更の情報を活用することで従来の解析の大きなボトルネックであったメッシュ生成の手続きを大幅に高速化する。これにより、設計変更を解析結果にインタラクティブに反映させることが可能になる。 このインタラクティブ化により形を変えながら結果を見ることができ、形状の最適化に有効となる。また形状と応力などの物理量の相関が理解できるため設計に関する直感を養う効果も期待できる。このような革新的なソフトを使うことで日本の製造業を活性化させ世界にインパクトを与えられると考えている。 具体的な開発項目は以下のとおりである。 1.モデルの変形に追従してメッシュを変形させるアルゴリズムの開発。 2.動くメッシュ上のALE座標系における各種偏微分方程式の定式化、離散化、実装 3.様々な偏微分方程式を扱うことができる柔軟な解析のためのアーキテクチャの開発 現在私が開発しているオープンソースの有限要素法ライブラリDelFEMに統合する形で提供される。

PM: 竹内 郁雄クリエータ: 梅谷 信行
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

Programmable-OverlayNetworkの開発

本提案では、ProgrammableなOverlayNetworkの構築を可能とするミドルウェアを開発する。ここでのProgrammableとは「設計可能」という位置付けで、Programmable-messageと呼ぶ制御メッセージの伝搬・解釈により、OverlayNetwork上の各ノード間のトポロジー・ルーティング、コンテンツの分散などを開発・管理・運用することが可能となる。このProgrammable-OverlayNetworkは以下の2つの機能を持つ 1.全体化 Programmable-messageをOverlayNetwork上の各ノードに伝搬させることにより、各ノードではProgrammable-messageの内容に従った振る舞いを行う。これにより、OverlayNetwork全体のルーティングアルゴリズム・トポロジー・コンテンツ分散の方法を、OverlayNetworkの動作を停止させることなく、いつでも変更可能となる。 2.局所化 Programmable-messageを、目的のコンテンツ・ノードに対して、リクエストする際に付加することにより、目的のコンテンツ・ノードへのアクセスに、局所的なルーティングアルゴリズム・トポロジーを適用することができる。これによって、OverlayNetworkの全体的なルーティングアルゴリズム・トポロジーの変更時の予期せぬ動作を、局所的に検証することが可能となる(テストリスクの軽減)。 以上の要件を満たす本提案では、「OverlayNetwork」の開発支援だけでなく、分散アプリケーション(例P2Pアプリケーション)の開発・管理・運用も可能になる。

PM: 竹内 郁雄クリエータ: 水谷 后宏
採択金額: 2,630,000
2008年度未踏IT

スプログ監視支援のための信頼度つきスプログ検出ツールの開発

スプログ監視サービスに対して、CGMの人手判定をする上で、対象CGMの質を信頼度つきで提示するシステムを開発することで、判定信頼度の低いグレーゾーンを明確にし、監視対象を絞って効率化するシステムを作る。本システムはビジネス展開を主目的としており、CGM監視サービスに実用的なシステムを開発することを想定している。自社ブログへの監視ビジネスは既に存在しており、運営会社規模へのビジネスを見込んでいるナビックスとの連携は既に確立している。 より具体的には、ナビックスで作業者を雇用して、このシステムを扱わせるような運用の仕方を想定し、監視対象のブログを入力することで、スプログ/非スプログの判定結果を、信頼度を付加して出力をする。この出力を信頼度において一定の閾値で高信頼度/低信頼度のグループにわける。高信頼度のグループは精度が95%以上となるようにして、作業者が監視をする必要がないようにする。低信頼度のグループのみを作業者が監視することで、システム運用の作業効率を高める。低信頼度への出力を25%以下に抑えることを開発目標とする。 開発手法の概要は、現在所属している筑波大学システム情報工学研究科の研究資源を受け継ぐ形で、日本語スプログデータセットとその分析プログラムを用いて、このデータセットをデータベース管理し外部公開しつつ、他の研究環境においても独自にデータの拡張作業ができるようなプラットフォームを完成させることである。

PM: 筧 捷彦クリエータ: 片山 太一
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

実機を用いたモーションデザインツールの開発

本提案は、webカメラでロボットの動作を撮影し、ロボットの動作を止めることなく動いているロボットのモーションをすぐに修正出来るモーションデザインツールを開発する。 近年小型のヒューマノイドロボットがエンタテイメント向けに多数発売されている。ロボットを動かす場合、ロボットのモーション作成をする必要があるが、このモーション作成は発売されているロボットに付属しているソフトウェアで行われることが大半である。このソフトウェアにより初めてロボットを触る人でも簡単にロボットのモーションデザインが出来るようになったが、モーションの確認に手間がかかる点や、思い通りの動作を入力することが難しい点が問題点として残っている。本提案は、その問題点を解決し、より使いやすいモーションデザインツールの開発を提案している。 提案内容としては、まずロボットを1軸のベルトコンベアの上で歩かせる。するとロボットはその場に留まり周期動作を繰り返すようになる。これによりwebカメラでロボットの動作を監視出来るようになる。ここで、ロボットの動作周期に合わせてwebカメラで静止画像を撮影して表示すると、周期動作中のあるひとつの姿勢だけを画面に表示しつづけることができる。webカメラから静止画像を取り込むタイミングをPCにより指示することにより、「足を上げる」、「足を踏み出す」など特徴的な姿勢を抽出する。この抽出した動作の関節角度を修正することにより、動いているロボットのモーションをすぐに修正することが可能となる。 本提案により、ロボットのモーションデザインは、より簡単で、より便利なものとなる。エンタテイメント分野でのロボットの活躍の場を広げると共に、ホビーとして家庭に普及させることで、ものづくりに対する興味・関心を喚起するなどの効果が期待できる。

PM: 筧 捷彦クリエータ: 石川 達也
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

描くソフトウェア開発による描けるドローソフト生成環境の開発

本プロジェクトは、「描けるドローツール」を簡単に生成する環境を用意することにより、CGの敷居の高さや無機質さを排除し、新しい創造活動の場を提供することを目的とする。 従来のCGソフトウェアは、白地のキャンパスという殺風景な場所に、無機質なペンツールや複雑な設定が必要な筆ツールを使って絵を描く。まったくの"無"の状態から"有"である絵を描くには慣れや高度な技術力が必要で、CGソフトウェアの敷居の高さの原因であった。 本プロジェクトではまず、「描けるドローツール」を提案する。これは、黒板や道路の落書きといった現実のものをシミュレートすることによって敷居を下げ、気軽にCGを楽しめるものにするツールである。本プロジェクトはその「描けるドローツール」を「描く」動作を基本とした簡単な操作で気軽に開発できる、「描くソフトウェア開発」を提案する。これは例えば、「鉛筆」の絵を描くと画面に鉛筆が現れ、その場で作った鉛筆の書き味を試せるという画期的なシステムである。このような手法で、「描けるドローツール」に共通の"3要素"である「ペン」「ボード」「オーラ」を気軽に作れるのが本システムの最大の特徴である。 また、ユーザーによって作られた「描けるドローツール」に対し、他のユーザーが評価したり意見を交わせる機能を実装することにより、「描けるドローツール」製作者のモチベーション向上につなげる。更に、他の人が作った"3要素"を自分のドローツールに流用して新しいドローツールをつくれるようにし、多くの「描けるドローツール」の生成を支援する。

PM: 竹内 郁雄クリエータ: 秋山 博紀
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

GPUを用いた映像のリアルタイム手ぶれ補正ソフトウェアの開発

本ソフトウェアは、PCを利用した映像の手ぶれ補正を行います。 専用のハードウェアではなく、汎用のハードウェアであるGPUの並列処理による高速演算を利用して処理速度を向上させ、低コストかつリアルタイムでの映像の手ぶれ補正を実現することを目的とします。入力映像だけをもとに手ぶれ補正を行うので、直接カメラから入力された画像だけではなく、たとえば手ぶれが激しく見るに堪えなかった運動会で撮ったビデオなど、過去に録画した動画にも補正を行うことを可能にしています。 手ぶれ補正の手法は、カメラの移動量であるグローバルモーションを求め、それを基に振動補正を行います。振動を除去したカメラの動きは緩やかで滑らかなものであると仮定し、 求めたカメラの移動量をガウス関数を用いて滑らかにすることによってゆれを軽減します。 また、振動補正によって発生した未定義領域をモザイキングを用いて補間します。加えて、撮影の際生じた手ぶれによる画像のボケであるモーションブラーを取り除きます。 本ソフトウェアでは、グローバルモーション推定とモザイキングについてはGPUへの実装を完了しています。これにより、入力するビデオ映像のサイズが320×240ピクセルにおいて約40fpsとなり、リアルタイムを達成しています。 本事業期間中においては、本ソフトウェアを改良、発展させ、さらなる計算時間の高速化を図るとともに、リアルタイムを保ったままにモーションブラー除去を行うことを目標としています。

PM: 筧 捷彦クリエータ: 髙橋 賢治
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

「ThoughtTrace」:思考プロセスの歴史を動的に記録・解析・表現する

本提案では,情報生成のプロセスを相互に愛でることのできるコミュニケーション文化の生成に連なるべく,『ThoughtTrace』(思考プロセスのトレース)という創造性の秘部に肉迫する未知のソーシャル・ソフトウェアの構築を目指す.そのために,キーボード・タイピングによる文字入力プロセスの遍在的な追跡システムの実現に加えて,そのプロセス情報から必然性のある価値を抽出するための解析アルゴリズムの実装を行い,最終的にはそのシステムを社会実装するためのビジネス・モデルを提案する. 現在,コンピュータを用いた文書作成においては,入力結果としての文字列のみをデータとして保存し,その細かな過程の情報(プロセス)を捨象している.ゆえに私たちは,自らの,そして他者の情報入力のプロセスに含まれる微かな兆候に気付くことのないまま,多くの価値ある情報を取りこぼしてしまっている.しかし,そのプロセスに注目する術を持つことができれば,私たちのコミュニケーションの分解能が飛躍的に増大する可能性がある. これまで,TypeTrace(TT)ソフトウェアの無償配布やウェブ・アプリケーション化を通して多くのユーザの反応を収集してきた.本提案では,より広範囲な社会実装のフェーズに移るために,次の二点の技術的課題の解決を計画している.

PM: 古川 享クリエータ: チェン ハンロン ドミニク
採択金額: 7,000,000
2008年度未踏IT

プログラム融合変換を用いた分散処理環境の開発

Web業界ではAmazonやGoogleといった企業が自社の持つ巨大な分散フレームワークを 自社のサービスを提供するためだけに使用するのではなく WEBAPIなどを通して積極的に外部に公開することで新たな市場を開拓しようとする潮流が存在する。 現在提供されているのはデータベース機能や,あるいは仮想的なサーバ環境を提供するものに 限られているが、今後はその分散処理フレームワークを提供するようなサービスの出現が予想される。 GoogleではMapReduceと呼ばれる分散処理フレームワークを使用していることが知られているが、 このようなフレームワークを一般のユーザが使用して最大の性能を引き出すためには ユーザがフレームワークに熟知していて、自身のプログラムをフレームワークに合うように プログラミングする必要がある。そうしてなお本当に作成したプログラムが最適なものであるかどうかわからないという問題がある。 そこで本提案では 関数型の言語で書かれた一般的なプログラムを入力として受け取り それをプログラム融合変換という手法を用いて、分散処理しやすいような性質を保ったまま 関数間で受け渡しされる中間データが最小限になるように自動的に変換し、 変換後のプログラムに対して分散処理計画を動的に決定し分散処理をおこなう分散処理環境の開発を提案する 具体的な開発項目は大きく分けて以下の2つからなる

PM: 勝屋 久クリエータ: 人見 琢也
採択金額: 7,000,000
2008年度未踏IT

分散共有空間を実現する3Dメッセンジャの開発

本申請プロジェクトでは,分散共有空間を実現するコミュニティツールである3Dメッセンジャの開発を行う。ここで分散共有空間とは,空間を構成する区画を,分散したそれぞれの端末で管理・処理を行いながらも,ユーザからはあたかもひとつながりの空間であるように感じられる連結された仮想空間である。本申請プロジェクトでは,ユーザの使用するPCがそれぞれ固有の仮想空間を持つため,この仮想空間での処理はそのPCが行う。そして,個々のユーザのPCをPeer-to-peerネットワーク通信によって情報をやりとりすることで,それらのPCがそれぞれ管理する仮想空間同士を結合する。このように複数の仮想空間を共有し,その空間をコミュニケーションの場として活用する。 本申請プロジェクトでは,「アバタ」,「ルーム」という2つの概念を定義する。「アバタ」とは,ユーザが操作し,コミュニケーションの媒体となる仮想人形である。「ルーム」とは,それぞれの端末が管理・処理を行う仮想空間であり,これが複数つながることで分散共有空間を実現する。ユーザは他のユーザとルームを結合して,アバタを操作して別のルームへ移動し,アバタ同士でチャットするなどしてコミュニケーションを楽しむことができる。本申請プロジェクトでは,ルーム同士の情報交換をPeer-to-peer通信で行うため,従来のサーバ・クライアントモデルが持つ管理コストなどの問題を解消することができる。 ルームは各個人が持つ固有の空間なので,自由にレイアウトして公開することで,Webサイトの様な役割を持たせることができる。よって,このルームやアバタを編集するためのツールも開発する。そのため,本申請プロジェクトでは“3Dメッセンジャ”と“ログインサーバプログラム”,そして“編集ツール”の開発を行う。

PM: 竹田 正幸クリエータ: 宮原 克典
採択金額: 6,300,000
2008年度未踏IT

全文検索エンジンLuxの開発

近年、ハードディスクの大容量化、低価格化に伴い、ウェブサービスは大量のデータを保持するようになってきています。それを支えるシステムとして、リレーショナルデータベースや検索エンジンなどがあり、それらはウェブサービスの開発には必須のものとなりつつあります。一般ユーザを対象としたウェブのサービスの開発では、オープンソースのシステムを効率的に利用することにより、サービスやビジネスなどのより本質的な部分に注力することが可能となってきています。そのような開発において、オープンソースのリレーショナルデータベースではMySQLがデファクトスタンダードとなっていますが、検索エンジンに関してはどれも一長一短であり、主な原因としてスケーラビリティへの配慮が足りないことが挙げられます。そのような背景から、よりスケーラビリティを考慮した高性能な検索エンジンがオープンソースで開発されることが期待されています。 本プロジェクトでは、大規模なデータに対して効率的に情報を取り出すことを可能にする全文検索エンジンの開発を提案します。現在私が開発中のオープンソース全文検索エンジンLuxをベースに、単一マシン上での検索エンジンとしての基本機能の充実・性能向上に加えて、複数台マシン上にスケールアウトするための分散インデックスをサポートする機能を組み込むことを目指しています。また、業務・個人で多数の検索エンジンを使ってきた経験を基に、使い易さにも重点を置いて開発していきたいと考えています。

PM: 石川 裕クリエータ: 山田 浩之
採択金額: 6,000,000
2008年度未踏IT

Webサイト閲覧中のユーザ行動を可視化する

近年,Webサイト最適化の考え方が広まりつつある.Webサイト最適化を行うためにはユーザの行動を正確に把握することが重要である.このため,従来からWebサーバのアクセスログを用いたユーザの行動を把握する手法や,インタビュー,視線計測装置などを用いたユーザテストが行われてきた. しかし,アクセスログからは「そのページに対するアクセスがあった」という事実しか知ることができず,ページ内でどういった行動を行っているかを知ることが出来ない.しかも,近年はAJAXを用いたサイトが普及してきていることや,GreaseMonkey等を用いてユーザがWebサイトをカスタマイズして閲覧することが一般的になってきていることから,アクセスログからユーザの行動を正確に把握することは難しくなっている. また,ユーザテストを行うと,ユーザの操作内容や,思考過程など,様々なことを把握することが出来るものの,コストがかかるため少数の被験者でテストをすることしかできない.最近のWebサイトやWebアプリケーションは複雑,高機能になっているため,少数の被験者ですべての機能をテストすることは現実的ではない.さらに,ユーザテストは通常,ユーザが普段Webサイトを利用している環境とは異なる環境でのテストになってしまうという問題がある. そこで,JavaScriptを用いて,ページ内におけるユーザの操作内容を取得し,それを用いてユーザの行動を分析し,Webサイトの最適化に役立てるソフトウェアの開発を提案する.このソフトウェアを活用することで,低コストでユーザの行動を正確に把握する事が出来るため,WebサイトおよびWebアプリケーションを効率的に開発することが可能になる. また,ユーザのページ内での行動を取得するシステムは,アクセス解析以外にも様々な応用の可能性があり,今後のWebアプリケーションで広く利用される技術となる可能性もある.

PM: 畑 慎也クリエータ: 木浦 幹雄
採択金額: 5,000,000
2008年度未踏IT

アルゴリズム実証システムの開発

本プロジェクトが成功すれば世界は劇的な変化を遂げる。 私たちは、今まで兎角スポットライトの陰にありがちだったプログラマーに着目した。プログラマーは、会社に命じられた仕事を淡々とこなすだけの場合が多く、プログラミングに楽しさを見出せていない人たちも少なからず存在する。人は皆、楽しみがないと頑張れないものである。そこで、私たちは楽しくプログラミングするにはどうしたらよいかをプログラマーの視点から考えた。 その結論は、プログラマー達のプログラムを対戦させることである。世界中のプログラマーが誰でも、いつでも、どこでも、インターネット上で世界的規模で戦い、誰しもが世界一になれるチャンスをもてる。このことにより世界中のプログラマー達に夢を与えることができる。彼らがこぞって切磋琢磨し、各々の技術力を高めあえる。プログラマーである自らをアピールできる。そんなフィールドがあればという想いから考え出したのが「アルゴリズム実証システム」である。個々のプログラマーが開発した人工知能(AI、プログラマーの分身的存在)同士を対戦させることができ、リアルタイムで戦況を見ることができる。ゲームで対戦するということの楽しさが、プログラミングの楽しさにそのまま繋がる。自らが作成したAIが勝利すれば欣喜雀躍し、敗北すれば地団太を踏む。そういった感情がプログラマーたちの競争をいっそう激化させる。世界のプログラマー界が活性化すれば、世界のIT産業がさらに活性化する。世界でもトップを争うほどに成長したIT産業がさらに活性化するなら、世界が劇的に進化するに違いない。

PM: 勝屋 久クリエータ: 浅井 勇樹・三田村 祐典・山田 達也
採択金額: 7,000,000
2008年度未踏IT

直感的な操作のための3次元ジェスチャ認識ライブラリの開発

本プロジェクトの目的は,単眼カメラによる3次元ハンドジェスチャ認識システムを汎用的な統合開発環境Processingで動作するライブラリとして移植を行い,公開することである.同ライブラリを用いることにより,ハンドジェスチャを基盤とした研究を容易に構築可能となる. 3次元ハンドジェスチャ認識システムとは,カメラで手指を撮影し,その手指の形状を3次元で認識するシステムのことである.提案者は,既に高速で高精度な認識アルゴリズムを確立している.しかし,データグローブなどの高価な機材が必要である上に,現在は特定のOS環境上でしか動作しない.そこで,データグローブの代わりに手のCGモデルを用いてデータベースを作成できるシステムを構築し,様々なプラットフォームで利用されているProcessingライブラリへの移植を行う. 本プロジェクトの成果としては,複合現実感上での操作,仮想体験システム上での操作や遠隔会議システム上でのファイルや仮想物体の共有操作などの開発環境の基盤になると考えられる.また,手話のリアルタイム翻訳,遠隔手術システム,ロボット操作やロボットビジョンによる人の動作学習などの応用研究も期待できる.

PM: 田中 二郎クリエータ: 玉城 絵美
採択金額: 4,000,000
2008年度未踏IT

Augmented Earth:拡張現実感によるバーチャル地球とリアル地球の融合

Google Earth(グーグル社)、Virtual Earth(マイクロソフト社)の3次元都市モデルを拡張現実感(AR:Augmented Reality)技術を用いて、現実の都市環境に合成表示する。仮想地球儀ソフトで描画されたウィンドウ上から3次元モデルを抽出し、カメラで撮影した現実世界の画像との合成を行う。GPS、磁気センサ等を用いて両者の3次元空間における位置・方向を合わせるとともに、緯度経度時刻情報から3次元モデルの陰影付けを正確に行う。 アプリケーションとして、遺跡の復元、過去の町並みの再現、建築、都市開発のシミュレーション、広告、販売促進、キャラクターの表示等を想定している。企業、自治体を対象としたBtoBのARコンテンツ制作サービス、一般ユーザを対象としたBtoCのプラグイン開発によって収益を上げる。競合する既存のARサービスに対して本提案は、インターネット上の3次元インフラ、3次元のCGM(ConsumerGenerated Media)コンテンツを利用することにより、製作コスト、開発スピード、ターゲットユーザ数の面において差別化を図る。 また本提案は、インターネット上の仮想空間サービスと協調的に発展していくことが可能である。従来はブラウザ上で3次元都市を鑑賞したり、他ユーザとのチャットや交流を楽しむという趣味的利用に留まっていた仮想空間サービスに対して、AR技術を用いて現実の都市に展開することにより新しい利用法と市場を開拓する。一般ユーザが自由にモデルを制作、追加する枠組みを提供することで、仮想空間、AR技術のシナジー効果を実現し、相互の発展を促すことが期待できる。

PM: 古川 享クリエータ: 角田 哲也・大石 岳史・工藤 雷太
採択金額: 7,000,000
2008年度未踏IT

多メディア災害時情報収集プラットフォームと支援活動補助アプリケーションの開発

オフィスツール上で絵を配置するだけの単純な操作により帳票を設計するだけで、紙、携帯、Webの3メディアで情報収集できるシステムを構築することが可能になる多メディア災害時情報収集プラットフォームを開発する。これに、集めた情報から簡易な帳票を出力する機能を付けることで、災害時に現場の不足情報を収集し、配送のための伝票等を出力できるようにする災害時の不足品配給支援アプリケーションを開発する。 本プラットフォームにより、自治体等の災害支援担当者は自ら災害時に現場に即応した情報を現場の状態に合ったメディアを使って短時間で収集することができるようになる。これを用いた不足品配給支援アプリケーションを用いることで、災害時に不足品を適切な場所に適切な個数配送することが可能になる。 本プラットフォームを、帳票から普通紙OCR及びマークシート用紙がオンデマンドに作成できるAltPaperシステムを拡張し、携帯やPCからの入力に対応させ、配布用の帳票に出力する機能を付加することで実現する。 完成したプラットフォームはSaaSとして地方自治体向けに提供される。

PM: 古川 享クリエータ: 鎌田 長明
採択金額: 7,000,000
2008年度未踏IT

目玉型アンビエント・ロボティック・メディアの開発

「目玉型アンビエント・ロボティック・メディア」とは、ゲームシステムのためのロボット化されたメディア・デバイスである。 ディスプレイの前に縛られている、エンターテイメントソフトウェアを解放したい。ロボット化されたインターフェースを通じて、もっと環境の情報を取り込めるようにしたい、人間の気配を感じさせたい、そしてユーザーに対して言語や音声・ヴィジュアルを使わない情報を与えられるようにしたい。 本提案では、これらの機能を実装することで、エンターテイメントソフトウェアが新しい種類の面白さを開拓する、プラットフォームの1つを実現したい、と考えている。そして同時に、このデバイスを利用するためのライブラリの整備と、ゲームの開発を行いたい。 このデバイスは、環境をセンシングするためのアンビエント・センサ類と、ロボット型メディアとして、心理的情報のメディアとなる目玉型ロボットから構成される。 従来より、人間同士の(あるいは人間とペット間の)コミュニケーションにおいて、言語以外の情報として視線の動きが人間に多くの心理的効果をもたらすことが知られている。目玉型ロボットでは、この「視線」という機能のみを抽出し、ゲーム側から自由に操作することを可能にする。このデバイスにより、ゲームシステムに新しい表現方法をもたらすことを狙っている。 今まで、PCや据え置き型のゲーム機を使ったゲームシステムでは、ディスプレイをつけ、その前に座っていないと遊ぶことができなかった。しかしながら、アンビエント・ロボティック・メディアを搭載することで、室内であれば場所に縛られることなく、コントローラーにも触れずに、他の日常作業をしながらでも自然にゲームを楽しむという新しい遊び方を可能にする。これにより、ゲームの楽しみを広げるのみでなく、日常生活のなかで環境を意識する機会を増やし、普段使わずに忘れてしまっている野生的な感覚を取り戻させたい、というのが作者らの目的である。

PM: 松原 健二クリエータ: 青木 俊介・鷺坂 隆志・松宮 孝大
採択金額: 7,000,000
2008年度未踏IT

思い出の想起を目的とする写真画像を用いた仮想時空間の自動生成システム

本提案プロジェクトでは、人に自分の思い出を想起させるシステム「バーチャルタイムマシン」を開発することを目的とする。 思い出の想起には様々な手段があるが、本提案プロジェクトでは、記録画像による想起に焦点を当てる。 記録画像を整理する手法としての従来のアルバムなどには、空間的広がりの表現に乏しく、また、時間的繋がりが不明確という問題点がある。そこで、本提案プロジェクトは、3次元再構成技術を応用し、自由に時空間内を移動可能とするシステムを開発することによって、これらの問題点の解決を目指す。 「空間的広がり」を再現するために、自由な視点で撮影された大量の画像から3次元空間を再構築する手法を開発する。 「時間的繋がり」を表現するために、撮影時刻の大きく異なる画像間の3次元的な相対位置関係を自動的に計算し、時間軸上の移動を表現する手法を開発する。 具体的には、入力情報としては、Webカメラやデジタルカメラなどによって自由に記録された大量の画像群を用いる。その画像群を用いて、特徴点抽出や対応点計算などによって疎な3次元ジオメトリを再現し、高臨場な自由視点画像を提示する。さらに、撮影時刻の大きく異なる画像群間の対応付けを行う為に、撮影条件が異なる画像間に適用可能なロバストな特徴点対応手法を用いて、3次元的な相対位置関係を計算し、3次元空間内で時間軸上を移動可能とする。これらを統合することによって、時空間内の自由な移動を可能とする。このシステムを利用したユーザーには、あたかも記憶の中を自由に飛び回るような感覚を与えることを目指す。 本提案プロジェクトによる成果は、オープンソースソフトウェアとして公開し、画像に基づいた記憶想起システムとして広く利用可能としたい。

PM: 田中 二郎クリエータ: 青木 貴司・仲野 潤一
採択金額: 5,000,000
2008年度未踏IT

GPGPUを用いた薬物親和性評価プログラムの開発

新規医薬品の開発は大きく分けて 1.疾患ターゲット(原因タンパク質)の探索、2.医薬品となりうる化合物の探索・最適化、3.臨床試験による評価の3段階に分けられる。現在、ひとつの新規医薬品の開発には十数年の歳月と数百億円の投資が必要とされるが、今後はより複雑な疾患・化合物を取り扱う必要に迫られ、経費・期間ともに増加の一途を辿ると言われている。 現在、製薬業界では 2.「医薬品となりうる化合物の探索」において、原因タンパク質と医薬品候補化合物との親和性をコンピュータ上で評価するin silico創薬を利用する動きが高まってきている。それは「数百万種に及ぶ化合物や実験器具・試薬が不要であること」と「探索時間が短縮できること」を期待してのことだが、実際には「計算時間が長い」「計算結果と実験的に求められる親和性の相関が十分でない」といった問題があり、目的が十分達成されていない。これらの問題を解決するのが本開発の目標である。 GPGPUとはGPU(グラフィックボードに搭載されたプロセッサ)を一般論理演算に用いる手法である。GPUは並列計算可能なプロセッサが千単位で搭載されており、超並列計算に優れているが、並列計算の扱い難さやメモリ関連の制約により、現在のところ十分な計算速度を出せるプログラムは限られている。 本開発におけるプログラムは、原子に対する物理化学的相互作用の寄与を計算するものであり、それらはそれぞれ独立した式から構成されているため、まさにGPGPUに適したプログラムとなっている。その計算能力を活かし、あらゆる寄与を計算することで評価関数の改善を図る。 また遺伝的アルゴリズムなど適応学習アルゴリズムを取り入れることで、候補化合物がどのような内部構造で原因タンパク質に結合するか(配座探索)を効率的に探索する。

PM: 竹内 郁雄クリエータ: 山岸 純也
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

インタラクティブUIを用いた家庭用ロボット操作方法の開発

近年,メカトロ技術の発展によりロボットの性能が飛躍的に向上し,実際に使用されるようになってきている. これらは産業分野で使用されているものや,人間と同様な形状をもちコミュニケーションを目的とされたロボットなどさまざまなものがある.しかし,残念ながらこれらのロボットの多くは実際の家庭生活において役に立つものではない.本提案では,日常に普及している電化製品のように,現実の生活において有用であり,誰もが直感的に扱うことのできるロボットシステムの開発を行う. これまでのロボットは,自律化が期待されているため,様々な環境に対応できるように複雑なアルゴリズムの形成や精度の良い認識技術を必要とした.しかし,技術がすすんだ現在でも日常において役に立つロボットはそう多くない.現在普及している家電に注目してみると,これらはすべて自律的に行動しているわけではない.例えば炊飯器は,米を研ぐ,蓋をあける,スイッチを入れる,などの作業はユーザが行っている.その結果,炊飯器は複雑な機構やアルゴリズムを持つ必要がないのである.しかし,これらが普及した背景を考えてみたときに,結果として家事の時間を短縮できるということが大きな理由であると考えられる. ロボットも同様に,人のサポートをうけることでこれまで困難とされていた家事を遂行でき,結果として家事の時間が短縮できるのならば,多いに家庭に受け入れられる可能性がある.しかし,これまでのロボット開発において,人とロボットがお互い助け合えるためのインタフェースについて注目されることは少なかった. 実際の家庭で使用されるロボットにおいては,ユーザにとって親しみやすく,操作が簡単なインタフェースである必要がある.また,ユーザからの「部屋のあの部分を掃除してほしい」「棚の上の物を取ってきてほしい」などの大まかな指示もロボットがくみ取り実行する必要がある.これまでのロボットを操作するインタフェースでは,音声,自然言語のような抽象的指示かジョイスティックなどの直接的指示手法が採用されていたが,これらのインタフェースでは精度不足であり,操作も複雑な手続きが必要であるため一般家庭向きではない.また,ユーザの興味としては,ロボットをどのように動かすかというよりも,対象物をどのように操作するかという部分が本質的である. 今回は例として"洗濯物たたみ"と"料理"という家事に注目し,それらを実行するロボットを製作し,そのための動作指示インタフェースを開発する.インタフェースは,ユーザが操作したい対象の本質的な部分をモデル化されたものが付与されている.ユーザはその本質的な部分の操作をドラッグアンドドロップなどの直感的な作業でグラフィカルに編集することができる.ロボットはユーザの作業結果から,物理的な操作内容をくみ取り仕事を遂行する. この技術により,今まで代行が困難とされてきた家事の労力を,ロボットの助けを借りることで軽減できるのならば,今まで信じられていた世界を大きく変え,家電同様,ロボットが家庭においてなくてはならない必需品となる可能性がある.

PM: 安村 通晃クリエータ: 杉浦 裕太
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

インタラクティブ性を向上させるOHP風プレゼンツールShadowgraphの開発

電子プレゼンテーションは,マルチメディアコンテンツやアニメーションなど高い表現力をもつ一方,2つの点でインタラクティブ性を欠いたものとなってしまっています. 1つめは発表者とツールのインタラクティブ性,もう1つは発表者と聴衆のインタラクティブ性です. 現状のソフトの多くは,ひとたびプレゼンテーションを始めると,スライドを進める・戻す以外の操作をほとんど行うことができません.それゆえ,聴衆の反応に合わせてプレゼンテーションの進行を変えることが難しいものとなってしまっています. 一方,以前に主流であったOHPを用いたプレゼンテーションでは,順番に関係なくスライドを提示する,スライドを複数並べて比較する,足りない情報をその場で書き込む,さらには即席で新しいスライドを作ってしまうといった,柔軟性の高いプレゼンテーションをすることができました. また,その柔軟性ゆえに,プレゼンテーションの進行を聴衆の反応に合わせて変えることができました. そこで本提案では,OHPを用いたプレゼンテーションの概念を取り入れることで発表者とツール,発表者と聴衆のインタラクティブ性を向上させるプレゼンツールShadowgraphの開発を行います.

PM: 筧 捷彦クリエータ: 村田 雄一
採択金額: 2,810,000
2008年度未踏IT

不可能立体の表現が可能なCG制作環境の開発

オランダの画家M.C.Escherは「一見作れそうであるが,実際には作ることが出来ない」不可能立体をモチーフとした作品を数多く発表している. 本提案では,このような不可能立体が含まれるCGを手軽かつ本格的に制作できるシステムの開発を行う.CGに限らず画像を作る目的は何らかの情報や感情を他者に伝達することにあり「ありそうで、ありえない」という特異な印象を見た者に与えることの出来る不可能立体の映像は,芸術表現や広告デザインなど多くの分野で効果的に利用できると考えられる.従来も線画に関する不可能立体の研究などは多く存在したが,「実際に存在するように見えて,実は存在し得ない」という矛盾・違和感にこそ不可能立体の面白さがあり,そういった印象をより強く与えるために,もっと写実的で「実際に存在するよう」に見せる必要があると私は考えている.すでに,不可能立体を写実的に表現した作品は多く発表されているが,これらの作品は高い技能を有するクリエイターが画像加工を行うことで制作してきた. 私は,このような「プロの業」を用いなくても一般ユーザが簡単に不可能立体の表現を行うことのできるシステムを提案したい.また,そのシステムの出力は線画や簡単なシェーディングによる画像ではなく,レイトレーシングを用いて生成したより写実的なものとする.

PM: 安村 通晃クリエータ: 篠原 祐樹
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

料理レシピの検索と栄養バランスの分析による食生活支援システム

近年,食事の記録をつけ,それを振り返ることで食生活を改善する方法が実践されている.そこで,食生活を自動的に管理して支援することを目的とし,レシピ検索,食事ログの管理,食事ログの可視化,レシピの推薦を行うシステムを提案する.本システムには,これから料理を作る場合に行う「食事モード」と食生活を振り返る「回想モード」の2つがある. 「食事モード」では,レシピ検索と食事ログの管理を行う.まず料理名や材料名などの検索条件を入力すると条件に合致するレシピと各レシピに何らかの関連がある別のレシピを検索する.具体的には,レシピどうしの関連度を計算し,関連度によって複数のレシピに順位をつける.関連の種類には3つある.1つ目は,「材料の類似」である.材料を少し変えるだけで,ユーザが気づかなかった別の料理を発見できる.2つ目は,「調理手順の類似」である.あるレシピと調理手順が似ているレシピを検索することで,自分に作れそうな料理を発見できる.3つ目は,「組合せの良さ」である.栄養バランスを考慮して,複数の料理を組み合わせて検索する.次に,検索された複数のレシピからユーザが1つ以上のレシピを選択すると,食事ログとして自動的に記録される. 「回想モード」では,蓄積された食事ログをグラフ等で可視化する.可視化によって食生活が明確になるため,ユーザ自身が問題点を把握することができる.食生活を改善するために,問題点を食事モードに反映させる.レシピの推薦では,問題点を考慮してレシピを自動的に出力する.ユーザは,自動的に出力されたレシピから選択するか,ユーザ自身が関連レシピ検索を行って出力されたレシピから選択する.以上の機能により,健康的な食生活を支援する.

PM: 安村 通晃クリエータ: 苅米 志帆乃
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

インターネット上のファッション画像収集システムの開発

本プロジェクトではインターネット上のファッション画像を自動的に収集するシステムを開発する。本システムはファッション画像共有サイトとファッション画像検索エンジンで構成される。ファッション画像共有サイトでは、ファッション画像の投稿、高度なコメント機能、ランク付け機能や画像間の相関を与える機能をユーザーに与えることで、世界中のファッション画像とそのメタデータの収集を行う。 一方、ファッション画像検索エンジンでは、画像共有サイトで収集されたメタデータを用いることで、インターネット上のファッション画像を収集する。そして、収集されたメタデータを用いる事で、服の名称(例:ジャケット、スカーフ)や画像を検索クエリーにしてファッション画像の検索が行える。 本システムにより、既存の画像検索エンジンでは実現困難だった流行のファッションアイテムの検索からコーディネートの参考画像の検索まで、インターネットを対象にしたファッション画像の検索を行うことができる。また、画像検索エンジンはユーザーフィードバックを学習することで検索結果の向上を図る。

PM: 筧 捷彦クリエータ: 遠山 敏章
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

オープンかつポータブルなデータベースガーベジコレクション

本提案ではJavaで標準的なオブジェクトリレーショナルマッピング(以下,ORM)であるHibernate上でポータブルなデータベースガベージコレクション(DBGC)を実現する. 近年,メモリデータ構造をデータベースに保存するべくORMと呼ばれるデータベースマッピングツールが普及し始め,DB内部のリンク構造は複雑になる一方である. しかしデータ構造の管理に目を向けた場合,共有循環構造の削除は到達可能性予測が困難であるため課題となっている. 削除を示すフラグを用いてデータを消さずに取り置く選択肢では,データが小さくことはないため,長期運用を前提とした情報システムでは不必要に高性能なデータベースを導入せざるを得なかった.また,データ流出等のリスクを開発ベンダーが取らなければならず,セキュリティー上にも問題を生じていた. メモリ上ではグラフ削除の最も有効な方法はGCと実証されつつある.したがって分散DB等,今後さらに複雑なリンク構造をもつDBシステムが登場することを考えればアクセスの遅いDB上でも高速に動作するように設計されたDBGCは必須となる. DBGCによって本来のサービスを長時間停止させてはいけない.本システムではユーザープログラムとの並列処理時に性能が良いDijkstraのOn-the-flyリアルタイムGCアルゴリズムを用いることでこの問題を回避する.GCでは計算時間のほとんどがマーキングに費やされる.DBの能力を最大限まで引き出せるよう,メモリ上ではなくSQLを用いた集合演算によるマーキングアルゴリズムを提案する.またテーブル間参照グラフマトリックスの解析からマーキングパスを枝と環に分解することでSQL自体の発行回数を最小化する. 開発物はApache Licenseを適用して公開し、必要十分なドキュメントを整備し、広い普及を狙う.

PM: 竹内 郁雄クリエータ: 郷原 浩之
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

複数人で身体を動かし音楽を奏でる場を形成する楽器の開発

本提案では、身体動作と音楽表現を従来とは全く異なる手法で結びつける新しいデジタル楽器の開発及び既存曲演奏支援技術の開発を行う。 このデジタル楽器は、従来のような身体測定のためのセンサーを身体に装着することなく、レーザーレンジファインダーと呼ばれるセンサーを用いて身体動作、特に足の動きを高精度でセンシングし、音響を生成する。演奏者は今までのインターフェースでは成し得なかった半径4mものの非常に広大な操作範囲の中で、自由に身体を動かし複数人で演奏することができる。 また、楽器としての表現力を高めるためにレジストレーションを搭載し、ユーザーが入力した曲情報に基づいて、楽器の音色や設定を時系列に沿って変更できるようにする。レジストレーション機能は、今回開発するデジタル楽器とはまた違う、別のパソコン上からのソフトウェアによって、設定できるようにする。 そして、このような広大な操作範囲の中で、演奏者に対してどの位置に身体を移動すれば良いのか適切に位置を指示する必要がある。そこで、レジストレーション機能と同期して位置を指示するガイド機能を搭載する。 最終的に、演奏集団を構成し、実際にパフォーマンスを行い、身体動作と音楽表現を結びつけた新しい芸術表現を提示する。

PM: 筧 捷彦クリエータ: 鎌谷 崇広・貝田 龍太
採択金額: 2,650,000
2008年度未踏IT

アプリケーション領域の拡大に向けたMashupフレームワーク

現在,多くのWebサービスが公開され,それらを利用したマッシュアップが盛んになってきている.また,マッシュアップアプリケーションを簡単に作成するためのフレームワークなども登場してきており,開発者でない層にも広がりを見せつつある. しかし,現在これらの非開発者向けのフレームワークでは作成が難しいアプリケーションも存在している. 例えば,アプリケーション利用者の様々なニーズに応えるために,多種の情報を組み合わせて表示するようなアプリケーションを作ろうとすると,既存のものでは大きな通信コストがかかり,実用的でなくなってしまう. また,既存のフレームワークではマッシュアップの手順を共有化する試みは多くなされているが,アプリケーション内のデータを簡単に共有する仕組みは提供されていない.例えば,マッシュアップを用いた作成したホテル検索アプリに,グループ間で選択したホテルやコメントを共有するといった機能を付け加えることは難しい. そこで,マッシュアップアプリケーションの領域拡大を目指し,利用者の閲覧方法に合わせたインタラクティブなデータ構築と,容易なデータ共有をサポートしたマッシュアップフレームワークの開発を行う. フレームワークは,ブラウザ上で動作するマッシュアップ実行エンジンと,アプリケーションの作成環境,および簡単にデータ共有を実現するためのレポジトリWebサービスで構成する. フレームワーク利用者は,作成環境を用いてデータの組み合わせ方と表示方法を指定するだけで,マッシュアップアプリケーションを作成することが出来る.実行時には,実行エンジンが閲覧にあわせて順次データを構築することで無駄なコストを抑える. また,レポジトリWebサービスをフレームワークから用いることで,テンポラルなデータ共有を容易に実現にする.

PM: 安村 通晃クリエータ: 長嶺 貴一・田中 俊彰
採択金額: 3,000,000
2008年度未踏IT

「創造性」を共有するソーシャルウェブデザインツール

最近ますます、ウェブサービスのソーシャル化の流れが加速している。これらは知識や技術、そして感性の共有が柱となっている。現在のところウェブデザイン作成のソーシャル化は実現されていないが、これはソーシャル化と相性の良いサービスである。そこでこの提案書では、ウェブデザインをソーシャル化し「創造性」をユーザー間で共有するウェブデザインツールの開発を提案する。 このプロジェクトでは、ウェブデザインにおけるソーシャルクリエイティビティの活用に焦点をあて、さまざまな用途で使用できるウェブデザインの作成、編集および共有を支援するウェブアプリケーションを開発する。そして最終的には、「誰でも、簡単に、短時間で、プロ級のオリジナルウェブデザイン」を作成できる環境の実現を目標とする。 ウェブデザイン作成プロセスをソーシャル化することで、以下のようなメリットが生まれる。まず、各人が得意技術とアイディアを持ち寄り、少ない技術と労力で自己表現を行うことができる。それにより、短時間で完成度の高いデザインを作成することができるようになる。また、ウェブデザイン作成の敷居が下がることで、ウェブデザイン作成プロセス自体を大衆化させることができる。これによって、これまでになかった新たな価値がサービス全体にもたらされることが期待される。 このプロジェクトの具体的な目標は、以下に示す四点に要約できる。まず第一に、直感的なUIと操作によるウェブデザインの作成を実現すること。第二に、特定の環境に依存しないシームレスなデザインの利用および管理を実現すること。第三に、デザインをマッシュアップする場を提供すること。そして第四に、モジュール化とAPIの公開により、さまざまなニーズの受け皿となること。

PM: 畑 慎也クリエータ: 久保 渓
採択金額: 5,000,000
2008年度未踏IT

ウェブ連動新感覚コミュニケーションツールの開発

本プロジェクトでは、同じウェブページを閲覧しているユーザの動きをウェブブラウザ上に表現する事であたかも他のユーザと一緒にサイトを見ているかのように感じながらリアルタイムコミュニケーションが楽しめるブラウザアドオンツールを開発することを目的とする。 現在、ウェブブラウジング中の興味のあるページを一人で見ている時に、サイトの内容について誰かと気軽に自由に意見を語り合いたいといったニーズがあるが、ウェブブラウザ自体には人間同士のコミュニケーションを支援する機能は提供されていない。ウェブブラウジング中に同じページを閲覧しているユーザを可視化する事も出来ないばかりか、リアルタイムに同じページを見ながら感想を言い合ったり議論したくても出来ないのが現状である。そこで、ウェブブラウジング中に人と人とのインタラクションを実現する機能を開発して、既存のウェブブラウザに埋め込むことで今までに無いコミュニケーションスタイルをブラウザ上で実現することが可能になる。 本プロジェクト期間内に、現時点で圧倒的なブラウザシェアを誇る「Internet Explorer」と、近年急速に普及している「Mozilla Firefox」のブラウザアドオンに対応させることで、ほとんど全てのユーザに対して、新しいインターネット体験の提供を目指す。

PM: 田中 二郎クリエータ: 今村 淳
採択金額: 3,500,000
2008年度未踏IT

matereal:小型ロボットの簡単な行動デザイン用ツールキット

本提案では、小型ロボットの操作アプリケーションを、個人が簡単な手続きでプログラミングできるツールキットの開発を行う。物理的な存在(material)であるロボットをリアル(real)と仲の良いソフトウェア(mate)としてとらえ、ロボット工学にはそれほど詳しくないけれど、リアルに飛び出たプログラミングがしたい人たちの要求に応えることを目指す。 世界におけるロボット工学の発展は、とくにハードウェア開発の面において、日本が牽引してきたと言える。ロボットのソフトウェア開発競争についても同様の期待があるだろう。しかし、ソフトウェア開発に関する専門知識を持たないロボット工学者が主としてロボットの制御用ソフトウェアを開発しているなど状況は芳しくないようだ。 一方、近年になってハードウェアの価格が下がり、家庭向けロボットをはじめとする小型ロボットも、現実的な価格で複数種、市販されるようになってきた。これらのロボットを、メーカーや種類に依らず操作できる一般ユーザ向けのソフトウェア環境があれば、今後のロボットの一般化に大きく貢献するはずだ。学術領域においても、ロボットのプロトタイピング環境があれば、これまでボトルネックだったソフトウェア開発の多くを省略できて、研究開発を迅速化できるだろう。 これらの現状を踏まえ、ハードウェアとしてのロボット工学ではなく、ソフトウェアとしてのロボット工学の観点から開発を進められるツールキット「matereal」を提案する。 期間内に、

PM: 石川 裕クリエータ: 加藤 淳
採択金額: 7,000,000
2008年度未踏IT

音声認識Webアクセスツール「Puppy」の開発

「Puppy」とは利用者が一言話すだけで、その要求にあったWebアクセスを正確に実現することが出来る次世代音声認識Webアクセスツールです。例えば、利用者が「地図 コンビニ」と言うだけで、GPSの現在地付近のコンビニを検索し、結果を地図上に表示します。 iPhone、Androidなどの次世代モバイルの登場でモバイルは今後、よりWebアクセスのためのデバイスとしてシェアを拡大していくものと考えられる。しかし、これらのデバイスはユーザインタフェースとして相変わらず利用者のタッチパネルへの操作や文字入力に頼っており、様々な改善が行われているものの既存のインタフェースからの脱却が出来ていません。 「Puppy」は「一言話すだけでいい」という究極に簡単なインタフェースでモバイル利用者が抱える画面操作や文字入力の煩わしさを解決します。 「Puppy」はクライアント・サーバ間を汎用的なインタフェースで構築することで様々なクライアントから利用できるプラットフォームを目指します。本提案ではiPhoneアプリケーションをクライアントとして開発しますが、将来的にAndroidやBlackBerry、docomo、au、softbankなどの既存携帯電話WindowsCE搭載機、カーナビゲーションシステム、家電などをクライアントとすることができる拡張性も秘めています。

PM: 畑 慎也クリエータ: 塚田 翔也・小林 裕幸・馬場 達也
採択金額: 6,060,000
2008年度未踏IT

グリーンOS onix OS の開発

近年、「オフィス環境をグリーン化する」という命題をITによって解く上でのキーワードとして「グリーンIT」という言葉が登場した。 本プロジェクトは、世界に先立ち省消費電力で駆動する事を主眼としたオペレーティングシステムの開発を行い、オペレーティングシステムのレベルでコンピュータ機器の省消費電力化を行う。 本プロジェクトが目指す取り組みは、従来のノートPC 等で見掛ける、システムを利用していない時にシステムの一部機能を落とす "スリープモード" や "省電力モード" といわれる機能の提供とは異なり、システムが運用している状態において、システムの省消費電力化を行うものでる。 これまでに、本プロジェクトの準備段階として、カーネルの開発をオープンソースプロジェクト "onix os" において、活動を行ってきた。今回、以下で提案する機能を組込み、グリーン化されたオペレーティングシステムとしての展望の第一歩を築く。 省消費電力対象として近年出荷台数が増加の一途を辿る、補助記憶装置の代名詞でもあるハードディスクに注目し、このデバイスが消費する電力を抑制する仕組みを提案する。具体的には、ハードディスクの 1/10 以下の消費電力で駆動するフラッシュメモリによって、ハードディスクに対する処理をサポートする。その間、ハードディスクは省電力モードの状態で駆動させ、システム全体の消費電力を抑える。 この仕組みによって、特別なハードウェアを用いる事無く、ソフトウェアによってマシンの省消費電力を実現する。又、ハードディスクが省電力モードで稼働中に障害が発生した場合においても、その間に更新されたデータを損なう事無く復旧させる設計になっており、本プロジェクトで作成する onix は実用的な場面で活躍する次世代カーネルとなれる。 本プロジェクトでは、汎用オペレーティングシステムをフルスクラッチで作成し、既存のカーネルとは違ったコンセプトを持つ、新たな価値を持ったオペレーティングシステムを開発する。

PM: 加藤 和彦クリエータ: 大山 裕泰
採択金額: 6,224,000
2008年度未踏IT

音声認識併用による手書き文章処理アルゴリズム

手書きデータを,検索やデータマイニング等,電子データのように扱いたい.音声認識とOCRを組み合わせれば,手書きデータを電子データのように扱える可能性がある.音声認識とOCRの誤差ベクトルは全く異なるため,認識精度が爆発的に向上する可能性があるからである. 本プロジェクトでは,基盤アルゴリズムとして,手書きOCRと音声認識の結合評価結果である最適筆記を用いた,高精度かつ誤記にロバストな手書き文字列認識法を提案する.結合に必要な計算のほぼ全てが最適筆記探索問題となることを示し,その汎用性を,提案アルゴリズムによって実演する. 提案する最適筆記探索法では,最終結果のみの結合ではなく,メモリ制約による枝狩りが生じる前に結合することで,精度と速度を同時に向上させる.リアルタイム処理実現のため,探索途中結果のマージ,再利用を行うLive Bandsによる筆記マッチングアルゴリズムを構築し,OCR尤度を音声認識アルゴリズムにフィードバックし,最適筆記を定める. 最適筆記探索アルゴリズムの探索幅を狭めた逐次的探索によって,高精度な筆記書き起こしシステムを実現する.さらに,探索幅を広くし,認識尤度の高い局所最適解を拾い上げることで,OCR結果中のキーワードの検索を可能とする. 筆記書き起こしシステム,キーワード検索システムによって構築されたアルゴリズムの応用として,素早く,正確に手書きOCR結果を補正できるGUIを作成し,本提案の有効性を確認する.

PM: 田中 二郎クリエータ: 太田 悠平・馬越 健治
採択金額: 5,000,000
2008年度未踏IT

AJAX Platform for Image Based Rendering in Cloud Computing

With the recent ubiquity of AJAX (Asynchronous JavaScript and XML) technologies, web applications can provide the user experience end-users have demanded for a long time. Rich client and web applications are converging with regard to functionality and usability - web applications are becoming "Rich" with respect to UI capabilities, rich client applications are offering better deployment and management functionality. We develop a software platform that enables users to view real-world objects interactively by changing viewpoints using AJAX technology. Our rendering technique is image-based --- the virtual views of an object are synthesized by interpolating 2D images, leveraging the high-quality of recent digital photographs. This approach alleviates the difficulty of modeling 3D geometry in existing approaches to 3D computer graphics. The software can run on various kinds of devices using web browser without additional software installation, which makes it possible for users to experience photo-realistic 3D computer graphics in cloud computing environment. Our software platform consists of two components: (1) Content creation software: Our server software reconstructs a light field (a set of light rays in 3D space) from uncalibrated camera images. Given the images of an object acquired by a user, the system automatically estimates 3D structure of the scene from the camera motion and reconstructs the light field. (2) Content rendering software: Our client software synthesizes the 3D virtual views of the object using light field rendering technique. We use AJAX technology, which allows users to see the object interactively from preferred view-points using standard web-browsers on a variety of hardware platforms. The goal of this project is to make it easy for non-researchers to use the state-of-the-art techniques developed in computer vision and graphics communities. We provide the application programming interface (API) to the developed software so that other web-application developers can plug the software easily into their own services. We believe this is the first step to developing the practical application of 3D computer graphics in web-based computing environment.

PM: David J. Farberクリエータ: 山崎 俊太郎
採択金額: 4,800,000
2008年度未踏IT

画像認識に特化した物理シミュレーションエンジンとUIの開発

現在、物理シミュレーション技術が発展しつつある。また、カメラからの入力に対しての反応を画像認識によりリアルタイムで提示するシステムが多く開発されている。しかし、現状利用されているシステムは単純に画像に反応するだけであり、挙動としての現実感が少なく、操作性も悪い。 そこで物理シミュレーションにより実際の挙動を再現した物体の操作を画像認識で行うで、感覚的な操作が可能となり、挙動に不自然さを感じることも少なくなることが期待できる。しかし、既存の物理シミュレーション技術をそのまま画像認識での操作に適用した場合、画像認識を単純に行っただけでは映像中の物体操作に対するフィードバックがないため、操作手段(例:カメラの前に置いた手)の形状が変化したり大きく動いたりすることで、映像中の操作対象を操作手段が覆われたり、貫通したりする。また、操作手段を検出する際に画像にあらわれたノイズの影響を操作対象が大きく受けてしまう。 本プロジェクトでは上記問題を解決するために、画像認識での操作に特化したアルゴリズムによる物理シミュレーションエンジンを開発する。また、剛体の挙動によるユーザインタフェースのほか、弾性体・流体等の挙動を応用することで従来にない操作感のユーザーインタフェースを実現する。 現状、基礎部分として二次元剛体の挙動を画像認識により操作する技術を確立しており、この技術を用いて映像作品を2008年1月に作成、動画共有サイト「ニコニコ動画」で発表し、「ニコニコ動画」の全作品中の一日あたりの再生数記録(299,185再生)となり好評を博した。 また、弾性体、流体の操作への拡張についても独自の技術・ノウハウを保有しており、開発にあったってはこれを応用する。

PM: 勝屋 久クリエータ: 山添 隆文
採択金額: 4,000,000
2008年度未踏IT

人生検索エンジン「ライフリサイクル」

個人の経験は宝の山である。特に日常的な会話には多くの有益な情報が含まれるが、記録に残さなければ忘却によって急速に失われていく。そのため、個人の経験する情報を選別せずに蓄積する「ライフログ」の研究が進められているが、未だ広く普及するに至っていない。その理由として、データを蓄積するだけではなく、適切な検索機能と組み合わされなければ、ライフログを効果的に活用できないことが挙げられる。 本開発「ライフリサイクル」では個人の日常的な会話を積極的に再利用するために、音声認識によってテキスト化された会話情報の検索エンジンを実装する。本システムが特に効果を発揮する場面としては、ある単語に関して自分が過去に行った発言をまとめて表示することで、思考を整理したり、アイデアの創発に利用することが挙げられる。また、思い出せないフレーズや単語を想起するために、関連する単語で検索してみるといった用途に使用できる。 本開発における主要な課題は、大規模な日常会話データに対する的確な検索を実現することである。Webの発展において検索エンジンが重要な役割を演じたように、ライフログにおいても優れた検索システムが大きな躍進をもたらすことが期待される。 ライフリサイクルは日常的な会話の価値を増加させ、個人が人生をより効果的に活用できるようにする。

PM: 勝屋 久クリエータ: 手塚 太郎・谷口 忠大・原田 史子
採択金額: 7,000,000
2008年度未踏IT

記憶発火装置:記憶拡張を支援する共有型ライフログプラットフォームの開発

本プロジェクトの目的は、「ライフログ」と呼ばれる、個人の行動履歴をデジタルアーカイブ化する技術を活用し、収集したデータを共有、検索可能とすることでユーザの記憶の拡張を支援する、行動履歴閲覧システムの開発を実施し、その結果としてひらめき、憶い出しなどの、記憶想起のきっかけを提供する「気分予報メディア」を提案することである。 具体的には、GPS、Wi-Fiによる位置情報プラットフォーム「Place Engine」などを用い、環境音や画像と関連づけられた個々人のライフログ情報をインターネット上で公開、共有、閲覧するための基盤となるWebシステムの開発を行う。 本事業での実現方法として、複数ユーザによって収集された写真データの属性情報を蓄積・共有するデータベース、収集データをユーザが検索するためのプログラム、検索結果を可視化するWebブラウザベースのインタフェース、およびAPIの開発によって達成することを予定している。 デジタル記憶媒体の大容量化、各種センサーの低価格化など、ハードウェア技術の進歩により、個人の活動を逐次記録する、ライフログの収集が容易に可能になった一方で、蓄積した情報を、記憶の補助とすべく的確に検索、提示する技術や活用方法に関しては、明確な指針が見えていない状況にある。 大都市など、高い人口密度の領域では、複数のユーザがライフログの収集を行った場合、あるユーザの行動履歴を記録したライフログと、同一または近似した記録が存在することが想定される。例えば、同じ地下鉄の音や、都市空間のランドマークの複数視点からの画像等である。これら複数の個人による記録の近似点を、シームレスに「見える化」することができれば、個人単位では情報量的に不十分であったライフログに、新たな視点や価値を見いだすことができる可能性がある。 また、携帯電話等のウェアラブルなメディアが社会的にも普及した現代においては、複数ユーザによるライフログをコンテキストアウェアに提示するシステムの実現性は高く、現行のメディアを対象に実装を行うことで、都市空間に生活するユーザに新しい記憶感覚をもたらすことが十分期待できると考える。

PM: 石川 裕クリエータ: 末田 航・矢野 慎一郎
採択金額: 5,480,000
2008年度未踏IT

情報検索のための学習成長型対話システムの開発

情報が氾濫しているといわれる現在,情報を検索する手段はいくつかあるが,主要なのはウェブ検索である.しかしウェブ検索では情報収集に対してユーザ側の努力を要求する.つまり,良い情報を得るためには良い検索を行う必要があり,それは検索クエリの設定という経験に基づいた能力を要求する. さらに,得られた情報が最良のものであるかは判断できない.もっと良い検索が行えるときに,過剰な検索クエリによって得られるはずの情報が失われていることがある. それに対し,ここで提案する自動情報収集システムは,ユーザの要求する情報についてユーザの想定以上に網羅的に収集し,ユーザの必要な情報だけを選別して提示するシステムである.さらにユーザ特化を適用することで,ユーザがどのような情報を日常的に要求しているかを判定し,必要な情報のみを積極的に絞り込む.これらの機能を対話型インタフェースで提供することで,計算機に不慣れなユーザでも容易に情報を入手することを実現する. また,対話型インターフェースは対話履歴を得ることができ,その履歴を活用することで,よりユーザの要求に適合した検索が行えると考えている. 対話によって高精度な情報検索が行えるとなれば,ユーザは積極的に対話を行うようになるだろう.そしてその対話は情報検索をさらに高精度化する.情報検索と対話という二つの要素を組み合わせることで,優れた情報検索が行える対話システムを構築する.

PM: 勝屋 久クリエータ: 水野 淳太・村田 祐一
採択金額: 6,000,000
2008年度未踏IT

リバースプロクシーを用いた消費電力自動最適化サーバシステム

本提案は、リバースプロクシーサーバを用いて、アクセス状況に応じた負荷分散の最適化を行い、電力消費量の最適化と、仮にサーバのどれかに故障などが生じても他のサーバでカバーするサステイナブルなシステムの構築とを同時に実現するものである。 現在、企業のITシステムにおいては、無停止であることが厳しく求められている。サーバの停止はその企業の信頼を大きく失墜させるからである。この目的を実現するため、システムを冗長化したり、クラスターを作成して負荷分散させたりということが一般に行われる。 負荷分散システムは、負荷が最も高い状況に耐えられるように設計されるが、多くの場合、負荷が最も高い状況は短時間しか継続せず、ほとんどの時間はそれよりはるかに低い負荷しかかからない。たとえば企業のWebシステムでは、夜間には極めて少ないアクセスしかないことが多い。このような状況で、サーバ群内の全てのマシンを動かしておくのは無駄が多い。こういったシステムは、稼働率の低い機器が多数あり、全体で多くの電力を消費することになって、環境への負荷が高い。 そこで、Webサーバ群を、データを中継する機能だけを持つリバースプロクシーサーバと、実際の処理を行うサーバとに分離し、リバースプロクシーサーバで得られる負荷に応じて、稼動させるサーバの数を動的に変化させる。これにより、消費電力は時々刻々の負荷に応じたものに最適化される。また、このようなシステムは、どれかのサーバがダウンしても他のサーバで処理を代行させることが可能で、サステイナブルなシステムにできる。更に、外部からはリバースプロクシーサーバしか見えないため、セキュリティの点でも優れたシステムとなる。

PM: 加藤 和彦クリエータ: 生田 昇
採択金額: 7,000,000
2008年度未踏IT

自然特徴点からマーカを自動生成する拡張現実システムの開発

本プロジェクトではUSBカメラを用いた拡張現実におけるマーカの自動生成手法を提案し,実装を行う. USBカメラを用いた拡張現実を実現するフレームワークとしてARToolKitやPTAMが挙げられるが,ARToolKitにおいては既知マーカを必要とし,PTAMは自然特徴点を用いることができるがその再利用が不可能であった. 本プロジェクトでは自然特徴点からマーカを自動生成する手法を提案する.すなわち,目標とする物体の三次元モデルを構築し,モデルを用いた物体探索を行うことで拡張現実を実現するシステムを構築する.三次元モデル構築には人間がモデル化したい物体を注目させ,カメラの眼前で動かすことで単眼立体視を行い,得られた点群と画像列から平面や直方体などの基本形状へのあてはめを行う.これにより,マーカを用いない状況で,自然特徴点を元に生成された再利用可能なマーカを自力で生成し,それを元に拡張現実を実現することが可能である. 本研究の成果により,全く整備されていない空間における拡張現実の実現はもとより,物体モデルをキーとした実環境に対する情報の埋め込みが可能となり,より高度な拡張現実が達成される.

PM: 田中 二郎クリエータ: 矢口 裕明
採択金額: 3,500,000
2008年度未踏IT

頭部/視線方向を用いた音声メモの配置/ブラウジングによるウェアラブル思考空間支援

本プロジェクトでは,音声メモによる思考空間の構築と拡張を目指し,従来の備忘録としての音声メモを,ユーザに相対的な三次元音響空間に関連付けることで,大量の音声メモの一覧性を確保しながらブラウジングできるソフトウェアシステムを開発する. 電車の中や休憩時間といった様々な空間での思いつき・思考の関連付けなど,普段の生活で行っている発想活動は,直後に外部媒体に記録されることで後のユーザの思考に再現される可能性が高まる.突発的なアイディアやTODO等を記録する際に,紙やホワイトボードいった従来のビジュアルメモ以外にも,ポータブルレコーダによる音声メモの活用が知られているが,音声の性質として一覧性を確保しながら情報を得て再整理することは困難である. これに対し,我々は三次元空間概念と音声メモ発声時の顔向き推定を組み合わせた直接操作感のあるI/Fで,いつでもどこでも簡単に個人の音声メモ空間を生成・再構築できるシステムを開発する.新たな思考を追加・拡張することを補助するため,時間的に音声メモを分類し,記憶を誘発するよう周辺画像を画像テクスチャとした三次元仮想空間と音声メモ空間を対応付け,複数の思考過程の膜をレイヤー化しながら,新規レイヤーに音声メモを追加していくモジュールを構成する. さらにポータビリティと通信などを加えて検討し,携帯機器への搭載としてiPhoneを用いた三次元空間のGUIによる編集操作,および音声メモ空間の通信モジュールを構築する.

PM: 竹田 正幸クリエータ: 米澤 朋子・山添 大丈・寺澤 洋子
採択金額: 7,000,000
2008年度未踏IT

Human Pet Interaction Platformの構築

ペットは人の暮らしに密接に関わり、欠かせない存在となっている。しかしながら、ペットと人の関係を情報技術によって向上させる研究はほとんど行われていない。そこで、本提案では、Human-Pet Interactionという未踏領域の開発を行う。人とペットのよりよい関係のためには、ペットの日常生活、特に人とペットが物理的に離れている時の暮らしぶりをきちんと知る必要がある。今回は猫を対象として、生活の様子や感情を発信するためのブログ自動生成モジュール、twitter[1]自動投稿モジュールなどを開発する。ブログに投稿するデータは猫に装着した首輪型デバイスを用いて収集する。集めたデータから、「他の猫と遭遇した」、「喧嘩した」、「近所の家でおやつをもらった」、などの特殊なイベントを抽出してブログに投稿する。猫のブログを見た飼い主が喧嘩を労ったり、食事量を調節して健康管理に勤めたりすることで人だけでなく猫もより幸せになり、Human-Pet Interactionが実現する。また、本システムは個人所有のペットだけでなく、動物園などでのエンターテイメントシステムとして応用できる。更に、希少な野生動物の保護や生態観察などに活用可能である。

PM: 田中 二郎クリエータ: 米澤 香子
採択金額: 3,500,000
2008年度未踏IT

街角ネット世界コミルバの開発

[ネットは孤独な世界?] 「ネット世界は、ちょっと寂しい。」 インターネットを使っていて、そんなことをふと感じたことはないですか?それはネット世界に、実際の街角で周りの人々と触れ合うような、臨場感が欠けている事が大きな要因だと考えられます。臨場感の欠如は、現在のネット世界が過去を探して閲覧することに特化していることが原因です。たとえば、ネット世界の入り口である検索エンジンは、数日かけて分析を終えた昔のページしか検索対象にできず、また閲覧中のページ上でのコミュニケーションも、各ページが独自に用意するコメント欄などの機能に依存しており、汎用的なコミュニケーションツールは確立されていません。まるで誰もいない図書館で、膨大な書物から目的の本を探し出して閲覧し、書き込み欄のある本にコメントを書き足す孤独な行為を繰り返しているようなものです。でも、実際のネット世界は本当に誰もいない図書館のようなものなのでしょうか? いいえ、ネット世界には今も多くの人々が参加しています。ある調査によると2007年1月時点で既にネット人口は7億4700万人に達しているそうです。ネット世界には誰もいないのではなく、誰もいないように見えているだけなのです。 [ネット世界の人々を可視化で生まれる街角感] ネット世界に誰もいないように見えているだけならば、見えるようにするだけで、まるで街角を歩いている時のように、周りの人々とリアルタイムに触れ合えるようになります。 本システム「コミルバ」ではブラウザで閲覧中のページ上に、同じページを見ている他のユーザをアバターとして表示することで、街角感を実現します。加えて、ページへのコメントの書き置き機能や、人探しシステムなどITの特色を生かすことで、街角感を増強し更なる交流を促進します。 [集合ログを使った検索エンジンの出現] 検索エンジン,SNS,ウィキに代表される、不特定多数の知識を収集し「集合知」を形成し、サービスを展開する方式はWeb2.0と称され、世間に支持されてきました。「コミルバ」はアバターを表示し、街角感を実現する上で、不特定多数のネット上の行動ログを収集できます。そこで、この不特定多数の行動ログを収集し「集合ログ」を形成し、新たなサービスを展開することにしました。特にネット世界の入り口である検索エンジンにこの「集合ログ」を適用することで、多くの人々が閲覧している注目度の高いページをリアルタイムに検出できるようになります。話題の移り変わりの早いネット世界において、結果に反映されるまで数日かかる今までの検索エンジンでは新しい情報に対応しきれていません。「コミルバ」はリアルタイムランキングという現在の検索エンジンが未踏の領域に打って出ようとしているのです。

PM: 竹田 正幸クリエータ: 足立 博
採択金額: 5,000,000
2009年度未踏IT

聞き耳インタフェースを採用した患者情報管理システム

近年、医療ミスが社会問題となっている。医療ミスの原因は多々考えられるが、業務の煩雑さやIT化の遅れ、情報端末操作の不慣れ等もその原因として指摘されている。そこで、病院等の医療機関において、データベース化した患者情報に誰でも簡単にアクセスできる入力インタフェースを備えた患者情報管理システムを提案する。 患者情報のデータベース化は別段新しいことではない。電子カルテシステムが普及し始め、多くの大病院に導入されている。現在では音声入力インタフェース(音声入力による情報検索)も提唱されている。しかし、導入に膨大な予算が必要であること、高齢な医療スタッフが上手に端末を操作できないことを理由に、普及が進んでいない。 本提案システムが既存の電子カルテシステムと異なる点は、情報機器の操作が苦手な人でも簡単に、素早く必要な情報アクセスを実現できる直観操作型入力インタフェースを備えていることである。その直感操作型入力インタフェースに「音声入力」と「タッチパネル入力」を利用する。それぞれの入力モーダルの特徴を上手に融合することで、最適な操作環境をユーザに提供し、業務効率アップに役立つはずである。 音声入力インタフェースは、カーナビを始めとする多くの情報機器に搭載されている。しかし、認識性能があまりにも悪いこと、機械に向かってしゃべる抵抗感からかほとんど利用されていないのが現状である。既存の音声インタフェースと異なり、提案する音声入力インタフェースでは、ユーザはコンピュータを意識せずともよく、音声認識誤りがあっても(もちろん誤りを軽減する手法も提案するが)ユーザにはあまり気にならないものである。これは既存の問題点を克服するもので、音声入力インタフェースの普及にも繋がるのではないかと考えている。 開発したシステムは、病院での実証試験を行うことで、本当に病院業務に効果があるのか、どんな人でも使いこなせるのか等を確かめる予定にしている。

PM: 筧 捷彦クリエータ: 上平 拓弥
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

誰でも好みの曲を手軽に歌える歌唱支援システム

本テーマでは、使用者が入力した音声をリアルタイムで分析・加工し、誰でもプロ並の歌い方を体験できる新たなアプリケーションの開発を行う。 これは、カラオケにおいて歌詞の時間情報が既知である条件を利用し、事前に収録した他者の歌唱データを使用者の歌唱に転写することで、使用者の歌唱を補正する機能を有するアプリケーションである。 従来のVoiceCoder(通称Vocoder)と呼ばれる音声分析再合成の技術は、実時間で動作を行うが出力される音声は肉声にはとても聞こえない、いわばロボットボイスのようなものであった。高品質な音声合成では、Text-To-Speech (TTS)のように、文章・単語ごとあるいは母音子音ごとに用意された素片を繋げて再生する方法が一般的であった。 一方、入力された音声そのものの声質を変化させる技術の用途として、カラオケに代表されるようなエンターテインメント産業が挙げられる。このような応用では、使用者が手軽に遊べるもの、楽しめるものとして導入されるため、消費者が歌いながら声質を変化させるリアルタイム性が求められる。また、自身が歌う歌声という特性上、声質・音質が悪く、ロボットボイスのようであると使用者は不快であろう。そのため、肉声と何ら変わりのない十分な品質で、実時間で動作するシステムが必要とされる。 申請者は入力された歌唱に事前に分析した他者の歌唱データを転写することにより、高い品質を保持したまま歌唱力の補正を行うアプリケーションを提案する。本アプリケーションを実現するために、高品質Vocoderにより実現された音声モーフィングという技術を活用する予定である。

PM: 安村 通晃クリエータ: 中野 皓太
採択金額: 2,960,000
2009年度未踏IT

ピアノの連弾のための遠隔演奏共有システム festimusic の開発

本プロジェクトでは、ピアノ演奏初心者でも、みんなでワイワイガヤガヤ楽しくピアノの「連弾」が出来るユニークなピアノ演奏支援システム festimusic(フェスティミュージック)の開発を行う。 近年、VOCALOID (初音ミク) 等を始めとした DTM ソフトウェアの登場により、楽曲の作曲支援においては素晴らしい環境が整いつつある。しかし、「楽曲の演奏支援をする」という観点から見たとき、全てのユーザが気軽に利用できる環境が存在するかと言えば、現状ほとんど存在しないのが現実である。 本プロジェクトで開発する festimusic の注目すべき最大の特徴は、「Skype API を用いた演奏共有システム」と「ピアノ演奏初心者を挫折させない演奏支援システム」である。festimusic を用いることで、ユーザは最低限の努力でピアノ演奏を実現出来るようになり、ネットワークを介してユーザ間で連弾・演奏共有等を行うことが出来る事を約束する。 これにより、ユーザの楽器(ピアノ)演奏を強力に支援しつつ、楽器演奏を気軽に公開できるコミュニティーの場が形成出来れば良いと考えている。本ソフトウェア festimusic が未踏ソフトウェアとしてその第1歩となれば幸いである。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 井上 隆広
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

複数のネットワークの共有による高速な仮想ネットワークの構築

様々な無線技術による通信が一般的なものとなり、現在発売されているノートPCのほぼ全てには無線Lanが搭載され、広域無線Wanを使用している人も増えつつある。しかし、これらの無線通信はイーサネットに代表される有線通信に比べて通信速度が遅いという問題を抱えている。  提案するソフトウェアはこの問題を解決するために、「マシンの余剰通信帯域をお互いに利用し合う」という手法で、各マシンが持つ通信帯域を拡張し、より広い帯域を利用するためのものである。 例えば、マシンA、Bがそれぞれ無線Wan(3Mbps)を持っていて、お互いに無線Lanの通信範囲にいるとする。このときマシンAは自分の無線Wanだけを利用するのであれば3Mbpsの帯域しか利用できないが、マシンBの帯域も利用することが出来れば合計で6Mbpsの帯域を使える。これを行うためには、マシンA、Bがそれぞれ無線Wanでデータをダウンロードしつつ、マシンBがダウンロードしたデータを無線Lanを通じてマシンAに転送するなどといった手法が考えられる。しかし、実際には一つの連続したシーケンスとしてのファイルを2つの経路でダウンロードする場合、どのようにして元のデータを分離し、その分離したものをどう組み立て直すかなどといった問題などが付随する。 提案するソフトウェアはこの問題を克服するために、各マシンがそれぞれプログラマブルなソフトウェアルータを持ち、そのルータ内で実際にパケットデータ(例えばIPヘッダやポート番号など)を加工するという手法を用いる。 この手法は従来のオーバーレイネットワークによるネットワークの制御とは異なり、レイヤ7より下の階層でパケットの加工を行う。そのため、オーバーレイより低レイヤでネットワークの動作を定義しているといえ、このような研究開発は現在議論が活発な次世代ネットワークのあり方の一つの例を提案するという意味でも有意義なものだと考えられる。 私が開発するソフトウェアはこのソフトウェアルータを利用状況に合わせて適切に設定するためのミドルウェアと、ミドルウェアにより操作されるソフトウェアルータ本体である。このミドルウェアを使うことにより、柔軟に高速かつ効率的な通信を実現することが出来るようにすることがこの開発の目標となる。

PM: 筧 捷彦クリエータ: 伊藤 裕一
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

電子楽器のメタファーを取り入れた書道表現システム

本提案では電子楽器のメタファーを取り入れる事による新しい書道表現システムの開発を行う。 今日、書家による書が雑誌や広告の題字として表紙を飾る事も珍しくなく、そのデザインが紙以外の媒体に取り入れられる事も多い。字本来の形に囚われずに新しいデザインとして表現するもの、アルファベットを組み合わせる事で漢字のように表現するものなど新しい表現も多く見られる。デザインとしての書は日々の生活のいたる所で広く親しまれている。 近年は情報技術の発達により、誰もが容易に動画や音楽などを制作、発表できる環境が整ってきており、人々の創作意欲の高まりもみられる。これらの背景から今後、書をデザインとして取り入れ創作活動をしたいという需要も高まると考えられる。 しかし、書をデザインとして取り入れる事は容易な事ではない。筆を扱い思い通りの形状に描き上げる事でさえある程度の技術の習得を要するうえ、さらに気に入った書の力強さや擦れ具合など、思いのままの線を再現しようとなると極めて困難である。現に、今日題字などで見られる書の多くは書家による書をそのまま取り込んだものであり、書道に精通した一部の人しか書のデザインを出来ていないというのが現状である。 そこで本提案では表現の困難な書のデザインを電子楽器のメタファーを取り入れる事で容易にするシステムを提案する。具体的には既存の楽曲を使って作曲を行うサンプラーのように、モデルとする書から特徴を取得し描画する機能や、シンセサイザーで音作りをするように、一筆を生成する機能を実装する。さらにこれらのメタファーを取り入れる事によって、最終的には既存の書道にはない新しい書道体験を提案したい。

PM: 筧 捷彦クリエータ: 内平 博貴
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

ZigBeeを用いたスマートメーター/スマートエネルギー管理システムの開発

2010年度より日本でも太陽光発電による余剰電力を電力会社が固定価格での買取る事を義務づけるフィードインタリフ制度が開始される。資源を持たない我が国にとって、21世紀も高い成長を続けていくには、再生可能エネルギーの有効活用が欠かせないが、一箇所で発電された電力を需要家の元に届けるべく設計された現在の電力グリッドでは、出力が不安定で地理的に分散した再生可能エネルギーを組み込むのが難しい。 再生可能エネルギーを組み込んだ次世代グリッドを実現する要素技術を開発し、家庭内に設置したディスプレイを中心としたエネルギー管理ソリューションを開発し、ディスプレイセントリックなエネルギー管理システムを提案する事を当プロジェクトの最終目標とする。 次世代グリッドに位置づけられるスマートグリッドを実現する要素技術には、リアルタイムでの電力計測を可能にするスマートメーター、電力グリッドと連動して出力負荷の制御を行うデマンド・レスポンスプログラムに対応したスマート家電の普及、余剰電力の売買や割安な深夜電力の購入予約、デマンド・レスポンスプログラムによるピークシフトの制御など家庭内のエネルギーマネージメントを行うエネルギーマネージメントシステムが含まれる。 当プロジェクトでは、スマートメーター、タッチパネルベースのコンピューター上で動作するエネルギー管理システム、スマートメーターにより計測された電力を記録する自動検針サーバーの3つのシステムを開発し、エネルギーインターネット革命において21世紀の日本が世界をリードできる存在になれるよう貢献したいと考えている。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 古谷 楽人
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

HIKARium:インタラクティブな空間演出を可能にする半球型インタフェースの提案

本プロジェクトでは、インタラクティブに空間の照明や音響を演出できるインタフェース「HIKARium」を提案し、誰でも簡単に空間を表現できるシステムを開発する。 展示会や舞台、コンサートなど様々な場面で、照明や音響による空間演出が行われる。これらの空間演出は、調光装置や音響装置によって、複数の照明や音響の出力を制御し実現している。現在の調光装置や音響装置のインタフェースには複数のツマミやスライダーがあり、一つ一つがそれぞれの照明や音響に対応している。しかし、調整部分と空間の照明や音響とが直接的につながっているとは感じにくく、使いにくい。 HIKARiumは、直径20cm程度の大きさで、両手で覆うことができる半球型インタフェースである。この半球の表面には、赤外線の反射を利用して距離をセンシングするフォトリフレクタと、ユーザへのフィードバックとして点灯するLEDを一組にしたものが、複数個埋め込まれている。複数個のフォトリフレクタを利用することで、手の位置や距離、動きを検出し、3次元的に光源や音源のパラメータを制御できる。また、複数のLEDはアニメーションのように動き、ユーザへの操作方法を伝えるといったナビゲーションとしての役割を果たす。 HIKARiumは、単純な手の距離や位置のみではなく、手の平や指一本一本の距離をセンシングすることが可能で、手の平や指をそれぞれ動かすことで絶妙な入力が可能である。センシングしたそれぞれのパラメータは、リアルタイムに照明や音響に反映されるため、ユーザはインタラクティブな空間の操作感を得ることができる。また、HIKARiumを提案することで、一般家庭においてもユーザが気軽に空間演出を楽しむことができるようになり、パーソナルな空間を他人へ魅力的に見せられるような新しい表現メディアとしての発展を期待できる。

PM: 安村 通晃クリエータ: 土谷 幹・河瀬 裕志・横道 麻衣子
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

スクリプト言語Luaの高速化と省メモリ化

私はスクリプト言語Luaのメモリ管理機構を改良し、高速性と省メモリ性を向上させアプリケーション組み込み言語の利用用途を広げることを提案する。 Luaはアプリケーション組み込みスクリプト言語としての利用を想定している比較的シンプルで小さなプログラミング言語である。高速性、移植性において優れていることから商用・非商用のビデオゲームなどでの利用も多い。しかしそれでもCやC++といった言語により丁寧に記述されたプログラムにその性能が及ぶものではない。そのため速度や省メモリ性能が厳しく問われLuaのようなスクリプト言語を利用できない場面も多い。 よって本提案ではLuaをより広い場面で有効に活用するため、Lua処理系の高速化と省メモリ化に取り組む。 GCによる自動メモリ管理を前提としたプログラミング環境ではほとんどのオブジェクトはヒープに格納されるため、手動でスタックに割り当てたオブジェクトと比較すると実行コストは大きくなりやすい。ヒープ割り当てオブジェクトの中から安全にスタック割り当て可能なオブジェクトを探すエスケープ解析は動的な言語においては実装が非常に困難である。 よって本提案ではまずは全てのオブジェクトをスタックに格納し、自分よりも底に近いオブジェクトかヒープから参照されたときにヒープにオブジェクトを移動するスタックベースのメモリ管理機構を実装する。 Luaのアプリケーション組み込み言語としての利用が広まっているのはクローズドソフトウェアでも問題無く組み込むことのできる緩いライセンス形態が大きな理由の一つだと考えられる。よって提案ソフトウェアそのものも元のLua処理系本体と同様MITライセンスのOSSとして公開・整備していく予定である。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 小室 直
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

はさみこむ検索:行間を埋める検索システムの開発

人は、2つのもので挟んで何かを得ようとする時がある。例えば、「カレーを作る時、野菜を切ることと煮込むことは知っているけど、その間に何をするのだろう?」「就職活動でエントリーした後に、面接を受けるまでに何をすればいいのか」「織田信長に関することと言えば、桶狭間の戦いがあって、最後には本能寺で死んだことは知っているがその間には何があったのだろう?」「この本は簡単すぎるし、あの本は難しすぎる、2つの本の間くらいのものはないのか?」といったような具合である。 つまり、2つの知っていることを使って間にあてはまるものを探すということである。 また、2つの事柄の間が欠けていてそれを埋めたい、と思う場合もある。例えば、「東京へ旅行に行きました。いろいろなところを巡って楽しかったです。…」「~のところについて、~は簡単なのでここでは省略する。」といったような文章は、web上ではよく見かけるが、肝心な部分が「いろいろ」といった言葉で省略されてしまっていることがある。 ユーザは、「東京へ行った」ことと「楽しくなった」ことの間に何があったのかを埋めてほしい!、省略された部分こそ気になる!という欲求が生まれる。 そこで本提案では、ある2つの入力を与えると、その2つに挟まれたものを出力する、といったようなシステムを提案する。 入力はイベントやオブジェクト、そしてその2つのイベント、オブジェクトの間に存在する行動、オブジェクトを2つの入力間に存在する軸(入力によって変化する)で評価して出力するようなシステムの実装を行う。 このシステムでは、ユーザのわかっている状況やものを入力とすることにより、検索キーワードの洗練やウェブページの閲覧、横断的検索を行わずに与えられた2つのイベント、オブジェクトの間にあるものをあらゆる軸の観点からユーザは得ることができる。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 旭 直人
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

弾塑性変形シミュレーションを用いたインタラクティブ形状変形システムの開発

弾塑性変形シミュレーションライブラリを作成し、3Dモデルの変形操作を体験できるソフトウェアの開発を簡単に行えるようにします。 近年、アニメーションの作成や3Dゲームなどで3Dモデルの変形が行われています。しかし、実世界と同じように手で触って変形するシステムは今までありませんでした。 そこで、3D空間での変形作業を円滑に行うために、変形のシミュレーションと変形操作のインタフェースの2つを作成します。 1つ目の変形のシミュレーションは、変形による造形を可能にするために現実世界での針金の変形に着目しました。針金は少しの力では元の形状に戻り、大きい力を加えると塑性変形の効果により形状が維持される特性があり、この弾塑性変形特性を再現します。 2つ目の変形操作のインタフェースは3Dモデルで作成したバーチャルハンドを操作することで、いままでのマウスポインタとは異なった直観的な操作性を実現します。 これらの2つを物理シミュレーションライブラリの一部として開発し、3Dモデリングソフトに組み込むことで誰でも使用できるようにします。また、実際に提案ライブラリを使用したアプリケーションとしてモール遊びとキーフレームモーション作成ツールを作成しライブラリの有用性を実証します。最後に、3Dモデルの操作と相性の良い3次元デバイスと組み合わせることで、3Dモデルの変形をバーチャル体験できるようにします。 本提案で特徴的な点は、インタラクティブな操作性を実現するために、変形のリアルタイムシミュレーションライブラリを開発した点にあります。このライブラリを軸として、ゲームの制作、バーチャル体験システムの構築、キャラクターのアニメーション制作などの分野への応用を考え、簡単にライブラリを使用できる環境を構築します。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 松永 昇悟・松山 隼輔
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

多様な目覚めを実現する起床支援インターフェースの開発

ユーザーの生活環境や日ごとに変化する予定や体調・気分に合わせて、柔軟に起こし方を変更できる目覚まし時計を提案する。 これは、目覚まし時計の「起こす」機能に連続的な段階を加えて、ユーザーの目的に応じた多様な目覚めを実現する。ユーザーの求める起床を反映させる「起きたい度」という新しい尺度を設け、起床時刻と同時に「起きたい度」をセットすることで、それに応じた音や光・振動により目覚めることができる。例えば、起きたい度が高い時には大きな音や強い振動で起こし、起きたい度が低い時には照明を徐々に明るくしてエアコンを起動することで起きやすい空間を作るなどが考えられる。 また、音や振動などの従来通りのアラーム提示方法に加えて、起こし方の一つとしてSNSによるコミュニケーションを取り入れる。起床時刻を越えて寝ている場合、その情報をSNSに投稿する。それを見た人から電話などの機器を通じて直接起こしてもらう状況を生み出し、心理的効果によって起床時の問題の一つである二度寝や寝坊を減少させる。 本提案では、実際の目覚まし時計と同様に、枕元で使用できるような、小型・単体で動作するデバイスを開発する。さまざまな起こし方(音、振動、光など)やその度合いと起きたい度のマッピングを容易にカスタマイズできるシステムを作り、ユーザーテストを通して、起きたい度に合った最適なアラームの提示方法を探る。 このように、ユーザーの多様な目覚めのニーズに応えられる新しい起床支援インターフェースを実現する。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 沖 真帆
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

テーブルトップストーリーリミクサの開発

本プロジェクトでは、テーブル上でフィギュアを操作して物語のシーンを自分好みに選択し、様々な物語が体験できるシステム「テーブルトップストーリーリミクサ」を開発する。ユーザは3DのCG映像で提示される物語の中で社会の作法や行儀、人間関係の変化や教訓を学ぶことができる。 本システムは物語制御エンジン(ストーリーエンジン)、登場人物やアイテムの操作フィギュア(フィジカルキャラクタ)、および映像ディスプレイ付き操作入力テーブル(テーブルトップインタフェース;TTI)と直立のシアター画面(ストーリーモニタ)から構成される。 テーブルトップインタフェースに提示される映像は3D物語世界の地面に相当し、その場所でユーザはフィジカルキャラクタの位置や向き、ポーズ決め行動の入力を行う。その行動入力操作によって、システムはテンプレートシーンとその操作を合成し、正面にあるストーリーモニタに物語進行を提示する。 システムとの協調作業の結果、規定のシーンエンドを迎えると、入力した内容がストーリーモニタで再生される。ユーザはテンプレートにあわせて、単純なYes/Noの選択肢を選択するのではなく、フィジカルキャラクタの操作を介した自由な選択を行うことで物語を進行させる。   物語は大まかなストーリーラインがあり複数の結末が用意されている。ユーザの選択によりストーリーラインが様々に変化し最終的に結末に到達する設計とする。これは、ストーリーというものが、小さなシーンやエピソードの連結でできているという考えに基づいたものである。例えば主人公が誰かに会いに行くが、ユーザはAさんに会わせるかBさんに会わせるかが選択できるとする。その時、AかBかどちらかによってシーンの分岐が起こり、ストーリーに変化が生じる。ユーザはその選択とストーリー変化、エンディングの因果関係を、ストーリーを創作する過程で学ぶことができる。

PM: 筧 捷彦クリエータ: 濱名 克季
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

思いが伝わる情報デザインツールの開発

近年、インターネットの発達によって誰でも簡単に情報発信できる世の中になりました。blog、フォトアルバムなどで情報発信をする人々は、自分の発信した情報がだれかに"伝わる"楽しさや感動を知っています。 情報には、発信者の思いや感情が含まれています。発信者が届けたいのはビットの集まりではなく、思いそのものです。しかし、現状の情報発信ツールであるblogなどは、テンプレートにデータを流し込むという表層的なデザインにとどまっています。「なんとなくかっこいい」だけでは、発信者の本当に伝えたいことは表現できません。 情報を効率よく、分かりやすく伝えるためには、目を引くためだけの派手なデザインは必要ありません。情報を的確に伝えるためには、目には見えない情報構造(重要度、順序、関連性)にもとづいて情報を可視化することである"情報デザイン"を行う必要があります。 本提案では、情報デザインのプロセスを体系化し、ノウハウをプログラム化することによって、"専門的にデザインを学んでいない人でも情報デザインすることができるツール"を開発します。 具体的な開発としては、情報デザインの「情報整理」と「情報の視覚化」に基づいて、個人がFlashウェブマガジンを発行できるウェブサービス「ログマガ」を開発します。ログマガでは、個人が今までに発信したブログデータ、Twitter、写真(flicker)などを素材として集め、整理し、情報をウェブマガジン形式に視覚化します。 本システムの開発によって、だれもが自分の伝えたい思いを表現することが可能になります。個人の情報発信力、情報編集力の可能性が大きく広がることを期待します。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 片山 育美・大田 昌幸・田中 和紀
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

Webブラウザで動作するIME風数式入力システム「Suim」

あらゆる情報がそこに存在しているかのように思えるようになった今日のWebであるが、教育や研究に不可欠な「数式」をWeb上で表現する方法はいまだ非常に限られている。例えば通常のテキストで、s=∫[0→2π]√{e^(2aθ)+a^2e^(2aθ)}dθといったように無理矢理表現したり、数式をPNG形式等の画像ファイルに変換してHTML文書中に埋め込んだりしているのが現状である。 数式を画像化して埋め込む手順は簡単なものではなく、数学を勉強する高校生など、一般的な人が行えるものではない。例えば、高校生が勉強内容を友達や先生にメールで質問しようと思っても、それが数式が含まれる質問であれば、現状のメールシステムでは不可能なのである。また、画像化されてしまった数式からは、数式としての意味情報が失われており、その結果として検索等の電子的な操作の対象にもなり得ない。 そこで本プロジェクトでは、数式を画像ではなく、数式としての意味を保った形(MathML)で簡単にWeb上で表現できるように、新しい数式エディタ『Suim』を開発する。Suimを用いることで、IME(MS-IME、ATOK、ことえり等)で日本語を入力するくらい簡単に、数式をWebブラウザ上で入力することが可能になる。 Suimは様々なシステムと連携可能な入力システムであり、Suimのアプリケーションの1つとして、TeX文書作成・共有Webアプリケーションもプロジェクト期間中に開発する。

PM: 筧 捷彦クリエータ: 町野 明徳・黒田 康浩
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

物理演算を用いた作曲インタフェース

近年、独特なインタフェースと楽しくインタラクションしていくうちに音楽ができあがっていく作曲ツールが登場してきた。 それらは、演奏中に LED の発光によるパフォーマンスが行えたり、タッチパネルを積極的に採用されたりと、そのインタフェースデザインにおいても使いやすさよりは直感性や楽しさが重視されているようにみえる。 これらのツールによる作曲・演奏プロセスは出力される音と操作の関係が視覚的に見えるため鑑賞者にとっても楽しい。 一方、計算機の性能向上にともない、最近は物理演算を使ったインタラクティブなコンテンツが増えてきた。 これらのコンテンツは、直感的に物体を自由に配置したり動かしたりすることができ、慣れてくると複雑な動きをする物体も作成することができる。 それは、見ているだけで楽しい仕掛けを構築するにとどまらず、独自のゲームや8bitの計算機まで作ってしまうことすら可能である。 意図通りの動作を行う系を構築するのは困難だが、その困難さゆえにうまく動作させられたものは喝采を得るし、それは視覚的に関係が見えやすいからこそであると考えられる。 そこで、私は、この二つを組み合わせ、ユーザが物理演算による作品を作りつつ、音楽を作ったり奏でることのできるツールを作ることができるシステムを提案する。

PM: 安村 通晃クリエータ: 矢田 裕基
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

「動きのスケッチ」を創造するプロトタイピングシステム

近年、GoogleのGoogle Map、AppleのiPhone3GSやMacOSX、Adobeの提唱するRIA(RichInternet/InteractionApplication)という概念、SAPのグループウェアで使われるユーザインタフェース(UI)などにみられるような、操作性や芸術性に富んだインタラクティブなUIを実装したアプリケーションが、世界的な規模で増加している。これらは、既存の同等品よりも分かりやすく操作感もよく、生産性の向上を我々にもたらした。 しかし、このようなアプリケーションのUIにおけるインタラクションデザインの設計は、一般に難しい。なぜなら、デザインとは『構想や計画を最終的に視覚的・触覚的な「かたち」として造形し、具体化する』ことであるが、UIインタラクションデザインにおいては、この造形や具体化のプロセスに際して、プログラミングや複雑な動作の編集という、通常のデザイン作業に加え、さらに煩雑な作業を挟まなければならないからである。この作業がデザイナーの思考を中断させ、インタラクションデザインの制作効率を低下させる一つの要因になっている。しかも、プログラミングスキルを持たない者は、インタラクションデザインを表現することすらできない。 そこで本プロジェクトでは、効率的で速やかなインタラクションデザインのプロトタイピングを実現することが可能なシステム『beatride(ビートライド)』を開発する。このシステムにより、デザイナーはプログラミングなしにインタラクションの試作を直感的な操作で速やかに制作でき、さらにプログラマはその試作を実装に生かすことができる。 具体的には、マウスやタッチパネルで対象をドラッグアンドドロップで動かした軌跡を記録し、インタラクションデザインとして出力する機能を実装する。これに加え、さらに複雑な動きを実現するための機能として、1.キャンバス全体に物理的な条件を付与し、2.動きをスケッチのように記録でき、3.その容易な編集、共有を可能とするなどの機能を実装する。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 矢部 裕亮
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

2.5次元操作によるヒューマンフレンドリーインタフェースZ-touchの開発

従来のインタフェースであるマルチタッチディスプレイは、「画面に手を触れている指先の位置」を検出していた。一方、本プロジェクトで提案するZ-touchは、マルチタッチディスプレイに「画面のそばにある指先の検出」という機能を付加したものである。すなわち、「指先が画面に触れていない状態」でも指先の座標を得られるというのが、従来のインタフェースと大きく異なる点である。 Z-touchを利用すれば、指先の画面までの距離と指の3次元姿勢を同時に認識できるため、マルチタッチディスプレイを用いたユーザインタフェースよりユーザの入力の多様性は高くなる。 アクリル板の表面すれすれに、ラインレーザを放射状に広がらせることにより、マルチタッチを実現した手法がすでに提案されている。本プロジェクトで開発するZ-touchでは、表面すれすれのラインレーザに加え、いくつかのラインレーザを重ねることにより、レーザによる層を用いて、ディスプレイ表面付近の指先の位置に加え、高さを加味した2.5次元的認識を可能とする。 これにより、指の傾きや指先の姿勢を認識できるため、従来のマルチタッチではできなかった「ものをつかむ」「持ち上げる」「近づける/離す」「指の姿勢の認識」など、指先がディスプレイから離れている状態の動作を利用した多種多様なインタラクションが可能になる。そのため、より実世界に近いような操作方法をユーザに提供することができる。 Z-touchの操作は実世界操作と類似しているため、ユーザは短い学習時間で使いこなせるようになると考えられる。また、応用ソフトウェアが開発されれば、現代のデジタルデバイド問題の解消につながる。そしてZ-touchがパネルからの高さを認識できることを利用すると、さまざまなジェスチャ認識による新しいインタラクションが考えられる。

PM: 安村 通晃クリエータ: 竹岡 義樹・塩田 陽介
採択金額: 2,960,000
2009年度未踏IT

「電気が見える」デバイスとソフトウェアの開発

電気は目に見えない。当たり前のことであるが、そのせいで理科離れ、ひいては、工学離れが社会全体で加速している。さらに、その結果、ブラックボックス化したテクノロジーのせいで産業基盤が崩れかけている。 そこで、私は、電気を見せるためのデバイス(UI)とそれを運用するためのソフトウェアとミドルウェアを開発し、教育環境における理解の向上と、研究レベル、試作レベルでのデバッグを容易にするためのプロジェクトを行いたい。 具体的には、回路中に現れる電圧をフルカラーLEDの色で表現するブレッドボードと、それを各制御点でAD変換したりリレー接続したりするためのマイクロコントローラ用ミドルウェア、さらに、メンテナンスや設定、調整を行えるソフトウェアを開発することが目的である。 この環境があれば、電気回路の開発に必要な道具類が大幅に少なくて済むことのみならず、教育環境への導入も、ラップトップコンピュータとこのブレッドボードのみで済むので非常に簡単になる。 また、学習塾等でも理解促進のために実験を行うことが非常に容易になり、総じて、教育機器のビジネスとしての母体は十分整っていると認識している。また、近年盛んに行われるようになってきた、フィジカルコンピューティングに関するワークショップなどでも需要があることが分かっている。 私はこの一連のプロジェクトによってなる、新たなエレクトロニクスを、Visible Electronicsと名付け、今までは計算ベースで取っ付きにくかった電気回路とそれをベースとした工学的分野に関して、手で触れる、目で見て分かる、という直感的な環境を持ち込みたい。 そして広く一般に、また、未来を担う子ども達に、工学的なモノ作りの面白さを喚起し、再び社会に技術のベースを取り戻したいと思う。 電気は目に見えない、しかし、そのイメージが見える、それが当たり前の社会になれば本望である。 (注釈)デバイスの機構、機能に関して、特許出願中

PM: 首藤 一幸クリエータ: 落合 陽一
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

仮想ネットワークを利用した攻撃者監視システムの開発

複数の仮想的なホストを内部に持つ攻撃監視システム(ハニーポット)を実装する。システムの内部に仮想的なホストを作り出し攻撃をそこへリダイレクトさせることでシステム外部のホストへ危害を与えることなくハニーポット内での攻撃者の行動を観察することができるのが特長である。 また、これらのホスト全体でログを得られるという利点を活かし、従来の各ホスト上のローカルな情報(攻撃者がどんなコマンドを打ったか)に加えて、ホスト間にまたがったグローバルな侵入者の情報(どのホストに侵入したか)を組み合わせた侵入者やマルウェアの情報の提供をグラフィカルに行う。具体的には、システム内のホストでの侵入者の行動記録を特定の時間とホストを指定することで「再生」して見られるようなインターフェイスを作る。 既存のハニーポットシステムでは攻撃者の観察と同時に外部のホストを安全に保つのは難しい。また、ハニーポット内から外部へ向かう接続をリダイレクトする研究はいくつかあるが、そのシステム自体のセキュリティの問題や何台もホストを用意したときの使いやすさ、そして利用者へ侵入者の情報を提供する方法が十分とは言えず、今回のプロジェクトではこれらを解消するシステムを構築する。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 鈴木 友博
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

オーディオオブジェクト操作機能を有する圧縮符号化ソフトの開発

近年、計算機性能向上によって信号のマルチチャネル化や音質改善、多様なエフェクトなど、多くの音響技術が発展してきている。信号のマルチチャネル化によって、ホームシアター用5.1chサラウンドシステムなどのマルチチャネルシステムが普及し始めており、7.1chや9.1chとチャネル数は増加し続けている。DVDやBlu-ray Disc、地上波デジタル放送などがマルチチャネル信号に対応しているため、今後もマルチチャネルシステムの普及が進むと考えられる。 また、オーディオのエフェクト技術は、単にトーンを変えるだけでなく、臨場感さえもコントロールすることが可能となっている。単純なトーンコントロールだけでなく、部屋の広さに代表される空間的印象さえも制御できるようになり、これらの技術は制作者のみならず、ユーザー側においても可能になった。そして、近年、オーディオ信号に含まれる各オーディオオブジェクト(例えば、ギター、ピアノ、ボーカルなど)に対してエフェクト処理ができるような、ユーザーがオーディオをより柔軟に制御できるシステムの研究・開発が盛んに行われている。 このような背景の元、Moving Picture Experts Group(MPEG)では、MPEG-Surroundを拡張した技術として、ユーザーがオブジェクトの定位感を自由に操作できる圧縮技術Spatial Audio Object Coding(SAOC)の標準化(MPEG-SAOC)を進めている。しかし、現状のSAOCでは、原理上、音質劣化や、現在市場において大半のシェアを占めるミックスダウンが施されたCD、DVD、Blu-ray Diskなどの混合音源や実環境にて収音された音に対して用いることができない問題点がある。 本提案では、高音質、高圧縮効率で既存混合音源においてもユーザーが各オーディオオブジェクトの操作を行うことができる新たな技術の開発と、この技術を用いユーザーが手元でヴィジュアルに既存音源における空間音情報を操作、好みの音を演出可能なこれまでに類を見ない画期的なオーディオソフトウェアの開発を行うことを目的とする。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 鎌土 記良・鈴木 翔太
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

1/f ゆらぎ信号による手書き風模様生成Webシステムの開発

人間にとって快適と感じるゆらぎと言われている「1/f ゆらぎ」をもった信号を発生するアルゴリズムをソフトウェアとして具現化し、いくつかのパラメータを選択するだけで人に心地よさを感じさせるさまざまなパターン模様を自動的に生成できるシステムを開発する。 これにより、コンピュータを使った大量生産システムの中に、機械化によって失われつつある「手書きの温かさ」や「手作りの味」を取り入れることができ、デザイン作成のローコスト化と人間にとっての心地よさを同時に実現できる。 本提案のシステムにより生成できるパターン模様は、生成の度に異なるものとなり、一つのパターンについても毎回ユニークなものが生成される。パターンの種類としては自然の中に見られる年輪や木目模様なども含まれ、アイデア次第でさまざまなパターンを追加していくことができる。生成した模様は、家具、文具、衣類、タイル、壁紙、ホームページやコンピュータデスクトップの壁紙などさまざまな用途に利用できる。 「1/f ゆらぎ」でデザインされた商品が身のまわりに増えることで、現代のストレス社会をより豊かなものに変えることができる。 さらに、Webサーバ上で動作するクライアント・サーバシステムとして実現することで、当ソフトウェアの機能をサービスとして提供でき、利用者側とビジネスとして提供する側の両者でさまざまな利便性を享受できるようにする。 本提案のシステムのコアとなる1/f ゆらぎ信号を発生するアルゴリズムは、模様のデザイン以外にも、音声変換、自動作曲、工業製品の形状デザイン、都市開発における植樹などのデザイン、生体医工学の研究などさまざまな分野への応用が可能となるものであり、本プロジェクト終了後も日本発の技術として多くの応用可能性を秘めた貴重な資産となる。

PM: 夏野 剛クリエータ: 倉知 孝好
採択金額: 5,918,000
2009年度未踏IT

人型ロボットのための演技指導ソフト

本ソフトウェアは、ロボットに詳しくないユーザが、あたかも人間に指導するような感覚で、ロボットに演技指導を行うための支援ソフトである。たとえば「ロボットで野球をするとき」投球フォームを教えるのは工学博士ではなく野球選手のほうがよいに決まっている。しかし、ロボットの構造は複雑であり、野球選手にロボットの関節パラメータを直接設定してもらうのは困難である。同様に、舞踊や格闘技の演武など、全身を複雑に動かす動作をロボットに行わせる場合、せっかく各分野にそれを教えるエキスパートがいても、動作の設定には多大な時間や手間がかってしまうのである。その上、正確に人間の関節の動きを設定しても、実際のロボットで動かすとサーボの動作が追いつかなかったり、バランスを崩して転倒してしまうことも多い。ロボットを思い通りに動かすためには、サーボや物理学、マイコンに関する高度な知識や経験が必要となるのである。 これらの問題点をモーションキャプチャなどの大掛かりな装置を用いずに解決するため、ユーザがCG上のロボットにマウスで簡単な指示を行うだけで実際のロボットを動かしたり、動作を修正したりできるソフトを提案する。「拳をすばやくこのあたりに」とか「重心を少し下げて」などのような簡単な指示をおこなうだけで、ロボットを制御できるのである。細かい関節角調整や転倒の防止はソフト側が自動で行うため、格闘技の演武などのような「長時間の複雑な動作」でも簡単に作ることができる。 なお今回は、ボールなどの道具を使わずに実現可能な"格闘技"に限定してソフトを作成し、今後のバージョンアップにより随時道具や環境(階段など)の変化に対応する。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 吉崎 航
採択金額: 5,500,000
2009年度未踏IT

コンシューマ向け重複排除型オンライン・ストレージ・サービス

コンシューマ向けの重複排除型オンライン・ストレージ・サービスの枠組みを開発するプロジェクトを提案する。本プロジェクトでは、コンシューマ向けオンライン・ストレージ・サービスに、エンタプライズ向けストレージ分野において近年普及の進む重複排除技術(de-duplication)を導入する。 本サービスの最大の特徴は、重複排除によって節約された格納コストを、ファイル単位でユーザに振り分けて課金または容量制限を課すことにより、個々のユーザが公平に低コストで利用できることである(1 格納コスト分配機能)。また、不正利用防止機能を備えた通信面での重複排除技術によって、高速にアップロードする機能を提供する(2 高速アップロード機能)。さらに、その高速アップロード機能を活用して、重複排除の可能なファイルのみを自動的に本サービスにアップロードするためのオプション(3 選択的同期機能)を提供し、コスト競争力を高める。 実装面では、クラウド・コンピューティング技術を活用することにより、スケーラビリティや災害耐性を持たせる。本サービスが事業化されれば、インターネットからダウンロードした各種のメディアファイルやソフトウエアのインストーラなど、多くのコンシューマが所持するファイルをクラウド上でシングルインスタンスとして管理することができるため、格納コストを格段に節約することができる。さらに、ハードディスクの消費量やその消費電力を節約できるため、省資源・高資源利用効率化にも繋がる。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 後藤 誠
採択金額: 5,500,000
2009年度未踏IT

Desktop RIA用フレームワークの開発

近年便利なインターネットアプリケーションが多数出ているが、ネットワーク遅延や切断による不安感がある。またモバイル環境においても、インターネットを介したアプリケーションは”サクサク動く”体験を与えられるものは少ない。このような問題に対処するため、インターネットアプリケーションにおいてローカルリソースを適切に扱えるように変更したDesktop Rich Internet Application用の基盤技術が発達してきた。しかし、既存のインターネットアプリケーションフレームワークはこれらの基盤技術のメリットを生かしていないため、サービスにもメリットが反映されないことが多い。 そこで本提案では、既存のインターネットアプリケーションフレームワークを拡張し、Desktop Rich Internet ApplicationのひとつであるAdobe AIR向けの開発フレームワークを提案する。   提案フレームワークでは、インターネットアプリケーションに一般的なクライアント・サーバ間でのObject/Recordマッピングパターンを拡張し、アプリケーションオブジェクト・ローカルデータベース・サーバデータベース間での二段階マッピングパターンをモデル化することで上記の問題に対処する。

PM: 加藤 和彦PMクリエータ: 柴山 直樹
採択金額: 4,470,000
2009年度未踏IT

染色模様シミュレータの開発

手工芸としての染色模様を作るためのアプリケーションソフトを開発する。染色過程のシミュレーションを基盤とした、リアリティの高い染色模様を簡単に作成できるソフトウェアの開発を目標とする。友禅染・絞り染め・ろうけつ染など多くの染色技法は、直接染料を与える「染色部分」と染料の浸入を防ぐ「防染部分」の分布を作ることで様々な染色模様を作り出すことができる。 本提案ではユーザの簡単な入力操作によって染色道具や布の折り形状による「染色部分」及び「防染部分」の分布を決定し、複雑な模様を作りだす染色シミュレータを開発する。染色模様を作る大きな要因として、染料の拡散現象と染料と防染の分布の二つが挙げられる。 提案者は前者を表現するための、染色のビジュアルシミュレーションシステムを過去に開発した。提案するシミュレータはこの織布内での染料の拡散現象のシミュレーションを基礎として、後者の染料と防染の分布を、実際の染色技法に従ってシミュレーションする。 具体的には染色技法のモデリング、染料拡散計算の高速化、アプリケーションとしての仕上げを行う。具体的に染色技法のモデリングでは、

PM: 藤井 彰人クリエータ: 森本 有紀
採択金額: 5,500,000
2009年度未踏IT

ソーシャルアプリによる人間グリッド計算機の開発

人間計算(Human Computation)あるいは人間グリッド計算機とは、計算機の構成ノードを論理素子ではなく人間の脳とみたて、何百万人もの人間の脳をネットワークで結合させることによって、望むべき計算を実現させるという技術である。人間計算の実現に当たっては十分な数のユーザが必要であり、そのためのインセンティブをどのように与えるかが大きな課題となる。 一方、そのような非常に多くのユーザが集まっている場の代表としてはソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)がある。SNSに集まるユーザの人的リソースを活用することで、より効果的な人間計算を実現できる可能性が開かれる。 本提案では、SNSにて近年サポートが進んでいるソーシャルアプリに着目し、そこでゲームを遊ぶユーザのアクションを利用して、画像検索エンジンのレイティング(検索結果表示順序)を改善させていくという人間グリッド計算機の開発を行う。 このことによって、ユーザはゲームをして遊んでいるだけなのに、結果としてちょっとした仕事をしてしまうというゲームプレイ・ワーキングの実現を目指す。

PM: 加藤 和彦クリエータ: 福盛 秀雄
採択金額: 5,500,000
2009年度未踏IT

モバイル・デバイスの為の高速度なAugmented Reality 用マーカ認識システム

Augmented Reality とは、現実世界でユーザが見ている視界にCG モデルや、 様々な情報を合成し、インタラクションを行う技術である。近年商用やユーザレベルでの利用が非常に期待されている技術であるが、ハイスペックのPC でなければ十分なユーザ・エクスペリエンスを提供できない場合が多い。 そこで、本提案では携帯デバイス(ネットブック、AndroidやiPhone など)を中心に想定し、そのような一般的なデスクトップPCに比べて低性能な環境でもリアルタイムのインタラクションに十分な高速に動作する、あたらしいAugmented Reality 用のマーカ認識技術を開発する。 これにより、町中や屋内でのAugmented Reality を利用した、一般ユーザへのサービスや携帯ゲーム機でのエンターテイメントを実用化する為の基礎技術を開発する。 トポロジー情報とその他の情報を組み合わせてマーカ認識および位置推定を行う手法を現在プロトタイプ中であり、既存の手法の多くに比べ、モバイルデバイスなどでも十分な速度がでるものとなっている。 この手法をさまざまに発展させ、携帯デバイスでも十分な速度で動く、ARサービスの実用化を大きく考慮した、あたらしいARのためのマーカ認識技術を開発する。

PM: 夏野 剛クリエータ: 西野 裕樹
採択金額: 6,940,000
2009年度未踏IT

スケーラブルラピッドプロトタイピングのためのJIT-ORM

ラピッドプロトタイピングの普及により、ベンチャー企業が新規システムの構築を素早く低コストで行うことが可能になった。 しかし、mixiのサーバダウン(2005年)やtwitterの度重なるシステム障害の例に見るように、ラピッドプロトタイピングで作られたデータベースアプリケーションはスケーラビリティが低いため、DBを原因としてユーザーの爆発的増加に耐えられず、サービスが不安定になりやすい。 この結果、拡大中のベンチャー企業は技術的なキャズム(溝)に落ち込んでしまい、成長の機会を奪われてしまう。 この溝を首尾よく乗り越えるためには、開発初期段階から適切なDB戦略を採用し、早期にDBスケーラビリティを向上させる必要がある。 本提案ではラピッドプロトタイピングに欠かせない要素であるオブジェクトリレーショナルマッピング(ORM)上において、データベースアクセスを自動的に最適化する手法の提案と実装を行う。 ORM特有のパフォーマンス問題であるN+1 SELECT問題を、ランタイムなVMバイトコード分析とプリフェッチSQLの自動生成により解決し、ORMのもたらす開発効率を完全に保ったままパフォーマンス実効力を付与することで、ラピッドプロトタイピングにより構築されたソフトウェアのDBのスケーラビリティを向上させる。実証開発を普及度の高いJava/Hibernate上に行い、本実装による波及メリットを最大化する。

PM: 加藤 和彦PMクリエータ: 長田 一登・益子 遼介
採択金額: 6,000,000
2009年度未踏IT

アイデアの創発と実現を促進するウェブサービス

何時の時代であれ、誰しも自分の好きなコンテンツを見つけられれば幸せになれるだろう。 そのようなコンテンツを世界に増やすには、自分の嗜好にあったコンテンツがコンテンツ全体に占める割合を増やす、もしくはコンテンツ全体の数を増加させることが必要となる。そしてそれを享受するためには、各人がそれらのコンテンツを発見出来なければならない。 コンテンツを見つけることについては、多数のコンテンツを取り扱うサービス(Amazon、ニコニコ動画、はてなブックマークなど)に付加されているレコメンド機能(コンテンツの推薦機能)などの解決方法が提示されている。しかし、自分の好きなコンテンツを世の中に増やすことについては、有効な解決策が提示されていないように思う。 近年、コンテンツの市場規模が増え、コンテンツ需要の高まりが伺える。それと共にニコニコ動画やpixivなどのCGM(Consumer Generated Media)の会員数が大幅に増え、UGC(User Created Content)が受け入れられる土壌が整ってきている。よってUGCの創造を支援するシステムがあれば、コンテンツは今以上に増えると考えられる。では、何を支援すればUGCの創造は増えるだろうか? コンテンツに限らず創ること、創造を行うにはアイデアが必要である。料理、小説、音楽、技術など、どれを創るにしてもアイデアが必要となることは変わらない。そしてそれらのアイデアを実現するにはヒト・モノ・カネ・情報といったリソースが必要である。しかし、それら全てを個人が得るのは難しい。 そこで、アイデアの管理、アイデアの共有を通して、アイデアの創発と実現を促進するウェブサービスをここに提案する。

PM: 勝屋 久クリエータ: 齋藤 創太
採択金額: 7,000,000
2009年度未踏IT

写真メールに匹敵する遍在的な携帯コミュニケーション基盤の創造

本研究開発では、「写メール」の次にくる日常的なコミュニケーション基盤技術および技法について焦点を絞り、2、3年後にくるはずの次の携帯コミュニケーションを先取りし、今、実現することを意図している。 コミュニケーションのためのメディアにとって、一つ根本的なことは、技術それ自体の新しさではなく、技術の上に『技法』がのせられることが、遍在的なコミュニケーションの基盤となるための必須条件であるということだ。また、大抵の携帯メールや写メールの編集から送信にかけられる時間は 30 秒から 1 分である。携帯メディアという特性上、短時間で編集可能な環境を提供しなければならない。 普段、写真によるコミュニケーションや映像撮影を実践したこともない技術者が、携帯メディアのための新しいコミュニケーション技術を設計できるわけがない。装置技術、インターフェースどれについても、メディア技術自体に意識がいかないくらいそれが身体化され、その上にリテラシーが成立するように設計されていなければならない。本研究開発では、「コマ撮り」の手法を利用して、携帯メール上の絵文字や写メールと同じくらい簡易に利用でき、非常に低解像度、低容量だが鮮やかに伝わり体験できる「指先で触れられる」インタラクティブな映像メールの開発を行う。 具体的なチャレンジとしては、限られた表示機能とインターフェースしか装備しない携帯メディア上で、どのようにしてこれを実現するかがポイントである。昨今の技術開発が主に向かう、「大容量」「高精細」に反し、低解像度の写真で構成されたものであっても、非常にヴィヴィッドでリアルな映像体験を携帯上で共有できることが可能であることを本提案は示す。

PM: 石黒 浩クリエータ: 齋藤 達也
採択金額: 6,110,000
2009年度未踏IT

Webブラウジングの新しい形、WebsiTVの開発

本プロジェクトでは、テレビのように眺めているだけでWebブラウジングが出来るアプリケーションWebsiTVを開発する。 近年、家庭内に小さくて軽いネットブックと呼ばれる小型のインターネット専用ラップトップコンピュータが普及し、wifi環境も整い出しているため、家の中であれば、どこに居てもインターネットに接続しWebブラウジングすることが出来る環境が構築されている。そのため、ネットブックを家の中で持ち歩くことが当たり前になってきている人もいる。しかし、常に手の届くところ、つまり、視界に入る場所に置いているにもかかわらず、食事をしていたり、本を読んでいたりすると、ネットブックが近くにあったとしても目を向けられる可能性は低い。これは、Webブラウジングがユーザの操作によってのみ可能だということを暗に示している。また、ネットブックにWebサイトを表示していたとしても、集中して文字を読まないと内容を理解できないので、軽く眺める程度ではとうてい理解できない。 そこで、本プロジェクトでは、ユーザの操作なしにWebブラウジングをすることが出来、軽く眺める程度でWebサイトの内容を理解することが出来るWebsiTVを開発する。このシステムにより、普段行っているWebブラウジングのルーチンワークを自動化し、ふとした時に眺めることにより情報を収集することが可能になる。例えば、朝起きて、Webサイトで天気予報を調べ、前日に起こったニュースを確認し、友人のblogが更新されているか確認するなどの、一連の行動を自動化することができ、朝食を食べながら軽く眺めるだけですべてのことを確認することが出来るようになる。 そして、本システムを使用するユーザにとって、今までには無かった新たなWebブラウジングの経験を提供することを目指す。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 代蔵 巧
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

柔軟なシークバーによるコンテンツ操作インタフェースの開発

シークバーの扱いを固定されている棒から柔軟に曲がる紐へと変えることで、シークバー自体を可動にし、それと共に、曲げる、切る、結ぶといった機能を組み込む。これにより、シークバーの特性である、再生位置のわかりやすさと再生位置の変更のしやすさを残しつつも、コンテンツの編集機能を持つ、より柔軟性のあるシークバーの扱いが可能になると考えた。 このインタフェースをシークロープとして提案する。 複数の楽曲に対応するシークロープを二次元上の再生エリアへ自由に配置する。紐のような特性を持たせたシークロープは、曲げる、切る、結ぶといった加工が行える。これらの機能を用いることで、シークロープのループやカットイン、同時再生が可能となる。このことから、楽曲の再生だけではなくリミックスやマッシュアップといった楽曲編集の機能を包含したインタフェースとしての使い方も期待できる。 なお、今回の開発では音楽再生を前提にシステムの実装を提案しているが、動画再生においても同じ構造のインタフェースを適用できると考えている。 一般的な楽曲編集ソフトウェアと違い、曲のループに同じパーツを繰り返し配置する必要がない、曲げ方を工夫することで小さな画面にシークロープを納めることが可能となるといった利点が挙げられる。 このインタフェースを再生プレイヤーに実装することで再生作業から編集作業に無理なく着手できる。このことより、コンテンツの編集に慣れ親しんでいない層の人にもその面白さを味わってもらえると考えている。

PM: 安村 通晃クリエータ: 佐藤 剛
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

従来のシステムと比べて柔軟性の高いkey-value storeの開発

近年、クラウドコンピューティングにおける基盤技術として、key-value storeが注目されている。このシステムはRDBと比べて大規模なクラスタ内での使用を前提としており、ノード数の増加に対応して自動的にスケールアウトするものがほとんどである。さらに、高速に動作する必要があるのでRDBほど処理が多様でない点も特徴的である。 提案者も今年の六月に、P2P構造化オーバーレイネットワークの一つであるSkip Graphを利用した簡易的な分散key-value storeを並列プログラミング言語Erlangで実装している。このシステムの特徴は、大規模クラスタ内で効率的な範囲検索を行うことができるという点である。これはSkip GraphがChordなどのDHTとは異なり、ピアがkeyによってソートされているという性質を利用して実現している。 しかし一般的なkey-value storeは単一keyのgetとput、deleteのような既に実装されている機能しか行うことができず、とても柔軟性があるとは言い難い。そこで本プロジェクトでは、以前作ったシステムをC++で書き直して十分に高速化し、柔軟性向上のため以下の2つの新しい機能を備えた分散key-value storeを開発する。

PM: 筧 捷彦PMクリエータ: 千々和 大輝
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

オープンソースによる表現媒体としての飛行船プラットフォーム

飛行船は古くから広告をはじめとした空中メディアとして利用されており、その市場規模は数百億円にのぼる。飛行船メディアの盛況は、多くの人の視線を集める空中メディアが非常に訴求力のある強力なメディアであることと、飛行船のさまざまな特色が空中メディアにとって最適であることを示している。また一方で、人々の趣味の範疇においても飛行船の人気は急上昇している。この数年の間にオープンソースの電子基板や工作キットが世界中でDIY(Do It Yourself/日曜工作)ブームをもたらしており、その中でDIY飛行船のプロジェクトが幾つも登場し、キットも人気を博している。しかしそれらの多くはラジコン飛行船型か、自動操縦を組み込んだペットロボット型に二分でき、DIY飛行船を使ったアプリケーションはそれほど多様では無いのが現実である。 これらの2つの流れ-空中メディアとDIY飛行船-から、本件では、DIYで誰もが簡単に設計・製作でき、かつラジコンやペットロボットとしてだけではなく表現媒体としてパフォーマンスに利用できるような飛行船プラットフォームを提案し、それを実現するソフトウェア群と電子基板、および飛行船の機体の製作に必要なリソースをオープンソースとして提供することを目的とする。具体的には、LED光源を備えた飛行船の設計、飛行船の制御プログラム、さまざまなユーザーインターフェースへの対応とビジュアルな設計環境の構築、そしてオープンソースとして公開、という4つのトピックから提案を構成している。本提案を通じて、飛行船のメディアとしての適性と、昨今のDIY飛行体ブームの重なりに、新しいイノベーションを見出すことを期待している。

PM: 首藤 一幸PMクリエータ: 吉本 英樹
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

組み込み用プログラミング言語「Yadorigi」の開発

私は、組み込み用プログラミング言語「Yadorigi」を作ることを提案する。ここでいう組み込み用プログラミング言語とは、携帯端末などの組み込みシステム向けのプログラミング言語ではなく、Lua、Xtal のように、別の言語で書かれたホストプログラム上で動かすことを前提としたプログラミング言語のことを指す。 Yadorigi で書かれたプログラムを含むソフトウェアは、ホストプログラムから Yadorigi VM (Yadorigi のバイトコードを実際に動かすための VM)を利用して Yadorigi のバイトコードを実行し、また、Yadogiri のバイトコードから Yadorigi 用に用意されたホストプログラムの機能(ライブラリ)を呼び出すことによって、ソフトウェア全体が目的の処理を行うようになっている。 この言語は関数型言語であり、静的型付け、型推論機構、バイトコード仮想マシン駆動といった特徴を持つ。 未踏ユースの期間内では、Haskell による Yadorigi コンパイラの実装と、JIT コンパイラによる最適化などのない単純な Yadorigi VM (バイトコードインタプリタ)を実装することを目標とする。将来的には JIT コンパイラの実装も行う予定。

PM: 筧 捷彦PMクリエータ: 坂口 和彦
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

監視用映像ストリーム処理基盤Eagle Eyeの開発

近年、映像ストリームは研究室を出て実社会で用いられる例が顕在化している。特に従来は商店や銀行などの限られた場所でのみ設置されていた監視カメラは、防犯意識の高まりから市街や道路などで多く見られるようになった。このような監視カメラを用いた監視システムは、プライバシ侵害という難しい問題も孕むが、システムとして実社会に存在し、さらに拡大していることから、技術として社会に求められていることは疑いの余地がない。 ところが、監視システムは多数の監視カメラから時々刻々と生じる映像ストリームに対して、人間が映像を目視することで異常検出を行っている。そのためこのような監視システムは、「人的なコストが高い」、「見落としにより正確な異常検知ができない」などの問題を有する。これらの問題に対する解として、画像処理やパタン認識処理により異常検出を行う監視システムが用いられることがあるが、このようなシステムの実装には、複雑なコーディングが不可欠であるため、その開発コストは大きなものになると考えられる。さらには、監視システムは導入環境により監視カメラ台数やネットワーク構成などが異なるため、特定環境に特化した専用システムを作りこむ必要がある。ゆえにシステムの汎用性は低く、監視カメラ台数の増加といった特定環境から少しでも異なる環境においては、監視システムが停止してしまう可能性がある。このような場合、システムを再開発することになり、開発コストがさらに膨れ上がるという問題が生じる。 本提案では、監視システム開発のための汎用映像ストリーム処理基盤Eagle Eyeを開発する。Eagle Eyeではストリーム処理エンジンの技術を応用し、SQLライクの問合せを記述による画像処理・パタン認識を実現する。

PM: 首藤 一幸PMクリエータ: 塩川 浩昭
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

オンライン協調型リアルタイム共同作曲支援システムの開発

DTMを用いた音楽創造活動形態の現在の主流は、独創的な個人がすべての楽器パートを作曲・発表し、他者からフィードバックを受ける(場合によってはさらに洗練させる)という形態がメインとなっている。完成度の高い楽曲を創作するにはギター、ベース、ドラムなどのすべての楽器パートに関してある程度高い知識や演奏経験を身につけていなければならず、DTM初心者から中級者の高いハードルとなっている。本提案テーマではこの問題を解決するために、個人のスキルのみでは完成度の高い楽曲を完成させることが難しいというDTM初心者から中級者をターゲットとして、オンライン上の複数人のメンバと協調的に音楽を創作する過程を支援するシステムを開発することを目的とする。 本提案テーマで開発するシステムは、オンラインでのコミュニケーション方法を複数人での共同作曲のために最適化することで、曖昧さが伴いがちな楽曲イメージの伝達におけるチャットなどの従来方法の欠点を克服することを狙いとしている。また、本システムが支援する楽曲創作過程の共有により、これまで不得意であったパートの作曲方法を他者の作曲方法から自然に身に付けるという相互学習の効果も期待している。我々は本システムの開発を通じて、DTM初・中級者の作曲をより手軽なものとするとともに作曲方法の学習機会を広げることで、音楽創造活動の裾野を広げる役割を果たしたいと考えている。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 大澤 直哉・木村 昌樹・Papon Yongpisanpop・高井 雄治
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

触覚を伴うCGモデルの作成・体験システムの開発

本テーマの目的は、3Dのモデルを実空間中で絵を描くような感覚で生成し、さらに生成したモデルを触ることが可能なシステムの構築である。ユーザがペン型の触覚ディスプレイを把持し、ブース内の空間中で手を動かすと、モーショントラックカメラによってユーザの手の軌跡が計測、それに応じてリアルタイムに3Dのモデルを生成する。このモデルを描くプロセスにおいて、触覚ディスプレイによる触覚の提示と立体プロジェクタによる立体映像の提示を同時に行うことにより、ユーザに対してあたかも実空間に3Dのモデルを描いたような感覚を提供する。また、生成したモデルとペン型デバイスの衝突により生じる力を物理シミュレーションにより算出し、ペン型触覚ディスプレイを用いて力覚フィードバックを行うことにより、モデルを触った感覚を提示する。 本システムにより、球や立方体等の形状の配置や、形状間のジョイントの接続等の操作による3Dモデルの作成を、三次元空間中に絵を描くような感覚で直感的に行うことが可能になる。それと同時に、作成したモデルが触れるようになることにより、モデルの検証を作成と並行してリアルタイム行うことが可能になり、モデリングの支援が行える。また、従来のように作成した3Dモデルをただ見るだけに留まらず、触って体験することが可能となり、新しい表現の形としての応用が見込める。

PM: 首藤 一幸PMクリエータ: 家室 証
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

Emacs的なドローソフトの開発

ドローソフトを使って少し複雑な図を描こうとして、面倒なマウス操作の繰り返しにイライラさせられたことはないだろうか? またはフローチャートを描こうとして、箱の中央など"あり得ない位置"に線が引かれてしまい、手間取ってしまったことはないだろうか? ここでは、こういったストレスを軽減するために、Emacs的なドローソフトを提案する。 ここで"Emacs的"というのは、Lispのインタプリタを中核に備え、ソフトの全てがLispで構築されていることである。 まずこれは従来のGUIに加えて、CUI的な側面を持っている。それはLispのシェルを通してユーザがシステムに直接命令を送ることができるからである。これにより、手で描くには大変な図も簡単に描くことができる。もちろん、このシェルからの操作とGUIからの操作は全く同等で、ユーザは場合に応じて2つのインターフェースを使い分けながら、効率的に作業を行うことができる。 また画面に線を描くことからGUIのデザインまで、ソフトの全ての機能をLispから操作できることも大きな特徴である。これによってユーザはそれぞれの目的に合わせて簡単にソフトを改造することができ、効率性を極限まで追求することができる。更に、絵を構成する部品をきちんと準備してソフトに教えてやれば、ユーザの操作に合わせてソフトが自動的に姿を変えることも可能である。 以上の機能をうまく利用するためにはもちろん、手間暇をかけてユーザが"育てて"やらなくてはいけない。しかし努力を惜しまなければ、どんな風にも進化してゆく、そんなドローソフトを本提案では目指している。

PM: 筧 捷彦PMクリエータ: 木脇 太一
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

Web3D画像生成のための簡易型3Dスキャナーの開発

近年、リッチクライアント環境の浸透により、ブラウザ上で3D画像を動的に描画するアプリケーション(Web3D)が脚光を浴びている。特に、世界的に有名な自動車メーカーにおいては各社ともにWeb3Dコンテンツを設けており、優れたデザイン性をアピールすることに成功している。しかし、Web3Dを便利に鑑賞できるようになった一方で、コンテンツ制作者側の負担は非常に大きなものとなっている。 一般的に3D画像はモデラーソフトによって、手作業で製図が行われている。一方、本プロジェクトでは3Dスキャナーを使用することによって、Web3D画像を瞬時に現物から生成するシステムの開発を行う。ただし、研究開発用として市販されている既存の3Dスキャナーは数百~1千万円程度と非常に高価であるため、本プロジェクトでは革新的な手法を用いて低コストな三次元計測部の開発を行う。 3Dスキャナーを安価に提供することによって近い将来、個人が3Dスキャナーを使いこなす時代が来ると考えられる。特にインターネット上では、オークションやSNSなど、3D画像を生かせる媒体が多い。リアルで価値のあるWebコンテンツを誰もが制作できるようにすべく、本プロジェクトでは数万円の製造コストで実用精度の形状抽出が可能な3Dスキャナーを開発する。

PM: 安村 通晃クリエータ: 村井 慎太郎
採択金額: 2,716,000
2009年度未踏IT

透明マーカを用いたディスプレイとの3次元インタラクション

街中にある情報ディスプレイは広告媒体などに広く利用されています。これは、情報の提供者側が提供したい情報を常に表示し続け、情報へのアクセスに特に操作を必要としません。そのため、ディスプレイの近くを通りかかるだけで、情報を目にすることができ、不特定多数の人間に対して商品などの情報を広めることに適しています。しかし、常に特定の情報を一方的に提示し続けるため、通行人が表示された情報に興味を持った場合、更なる情報へアクセスすることができず、ニーズに対応したインタラクティブな情報の提供ができていません。 本システムは、カメラをポインタとして使用することによる、ディスプレイ映像への操作を実現します。これは、ディスプレイに透明偏光マーカを、カメラに円偏光フィルタを取り付けることにより可能となります。ディスプレイに取り付けるマーカシートは透明であるため、表示される情報を視覚的に損なうことなく、ユーザの持つカメラ付き小型デバイスの3次元位置および、その姿勢を取得することが可能となります。また、シンプルなシステムであるため、デバイス依存性が低く、汎用性が高いといえます。応用としては、液晶ディスプレイへの近距離でのインタラクションが可能である点を生かして、公共の場にあるディスプレイに対して、直接触れることなく、デバイスで写真を撮るような動作で操作を行うことや、ディスプレイに表示された商品の情報を操作している小型デバイスへと転送するなどが考えられます。 本システムの特徴は以下が挙げられます。

PM: 筧 捷彦PMクリエータ: 百武 暁人
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

弾力性と柔軟性をもつデバイスを用いた新しいUIの開発

弾力性・柔軟性があるクッション、ぬいぐるみを手にしたときに人が感じる「触っていたい」という衝動を積極的に利用した入力インタフェースの開発及び、そのデバイスを効果的に利用したアプリケーションの開発を行う。 コンピュータへの入力装置としてはマウスやキーボードといった古典的なデバイスが今も主流である。それらが登場してから長い間廃れずに使われ続けているのは、コンピュータの操作との親和性が非常に高いからであろう。そのため新しいデバイスでは利便性以外で勝る部分を提案する必要があるだろう。本提案では強みを、人の情動に訴えかけ、「使いたい!」という気持ちを与えるという点においた。 本提案と関連する研究として、ロボティック・ユーザーインタフェース(RUI)がある。これは、ロボットをコントローラに用いるインタフェースで、近年盛んに研究が行われている。このひとつの例としてクマのぬいぐるみの中にロボットを仕込み、それをゲームのコントローラに用いるものがある。形状を人の形にすることでユーザーは自己投射をすることができ、加えて、ゲーム内のキャラクタをぬいぐるみと同じ形にすることで高い没入感を提示することができる。 RUIはユーザーに「使いたい」という気持ちを誘発させられるが、特定のアプリケーションの操作にしか向かないという欠点がある。そこで、今回提案するのは弾力性・柔軟性がある素材で包まれたクッションのようなデバイスである。このような素材で包まれたクッションを手にしたとき人は目的も無く触り続けていることがある。このように「なんとなく触る」のはクッションの気持ちよさによるものだろう。本提案ではこのなんとなく触る行為をセンシングし、それを入力とするデバイスと、本デバイスがコントローラとして汎用的に使えるということを示すアプリケーションの開発を行う。

PM: 安村 通晃クリエータ: 筧 豪太
採択金額: 3,000,000
2009年度未踏IT

オープンソースソフトウェア指向型作曲支援プラットフォームの開発

音楽業界は古くから曲(CD、オンライン配信)を消費者にBtoCで販売するビジネスモデルを続けているが、YouTubeやニコニコ動画を初めとするコンテンツ配信サイトの登場も一要因となってか音楽業界の市場規模(楽曲売上などの指標)は縮小傾向にあり、このマーケットでのプレイヤーの未来は新古問わず厳しいものであることは想像に容易い。 これに対してニコニコ動画などではユーザ同士が投稿作品を改変し合い、よりよい作品が生まれ、商業化に至る事例も発生している。 このように「みんなで音楽を創り上げる」という流れは、ソフトウェア開発の世界で広く普及している「オープンソース・ソフトウェア」の概念や開発スタイルに似ている考え、提案者らは音楽業界に訪れたこの流れを「ソーシャル・コンポジション」と分析・命名しここに音楽業界の新しい可能性と大きなビジネスチャンスが含まれていると感じた。 本未踏プロジェクトにおいて提案者らは、「みんなで音楽を創り上げていく」ために、曲をオープンソース・ソフトウェアのように作曲できる作曲支援プラットフォームを提案する。 ユーザーはプラットフォーム内にて作曲プロジェクトを立ち上げ、複数人で楽曲のソースコードとなる楽譜データを編集(コミット)する。 これらは作曲スタイルに適した形でバージョン管理され、最後に演奏・レコーディングを行い曲を配布する。 この時に楽曲、および楽曲の一部にライセンスを付与することを可能にし、ライセンスの許す範囲内で流通・再利用が可能な仕組みとする。 このような作曲基盤を実現することにより、「みんなで創り上げられた音楽」が広く世に浸透し、音楽業界に新たなパラダイムシフトを起こすシステムを提案する。

PM: 夏野 剛クリエータ: 小林 悟史・前田 高宏
採択金額: 7,000,000
2009年度未踏IT

ウェブデータからの行為抽出エンジンの開発

Facebook、Twitterといったソーシャルネットワークサービスや、ブログやマイクロブログといったコミュニケーション手段の普及により、 誰でも気軽に情報を公開、共有できるようになっている近年、さまざまなユーザが、製品やイベントに対しての嗜好や意見、また、日常の行動などについて発信している。その結果、年々企業側が提供する製品に関する情報よりも、これらのコミュニケーション手段を通じてユーザが発信するコンテンツ(User Generated Contents, 以下、UGCs)が、消費者の購買行動に影響を与えるようになってきていると言われている。このような背景の中、UGCsから自動的に注目の話題を抽出したり、製品やブランドに関する評判を分析するサイトやシステムが開発、公開されている。このようなさまざまなコミュニケーション手段を通じて発信されるUGCsから抽出可能な情報は、製品や出来事に対するユーザの意見、評判といったものに限らない。Twitterのサイトにおいて「いまなにしてる?」という問いかけに代表されるように、UGCsには多くの行為を含むデータが蓄積されている。 本プロジェクトは、ウェブから人々は何をしているのかを知ることを通じて人間の英知を集め、有効的に活用するシステムの開発を行う。具体的には、ウェブ上で、さまざまな人がブログやマイクロブログといった新しいコミュニケーション手段を通じて発信しているデータを収集し、これまでに開発・研究されてきているウェブマイニング技術と自然言語処理技術を用いて、誰が、いつ、どこで、何に対して、何をしたか、を集めた行為データベースを構築する。さらに、このデータベースを活用した行動パターンの可視化や、行動予測を行うウェブ上のサービスとして提供する。提供するサービスの情報を用いることにより、新しい情報環境のデザインなど、さまざまな分野のサービスをデザインするツールとして大きく貢献できると考える。

PM: 勝屋 久クリエータ: 岡 瑞起
採択金額: 5,000,000
2009年度未踏IT

BlueFairy: 場所共有型SNSプラットフォームの開発

近年、GPSなどの技術により、「自分がどこにいるか」という情報は利用可能になったが、「誰と一緒にいるか」という情報をリアルタイムで入手するのは困難である。一方で、twitter上でのハッシュタグ文化の流行から、「ある体験を共有した人」の検索にニーズがあると考えている。時間情報、位置情報の次に必要とされるのは、このような「実世界の人間関係」の情報であると言えるだろう。 そこで本プロジェクトでは、Bluetoothによる近傍ユーザ探索を用いた、場所共有型のSNSプラットフォームサービスを開発する。本サービスに登録すると、ユーザは自分のBluetooth機器とWeb上のアカウント(メールアドレス、twitter ID, Facebookアカウントなど)をリンクすることができる。 本プロジェクトの開発目標としては、このような「実世界の人とWeb上のアカウントの照合」という面から、名刺交換機能を開発する。これにより、お互いのBlogをRSSリーダに登録したり、twitterを瞬時にフォローしあうといったことが可能になる。また、お互いが連絡先を交換したイベントの日時と近傍Bluetoothログが残っているため、「どこかで会ったのだが、名前が思い出せない」といった2回目の出会いの際、近傍Bluetooth情報から出会った人の候補をリストアップする、という記憶補助的なツールとしても使えるアプリケーションを構築する。 また、各個人のBluetooth探索ログを共有することで、誰と誰が現実世界でどの程度会っているかを情報化できる。これにより、「実世界の人間関係」を情報化することが可能になる。本プロジェクトでは、このような「実世界の人間関係」を用いた便利なサービスを、国内に留まらず世界に発信していくことを目標とする。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 岩崎 健一郎
採択金額: 5,500,000
2009年度未踏IT

情報集合としての人を表すCGエージェントの相互作用によるメディア・アート "Dancing Information" の開発

本プロジェクトではメディア・アートとして展示することを指向したソフトウェア“Dancing Information”を開発します。 現代を多忙に生きる私たちには大量の情報が押し寄せてきます。情報に押し流され、物事を知り考えるきっかけとなる情報をつかみそれを深めることができず、もどかしく感じることがままあります。その一方で、時に、知っていることさえ忘れていた情報を再発見し、共通するコンテキストで他者から新たな情報を得、人生の知的なよろこびに興奮することもあります。 プロジェクトの根底には“たのしみながら、知り、考える起点を創出することはできないか”、個人の持つ断片情報とその集合にアートを感じ、パーソナル・ナレッジ・マネジメントを研究する提案者の思いがあります。個人が持つ情報を人型に組織化し、他者から作られた同様の情報の集合と踊らせたらどうなるだろうか。展示閲覧者は自身の情報を作品中に真に参加できるメディア・アートにできないだろうか。具体的には、展示閲覧者が持つ視覚的な情報(たとえば写真、本の表紙、動画のサムネイルといった画像、視認性の高いキーワードなど)をブログなどのウェブソースから集め、人型に組織化し、他者から生成された情報の集合とともに舞台上で躍らせます。人型に組織化された情報の集合は刻一刻、一緒に踊る情報や舞台の状況によって、その断片を入れ替えて動的に変化し、展示閲覧者に情報を提示します。 提案プロジェクトでは、公共の場で展示するメディア・アートとしてソフトウェアを開発しますが、プロジェクト終了後も継続的にプログラムを汎化し、ブラウザ越しでの展示、単体のソフトウェアとしての販売も視野に入れ開発を行います。

PM: 石黒 浩クリエータ: 日野 亜希子・日野 洋一郎・大槻 憲弘
採択金額: 6,006,000
2009年度未踏IT

セル・オートマトンと有限要素解析による環境適応型-形態創生

モノをつくるときに形状をどのようにするかは、長い間、人のセンスや経験、そして工学的な視点にゆだねられてきた。しかし、これからの時代は、生物の成長や発生をヒントに生まれた新しい道具に任せてみてもよいのではないだろうか。本件で目指すソフトウェアはそのような道具のアイデアのひとつである。 もし、生物の発生過程をモノづくりに活かすことができれば、非常に合理的な形状の作成が行えるようになり、これまでとは異なった発想を開発設計者やデザイナーに提供できるようになるだろう。それとともに成果として生まれた製品は省エネや省資源化を推進するうえで一役買うことが期待できる。 本プロジェクトでは、形づくりにおける生物のつくってはこわし、こわしてはつくるという特徴に注目し、セル・オートマトンと有限要素法を組み合わせて上記の実現に向けて開発を行う。 システムは、セル(要素)の増減処理が行える機能を実装し、セル・オートマトンの処理と有限要素解析の間でフィードバックが継続して働くようにする。フィードバックによりセルが生存可能な状態量に落ち着くまで、セルが必要と判断されたところでは新しいセルが誕生し、不要と判断された場所では死滅する。解析が進行するにつれ形状が刻々と更新され、与えた環境に応じて形状が変化適応していく。これにより結果として全体的に無駄の少ない合理的な形状をつくることが可能となる。

PM: 夏野 剛クリエータ: 木ノ村 護
採択金額: 7,000,000
2009年度未踏IT

英文添削コーパスを活用した英文入力支援・校正ソフトウェアの開発

インターネットの発達、グローバル化の進展に伴い、ビジネス・プライベートを問わず、個人が英文を作成し、外国人とコミュニケーションを行う局面は非常に多く見られるようになった。しかし英語ノンネイティブが英文を作成する上で助けとなる、英文入力支援ソフトウェアは、スペル チェッカーの域を出ない未熟な製品しか市場に登場しておらず、この分野において未だITはエンドユーザの潜在ニーズに応えることができていない。 本提案では、語学学習SNS「Lang-8」の利用者により生成された膨大な英文添削データを活用することで、従来の英文入力支援ツールとは一線を画する、実用的な入力支援・校正アプリケーションを開発する。 本提案で開発するアプリケーションは、Webブラウザ上で動作するツール(プラグイン)として実装される。入力者がWebブラウザ上で英文を入力すると、自動的かつ非同期にAPIサーバに問い合わせを行い、バックエンドデータベースに蓄積された添削データの解析結果を元に、文法上・表現上の誤りである可能性が高い部位を指摘表示すると共に、より適切な修正候補をわかりやすくリストアップするものである。本提案では、この一連のプロセスに必要な、Webブラウザプラグイン、バックエンドデータベース並びにAPIサーバソフトウェアのすべてを開発する。 本アプリケーションは、特に東アジア圏の英語ノンネイティブが全世界に情報を発信する上で、言語の壁を克服するための有力なツールと成り得るものである。

PM: 勝屋 久クリエータ: 松本 一輝
採択金額: 5,000,000
2009年度未踏IT

ユーザーのコンテキスト情報を利用した情報活用基盤

本提案は、情報の発信時および利用時にユーザーの周囲に偏在するコンテキスト情報を有効に利用することで、ユーザーが必要としている情報に少ないコストで到達できる仕組みを提示します。その結果、より精度の高い意思決定とより品質の高い価値創造を実現できる世界を目指します。 総務省が行った「平成18年情報流通センサス」の報告書からも裏付けられる通り、近年利用の伸びが追いつかないほど情報の流通量が増えています。この調査は日本国内が対象ですが、これは世界的な傾向です。情報の利用者にとって、こうした膨大な情報から、より有用で利用価値の高い情報を効率良く選び取ることの重要性がますます増大していると言えます。 本提案では、Web 上の情報を { 時刻印, 緯度, 経度, 高度 } で張られるコンテキスト空間に対応付けて整理することを、増大する情報量に対するアプローチのひとつとして提案します。情報を指し示すURIと、“時間軸”や“場所”といったコンテキスト情報とを紐付けてストアすることで、コンテキスト情報を利用した情報の絞込みを可能とします。コンテキスト空間上の情報と、ユーザーのコンテキストとのマッチングをとることで、意思決定 / 価値創造に際してユーザーの情報利用シーンに沿った豊富な背景情報を提供することを目指します。 本提案はユーザーのコンテキスト情報を収集し検索UIを提供するクライアント・ツールと、それらコンテキスト情報を蓄積、分析するサーバー・サイド・アプリケーションからなります。

PM: 勝屋 久クリエータ: 水林 亨介
採択金額: 5,000,000
2009年度未踏IT

身体表現を拡張するウェラブル大量フルカラーLEDモジュール制御システムの開発

近年、コンサートなどにおいて、電飾を身体に装着した新しいパフォーマンスが用いられるようになってきた。しかし、従来の取り組みは光る衣装を身に付けているだけに過ぎず、身体の動きに合わせた光の制御ができていなかった。光を身体表現に利用すると、一つの動きでも光のパターンによって見せ方が変わり、様々な表現が生まれることが考えられる。 本プロジェクトでは、ステージパフォーマンスに利用可能な安定したシステム構築を目的とし、衣服に装着した大量のフルカラーLEDモジュールを制御可能なシステムの開発を行う.提案するシステムは、衣服に装着するLEDモジュールと、そのLEDを無線通信を用いて制御するハードウェア、ダンサー自身が音楽と動きに合わせた光のパターンを作成できるソフトウェアからなる。 ソフトウェアとして、ダンスなどのパフォーマンスにおいて振付けを行う時と同じように、LED等の専門知識がなくてもダンサー自身がLEDの制御を行えるシステム「Lighting Choreographer」を開発し、ダンサーにとって新しい表現を可能とするツールを目指す。 身体表現と音・光を動的に組み合わせるという表現技法を可能とするソフトウェアを開発することは、新たな分野を切り開くと同時に、これまで想像もできなかった新たな表現を誘発することができるのではないだろうか。

PM: 石黒 浩クリエータ: 藤本 実
採択金額: 7,000,000
2009年度未踏IT

センサーデバイスを活用した弦楽器の自動演奏の為の基盤ソフトの開発

ロボットが、工業生産の現場で活躍する、製造機械としての役割だけでなく、人間とのコミュニケーションを指向して久しい。ロボットは、人間生活の場において、人間生活をより快適にする役割を持つようになってきた。これらは、当初は、単純なエンターテイメントロボットとして実用化され、続いて、介護ロボットや、家事ロボットなど、より複雑なタスクをこなす、人間の労働代替手段として顕現しつつある。 また、労働代替手段としてのみならず、近年、ロボットが、人間に似た動き、振る舞い、表情をすることで、人間と、より主体的かつ自然にコミュニケーションを取るという方向性が生まれ、活発に進展している。その一環として、人間の動きを模倣したり、人間の感情を擬似的に「理解」し、擬似的に「表現」するという方向性が指向されている。ロボットが人間社会により広範に進出するためには、少なくとも人間に不快感や不気味感を与えないことが前提であるが、近年の開発の方向性は、不快感を与えない、といった消極的な取り組み方を越えて、人間の感情に、ポジティブな影響を与えようとする積極的な取り組み方へとシフトしつつあると言える。 本提案では、人間の感情にポジティブな影響を与える積極的な取り組みの一環として、ロボットによる弦楽器の自律演奏の仕組みを提案する。本提案では、ロボットと人間は、音楽(もしくは音楽的感性)を媒介として、相互にコミュニケーションを図る。具体的には、ロボットは、演奏時の楽器各部の圧力・速度・出力波形などをモニタリングすることができ、人間は、楽器が出す旋律が、自分の感性にどのように響くのか、という心の動きを感じ取ることができる。これらを適切なコミュニケーション基盤上で統合することにより、ロボットが、人間にとって心地よい演奏を行うための基礎データを蓄積し、ロボットと人間が、より良い演奏を実現するための、良きパートナーとなれるような基盤を構築することをねらいとする。

PM: 加藤 和彦クリエータ: 藤野 真人・古川 浩太郎・吉澤 智也
採択金額: 7,000,000
2009年度未踏IT

単機能入出力デバイスをマッシュアップするインターネットサービス

現在、様々な情報家電や携帯電話、ガジェットと呼ばれるハイテク情報機器が販売されている。これらの機器は多くの機能を持ち、ユーザーのやりたいことを自由にできる環境を提供しているように思える。しかし、実際は情報機器の多様化は操作の複雑化を招いたり、価格の上昇を引き起こしていると考えられる。さらに、ユーザーが本当に多機能な情報機器を求めているのか、という疑問もある。私は、小さなデバイス単位に機能を分散化し、それぞれをインターネットを通して組み合わせることで、ユーザーが簡単な操作で自分の望む情報機器を作ることができるようになるのではないかと考えている。さらに、小さなデバイスをネットワークにつなぐことにより、遠隔地に存在するデバイスにアクセスすることも可能となる。これによる新しい遠隔コミュニケーションが実現される可能性がある。 本システムは、センサー、ボタン、モーター、LED、スピーカーといった入出力電子部品単体が個別に直接インターネットへアクセスできる環境、これらの部品を使って様々な Webサービスとマッシュアップして機能を定義するためのシステムを開発する。具体的には、機能ごとに細分化された小型デバイスはインターネットに直接接続され、継続的にデータがサーバへ集められる。このようにハードウェアを細分化することにより、機器の機能であるソフトウェアをハードウェアから分離し、サーバ上で機能の定義や様々なサービスとのマッシュアップを行い機能を自由に構築できる全く新しい実世界アプリケーション構築環境を作ることができると考えられる。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 衣川 憲治
採択金額: 6,500,000
2009年度未踏IT

オープンソース技術を利用したモビリティマネジメント基盤の開発

郊外都市や農村部における公共交通機関は、近年環境面や経済面において重要な問題に直面しています。 過度のマイカー依存が進んだ社会は非経済的かつ環境面への負荷も高く、効率的ではありません。 そのような状況の元、交通機関の運用状況や利用者の意識を適切にマネジメントすることで、自動車の利用を極力減らしつつ利用者の移動性(モビリティ)を確保する、「モビリティ・マネジメント」の重要性が高まっています。 本提案では、オープンソースソフトウェアを利用し、モビリティ・マネジメントをサポートする為のシステム基盤を作ることを提案しています。 モビリティ・マネジメントには、A)コミュニケーション施策 を中心としつつ、B)交通整備・運用改善施策、C)モビリティ・マネジメント主体の組織化 という2つの施策を同時に行うことで、移動手段に関する意識や行動を変容させることが求められますが、オープンソースソフトウェアを利用することで、B の交通整備・運用改善施策を適切に計画するための基盤を作り、A) のコミュニケーションへの影響を与え改善することが可能となります。 最終目的の達成まではいくつかのフェーズ分けがされておりますが、本提案プロジェクトの範囲でもある第一フェーズでは、利用者の提示した移動需要に応じて、最適化されたルート提示を行うライブラリを構築し、特定の利用シーンを想定したプロトタイプアプリケーションとシュミレーション環境を整えるまでをアウトプットとしています。

PM: 加藤 和彦クリエータ: 関 治之・Daniel Kastl・Anton Patrushev
採択金額: 7,000,000
2009年度未踏IT

時系列センサデータベースシステムTIVAの開発

本プロジェクトでは、複数のセンサからのセンサデータを長期間蓄積し、さまざまなセンサデータの組み合わせや過去のセンサデータの参照を可能とすることで、多様なアプリケーションから利用可能となるセンサデータベースシステムTIVAの開発を行う。 TIVAは、時間の経過とともに増加し続けるセンサデータを蓄積するため、システムがいっぱいになった場合にもノードの追加によって容易に拡張できる機構を持つ。また、アプリケーションからセンサデータを利用する際によく使われる時間範囲検索を高速に実現する。さらに、MySQLのストレージエンジンとして実装し、オープンソースで公開すること目標とする。 小規模・低コストで始めることができて後から拡張可能なシステムと、MySQLのインターフェースを提供することで、センサデータを扱う多くの研究者や開発者、また中小企業やスタートアップのベンチャーに利用して貰えると考えている。本ソフトウェアの実現によって、センサデータを用いたアプリケーションの開発を促進し、実空間の情報を使った新たなサービスやビジネスが創出されることを期待している。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 高木 潤一郎
採択金額: 5,500,000
2010年度未踏IT

手描きスケッチの輪郭線から簡単に立体的な彩色を行うソフトウェアの開発

塗り絵というと子供の遊びの代表例だが、まじめに取り組むと意外に大変なものである。 まず塗る対象領域と基本色を決定し、次にその領域の立体構造と光の当たり方を考えながら適切な色彩で陰影表現をしていくという手順が必要とされる。 本提案ではこの、輪郭線の形状から対象物の立体構造を推測する作業をアルゴリズムで自動化することにより、複雑な階調表現をもった彩色画像をユーザが簡単に作成できるようなアプリケーションを開発する。 基本的なアルゴリズムとしては、まずユーザが描いた輪郭線の形状から法線ベクトルを計算して領域内部に補完し、各点における接平面の傾きをベクトル場として求める。 必要ならば補完の際に拡散方向を指定したり、素材が布である事を考慮した制約を与える等の最適化を行ってユーザが意図した形状を実現できるようにする。 そして得られた立体情報にスフィアマップと呼ばれるテクスチャを適用する事で望んだスタイルの彩色済み画像を出力する。 提案手法の利用シーンとしては2パターンあり、一つはビギナー向けのお絵かき支援ソフトとして初心者でも簡単にそれらしい色が塗れるという、ハードルの低さを売りにしたものである。 もう一つのパターンは、アニメ製作者のような大量の画像を処理しないといけないプロを対象として少ない手間でこれまでにない手の込んだ彩色表現ができるという、クオリティの向上に主眼を置いたものである。 また二次元の線画に擬似的な立体感を与えることの応用として、近年普及を始めた3Dテレビ向けに既存のアニメコンテンツを立体視対応へとコンバートする使い道も考えられる。 このように本提案では、コンピュータがユーザの思考を肩代わりして支援する事で新しい表現の可能性に繋がるような実用的ソフトウェアの開発を目指している。

PM: 原田 康徳クリエータ: 中嶋 誠
採択金額: 1,792,000
2010年度未踏IT

JavaScriptのGCCフロントエンドの開発

JavaScriptはWebブラウザ上に実装されているスクリプティング言語で、ほとんどすべてのWebブラウザに実装されている。JavaScriptの実行性能の向上により、デスクトップアプリケーションと遜色ない、大規模Webアプリケーションを実現することが可能となったため、JavaScriptはWebアプリケーションを構築する際には必要不可欠な存在となって来ている。 クライアントサイドのWebアプリケーションはそれぞれ基盤となるライブラリ、フレームワークの上に構築され、その上にそれぞれのWebアプリケーションのためのコードが記述される。ここで、各アプリケーションはブラウザ上で実行される際に、ライブラリ、フレームワークはアプリケーションごとに複製されて実行されるため、メモリ効率があまりよくないと言える。 本提案では、JavaScriptのGCCフロントエンド gccjsの開発を行う。 gccjsを用いてプログラムの実行前にJavaScriptコードを機械語へコンパイルすることで、アプリケーション間でコードを共有し、プログラムサイズを小さくでき、レスポンス性能が高く、ロード時間の短いWebアプリケーションの構築につながるのではないかと考えている。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 井出 真広
採択金額: 1,792,000
2010年度未踏IT

セレンディピティを生み出す情報プラットフォームの開発

本提案は、Twitterの公開情報を利用して、ユーザの興味を反映したユーザプロファイルを生成するInterest Profiling、生成されたユーザプロファイルに基づいてTwitterのホームタイムラインと検索タイムラインをフィルタリングするInterest Filtering、フォロー関係を飛び越えてユーザの知的好奇心を満たすTweetで構成されたタイムライン(情報のパイプライン)を自動生成するInterest Recommendingで構成される。情報の受容に知的好奇心が満たされた時に感じる、セレンディピティの醸成に最適化された新たな情報プラットフォーム”Interest Pipeline”の開発を目的とするものである。 Twitterなどのミニブログはユーザが情報を生成、共有して拡散するための主要な情報プラットフォームとなっており、ユーザは、自らの知的好奇心を満たす目的で利用している。しかしながら、Twitterなどのミニブログは、特定の人間をフレンドとして登録する現行の共有手法は、興味深い人間が常に一面的な興味に基づく情報を発信するわけではない点、また、興味に基づく登録関係に補正しようと思っても、感情的な人的つながりに依存するために簡単につながりを更新することが出来ない点で、持続的なユーザの知的好奇心の最大化という達成目標に対して最適な仕組みとはいえない。 本提案は、オンライン上に存在する大量の情報を利用可能な形に位置づけ利益を享受し管理する推薦システムを利用している。推薦システムは、興味の意識が検索クエリの形になるほどには顕在化していないが興味を持つかもしれない場合や、既存の興味あるものと関連性があるために興味を持つに違いない場合の情報の発見に対して有用である。 しかし、既存の推薦システムは、ユーザの興味に対する精度が上がるほど、提示情報に新鮮味や意外性などの面白み(Interest)がなくなるという欠点がある。そこで、本提案では、ミニブログが抱える上記問題点を解決するために、ユーザがセレンディピティを感じる(このシステムでなければ出会えなかった、意外に良い等)推薦システムを備えた情報プラットフォームを開発する。

PM: 増井 俊之クリエータ: 吉牟田 陽平
採択金額: 1,792,000
2010年度未踏IT

複数言語対応のソースコード処理ツールのフレームワークと利用例

近年、ソースコードを対象とした解析や変形の処理ツールの発展がみられる。例えば、メトリクス測定ツールやアスペクト指向プログラミング(Aspect Oriented Programming、以降AOP)処理系が挙げられる。 処理ツールは、一つのプログラミング言語(以降、言語)に特化して開発されることが多く、複数言語に対応した統一的な処理ツールが存在していない。複数言語を用いたソフトウェア開発プロジェクトが増加しているが、ユーザがこうしたプロジェクトにいて処理ツールを利用することは困難である。 一方、処理ツールの実装はコンパイラの実装と同程度に困難である。さらに、様々な言語に対応した様々な処理ツールが別々に開発されており、莫大な開発コストがかかる上、開発者間で処理ツールに関するノウハウの共有が進んでいない。   本プロジェクトで開発する、複数言語対応の処理ツールフレームワーク、題してUnified Code Processor Framework(以降、UCPF)は、言語対応の実装と処理ツールの実装を分離することで、対応言語と処理ツールにおける多対多の関係を対応言語とUCPF/処理ツールとUCPFの一対多の関係に簡略化する。これにより、処理ツールの開発コストを大幅に削減して、複数の言語に統一的に対応した処理ツールの開発を支援する。さらに、UCPFの利用例として世界初の複数言語対応AOP処理系を実装することで、UCPFの有用性を証明する。 本プロジェクトは、UCPFが対応する全ての言語に対応した統一的な処理ツールを低コストで開発できることを目的とする。これによって、開発者が利用可能な言語の選択肢を広げ、言語間の垣根を崩し、処理ツールにおけるノウハウ共有を促す。処理ツールと言語の発展から、ソフトウェア産業界全体、それに関わる全てのインフラやシステムの品質向上を図ることを目指す。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 坂本 一憲・太田 大地・岩澤 宏希・大橋 昭
採択金額: 1,792,000
2010年度未踏IT

指スポ!:タッチパネル操作を拡張するスポイト操作の開発

近年、手や指を用いるタッチパネル操作(以後はタッチパネル操作と記述する) に新たな操作を追加する開発、研究が行われている。これらにより、従来のタッチパネル操作において新しい操作が実現され、使用者の快適なタッチパネルの利用を大きく促進している。本提案と関連する代表的な操作に、iPhoneやiPadにも採用されているマルチタッチ操作が挙げられる。また、この他にタッチパネルへの指の近接を用いた操作、指を傾ける動作を用いた操作が挙げられる。 これらに対し、従来のタッチパネル操作に“スポイト操作”を追加し、新しいタッチパネル操作の開発及び、その新しいタッチパネル操作を効果的に利用したアプリケーションの開発を行う。 スポイト操作は、押し出し操作(以下push out)及び吸い上げ操作(以下pump up)の総称である。タッチパネル面に触れた指に、同じ手の親指を当てた状態で、親指を指先方向に摩擦する動作をpush out と呼ぶ。また、タッチパネル面に触れた指に、同じ手の親指を当てた状態で、親指を指の根本方向に摩擦する動作をpump up と呼ぶ。 スポイト操作の特筆すべき特徴は、スポイト操作の動作が指を対象とする動作であるため、タッチパネル平面上の操作から独立している点である。これにより、タッチパネル平面のみを動作の対象としてきた従来のタッチパネル操作と、容易に共存することができる。また、スポイト操作には、この他に以下のような特徴がある。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 堀 竜慈
採択金額: 1,792,000
2010年度未踏IT

人に優しい骨動作可視化ソフトウェアの開発

身体を怪我して診察を受けるとき、レントゲンやCTスキャンを行うことがある。例えば「スキップをすると、膝が痛い」といった症状の診察をするため、計測中にスキップ動作を行うことは身体を拘束されるため極めて難しく、また放射線を人体へ走査することにより内部画像を撮影するため、僅かではあるが被ばくしてしまう。また、専門家が数値やグラフを用いて膝の状態を解析し、患者のような専門家ではない人間に理解しやすく説明することは難しい。この問題に対し、私たちは人体を拘束せず、さらに放射線を一切使用しない安全かつ誰もが理解しやすいソフトウェアを開発し、地元の病院へ実際に導入し、フィードバックを反映させた成果物を世の中へ送り出す。 本プロジェクトでは、精度の高いシステムを実現するために測定部位を膝関節周辺の下肢骨(大腿骨・脛骨・腓骨)に限定する。また、Andriacch氏によるPoint Cluster Methodという計測方法を用いて皮膚の動きから骨の動きを推定し、その結果を0.1秒ごとに骨のコンピュータグラフィックスとしてリアルタイムに表示する。 このソフトウェアが実現すると、専門家は、より自然な人間の動作を容易に解析することが可能となり、軽度の怪我の診察においてはレントゲンやCTスキャンなど身体に負担がかかる機器を用いずに済むため、発ガン率を抑えることができる。また、インフォームド・コンセントが普及している現代の臨床において、専門家以外の人間が専門知識を理解することへの一助となる。 本プロジェクトでは、「拘束されない・放射線の心配がない・誰もが理解しやすい、人に優しいソフトウェア」を実現する。

PM: 原田 康徳クリエータ: 大島 孝子・本間 卓司
採択金額: 1,792,000
2010年度未踏IT

学習型デスクトップ整理システム

日頃の操作で乱雑になりがちなデスクトップ画面を、機械学習を用いてコンピュータが賢くインタラクティブに整理する画期的なデスクトップ整理システムを提案する。このシステムは、ユーザとのインタラクションを通してユーザの操作の特徴を学習し、個々人の好みにあった最適なデスクトップの整理を実現するものである。 提案システムは泡の形をした境界の中にファイルを配し、それらを分類する。分類の判断には、デスクトップ上での2次元配置、ファイルの内容、更新日時などを利用する。分類の仕方が気に入らない場合は、ユーザがファイルを直接ドラッグすることでシステムの分類方法を修正することができる。また泡の境界で区切られたファイルの集合ごとにキーワードを抽出し、それらを提示することでどんな集合なのかすぐ見当がつくようにする。 多くのユーザは各々自分の規則を持って好きなようにファイルを配置する。システムがその2次元的な配置規則を汲み取れば、直感的かつユーザの好みにそったUIになると考えられる。このような操作を通じてユーザの意図を学習してデスクトップを整理してくれるシステムは過去に例がなく、本提案はコンピュータによるデスクトップの管理に新たな可能性を切り拓くものである。

PM: 増井 俊之クリエータ: 大河原 昭
採択金額: 1,792,000
2010年度未踏IT

新しいセンサー計測インタフェースライブラリの開発

近年、コンピュータの処理速度の向上と低価格化が進み、拡張現実技術が再び脚光を浴びています。拡張現実技術を活用したゲームやサービス(情報サービス、ゲームやエンターテインメント、広告、災害時のナビゲーション、美術館・観光案内)が一般に提供され始めています。それらの多くは位置情報と傾きなどの空間情報を基本としてキャラクターや店舗情報などの画像、文字情報などの情報を重ねあわせた映像を、モニターを介して見るプログラムが多く見受けられます。 見えない物理現象をとらえることで、操作している人間の負担もしくは危険性を軽減するライブラリを私たちは開発します。視覚的な効果をカメラなどの現実映像に加えることで直感的な理解を助ける汎用計測システムを開発します。いままでに経験したことがないわかりやすい計測インタフェースが開発されていくことになります。この技術を発展させれば、工業や医療のみならずさまざまな分野に広げていけることになると思います。 どんなセンサーからの物理的計測値も最終的には電圧値(アナログ値)になってAD変換し、これを解析し、描画することは共通です。ARが他分野にわたる多くの研究者や一般ユーザの協力のもと、さらに発展していくためには計測値を解析し、描画するCGルーチンの開発が今後、重要となってくると思います。加減乗算などの算術ライブラリや等高線の描画などの描画ルーチンに加え、高度な解析ルーチンを提供したいと考えています。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 山下 聖悟・矢野 絢子・武田 季代
採択金額: 1,744,000
2010年度未踏IT

カメラ画像による楽譜認識を用いた演奏メディアの提案

本プロジェクトでは、カメラによる画像認識を用いて、紙楽譜をなぞったり、傾けたりすることで楽譜を直接演奏することができる演奏メディアシステム「onNote」の開発を行う。演奏メディアとは、例えば、レコードやCDのように記録された音楽を用いて演奏できるメディアのことである。楽譜は、記号という形で音楽が記録され、音楽の構造や存在を視覚的に把握することができる。「onNote」は、その楽譜を利用し、さらに紙の性質を用いて直感的に演奏することができるシステムである。 具体的に、本プロジェクトでは、自然特徴点検索法をベースとした、マーカレス楽譜認識方法を提案し、それを用いて楽譜の種類や位置姿勢を認識し、楽譜と音とを対応付けるシステムを開発する。また、システムを用いた演奏方法を提案し、それにあわせてシステムの拡張を行う。 本プロジェクトで開発する「onNote」は、紙楽譜と人との新しいインタラクションの枠組みを提案する。身近な紙楽譜をインターフェイスに用いたことで、様々な人が新たな形で音楽を創作することのできるプラットフォームとして価値があるものになると考えられる。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 山本 祐介
採択金額: 1,792,000
2010年度未踏IT

個人間の財の貸し借りを支援するソーシャルレンディングプラットフォームの開発

ユーザの車や本や家電などのものや時間や人手などを、余っている人から、必要な人へ貸し出すことができるサービス。ネットオークションにおける一般人が一般人に自由にものを販売するように、貸し借りする。ネットオークションでの物品はほとんど輸送できる物だが、それだけでなく、車や人手など近さ・地域性が必要なものをも対象にしている。 例えば、次のようなケースを想定している。 「10/7に車を貸せます。場所は京都市左京区。3,000円です。保険は~。」という情報を投稿する。京都市に登録しているユーザで、「10/7 車」などとアラートをつけていたりしている場合に、情報を取得し、貸し手と交渉する。ここで信頼性を担保するためのプロトコルを用意する。これにより貸し手は自分のものを効率よく使用し、お金を稼ぐことができ、借り手はものを買うことに比べて安価にものを利用できる。 ソーシャルレンディングという、個人間で金銭の貸し借りをおこなうサービスは存在しているが、これの、こうした金銭に限らずいろいろなものを流通させるものを目指す。ここでは地域性や信頼性の担保など新たな問題が発生するためこれの解決を目指す。 計算機のアナロジーを用いると、人の資源(車や時間などの財)を計算機に見立てて、稼働率を向上させることを狙う考え方である。

PM: 増井 俊之クリエータ: 曾川 景介・片山 大・里田 旭彦
採択金額: 1,770,000
2010年度未踏IT

身近な花材を利用した生け花支援システムの開発

日常生活の中に花を取り入れることは、心や感情を豊かにする。そのため、花を多様な材料と組み合わせて構成し、鑑賞する芸術として華道やフラワーアレンジメントなどが幅広く好まれており、日本のみならず海外でも美しいと認識されている。しかし、一般的には花は親しみにくい存在であり、生け花に取り組むまでに敷居が高いという現状がある。 そこで、本提案では、生け花をより身近にすることを目的とした、生け花支援システムを開発する。生け花をより身近にするためには、花材集めのサポートや生け花のデザインイメージの提供、そして生け花の手順の提示などの支援がある。今回は画面上に花材イメージを用意し、それらを配置することで、様々な生け花体験ができる新しいアプリケーションCADoを開発する。 これにより、従来よりも手軽に生け花を楽しむことが可能になる。また、本システムはアプリケーションが用意した花材だけでなく、実際の花を取り込んだり、華道の法則に準じたデザインイメージを提示するなど、より現実の華道に近いエンターテイメントシステムとして応用できる。更に、日本の華道の美しさをわかりやすく伝えるツールとしても活用可能である。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 横窪 安奈
採択金額: 1,792,000
2010年度未踏IT

匿名掲示板の開発

情報化社会において、誰もが実名で発言できるほど強く生きているわけではありません。様々な弱い立場の人ほど、匿名性を必要としています。日々の生活の不平不満、心の悩み、大声で言えない身体の悩みなどは匿名性が担保されて初めて安心して語ることができるのです。 しかし、インターネット上に存在する匿名性は、本当の意味の匿名ではなく、システムの運営側がサービスで名前を伏せておいてくれているだけです。 例えば、システムの内部の誰かが通信ログを外部に持ち出す、ふとしたミスで通信ログが外部の人間の手に渡る、といった事態になれば世の中は大混乱に陥ってしまいます。時に人の命にも関わる社会情報基盤は、それを運営する人間の裁量のみに委ねられるべきではなく、その中でも匿名性は、社会を支えるためにも、可能な限り属人性の無い所に成立されるべきだと考えます。また、情報技術が発達するに伴って情報の保存・共有・調査にかかるコス トが飛躍的に下がっており、生半可な努力では簡単に匿名性は破られてしまいます。そのような事態を避けるため、数学的、アルゴリズム的に証明された匿名性をネットワークの上に実現すべきと考えました。 匿名システムが犯罪に結びつくというのはまったく間違いであり、例えば駅のトイレに犯罪予告や情報のリークが書かれていても誰も信じません。匿名で犯罪予告を行うだけならばテレビ局に郵送するだけで充分で、それもいたずらであると判断されれば無視されるだけに終わります。匿名の発言という物はその媒体に関わらず匿名相応の対応を受けるものであって、電子掲示板という形のみが特異的に危険である理由はありません。 今回、匿名性を得るための手法としてMix-netという技術を応用します。これは匿名の電子投票などの為に発明された技術で、同一サイズにパディング(埋め合わせ)した複数のパケットをサーバ内ですれ違わせる中継を複数経由させる事でパケットの発信元の特定を防ぎます。これ自身は専用のサーバを複数管理しなくてはならず、そのサーバ群への接続自体を監視された場合特定が可能な瞬間も出てきてしまいます。それらの問題を避けるため今回の提案ではP2P通信の一種であるDHTを応用し、すべてのピアが中継者と発信者を兼ねる事ですべての通信が中継と発信との見分けが付かない形での匿名性と資源管理の問題を解決します。 今回、高い匿名性を確保する為に投稿帯域を制限した掲示板機能のみを提供します。匿名な情報共有の違法な利用目的としてはファイル交換が有名な例として挙げられますが、提案する掲示板ではすべてのユーザの間で情報の流入・流出の量を一定に保つ事で送信者の匿名性を確保する仕組み上、無理にでも違法なファイルをアップロードした場合の送信者の匿名性は自主的に破られるため問題ないと考えています。 匿名性をアルゴリズムで担保した掲示板を実装し社会にその価値を問う事が今回の提案の目標です。

PM: 原田 康徳クリエータ: 熊崎 宏樹
採択金額: 1,600,000
2010年度未踏IT

大規模配列のGPU高速処理プログラミングを支援する開発環境

本システムは、大規模配列のGPU高速処理プログラムの開発を支援する、ビジュアルプログラミング環境を提供する。 この環境でユーザは、従来のGPUプログラミングのようにプログラムのコードを直接書くわけではなく、メモリ上の配列を可視化させた「図」と、その「図」に適用される「離散化式」を修正することによってプログラミングを行う。 本環境において各々の「図」は、計算において処理を行う配列を意味しており、この「図」の上の各「ピクセル」は配列の個別の要素を意味している。この「ピクセル」に、適用される計算スキームの種類のメタファーである「色」を塗った上、各「色」に適用される計算スキームを「離散化式」で書くことによってプログラミングを行う。 システムの特長点として、GPUプログラミングに慣れていない者が苦労する、並列処理部分のプログラムをシステム側が自動的に最適なパフォーマンスが得られるようにチューニングして出力する。これによって、ユーザはGPUの並列処理を意識せず、メモリアクセスや離散化式、つまり計算アルゴリズムにのみ集中することができ、従来のGPUプログラミングより高い生産性で開発をすることができる。 また、実際ユーザが操作する部分はプログラムコードの形でなく、適用される計算スキームとメモリの配置状況を示している。そのため計算機の振る舞いをソースコードで表現しなければならない一般的な配列の計算プログラムでは、符号や添字を間違えるバグを多く生む可能性がある。提案するシステムではそのような間違えを未然に防ぐことができる。

PM: 増井 俊之クリエータ: 盧 承鐸
採択金額: 1,792,000
2010年度未踏IT

柔軟な電子書籍をつくるクラウド組版システムの開発

電子書籍は比較的最近になって盛り上がってきた発展途上の分野である。そのため現状の電子書籍用のソフトウェアはどれも大きな欠点を抱えている。特に他種類のデバイスへの対応や、文字や画像を適切に配置していく「組版」においては現状のソフトウェアには大きな問題がある。 また、最近出始めた電子書籍作成のソフトウェアは高価でプロフェッショナル向けのものばかりで、個人が使えるフリーで簡単なものは整備されていない。 本提案は組版をサーバ上でデバイス・ユーザに合わせて動的に行うソフトウェアを開発することで電子書籍の制作を簡単にし、組版の品質を向上させ、特定のデバイスへの依存を開放するものである。 本提案のシステムではpTeXのラッパーを開発し、それをWeb上に設置することが大きなポイントとなっている。pTeXは優れた組版ソフトウェアである。主に論文やレポートの組版に用いられるが、小説などの組版にも対応できる。また、電子書籍の組版にも使うことができる。しかしpTeXで標準的に使用されているパッケージLaTeXは論文・レポートに最適化されているため、日本語の小説を組むには調節が必要になる。またpTeXは電子書籍のようにデバイスごとに画面(紙)の大きさが異なる場合の組版は想定されていない。そのため画面の大きさごとにパラメータの数値などを調整した.texファイルを作成するトランスレータが必要になる。こうした処理を一括して行うプログラムを開発する。 さらにそのラッパーをWebサーバ上に設置し、作者・読者両方のUIをWebアプリケーションの形で提供する。これにより作者はpTeXやその周辺環境の複雑な環境構築から開放される。読者側はデバイスや読者の好み(字の大きさなど)を組版システムに伝え、「動的」に組版が行えるようになる。これにより読者ひとりひとり、デバイスの1種類1種類に最適化した組版が行え、読者は最も快適に本を読むことができるようになる。

PM: 原田 康徳クリエータ: 矢口 裕也
採択金額: 1,792,000
2010年度未踏IT

クラウド上のモデル駆動開発ツール、CloudMDDの開発

ソフトウェア開発手法のひとつとして、モデルからコードを自動生成するモデル駆動開発(以下MDD)というものがある。しかしMDDは、ツールが高価、開発環境の導入が面倒などの理由から、一般的に普及していない。 そこで本プロジェクトでは、クラウドコンピューティングを用いて、モデル駆動開発環境を開発することによって、大勢の人が簡単にMDDを利用できるようにし、アプリケーションの開発をより円滑にできるようにする。さらにクラウドの利点を生かし、インターネット上での動作確認や、協調開発の機能を実装する。またあらゆるドメインに対応できるような、モデル駆動開発のコアの部分を開発することを目的とするため、汎用的なモデルを用いる。これによりユーザは自分たちの用意した外部関数を登録することで、自分たちの開発したいドメインのソフトウェアを開発することができる。 本プロジェクトではクラウドコンピューティング上の開発環境を実現するため、ブラウザで動作するモデルエディタと、サーバ上で動作するモデルコンパイラ、モデル管理サーバなどのサブシステムを開発する。 最終的にはSaaS(Software as a Service)型のソフトウェア開発環境としてサービスを提供し、在宅開発などのスタイルをとる会社や教育目的として大学をターゲットにビジネス展開を目指す。

PM: 原田 康徳クリエータ: 部谷 修平・緒方 貴紀・三輪 直樹
採択金額: 1,792,000
2010年度未踏IT

Webキュレーションシステムの開発:表紙が彩る新しい情報空間

本提案では、あるテーマに関する情報を、受け手にとって分かりやすく、魅力的に見せるための、Webキュレーションシステムを開発する。 Web上では、多くの人間によって価値ある情報が日々発信・蓄積されている。しかしながら、その内容や魅力が十分受け手に伝わらないまま、埋もれている。この問題を、美術館や博物館では「キュレーション」によって解決している。キュレーションとは、作品や資料の作り手と受け手の間に、第三者(キュレータ)が入り、あるテーマが持つ広範で奥深い世界を、分かりやすく、魅力的な形に編集して見せることである。 このキュレーションこそ、今のWebに必要ではないだろうか。だが、BlogやSBM(ソーシャルブックマーク)など既存のシステムでユーザができることは情報の発信や蓄積にとどまっており、編集はできない。また、芸術作品と違って、Webページの多くはテキストで構成されているため、その内容を一目で直観的に伝えることはできない。 そこで本提案では、Webページの表紙を自動生成するエンジンとWebキュレーションシステムの2つを開発する。これにより、多くの人が発信・蓄積した情報で溢れる空間を、第三者が分かりやすく魅力的な形に編集して、見せることができる。そうしてつくられる空間は、表紙に彩られた新しい情報空間である。表紙があることで視認性が向上し、受け手は情報の内容を直観的に把握できる。同時に、空間全体を俯瞰でき、情報を多面的に捉えられる。その結果、意外な情報や自分に合った情報を得やすくなる。それは、まるでギャラリーを見るかのように楽しく情報にふれあえる体験である。

PM: 増井 俊之クリエータ: 重田 桂誓
採択金額: 1,776,000
2010年度未踏IT

音響入力に対する自動伴奏システムの開発

本プロジェクトは、音響入力に対する自動伴奏システムの実現を目標とする。このシステムは巨大な合奏曲の演奏者の練習を手軽に行えるようにするものである。 協奏曲・交響曲などの巨大な合奏曲において、演奏者はそのパート毎に個人練習を行うのが常である。しかし、ソロパートのみの練習は演奏本番に即しておらず、有用性と臨場感を共に欠いている。従って、どんな楽器の演奏者であっても、合奏曲本番の演奏を聴きながらソロパートの練習を行いたいと考えるのは自然であろう。一方、伴奏付きの練習を毎回行うことは、全ての楽器パートの演奏者を集めて行わねばならず、到底実現し得るものではない。また、単純に一つの楽器パートを消去した伴奏パートを背景に再生しながら行う練習も考えられるが、練習中の発展途上にある演奏者が常にこの録音データを追従することはほぼ不可能であり、有益な練習からは程遠いだろう。 本プロジェクトでは、このような既存の練習に対しての演奏者の「我儘」に答えを与えたい。本プロジェクトで提案する答えとは、あらゆる楽器の演奏者に対して現在の演奏位置を推定・予測し、適切な伴奏データを再生するシステムである。 具体的に行うことは、

PM: 後藤 真孝クリエータ: 鈴木 孝輔
採択金額: 1,792,000
2010年度未踏IT

言語横断型の潜在関係検索エンジンの開発

我々が日本でいう富士山に相当するドイツの山を知りたいと思ったとき、既存の検索エンジンでは直接その要求に答えることが出来ない。 そこで我々は,{(日本,富士山),(ドイツ,?)}のようなクエリに答えることのできる、高精度な(英語の)潜在関係検索エンジンを実現した。 この検索エンジンは、「Mt. Fuji is the highest mountain in Japan.」のような文から富士山と日本との関係を抽出し、それを利用してクエリに対する答えを検索する。しかし、我々がこれまでに考案、実現した潜在関係検索は単一言語にしか対応しておらず、関係を抽出する文章は全て同一の言語で書かれている必要があった。これにより検索できるエンティティが限定され、日本語の文書上ではよく出現するが、英語の文書上にはあまり出現しないエンティティ(固有名詞)に対する精度が低い問題があった。また、英語の習熟度の低いユーザ(「Mt. Fuji」を書けないユーザ)には、検索サービスを提供することができなかった。 そこで本プロジェクトでは、言語横断型の潜在関係検索という、新しい検索パラダイムを提案する。言語横断型の潜在関係検索は、例えば{(日本、富士山),(Germany, ?)}というクエリに対し、「Zugspitze」という答えを出力する。それと同時に、検索に利用した「日本で最も高い山は富士山である。」や「The highest mountain in Germany is Zugspitze.」のような文も出力する。 言語横断型の潜在関係検索エンジンには以下の利点がある。

PM: 平本 健二クリエータ: NGUYEN TUAN DUC・BOLLEGALA DANUSHKA TARUPATHI
採択金額: 2,880,000
2010年度未踏IT

演奏者・観客・環境の情報を取り込み演奏可能なインタラクティブ楽器の開発

本プロジェクトでは、「人を集める」「人が集まる」「人と共感・共有する」をコンセプトに、ゲーム業界で培われた様々な技術(ゲームニクス)を応用し進化させ、最新の映像技術・音楽技術・センサー技術を取り入れ、さらにプロダクトデザインを行い、これまでにない「人を繋ぐインタラクティブ楽器“MIRAGE00”」を開発する。 このインタラクティブ楽器は、周囲の情報を様々なセンサーで取得し、プロシージャル生成された映像をプロジェクターで出力、さらにタッチパネルを演奏者が操作することでスピーカーから音楽を出力することによる、「演奏者・観客・環境の情報を取り込み演奏可能なインタラクティブ楽器」である。 主な演奏方法は、楽器の上部にあるタッチパネルで行う。 このタッチパネル部分の演奏システムは自由にカスタマイズが可能で、様々なループサウンドが再生されるタッチパッド方式の演奏から、ピアノ鍵盤やドラムなどのグラフィックを表示して仮想楽器として演奏することも可能とする。また、これらは、リアルタイムに切り替えが可能とする。 また、“MIRAGE00”自体にも傾きセンサーを内蔵し、筐体を傾けることで奏でられる音や映像を変化させることも可能とする。 本プロジェクトは、単なる新しいインタラクティブ楽器を製作するという結果だけでなく、このプラットフォームを他のクリエイターにも開放することで、新しいインタラクティブ型コンテンツの創出を可能とする。 特に、「デジタルサイネージ」および「ゲーム」において、本プロジェクトのインタラクティブ楽器のリファレンスモデルを提供することが可能となれば、高度なハードウェアおよびソフトウェア技術に精通しなくても、インタラクティブ型コンテンツのプロトタイプおよび製品製作を容易にすると考えられる。

PM: 石黒 浩クリエータ: 大野 功二・山本 哲也・見明 暢・外山 敏和
採択金額: 2,880,000
2010年度未踏IT

演奏解釈の共有・蓄積プラットフォームの開発

本提案は、演奏者が楽譜に記述した「演奏解釈」を共有・蓄積するためのプラットフォームを開発するというものである。 音楽の演奏に欠かせない「楽譜」に書かれているのは、作曲者が明示的に指示可能な音高や音長、あるいは曲想記号などである。従来の楽譜では、演奏に必要な最低限の記述しか行われておらず、芸術的な演奏に向けては楽譜から暗黙的な演奏解釈を汲み取る力が要求される。また、その能力を得るためには長年の経験や膨大な知識が必要だった。同様に、演奏解釈を他者から得るためには適切な指導者や環境が必要であった。さらに、オーケストラのように複数の演奏家が同じ演奏解釈を必要とする場面においては、演奏解釈を各楽譜に一つ一つ書き写す必要があり、大変な手間となっていた。 そこで、演奏解釈の共有・蓄積プラットフォームを実現することで、これらの課題を解決することを目標とする。また、そのために「演奏解釈のフォーマット化」と「共有・蓄積のためのシステム開発」を行う。 本提案の実現により、演奏解釈にコンテンツとしての価値を与え、さらには新しい音楽ビジネスの創出が期待される。

PM: 夏野 剛クリエータ: 小池 宏幸
採択金額: 1,440,000
2010年度未踏IT

デジタル教科書用後付LMSの開発

教育業界において、対面授業の補完として、科目別に授業内容のディスカッションや教材・テストの配信・管理が行える授業支援システムLMS(Learning Management System)というものがある。 従来のLMSは、教材をデジタル化し、さらにLMSの作法に合わせて教材を再編集し取り込む必要があり、手間と時間がかかるため導入障壁が高い。 近年、総務省や文部科学省が小中学校に対しデジタル教科書の導入を検討し始め、生徒1人に1台のタブレットPCを配布しようとする動きなど、教育業界のICT環境に変化が起きようとしている。デジタル教科書の登場により、紙ベースからデジタルになるため、LMSの導入障壁を下げることが可能となる。 本提案では、デジタル教科書自体に後付で、テストや動画などのマルチメディア、掲示板などの機能を埋め込む新しいタイプのLMSの開発を行う。 具体的には、ePub形式などの電子書籍ファイルフォーマットで作られた教材(デジタル教科書)をWebベースのLMSに読み込み、先生の教え方に合わせて文章をカスタマイズしたり、テストや掲示板などを設置したい箇所にタグ付けして追加できる機能を持たせる。 すべての先生が手軽に使えるLMSを提供することで、先生がより教育に集中できる環境を作ることを目標とする。

PM: 夏野 剛クリエータ: 後藤 正樹
採択金額: 2,880,000
2010年度未踏IT

検索結果を精度よく絞り込むための類似検索システムの開発

近年、大量の文書データベースからの文書検索のため研究が数多く行われている。最も古典的な方法であるキーワード型検索方法は、与えられたキーワードに対して、そのキーワードを含む文書の一覧を表示する検索方法である。 ユーザーは欲しい文書集合を得るために検索式を書く必要があるが、検索式によっては検索結果の文書集合が膨大になり、不要な文書が多数含まれたり、絞り込みすぎて欲しい文書を見つけられないことがある。検索精度の良い検索式を書くためには、検索対象に対する専門的な知識や論理式を書く技術が必要となり、一般のユーザにとっては容易いことではない。結果として、ユーザが大きな文書集合から個々に内容を確認していくこととなり、非常に手間がかかる。 そこで、本プロジェクトでは複数の正解/非正解文書を基にした検索式の生成による絞り込み支援法を提案する。ユーザに検索意図に近い文書群を指定させることにより、ユーザの検索意図を統計的手法により類推する。この類推結果を基に再検索をおこなうことで、検索意図に対して妥当な検索結果をユーザに提示できる。また精度よく絞り込みをおこなうことが可能となるため、従来のキーワード型検索で検索上位にあがらなった、ユーザの求める文書を発見することが可能になる。さらに絞り込みのための適切な検索キーワードを考え出す必要がなくなるために絞り込みにかかる手間を減少させることが可能になる。

PM: 平本 健二クリエータ: 有澤 悠紀・大西 雄一朗
採択金額: 2,880,000
2010年度未踏IT

人と人とが向き合えるインタフェースシステムの開発とその応用

人同士の自然なコミュニケーションは基本的に対面し互いの目を見て行われる。 しかし現在のヒューマン・マシン・インタフェースは、コミュニケーション用途でもユーザ同士がそれぞれ画面に向かい操作を行うという姿勢を前提とするものが多い。 例えば従来のゲーム用装置や、近年の深度センサを用いてジェスチャ入力をさせる装置でも人同士が向き合うことはほとんどない。この不自然さは、ゲーム機等コンピュータの子供の発達に対する悪影響の懸念要因となる。また、触れ合いで生じていたはずの親密な人間関係の形成を阻害するのではないかと考える。 上記の問題に対して、本開発では、電界を利用した人同士の接触・近接状況を表現する入力系の基盤ソフトウェアとそれを用いたアプリケーションを開発しその有用性を示すことで、人と人とが向き合えるインタフェースを普及させることを目指す。拘束が少なく携帯してどこでも使え、人の姿勢に依存した不感帯のない新たな接触・近接センサを利用した入力デバイスを実現する。そのAPI、開発支援ツールと、これを応用したエンターテイメント用アプリケーションの一例を開発し、有用性を示す。 以上により、従来の入力デバイスでは難しかった人同士が対面する多様な身体接触を通した入力操作を行うことが可能になり、ゲームや楽器などエンターテイメント領域で新たな市場を開拓することができる。また、エンターテイメント用途に限らず複数人の連携作業を助ける入力装置の研究開発に有用な基盤技術となることも期待できる。

PM: 石黒 浩クリエータ: 林 まりか・溝口 弘悟・三上 崇志
採択金額: 2,700,000
2010年度未踏IT

空間的認知を利用した情報ストアシステムの開発

現在のパーソナルコンピュータにおけるデータはファイルという単位に分割 され、ツリー構造として保存されるのが一般的である。ユーザが必要なファイ ルを探すとき、このツリー構造をtopルートから展開するか、名前による検索を 行う必要があるが、目的のファイルに当たるまでに時間を要する場合も多い。 その理由として、ツリーはあくまで論理的な構造であるため記憶しがたく、 また適切な名前をつけることは難しいからである。 一方これが書籍であれば「この内容は本の最後のほうのページの右上あたりに書いてあった」という形で記憶することができる。この方法で記憶している場合、人間の空間的認知を利用しているため記憶の再現性が高いと考えられる。 本システムではこの空間的認知を利用して、ユーザが必要な情報をよりすばやく、心理的負荷の低い方法で見つけることを実現する。 具体的にはディスプレイ上の絶対位置、あるいは携帯端末による方位・傾きセンサーによる入力を利用して、位置に対して情報をマッピングすることで行われる。 このシステムは従来のパーソナルコンピュータにおけるデータの保存の概念を変える画期的なインターフェースとなりうるだろう。

PM: 石黒 浩クリエータ: 河部 恒
採択金額: 2,880,000
2010年度未踏IT

プロセスの仮想化による分散システム開発支援ソフトウェア

分散システムの開発は難しい。その主な原因として、複数台の計算機間の通信は任意のタイミングで発生しうることがあげられる。ある分散システムの開発において、特定のタイミングでシステムが正常に動作することを確認しても、ネットワークの速度が異なったり、計算機の台数が増減したり、計算機の性能が異なったりすることで通信のタイミングがずれると、途端にデッドロックが発生したり、リソースのリークが発生したり、システムが異常終了したりしてしまう。また、そのように分散システムが正常に動作しないタイミングにおいて、分散システムをデバッグしようと試みても、そのタイミングをうまく再現させることは困難であり、同じバグが発生するまでに何度もシステムを再実行したりする必要がある。 このような分散システムの開発の困難性を改善するため、本提案では、分散システムを仮想時間により実行することで、実行の再現性を確保するための方法を提案する。具体的には、分散システムを構成する各プロセスが発行するシステムコールを全て捕捉し、それを離散イベントシミュレータ内のイベントとしてモデル化し、仮想時間上で実行する。本提案が実現すれば、分散システムを様々なタイミングで実行することが可能となり、また、特定のタイミングでバグが発生するならば、そのタイミングを常に再現可能とすることで、デバッガなどによるバグの原因追求を容易にすることが可能である。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 玉井 森彦・酒井 憲吾
採択金額: 2,880,000
2010年度未踏IT

マーカーレスで屋内外を問わず利用できるカメラ位置推定システム

現実空間にバーチャル空間の情報を視覚的に重ねる技術、拡張現実感(AR)技術が発展し、一般の広告などに利用始めている。ARの重要な基盤技術はカメラ位置推定技術であり、現実空間とカメラ位置の関係から情報を重ね合わせる。しかし、一般的なカメラ位置推定技術はマーカーを用いるもの、あるいは、画像特徴点を利用してその画像をマーカーとして重ね合わせるものなどが主であり、広い空間へ対応することができないという問題点があった。また、GPSと方位磁石を利用することで広い空間へ対応した方法もあるが、精度が低く、重ね合わせるほどまで行かないという問題点がある。 そこで本プロジェクトでは、室内外を問わず、マーカーを用いずにシームレスに情報を重ね合わせる為には、よりロバストかつ広範囲に対応したカメラ位置推定システムの開発を目的とし、拡張現実感技術の基盤となるシステムの構築を目指す。 具体的には、現実空間から画像特徴量を抽出し、全てデータベースに格納し、そのデータベースを元にカメラ位置推定を行う方法である。コンピュータの記憶力と計算力を利用して丸覚えの方法を参照情報として、カメラの場所と姿勢情報を推定しようという方法である。マーカーレスで画像特徴点を利用してマーカーにする方法をさらに拡張して、全ての空間をマーカーにしてしまい、どこでも利用できるようにする方法とも言える。 本プロジェクトを基盤として考えられる応用例としては、スマートフォン向けARアプリケーションや、都市空間内での精度の高いARデモンストレーション、ショッピングモール・ショップなどでのナビゲーションや商品情報提示システムなどである。 本プロジェクトによる成果は、オープンソースソフトウェアとして公開すること、あるいは、データベースを公開すること、などを検討し、広く利用される基盤になることも考えたい。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 西村 邦裕・坂田 理美
採択金額: 2,592,000
2011年度未踏IT

オープンソースによるオンラインジャッジシステムの開発

私はオープンソースによるオンラインジャッジシステムを作ることを提案します。 オンラインジャッジシステムとは、アルゴリズムの問題に対し回答を求めるソースコードを書き、それをアップロードするとサーバー側でコンパイルされ、用意されたいくつかのテストケースを入力として実行されて、その結果が一致するかどうかで正誤判定をするというものです。競技プログラミングの練習をするうえでは、最良の環境です。しかし、日本にローカライズされたオンラインジャッジサイトは非常に少なく、競技プログラミングを学ぶ環境が不足していると感じています。そこで、オープンソースでのオンラインジャッジシステムを開発しようと考えました。 オープンソースにする意義としては、高いセキュリティ性を確保しやすいことや、だれでもローカルネットワークにジャッジシステムを構築できるようにして自分で大会を主催したり、企業などにジャッジシステムを活用した採用を行ってもらったりしたいというものがあります。また、ジャッジシステム自体にもいくつかの特徴があります。 1つ目は、ユーザーならだれでも作問できるということです。現在、自由に作問ができるジャッジシステムは非常に限られていて、作問をしたいのにできないというユーザー層がある程度存在すると考えています。そのために、だれでも作問に挑戦できるようにし、それに伴い、問題を評価できるシステムを搭載し良問を効率良く見つけられるようにします。 2つ目は、インストールが容易であるということです。オンラインジャッジシステムにはすでにシステムが配布されているものも少なからずありますが、カーネルを改造する必要があったり、非常に細かな設定をする必要があったりして、なかなか自分でジャッジシステムを構築し難い状況です。提案するシステムでは、実行環境用のサンドボックスを新たに作ることで、構築の容易さとセキュリティの堅牢さを両立します。 私は、このシステムを通して競技プログラミングの知名度を上げ、興味を持った初心者でも簡単に練習できる環境を提供することで競技プログラミング人口を増やしていきたいと考えています。また、大規模なコンテストを開催するときのみジャッジサーバーの台数を増やすことなどができるように、ジャッジサーバーの分散も視野に入れて開発します。

PM: 増井 俊之クリエータ: 矢倉 大夢
採択金額: 1,200,000
2011年度未踏IT

人について行くリアルタイムナビゲーションシステムの開発

道に迷った時、行き方を知っている人に気軽に道案内を依頼できるようなシステムを提案する。 GPSを利用した位置推定技術の発展に伴い、それらを利用したナビゲーション技術は多数提案されている。しかし、現状ではこれらの技術によってカバー出来ない数多くの状況が存在する。そこで私は、より普遍的なナビゲーション技術として、行き方を知っている人について行くことで目的地まで辿り着けるリアルタイムナビゲーションシステムを提案する。本手法は、案内してくれるユーザーとついて行くユーザーの現在地をリアルタイムに取得し、それらに基づいて、ついて行くべき方向を矢印でスマートフォンに表示する。 しかし、GPSでは地下鉄の駅やデパ地下のような屋内で精度の良い位置推定をすることが難しい。そこで、屋内無線LANの普及を背景に、屋内Wi-Fiアクセスポイントを利用した電測情報によって位置推定を行う手法を考えている。 本提案のナビゲーションシステムが実現できれば、案内してもらいたいユーザーは行き方の分かるユーザーの案内に従うだけなので、複雑な電車の乗り換えや言葉の通じない海外でも迷うことなく目的地へ向かうことができると期待される。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 長坂 瑛
採択金額: 1,792,000
2011年度未踏IT

プログラミング言語Egisonのコンパイラの開発

強力なパターンマッチ機能をもつプログラミング言語Egisonのコンパイラを提案する。 Egisonは提案者が設計、開発したプログラミング言語である。(http://hagi.is.s.u-tokyo.ac.jp/~egi/egison/index-j.html) Egisonを使うと、正規形を持たないデータ、例えば、集合や多重集合などといったコレクションや、また環や群といった代数構造などのパターンマッチを直感的に表現することができる。 正規形というのは、同じデータを表現する1つの決まった標準的な形のことをいう。 これらの正規形を持たないデータ型のデータのパターンマッチを行うには、一度これらのデータを正規形を持つデータ型として捉え直して、パターンマッチを行うことが必要である。 例えば、既存のプログラミング言語では集合のパターンマッチを行うさい、これをリストとして捉え直してパターンマッチを行う。 多くのプログラマは、この煩雑な作業を当たり前のことだと認識しているが、これは実はかなりのプログラミングの際の潜在的な精神的なストレスになっている。 Egisonでは、正規形を持たないデータ型に対してのパターンマッチの一般的な方法をモジュール化する方法を用意することによってこの問題を解決した。 Egisonのインタプリタは既に実装されていて、公開されている。EgisonはHackage(Haskellで書かれたソフトウェアのためのパッケージシステム)のパッケージとして配布されていて、Haskellの環境さえ整っていれば、誰でも無料で簡単にインストールすることができる。(http://hackage.haskell.org/package/egison)インタプリタのソースコードは、GitHubで公開されている。(https://github.com/egisatoshi/egison) 本提案の目標は、このEgisonのコンパイラを作成することによって、この強力な表現能力を持ったプログラミング言語の実用に耐えうる処理系を実現することである。

PM: 原田 康徳クリエータ: 江木 聡志
採択金額: 1,792,000
2011年度未踏IT

異地点映像ストリームの同一空間表示システムの開発

昨今の光ファイバやADSL (Asymmetric Digital Subscriber Line) といったインターネット通信網の普及により、インターネットが広帯域化し、ユーザがマルチメディアコンテンツを享受できるサービスが増大した。その代表として、YouTubeやニコニコ動画等の動画コンテンツを配信するサービス (以下、インターネット放送) が注目を集めている。 加えて、近年のスマートフォン、及びタブレット端末の登場により、ユーザは、「いつでも・どこでも・誰でも」の環境下で動画コンテンツを視聴できる形態が確立された。今後は、WiMAXやLTEの登場により無線ネットワークの広帯域化が予定され、それに伴って、これらの機器、PC等でTV放送のように大容量の動画コンテンツを快適に視聴できる時代、つまり、インターネット放送が主流となる時代が到来する。 現在では、視聴する側が配信を行う側になるなど、インターネット放送のパーソナル化が加速している。現在撮影している映像をリアルタイムで配信できるライブストリーミング配信サービスを提供するUstream等により、公衆に向けて生放送まで行えるようになった。スマートフォンを保持する配信ユーザであれば、「今だけ・ここだけ・あなただけ」のインターネット放送を実現できる。今後は個人が映像を発信する時代になると予想される。それに伴って、動画コンテンツの量、及びその内容の多様化が見込める。このことを利用し、例えば、スタジアム規模の同一空間上に位置する配信ユーザの動画コンテンツにおける映像ストリームを集約すれば、様々な視点から観られる映像を提供できる。しかし、Ustream等の既存サービスでは、多様化する配信ユーザの動画コンテンツを関連付け、一括して提供するといった仕組みは形成されていない。 本提案では、今後主流となるインターネット放送に着目し、同一空間上に位置する配信ユーザにおける映像プロファイル、及び映像ストリームを集約し、一つの番組として視聴ユーザに提供するシステム開発を行う。

PM: 原田 康徳クリエータ: 谷川 諒
採択金額: 1,792,000
2011年度未踏IT

NFCとソーシャルグラフを用いたクラウド型アドレス帳管理システムの開発

近年の爆発的なモバイル端末の普及によって、誰もが携帯電話を当たり前に所持するようになった。また、Eメールアドレスについても、個人用や会社用など複数のアドレスを持つ人々も多い。 このような状況で問題になるのが、個人間の電話番号やメールアドレスの手間である。最も古典的な方法として、手書きで連絡先を交換する方法があるが、交換する情報を紙に写す必要があり、さらにそれをコンピュータに入力する手間を伴っている。その解決方法として、赤外線通信を用いた情報交換手法が普及した。しかしこの手法では、交換した情報が古くなると、つまり、誰かの電話番号やメールアドレスが変更された場合にアップデートする方法が無い。そのため、多くの人々はこれらの情報が更新されたことをメールで伝えることになり、通知された人々は手作業で情報を更新することになる。これらの作業は送信する人にとっても受信する人にとっても、非常に面倒な作業である。アドレス帳を管理するサービスは多く存在するが、これらは単にvCard形式のデータを管理しているシステムであるため、変更に対して弱いという問題がある。 本提案では、NFC技術を用いたアプリケーションとインターネット上に構築された個人のアドレス帳を管理するクラウド環境を構築することにより、情報交換の手間の問題、情報が更新されない問題を一挙に解決するシステムを提案する。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 西嶋 悠貴・関 喜史
採択金額: 1,792,000
2011年度未踏IT

文章理解を支援するインタフェースの開発

本を読んで内容を理解することは、多大な労力を要する。例えば、難しい語が多く含まれる本を読むとき、事前知識がないと1度読んだだけでは内容を理解できない。読者は何度も読み返したり、分からない語に線を引いたり、重要な語をノートにうつしたりして少しずつ内容を理解していく。ここで、効率よく本の知識の抽出を行うことができれば、短時間で多くの本の内容を理解できるようになる。 本提案では、同義語の探索や階層構造の表示を行うなどして、自然言語処理の結果をユーザに伝わりやすいようにビジュアライゼーション(可視化)する。さらに、ユーザインタフェースを使用してユーザとシステムが対話を進めることで、効率良い文章理解を可能とする。このようなインタフェースは今までに存在せず、学術的にも大きな新規性が期待できる。また、ビジュアライゼーションの方法やユーザインタフェースには様々な形が考えられるため、本提案の応用性は非常に高い。 本提案の実現により、既存の自動要約技術では不可能なユーザのニーズに基づいた要約作成が可能となる。また、それらの要約をデータベースに保存しておくことで、今までにない内容ベースの本の検索システムが実現できる。さらに、既存の電子書籍リーダーと組み合わせることで、ユーザの負担を軽減し、より素早く内容を理解できるようになると期待される。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 田中 翔太郎
採択金額: 1,792,000
2011年度未踏IT

条文の部品化による契約書再利用プラットフォームの開発

作る側にも、読む側にも「契約書」は実に難解なものである。そのため大部分の人は、ハンコを押す前に内容を理解するのに苦労している。また当事者間の信頼関係を尊重し、波風を立てるような交渉は避けられ、契約が形骸化してしまうことも少なくないはずである。 そこで本提案では、より合理的に契約書を作成、理解、交渉、再利用できるシステムを提案する。このシステムは、契約書の難解な「言い回し」にとらわれる事無く「パラメータ」を検討することで、契約の速度と精度を向上させる。 作成する側は「契約書作成フォーム」にその契約のパラメータを設定することで、契約書を出力することができる。また同時に出力される「契約説明書」が契約の要点となるパラメータとその意味を解説し、読む側の理解を助ける。そして「交渉プラットフォーム」上にて、その契約書にいかなるパラメータが設定されるべきか、当事者間で調整を行うことができる。 このシステムを利用することで、契約が「責任の押し付け合い」から「信頼関係深めるプロセス」になるような、そんなプラットフォームを目指し開発したいと考える。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 田村 佳也
採択金額: 1,792,000
2011年度未踏IT

線で創るフィールドペインター

近年、ロボット技術の進歩は目覚ましく、多種多様なロボットが次々と開発され、産業、介護、医療と様々な分野で活躍している。屋内での身近な問題点や不便な点がロボット技術の進歩によって改善されてきているが、屋外では直射日光の影響や足場の不安定さなどから、屋外にはまだまだ改善の余地があると思われる。そこで、屋外で行われる「ライン引き」に着目した。 学校や競技場などでは、運動会やスポーツの大会が開かれる際にライン引きといわれる石灰の白線を引く道具を使う。例えば、運動会が開催される場合、実施する種目は学校や年によって異なり、引くラインも様々である。毎回、どのようなラインを引くかを決め、運動場の大きさも考慮に入れてラインを引く。正確な直線もしくは曲線を描くためには、二人がメジャーを持ち、一人がその上にラインを引くため最低三人の人員が必要である。また、決まった角度のラインを引くためにメジャーを複数使用して、ラインを引くこともあり、とても煩雑な作業となっている。 今回、私たちはライン引きのためのロボット「フィールドペインター」を開発し、それを制御するソフトウェアを提供する。人間の代わりにロボットが自動的に線を引くことで きれいで正確な「線を創れる」ようになることが本技術の特色である。既存の手法に比べ、誰でも簡単に複雑な図形を描けるようになることに加え、人員削減などの効果が期待できる。さらに、災害時のSOSなどのメッセージ、グラウンドや競技場などをキャンバスと見立てた新しいアートの実現や巨大な広告を描くことによる広告宣伝などアミューズメント性に富んだ応用が可能である。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 春日 貴章・元木 浩平・岩倉 夕希子
採択金額: 1,584,000
2011年度未踏IT

伴泳ロボットを用いた水泳支援システム

本提案では、スイマーに追従して水中を自律的に航行する「伴泳ロボット」を利用し、水泳の支援を行うための基盤技術を開発する。 水泳は、世界中で一般的なスポーツである。日本には、小中学校やジム・フィットネスクラブを中心として4万数千ものプールがあり、競技としてだけではなくレクリエーションやリハビリテーションを目的として、多くの人々が水泳を楽しんでいる。しかし、プロのアスリートや部活動を行っている学生以外の一般のスイマーは、他者から指導を受けることが難しい。コーチ等の他者から指導を受けることができる環境にあったとしても、ひとりのコーチが同時に見ることができるスイマーは1人であり、指導時間は限られている。 多くのスポーツにおいて、自らのフォームに関する心的イメージを得ることは重要であると言われている。提案者は、小学校において水泳の授業補助を2年間続けている。その過程で、水中においては自らのフォームを他者の手を借りずに正しく認識することが大変難しいことを、身を持って体験している。そして、自らのフォームをリアルタイムに見る事が出来れば、しっかりとした指導を受けることができない数多くのアマチュアスイマーを支援することができると確信している。 本提案では、スイマーに追従して水中を自律的に航行する「伴泳ロボット」を利用し、水泳の支援を行うための基盤技術を開発する。特に本提案ではその一例として、先述した水中においてはフォームを自己認識することが難しい、という問題の解決を目的とした、泳いでいる自分が見えるセルフアウェアネス支援アプリケーションの開発を行う。 本提案で開発を行う伴泳ロボットは 既に開発済みの小型潜水艦ロボットをベースとして開発する。潜水艦ロボットにはカメラ及び、ディスプレイを備えたスレート型デバイスが搭載されており、これらを用いて適切な制御を行うことで、伴泳を実現する。本提案の開発により、伴泳ロボットを用いた水泳支援が実現され、スイマーは水中で自らのフォームをリアルタイムで確認しながら泳ぐことが可能になる。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 鵜飼 佑
採択金額: 1,792,000
2011年度未踏IT

身体動作の重畳表示による動画上での疑似ライブ感共有システム

今日の動画共有サイトでは、様々な場所で開催されるイベントを好きな場所・好きな時間に鑑賞できる。またコメント機能を用いて非同期にコミュニケーションをとれる環境も構築されている。 しかし、アーティストやDJなどのライブイベントにおいて、観客が体を動かしたり声かけをするいわゆる「ノリ」は、一体感を高めるとともに参加の実感を与える醍醐味ともいえるものである。それにも関わらず、これらの情報を非同期メディアで共有するような提案はこれまでなされていない。 そこで私は、動画の前に立つ観客の動きや歓声などを配信映像に重畳し、ライブイベントの「ノリ」を非同期メディアで共有できるシステム「身体動作の重畳表示による動画上での疑似ライブ感共有システム」を開発する。 本テーマでは、動画の新しいコミュニケーションシステムとして、動画の観客が体を動かし、その動きを可視化した情報を、異なる時間・空間から同一動画時間軸上に非同期に重畳するシステムを開発する。提案システムによって新たなメディアを構築し、観客自身が擬似ライブ感を得られるようにすることが目的である。 また、動画上でコメントを介したコミュニケーションがとれるニコニコ動画は、日本で開発された。最近になって英語版が公開され、多くの人に利用されている先駆的なシステムである。しかし、言葉の壁があり、日本語版と英語版との間でつながることは難しい。提案システムでは、観客の動きや歓声などというノンバーバルコミュニケーションを使用するので、言葉の壁を超えることができ、国境を超えることができる。英語版の開発も行い、Webサービスとして全世界に公開する。ニコニコ動画の発展、そして国際化が進みつつある昨今、このシステムは好意的に受け止められ、世界的に普及するのは早いと期待している。

PM: 越塚 登クリエータ: 吉田 有花
採択金額: 1,792,000
2011年度未踏IT

Open Design Computer Project

現在のコンピュータは、ハードウェア・ソフトウェアとも非常に古い設計です。時代が変化する中で汎用といわれるコンピュータでも利用用途は大きく変化してきました。その中で過去の互換性の維持のために現在となっては無駄な部分がハードウェア・ソフトウェア両方に存在します。また、根本的な命令セットレベルで、現在のコンピューティングに適さないものも多く存在します。 これら、既存のシステムを参考にし、今回新たに1からコンピュータシステムの構築をします。この際、ハードウェアの一方的な仕様に、ソフトウェアを合わせるという、従来の方式ではなく、仕様を検討する段階から双方の意見を言い合い、お互いの仕事を適切に割り振ることにより、より時代に見合った高性能・低消費電力コンピュータシステムを構築していきます。 ハードウェア(CPU)と、ソフトウェア(OS)の連携ということで、コンテキストスイッチの最適化・割り込み/IOアクセスの最適化を行います。 ハードウェア(CPU)では、現在の高性能プロセッサでは大前提となっている、アウトオブオーダ実行に、命令・基本アーキテクチャの段階で考慮し、より無駄が少なく回路規模対性能を上げ、低消費電力動作を得ることを目標とし、設計しています。 ソフトウェアでは、OSやプログラムの実装に必要なアセンブラ・コンパイラの開発と、システムを効率的に動作させるために今回作成するCPUに特化した機能を搭載したオペレーティングシステムを開発します。

PM: 越塚 登クリエータ: 伊藤 剛浩・川田 裕貴
採択金額: 1,792,000
2011年度未踏IT

TossCamの開発

本提案では、投げる、落とすといった高速自由運動中に映像取得をする多視点カメラシステムTossCamを制作する。また、これらの映像に画像処理を行い、周囲の空間を自由な視点で見られるようなアプリケーションを制作し、TossCamから生成されたコンテンツが有用であることを示 す。TossCamは、従来のカメラと比較して高フレームレートかつ高速なシャッタースピードのカメラを組み合わせたシステムである。このような構成と位置姿勢推定技術を組み合わせることで、「投げる、落とす」といった高速自由運動下の映像からコンテンツ生成を行う。TossCamで は、ユーザはその場でTossCamを投げたり落としたりすることで、壁の向こうにあるようなユーザから見えない場所を撮影することが可能となる。 従来のカメラシステムでは「投げる、落とす」といった運動下での撮像を想定していないため、高速な回転やモーションブラーを伴うため映像を見ただけで何が起きているかを理解するのが難しい。従来のカメラシステムとは異なり、このような領域をターゲットとしている点が、TossCamの大きな特徴である。TossCamでは下記の2点を特徴とした構成をとることでこのような映像から映像の安定化やシーンの復元など実用的なコンテンツの生成を目指す。

PM: 石黒 浩クリエータ: 竹岡 英樹
採択金額: 1,792,000
2011年度未踏IT

植物の種類に応じてさまざまなふるまいを見せる植木鉢型ロボット群PotPets

植物を育てるという行為は広く一般で行われているが、うまく植物を育てることは意外に難しい。これは、植物の種類や状態によって、適切な世話の方法が異なるために、植物の育成経験が乏しい人にとっては、植物がどのような状態にあり、どのような世話をすべきなのかわかりにくいからである。 そこで本提案では、複数個の植木鉢型ロボットのふるまいを、それぞれの植物の特性や人の活動状況に応じて変化させることで、生活空間における人と植物の新たなインタラクションを提供する植木鉢型ロボット群:PotPetsを提案する。 本提案の目的は、人間と植物の新たなインタラクションを提供することで、従来の人と植物の関係性よりも密接な、新しい関係性を構築することである。 この目的を達成するために、提案者はすでに植物の状態をセンサで取得し、それに合わせて動作する植木鉢型ロボットPotPetを提案・試作している。現在までの試作では、植物の現在の状態を取得し、人に対しわかりやすく伝えることに着目し、実装を行ってきた。 本提案ではこれに加え、人や周辺環境に積極的に関わることに着目し、次の3点;1.植物の大きさや種類、2.人間の行動、3.家庭の中の状況、に合わせて各PotPetのふるまいを変化させる。生活空間においてより積極的に人に関わってゆくことで、人にとっては植物の存在を意識する機会が増え、世話をしやすくなる。植物にとっては、より細やかに人に世話を促すことができる。人に適切な世話を促すことで、植物の育成を支援にもつながる。 本提案では、特に「小型化など、外装(ハードウェア)のバリエーションを増やし、複数個試作すること」、及び、「 家庭内に設置したセンサから取得した人間の行動や家庭内の状況、各PotPetの植物の特性を考慮し、各PotPetに適切な動作を実装すること」を目標とする。

PM: 石黒 浩クリエータ: 川上 あゆみ
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

多様性と意外性を考慮したニュースレコメンドエンジン

近年、Webにおいて個人が情報を気軽に発信できるようになり、また個々人はWebを経由して簡単につながれるようになった。これにより、Webの情報量はかつてない勢いで増加している。 ソーシャルな時代における主要な情報探索手段の一つにフィードという手法がある。これはお気に入りのユーザやサイトをフォローして、その更新を取得するという手法である。しかしこの単純な手法ではまかないきれないほど情報の量は増え、ユーザが情報を探すストレスは増加している。そこでフィードに変わる新たな情報探索手段が求められており、その一つにレコメンドエンジンによる情報フィルタリングがある。 従来のレコメンドエンジンは「ユーザが欲しい情報」を「ユーザが興味を持つ情報」と定義しており、推薦の評価もユーザの興味にいかに一致するかという方向性で発展してきた。しかしレコメンドエンジンがフィードに変わり主要な情報探索手段となるには興味に一致しているだけでは足りず、推薦結果全体として多様性や意外性をもつ必要性がある。興味の一致にのみ主眼をおくと情報の偏りが起きてしまうためである。 本提案では、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)に蓄積された個人の行動履歴を解析し、ユーザの情報収集の特性からユーザにとっての多様性や意外性を定義し、それを考慮したニュースのレコメンドエンジンを開発する。

PM: 増井 俊之クリエータ: 福島 良典・吉田 宏司
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

超指向性スピーカを用いた実物体音像定位AR

インターネットの発達により、検索エンジンやECサイトなど現実の物をバーチャルの世界で扱うことが非常に多くなった。この利点の一つとして、物にメタ情報を付加することができ、フィルタリングをすることでユーザに適した情報を提示できることが挙げられる。しかしながら、現実の物を見たり聞いたり体験したりすることも非常に重要であるのも事実である。本当の価値や感動は本物からしか得られないものである。つまり、両者の利点を兼ね揃えた、現実の物体にメタ情報が付加され、ユーザに適した情報を提示できる世の中が将来のあるべき姿であると考えられる。そこで本提案では、実物体から音声が聞こえる空間分割型の実物体音像定位ARシステムを開発する。 本システムは、超指向性スピーカを使って音声を実物体に反射させて提示しておき、音圧範囲内に入った人のみ実物体から音声が聞こえるようにする。今まで超指向性スピーカを用いたシステムは大掛かりであったが、スマートフォンで対象物を撮影・指定して超指向性スピーカの横に設置するだけで、対象物を追跡して指向音を投射することで対象物から音を簡単に鳴らすことができるようにする。 これによって以下のことが実現される。

PM: 増井 俊之クリエータ: 長尾 俊・渡邊 翔大・若間 弘典
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

材料の伸縮性を生かした材料加工および曲面造形システムの開発

近年、コンピュータ数値制御(Computer Numerical Control(CNC))によるミリングマシンやレーザーカッター等の板材を加工する工作機械が高精度化・低価格化し、広く教育機関や公共機関に普及しつつある。これらの工作機械の発達に伴い、dukta(ダクタ)と呼ばれる、板材をゴムのように柔らかくする加工法がある。ダクタはレーザーカッター等の切削機を用いて板材に特定のパターンを切削し、そのパターンによって材料の持つ変形特性をコントロールすることができる加工法である。本プロジェクトでは、ダクタによる加工を用いて数学的に定義された滑らかな曲線(パラメトリック曲線)をコンピュータ上で設計し、それを元に板材の”曲げ”を製造するための設計システムを開発する。設計システムは曲線の設計および、その曲線の”曲げ”を実現するためのダクタの切り込みパターンを含む図面を自動生成する。生成された図面をもとに加工機で板材を切り出し、それらの部材を組み合わせることで目的とする”曲げ”の実物モデルを簡単につくることができる。 現在産業に広く普及している板材を曲げる手法は、ある特定の”曲げ”をつくるための金型が必要であり、その型通りの曲げを短時間で大量に生産するものである。一方、本システムでは、設計者がコンピュータ上で描いた(ほぼ)任意の曲線元に、自由な曲げ加工を金型なしに瞬時に実現することができる。したがって、ある場所の周辺環境に適応した家具やインテリアや特定の個人にカスタマイズされたプロダクトなどを瞬時に誰でも簡単に実現することができる。さらに、綾線面(例えば螺旋構造の様な曲面)等の造形も本システムで実現する。最終的には従来の手法では実現不可能であった複雑な形態のプロダクトへ応用可能な設計システムを目指す。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 大嶋 泰介
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

画像集約Webサービス「Zukan」の開発

本提案では、1つの記事に対してユーザ投稿型で多数の画像を集めるWeb図鑑システムを開発する。 Wikipediaは百科事典として膨大なテキスト情報を体系立てて集約しているサービスだが、画像情報を同じように体系立てて集約しているサービスは少ない。本システムによって、ユーザはあるトピックに対して投稿された多数の画像を自由に得ることができるようになることに加えて、写真の投稿や同定を行うことができる。Web図鑑システムはこれらの特徴を備えたWeb図鑑を任意の分野で作成可能にする。 ユーザひとりひとりが皆自由に、あらゆる画像情報を知識として共有できるメリットは大きく、学術的価値が特に高いという側面もある。紙媒体の博物学の図鑑、例えば魚類図鑑では、マダイというトピックに対して誰がどう見てもマダイだという代表的な画像が数枚程度掲載されている。これは種の同定を目的とした信頼性が求められているためである。しかし、本提案で実現する図鑑システムでは、1トピックに対して画像の質より量を求め、同じマダイであればマダイというトピックに対して数百数千の画像を集め掲載する。この膨大なデータベースは非常に高い学術的価値を持つ。魚類学の例でいえば、毎月のように新種の魚が発見・登録されている状況に即座に対応が可能となる。数百数千の画像を集めて並べてみると、その中から新種が発見される実例も多い。このように、情報更新のスピード感と膨大な画像情報の集積を両立するのは、紙媒体の図鑑では実現できるものでなく、そのプラットフォームはWeb上である必要がある。

PM: 原田 康徳クリエータ: 直江 憲一・中城 亮祐
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

CPUの理解を容易にするシステムと解説サイトの構築

アンドリュー・タネンバウムによる著作「オペレーティングシステム-設計と理論およびMINIXによる実装」では、UNIX風OSであるMINIXの設計と実装を通じてオペレーティングシステムやその周辺について実践的に学ぶ事ができる。「MINIX本」との愛称で特に大学の教科書として広く世界で読まれ、リーナス・トーバルズがLinuxを開発する動機にもなった。 本提案では、1980年代に一世を風靡し誰もが知っている任天堂の家庭用ゲーム機、ファミリーコンピュータ(以降、ファミコン)に着目し、それを再現するエミュレータを実際に開発しながら、コンピュータの動作原理や画像・音声処理を気楽に、しかも「わくわく」しながら学ぶことができる、「ファミコン版MINIX本」ともいうべきウェブサイトを作成する。さらに、非常にシンプルなビジュアル回路シミュレータを開発し、これを用いてエミュレーションで実装していたCPUを、実際の回路を読み解きながらシミュレーションで再実装する過程を体験できるようにし、学習者に対してソフトウェアとハードウェアの両方を垣根なく、ソフトウェア上のみでシームレスに理解を促すことを可能にさせる。

PM: 原田 康徳クリエータ: 平藤 燎
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

情動の表出を促進するインタラクション学習型ロボットの開発

本提案では、ユーザが日頃表に出せない情動を引き出すことを目的として、インタラクティブ学習型ロボットを開発する。 現代社会では、モラルや社会的制約により、情動の表出はなかなか自由に行うことができない。特に、叩く、押す、投げるといった攻撃行動や、八つ当たりといった理のない行動はネガティブな行為と見なされ、人に対して行うことは許されない。しかし一方で、こうした情動の表出が完全に制限されると、ストレスが蓄積され、うつなどの精神的疾患に繋がる可能性もある。そのため、日頃から適度に情動を表出する機会を設けることが必要と考えられる。 そこで本提案では、叩かれても壊れないロボットを製作し、ユーザには、そのロボットに対して攻撃行動を通じて情動を表出させる。その際、ロボットがただ置かれているだけではユーザの情動を引き出すことはできないため、ユーザにあった「叩きたくなる」挙動をするロボットを開発する。例えば、叩くと喜ぶロボットの方が叩きたくなるユーザもいれば、一方で、叩かれると嫌がるロボットの方を叩きたくなるユーザもいる。人間のこのような多様性に応えるため、ユーザの性質に応じたより相応しい振る舞いをロボットに学習させ、日頃出せない情動の表出を促す。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 足立 麻衣子
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

触感のコピー&ペーストを応用したUser Generated Tactile Contentの実現

本提案では、触感のコピー&ペーストを応用した触感の素材集の作成と、触感を既存のUser Generated Content(以下UGC)へ適用し、触れるユーザ生成触感コンテンツ(User Generated Tactile Contents、(以下UGTC))を実現する。 UGCが普及するにつれてコンテンツの表現の幅が広がり、人々は様々なコンテンツを楽しみ、また人々がコンテンツを制作していく中で、画面の中に存在する綺麗なもの・可愛いものに触れてみたい、その存在を自分の手で感じてみたい、その感覚を人々にも共有したいといった欲求が生まれてきた。そこで本提案では、触感を伴うコンテンツの制作・共有・体験を可能とするUGTCの実現を目的とする。 UGTCの実現にあたって、触感を伴うコンテンツ(以下、触感コンテンツ)を如何に作成するかという問題に対しては、イラストへ触感を重畳する手法として、色を塗るのと同様のインタフェースで触感をマッピングできるようなブラウザ用のプラグインを開発する。その際、塗る色に相当する様々な触感を用意する必要があるが、リアリティの高い触感をコンピュータ上で合成することは難しく、現在の触感技術が普及しない一因ともなっている。そこで本提案では、既存の画像編集ソフトウェアのスポイト機能のように、現実の物体から触感を読み取り、それをコンピュータに取り込むことで「触感素材」の生成を行えるようにする。 さらにこの素材集のデータベースを構築することにで、様々なユーザが様々な触感を取得し共有することができる、大規模な触感データベースを実現する。 また、インターネット上に触感コンテンツを制作しても、実際に体験できるユーザが少なければ意味がない。そこで、ユーザが自分のPC上で手軽に触感コンテンツを体験するための手段として、安価な価格で実現可能な簡易型の触感デバイスを開発し、実用化を目指す。

PM: 石黒 浩クリエータ: 竹内 祐太・片倉 弘貴
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

表情フィードバックを利用した感情喚起システムの開発

一般に感情喚起プロセスは、ある状況や行動など外界の刺激を知覚し、それを内的に処理することで感情が発生し、結果として表情や心拍など身体反応が変化するものとされてきた。しかし、このような刺激知覚から感情が生じる内的処理メカニズムは解明されておらず、このプロセスを再現し感情を喚起させる工学的手法は存在しなかった。 一方で、認知科学の分野では、「悲しいから泣く」のではなく「泣くから悲しい」という例のように、感情の変化に伴って起こる特定の身体反応を認知させることで、自らの感情を喚起させることができる現象が知られている。 これを踏まえると、表情反応や心拍反応のように、あたかも身体が反応しているような人工的な刺激を生成・提示し、それが自己の身体反応の変化であると認知させることで、任意の感情を人工的に喚起できる新たな工学的手法を構築できると考えられる。 本提案では、身体反応の中でも表情に注目する。表情による感情表現は文化に依存しておらず、人類に普遍的な特徴であり、生得的基盤を持つことが明らかにされている。また「表情フィードバック仮説」は、感情の変化に伴って表情が変化するだけでなく、表情のフィードバックによって感情を変化させることが可能であるとし、表情の変化が感情に影響を与えるとしている。 本提案では、実際に自身の表情は変化していないものの、疑似的に表情が変化したように情報を提示することで、それを認知させ無自覚的に感情を喚起させる、表情フィードバックを用いた感情喚起システムを開発する。表情変形手法として、ユーザの顔画像から顔の輪郭情報と目や鼻、口などのパーツの位置情報を推定し、そのパーツ位置を動かし、表情をリアルタイムに変形させる手法を構築する。この手法を用いて、ユーザの表情画像から自身の表情変化として違和感のない表情画像を生成し、視覚的にフィードバックすることで、感情状態を狙った方向に変化させる。

PM: 石黒 浩クリエータ: 吉田 成朗
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

ユーザの生活習慣により成長するキーホルダー型ロボットの開発

本提案では、持ち歩き可能な小型ロボットによって収集されたユーザの行動履歴や、パソコンから収集されたインターネットの履歴などのデータを用いて、ロボットがユーザの生活習慣や性格を反映して成長していくシステムを開発する。これは、ユーザの行動によってロボットが成長するという過程を楽しむゲーム性を導入することで、ロボットが成長した結果というユーザ自身の生活習慣の客観的な評価を見せることで自己を省みるきっかけとし、生活習慣の改善や自身の性格の客観視を促すものである。 高齢化の進む現代社会において、健康の管理は生活習慣病の予防や医療費の削減を目的として注目を集めている。このような現状において、健康管理の一環として多くの人が生活習慣の改善に励んでいる。それに合わせてユーザの健康を管理することを目的としたデバイスが数多く開発されており、近年ではセンサから得られるデータを人が見るだけでなくデータとして残し、統計的に活用することでより積極的に管理する試みがなされている。しかし、このようなデータの計測や活用は主に高齢者をターゲットとしたものであり、若年層がターゲットの予防医療を目的としたシステムはほとんどない。たとえ存在しても、計測器やセンサなどの取り付けを必要とする手間が必要とされてきた。 そこで本提案では予防医療をより手軽に行うために、健康データの利用をより簡略化し、持ち歩き可能なロボットを用いて、ロボットのセンサやユーザのPCから得られた情報を分析して、ユーザの生活習慣をフィードバックすることを目的とする。このとき、ユーザに直接データを提示するのではなく、ユーザの生活習慣によってロボットが成長するというエンタテインメント性を導入することで、生活習慣の改善という努力や我慢が伴いやすいタスクをより楽しみやすいものにする。

PM: 石黒 浩クリエータ: 稲葉 翔・藤澤 哲平
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

ユーザ情報を考慮した次世代メニュー提示・注文システム

昨今、焼肉店や寿司店、居酒屋などでタッチパネルを使ったメニューの注文方式が導入されてきている。タッチパネルへの移行のメリットとして、店側は人員削減、注文ミスの防止などの面がある。客側のメリットとしては店員を呼ばなくてもよい、スムーズな注文、追加注文がしやすいなどの面がある。加えて、近年AndroidやiOSの登場により、多くの人がスマートフォンをはじめとする携帯情報端末を所有する時代を迎えており、Near Field Communication(以降NFC)といった近距離無線通信技術を用いた携帯情報端末向けのソリューションが展開しつつある。例えば、NFCで用いられるICタグに対してスマートフォンをタッチすると、あるスマートフォンアプリケーションが起動し、その上でサービスが実行されるようなものがある。これはこれまでのボタンを押すといった動作ではなく、タッチという動作が新たなトリガとなっている。 本プロジェクトでは、店側で設置する座席のICタグと客であるユーザが所有するスマートフォンとを近距離無線通信技術を用いて連動させる、次世代のメニュー提示・注文システムを開発する。携帯情報端末に保存されたユーザの性別や年齢、食べ物の好き嫌い、アレルギー、よく食べているものなどのユーザ個人の情報を利用し、メニューが動的に変化するような次世代メニューシステムを開発することで、ユーザ個々の嗜好や目的に合ったメニュー提示が可能になると同時に、店側にとっても販売活動の促進が期待される。

PM: 越塚 登クリエータ: 藤田 琢磨
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

ライブ映像配信の魅力的な演出をリアルタイムに行えるUIの開発

昨今、動画配信の敷居は格段に下がっており、個人がビデオやライブ映像配信を行えるようになっている。しかし、その質はテレビ局等の専門家達の手によって作られたものには及んでいない場合が多い。個人のライブ映像配信を行うときの敷居の一つとして、現状のソフトウェアでは出演している人は出演者と演出家などを一人ですべて行う必要があることが挙げられる。それを分散できることは個人レベルのライブ映像配信の敷居を下げると共に、例えば出演者は演技に、演出家は演出に集中的に注力できるのでコンテンツの質を高める可能性を秘めている。また、スマートフォンで簡単に撮影しているものをコンピュータで編集しながら公開するという使い方なども考えられる。しかし、現状ではそういった ライブ映像配信時の作業をインターネット越しに分散するようなプラットフォームは存在しない。 本プロジェクトでは、ライブ映像配信の全体のフローを分散できるプラットフォームを構築し、そのプラットフォームを用いることで、インターネットを通じて、ライブ映像をコラボレーションして配信できることを目指す。具体的には、ライブ配信の映像に対して、実際にそれを撮影している場所とは異なる場所にいるユーザが、リアルタイムに演出を加えられるようにすることを目指す。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 古見 元気
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

プログラマブルフードの開発

本提案は食事中に料理の味を変化させるための技術を開発する。 料理は見た目や味で日常生活を豊かにし、健康を支える。近年では、調理を科学的に解析する分子ガストロノミーにより、より高度な料理の表現の可能性が広がった。一方、料理のデザインには静的な見た目や味だけでなく、時間的な変化で料理を楽しませる手法がある。例えば、ひつまぶしは味を時間的に変化させることで最小限の料理と調味料で一度の食事を最大限楽しむことを可能にしている。しかし、既存の料理方法ではこうした時間的変化を盛り込むのは難しい。 そこで本提案では調味料が噴射するフォークと、フォークの位置検出技術で食事中に料理の味を変化させるプログラマブルフードシステムを開発する。フォークには調味料カートリッジが搭載されており、センサーで料理の上のフォークの位置を検出することで、あらかじめプログラムされた時間と量で調味料が噴射する。 プログラマブルフードの技術で、味付けをダウンロードして素人が簡単に美味しい食事を再現したり、塩味の濃い味の前に塩味の薄い味をプログラムして最小限の塩分で食事を楽しむことで、味と健康のトレードオフを解消したりすることが可能となる。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 喜多 唯
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

平均曲生成システムの開発

近年、音楽コンテンツのデジタル化及びメモリの大容量化に伴い、個人が試聴できる楽曲の数は増加し続けている。また、インターネットの発達によりアマチュアミュージシャン等の楽曲の発信の場も増え、世の中に存在する楽曲数はさらに増え続けている。そのような状況で、過去から現在までに創作された膨大な楽曲の中から個人の興味に合う楽曲を的確に探し当てることの困難さは増加の一途をたどっている。 そこで本プロジェクトでは、複数の楽曲の特徴を平均化して一曲にまとめあげる平均曲というものを定義し、それを通じ音楽との出会いを支援する。平均曲生成システムでは、ユーザが平均曲を生成する際のパラメータを自由に調整することにより、楽曲を連続的に変化させていく技術を実現する。これにより、ユーザは好きな楽曲を元に新たな楽曲を生成することで、より自分の好みに近い楽曲を作り出すことができる。今まで、音楽において作り手の自由は約束されていたが、この技術の実現により、聴き手が自由に音楽を作りながら鑑賞することが可能となる。 また、本プロジェクトではこのシステムの実用化にあたって、「音楽の聴き方の共有」という概念を提案し、音楽との新しい出会いを提供する入り口をつくる。曲と曲の混ぜ方や、曲の編集の仕方など、音楽の聴き方を共有することにより、今までの音楽における作り手から聴き手への一方通行のみでなく、聴き手と聴き手の間での音楽コンテンツの循環を実現する。 このように、本システムは新たな音楽との関わり方を切り開くシステムとなる。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 平井 辰典・佐々木 将人
採択金額: 1,792,000
2012年度未踏IT

Account Reachability Checkerの開発

昨今、ソーシャルネットワーキングサービス(Social Networking Service、以降SNS)が普及し、そのユーザは著しい増加傾向にある。SNS上でユーザはプロフィールを作成したり、日記を書いたり、友人同士のリンクをはり合ったり、グループに参加したりして他のユーザとの交流を楽しんでいる。しかしこれらの行為は、他のユーザに対して個人情報を公開するという、プライバシの観点を強く持つべき行為であると言える。ユーザは往々にして自分の個人情報を第三者に対してどの程度公開しているかを把握しているつもりでいる場合が多いが、自分の想定と実際に公開している情報を見直した結果には大きな齟齬がある場合は少なくない。この齟齬には普段はあまり気づくことはなく、インターネット上の炎上事件等の突発的なトラブルになって初めて気づかされることが多い。つまり、気づいたときには既に手遅れとなってしまうことを考えると、事前に自分の公開している情報の内容、範囲などを正確に把握する必要性がいかに高いかが言える。 そこで本提案では、SNSユーザが自分の公開している情報の開示性を正確に把握することで、プライバを保護・チェックすることを支援するツールを開発する。 本提案の特徴の一つとして、1人で複数のSNSを利用しているユーザの傾向に着目している。複数のSNSを利用しているユーザはそれぞれのサービスを連動して利用していることがあるが、例えばあるサービスを仕事用、ある別のサービスを趣味用といったように使い分けをしている場合が多い。その使い分けを第三者に特定されると、ユーザの意図では分離しているつもりの情報が関連づけられた状態で個人情報が収集されてしまう。よって複数のSNSにまたがるアカウント情報を関連づけられなくすることは、プライバシ管理の側面で重要な一つの要素と言える。 本提案では、複数のSNSアカウントが同一人物のものであると第三者に特定される可能性をアカウント到達可能性(Account Reachability)と定義する。その定義の導出式を作成して実際のSNSアカウントに適用し、同一人物のものと特定される可能性を計算するシステ ムの実装を行う。 また、本システムの実際のSNSユーザによる利用を通して、SNSプライバシに関して広く警鐘を鳴らすことも目標とする。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 石澤 恵・吉國 綺乃
採択金額: 1,792,000
2013年度未踏IT

就業ログと逆求人を融合した就職支援システムの開発

アルバイトはほとんどの学生が学生時代に経験するものである。アルバイトは、学業のかたわらで生活を維持するための収入を得る目的と認識されがちで、社会に出て働く行為であるにも関わらず、それが就職の際のキャリアとして参考にされない場合がある。また、アルバイトの職種によっては、スマートフォンやコンピュータが普及している現状にも関わらず、シフト申請が紙媒体であったり、シフト調整が手作業であったり、業務連絡が口頭であったりと、非効率な場面も多い。 一方で今日、新卒採用における学生と企業のミスマッチが問題視されており、このミスマッチを防ぐため、そして優秀な人材を早期発見し採用するために、インターンシッププログラムを導入する企業が増えている。インターンシップは、学生である間に一定期間実業に携わることで業務について理解を深めることができ、学生・企業双方の理解度・満足度を格段に向上させ、ミスマッチ防止に有効とされている。 そこで本プロジェクトでは、アルバイト等の勤怠管理を効率化すると同時に、その勤怠履歴(就業ログ)から企業の採用担当者にとって有益な情報を含む「信頼できる」履歴書を生成し、それを逆求人サービスへと展開する就職支援システムを開発する。就業ログから信頼できる履歴書を生成することで、アルバイト等の就業経験がインターンシップに匹敵するキャリアとして企業から認識されるように、その価値を向上させる。そして、学生が自身のアルバイト経験を含むキャリアを企業側に提示するサービス、および企業がその情報から求人オファーをかけるためのサービスを開発する。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 原 綾香・平田 淳
採択金額: 2,174,000
2013年度未踏IT

HTML5を活用した次世代Webベース統合開発環境の開発

今日、多くの利用用途でローカルアプリケーションからWebアプリケーションへの移行が行なわれている。この背景には昨今のHTML5関連技術の著しい進歩があるが、2014年に予定されているHTML5正式勧告化の際には今以上の勢いで移行が進むと見られている。 しかしその一方で、実際にWebアプリケーションを開発する作業は、ほとんどがローカル環境上の統合開発環境(以降IDE)で行われている。本プロジェクトではWebベースのIDEを開発し、開発現場においてもWebの優れた環境、世界観が浸透することを目指す。 今までWeb IDEの開発が進まなかった理由として、Webアプリケーションに起因するいくつかの技術的問題があったが、各ブラウザベンダの努力やHTML5関連の各種APIが整備されつつあることにより、ローカルIDEに匹敵する強力なWeb IDEが実現できるきざしがある。本プロジェクトでは最新のWeb技術を用いた強力なWeb IDEを開発する。 本プロジェクトが目指す先は、全ての開発者がWebブラウザのみで全ての業務を行えるようになることである。同時に、単にIDEをWeb化するだけでなく、Webアプリケーションだからこそ出来る各種機能を加える事で、より生産性の高いIDEを目指す。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 矢萩 寛人・重田 桂子
採択金額: 2,304,000
2013年度未踏IT

実用的な質問応答システムの開発

質問応答システムとは、ユーザから特定の種類の情報に対する質問を自然言語で受けつけ、その回答を返すソフトウェアである。質問の回答は文章か、質問に対する直接回答である単語がほとんどであり、その回答を得るために、検索エンジンやオンライン百科辞典、あるいはさまざまなデータベースを基にした検索を行う。近年、AppleのSiriやGoogleのKnowledge Graphといった、単純な検索結果に基づく回答以上のインテリジェントな回答を返す質問応答システムが登場している。しかしこれらであっても、回答を得るための主な処理は、質問文と用意された回答との正規表現等を用いたパターンマッチングであり、それで回答が単純にマッチしないような場合では回答ができず、汎用性が十分に高いとは言えない。 それに対し、自然言語処理の研究で培われてきた統計的な技法(機械学習)を用いた質問応答では、Web上の大量のデータを処理することで、Webの文章の単語を回答候補として利用するため、回答のバリエーション、汎用性が高くなる。ただし、機械学習だけでは質問文の論理的な構造を解析できないため、回答が単語にはならない質問への回答が難しい。例えば、「マイケル・ジャクソンは何と呼ばれていた?」という質問に対して「キング・オブ・ポップ」という回答は可能だが、「マイケル・ジャクソンはキング・オブ・ポップと呼ばれていたか?」という質問にYes/Noの回答をすることが難しい。 そこで本プロジェクトでは、以下の様な特徴を持った質問応答システムを開発することで、汎用的でかつ実用的な質問応答を実現する。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 小松 弘佳
採択金額: 1,728,000
2013年度未踏IT

メディアアートのためのプログラミングライブラリの開発

本プロジェクトでは音やCGを使ったアプリケーションを簡単に制作できるC++プログラミングライブラリを開発する。 MIT Media LabのCasey ReasとBen Fryがプログラミング初心者向けに開発したビジュアルデザインのためのプログラミング言語Processingより簡単に学べ、最新の表現技術やデバイスを活用できる、新時代のプログラミングツールを実現する。本ライブラリによって、様々な規模の高品質なメディアアート作品やシステムを、少ない学習コストと短く明快なコードで開発できるようにする。視覚・聴覚的フィードバックのあるインタラクティブなアプリケーションを簡単に作れる特長を生かして、プログラミング教育の現場で活用されることも期待される。 本プロジェクトはクリエータ自身が2008年から継続して開発してきたSiv3D(https://sites.google.com/site/siv3dgameengine/Home)を発展させるものである。Siv3Dは2012年にα版をMIT Licenseのもと公開してから1年で、累計ダウンロード数が300を超えている。本プロジェクトでは引き続き無償でライブラリとツール群を更新・配布し、使い方や作品の情報を発信していく。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 鈴木 遼
採択金額: 2,304,000
2013年度未踏IT

静止画を動かすことによる魅力的な料理動画生成システムの開発

本プロジェクトでは、一枚の料理画像の一部、あるいは全体に動きを加えることにより、それをより美味しさの伝わりやすい動画へと変換することを支援するシステムを開発する。 見る者に料理の活きを感じさせる要素は「シズル感」と呼ばれる。例えば、新鮮な野菜からしたたる滴、鍋でグツグツと食材を揺らす泡、ジュージューと鉄板から弾ける飛沫などが挙げられる。料理画像にシズル感をうまく表現すればするほど、それが美味しそうな料理に見える。また、ジュージュー、グツグツといったシズル感を表現するには、静止画と比較して動画の方が適している。しかし、シズル感をうまく表現した動画を撮影することは難しい。その理由は、シズル感を表現するために「鍋に火をつける」などの料理に対する変化を与えることが必要だからである。鍋に火をつけると、肉に火が通りきる(料理撮影において肉は赤い方が美味しそうに見えるとされている)、野菜が萎れる、具材が液体に沈む、などの問題点が生じる。 そこで本プロジェクトでは、火をつける、などといった食材に変化を加えてしまう工程の前に撮影した一枚の静止画に、あとからシズル感を演出するための要素(鍋であればグツグツとした泡や食材の揺れ)を合成することで、より魅力的な料理動画を作成する。こうした合成は基本的に高価なソフトウェアと、ユーザがそのソフトウェアに対する豊富な知識を持ち合わせていなければ行うことができないが、本システムでは、細かなパラメータ設定などをシステムが自動で行うようにし、誰でも簡単に料理動画の合成を行えるようにする。 料理店のWebサイトや通販サイトの商品紹介に掲載されるイメージは静止画というのが主流であるが、本システムによりこれらを動画に置き換えることが容易になり、それらのサイトがよりリッチになることが期待される。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 崎山 翔平
採択金額: 2,304,000
2013年度未踏IT

タッチセンシティブなラピッドプロトタイプ作成のためのツールキットの開発

近年、スマートフォンやタブレットなどを始めとした、タッチ入力を備えたガジェットやデバイスが流行している。しかし、そのようなデバイスの作成には、電気回路やセンサに関する知識が必要なため、それらに関する専門知識を持たない人々にとって、そのようなデバイスを自分で作ることは難しい。また、専門知識を持つエンジニアにとっても、多くのセンサを用いた回路設計やハードウェア構築は時間を要する作業となっている。 本プロジェクトでは、そのような常識を覆し、専門知識を持たないデザイナーやアーティストでさえも、簡単にタッチセンシティブなデバイスやガジェットをプロトタイピングできるツールキットを開発する。具体的には、物体の音響特性を利用したシンプルなタッチセンサと、それによるタッチセンシング技術、及びタッチに対する反応を設計するためのソフトウェアを開発する。本ツールキットによりインタラクティブなものづくりに対する敷居を下げ、一般の人々が自分のアイディアや感性を容易に表現できるようになることを目指す。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 大野 誠
採択金額: 2,304,000
2013年度未踏IT

自然物を応用した3Dテクスチャデザインソフトウェアの開発

本プロジェクトでは、自然物の形状デザインに応用可能な、3Dスキャナーで自然物の形状をサンプリングして、その形状を用いて3Dテクスチャを生成するソフトウェアを開発する。また、同時に、生成された3Dテクスチャを、プロダクトや構造物に適応し、物質化する手法を提示する。 本プロジェクトの目的は、自然物の形状を取り入れたデザインの発想支援と、プロトタイプ設計の環境を提供することである。近年、3Dスキャナーや3Dプリンターといった、デジタル制御の工作機械の小型化、低価格化が進み、入力から出力まで、個人でものづくりを行う環境が整備されつつある。それにより、従来の大量生産型のものづくりとは異なる、個人レベルでものづくりを行うための、新たなデザイン手法が開拓される余地がある。本プロジェクトは、その1つの事例として、自然物の形状をプロダクトに応用するための、デザイン環境の開発に主眼を置いている。身近な自然環境の中から、様々な形状を3Dスキャンでサンプリングし、それらを用いてプロダクトや構造物のプロトタイプをデザインする。デザインされたプロトタイプは、3Dプリンターなどの工作機械を用いて物質化され、従来の大量生産型のものづくりでは実現されなかった多様なアイデアが、実際のものを通じて他者と共有される。将来的には個人レベルでアイディエーションからプロダクトの生産までが行える工作環境が整備されることが見込まれ、本ソフトウェアが発想支援、プロトタイプ設計の環境として活躍することが期待できる。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 冨中 裕介
採択金額: 2,304,000
2013年度未踏IT

3Dキャラクターのモデルデータを簡単に制作できるシステム

昨今、キャラクターの登場する動画やゲームなどのコンテンツが数多く作られている。コンテンツクリエータ、あるいはコンシューマには、オリジナルのキャラクターが登場するコンテンツを作りたいという願望を抱く者が多い。しかし、キャラクターを作るには専門的なスキルが必要であり、一朝一夕で作れるものではない。 そこで本プロジェクトでは、3Dキャラクターを作ること(以降、キャラクター作成と呼ぶ)を容易にさせるシステムを開発する。一般的にキャラクター作成においては、ユーザはスライダーやマーカーなどを使ってパラメータを設定し、その入力に基づいたキャラクターの形状がグラフィカルに表示される。ユーザがスライダーやマーカーでパラメータを変更すると、モーフィングによってキャラクターの形状はインタラクティブに変化する。ユーザはそのような操作、確認作業を行うことで、オリジナルのアバターやキャラクターを作成する。 本プロジェクトでは、このキャラクター作成機能と併せて、キャラクターセットアップ機能を実装する。キャラクターセットアップ機能では、キャラクター作成に必要な形状テンプレートを作成できるようにする。形状テンプレートとは、モーフィングに必要となる、ある頂点をどれほど変形できるかという制約が定義されたものである。 本システムでは、3Dキャラクターを簡単に作ることができるようにすることに加えて、作った3Dキャラクターを動画やゲームなどのコンテンツの素材として利用できるようにする。これにより、プログラマや動画制作者などのコンテンツクリエータが専門的なモデラーの手を借りる必要がなくなり、自分の理想的な3Dキャラクターをコンテンツ上に登場させることが容易になると同時に、3Dキャラクターの不足に悩まされることも少なくなる。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 竹渕 瑛一
採択金額: 2,304,000
2013年度未踏IT

マンガ作家の海外展開を支援するプラットフォームの開発

本プロジェクトでは、マンガ作家、出版社、読者、文化や語学学習をしたい人、海外展開をしたいマンガ作家を支援するシステムを開発する。まず、本システムでは、翻訳が済んでいるマンガのセリフを集め、日本語とそれに対して行われた外国語の翻訳データベース(DB)を構築する。本システムでは、マンガの吹き出し(コマ)を抽出し、吹き出し中にある文字に対してOptical Character Recognition(OCR)による文字認識をする。その後、抽出した文字と作成していたDBを照合し、マッチングしていた場合、そのままそのセリフの翻訳とする。マッチングしない場合は機械翻訳をして吹き出しに戻し、それを翻訳とする。これらの翻訳は自動で行なうため、訳が不適切な場合がある。読者に翻訳の編集権限をもたせることで翻訳精度を高める。 マンガのセリフを利用したDBの利点を挙げる。野球漫画では「左中間抜けたー」のような表現があるが、そのような主語抜き言葉では、機械翻訳ではうまくいかない。野球のマンガではこのような表現は数多く存在するが、複数のマンガを跨って頻出する。よって本プロジェクトのようなDBの構築をすることで、簡単に精度の高い翻訳へと応用することができる。 本システムにより、マンガを自動で高精度に翻訳できるようになることで、ウェブを中心に活動しているマンガ作家の海外展開の支援が可能となると同時に、世界中の人々がそのマンガを容易に読むことができるようになる。

PM: 後藤 真孝クリエータ: 権瓶 匠・村山 寛明
採択金額: 2,304,000
2013年度未踏IT

影による映像エンタテインメントシステムの開発

本プロジェクトでは、Kinect等のセンサを用いて影をCG映像で再現する映像マジックシステムを開発し、影マジックの新しい表現、影映像と他の映像を組み合わせたパントマイム等、影を用いるエンタテインメント分野の発展を目指す。 影は現実世界の写像であるが、そのつながりの強さから人間は影から現実世界をそして現実世界からその影を想像することができる。従来の影マジックでは本物の影が用いられ、影からの現実世界の想像のみを利用してきた。本システムではそれに加え、現実世界からの影の想像を利用する。これは影の変形や出現、消失、増加などのエフェクトが必要なため、本物の影には作れない新しいマジックである。 作成した映像はテーブルマジックまたはパントマイムで使用する。テーブルマジックでは影と物体の動きを連動させることで、エフェクトを与えた影にも影らしさを維持する。そのため、影をドラッグ操作するインタフェース、影の位置にあわせた物体の自動制御システムを開発する。 テーブルマジックでは、テーブル上から影映像をプロジェクションした場合、本物の影もできてしまうため、テーブル下から影映像をプロジェクションし、テーブルにはアクリルを用いることで影映像を透過する。

PM: 石黒 浩クリエータ: 久保 政斗
採択金額: 2,304,000
2013年度未踏IT

実世界プログラミングのための分散人力処理環境の開発

実世界における仕事の多くは人が判断し実行しているが、その際にミスは起こりがちである。自らの経験則によってミスの発生を回避することは可能だが、その熟練した経験則を得ることは容易ではない。一方で、これらの仕事の多くはマニュアル化されたものであり、プログラムとして記述可能な点が多い。ならば、仕事の実行主体である人間をプログラムモジュールとして利用可能にすれば、仕事をプログラムとして実行できるようになると考えられる。このような環境下では、プログラム通りに仕事を厳密に実行していくことになり、人は人でしか実行できないような仕事に集中し、ミスを抑え、効率的に仕事を実行していくことが可能となる。 そこで本プロジェクトでは、上記のように人がプログラムからの指令に従うことで、人が経験則などに左右されず業務の遂行や目的の達成が可能となるような仕組みを実現する。そのために、プログラム上で人をモジュールとして扱えるようなプログラミング環境を開発する。具体的には、プログラムから人に対して命令を送れるライブラリと、プログラムからの命令を受け取り、人が処理した結果をプログラムに返すようなアプリケーションの実装をする。また、分散処理の仕組みを取り入れ、多数の人を対象とした命令配信を可能にする。 本プロジェクトの仕組みにより、人間からの返り値と実世界情報などを組み合わせた、より柔軟な人・実世界のプログラミングが可能になるため、様々な応用が期待される。

PM: 石黒 浩クリエータ: 馬場 匠見
採択金額: 2,304,000
2013年度未踏IT

スマートフォン向け文章入力システムの開発

本プロジェクトでは、入力ステップ数が小さくて済む文章生成システムを開発する。 本システムは、居場所や時刻などのユーザの置かれている状況(以降「シチュエーション」とする)を基にテキストを生成・提示し、それを選択することによりユーザの行動や発言を手軽に入力できるようにするスマートフォン向けの文章入力システムである。 スマートフォンでのコミュニケーションはTwitterやLINEのようなテキストによるものが主流で、そのテキスト入力は文字入力ソフトウェアによって可能になっている。スマートフォンは、屋内外を問わずユーザのいるところであればどこでも使用されることから、テキストにはユーザのシチュエーションが表現されているケースが多い。しかしながら、文字入力ソフトウェアはシチュエーションまで考慮してはおらず、ユーザのシチュエーションとは関わりのない語彙を提示することがある。 そこで本システムでは、ユーザが自らのシチュエーションをシステムに設定する単純な操作により、手軽にシチュエーションに応じた文章が入力できるようにする。従来の予測変換では字面による単語・フレーズを予測するため、それだけでシチュエーションに応じた文章を作ることには向いていなかった。本システムは予測変換とは異なり、ユーザのシチュエーションを基にテキストを絞り込み、文章として生成する。このため、ユーザはシステムが提示した文章のリストから自分の言いたいことを選択するだけで文章を入力できるようになる。定型文を利用した入力にも似ているが、本システムではユーザは文脈に沿ったフレーズを考える必要がなく、システムが自動的に文脈に沿った形に変形して文章を生成する。それにより、例えばスマートフォンを使って買い物をお願いしたり、作業報告をしたりする際の入力で、その手間がより手軽なものになると期待される。

PM: 石黒 浩クリエータ: 鈴木 孝宏
採択金額: 2,304,000
2013年度未踏IT

モバイル端末に特化した自動スケジューリング プラットフォーム

モバイル端末が一般に広く普及しつつある現代において、多くの人々が日々の予定管理にモバイル端末のアプリケーションを用いている。しかし、複数人が参加するイベントの時間を定めることや、多忙な予定から空き時間を捻出することは、いまだ容易ではない。 本プロジェクトでは、モバイル端末上で既存のカレンダーシステムを利用するユーザを対象として、予定管理を網羅的に支援するプラットフォームを開発し、ユーザの手間の大幅な軽減を目指す。これには、複数人を参加者とするイベントの日時決定に際し、素早くかつ簡潔に日時の合意が図れるようにすることや、参加者らに都合がよくなるよう候補日時をユーザに提示することなどが含まれる。 具体的には、ユーザインタフェース面およびアルゴリズム面から既存のカレンダーシステムの操作性を大幅に改善するアプリケーションを提供する。例えば、イベントを作成しようとするユーザに対しては、招待するユーザに好都合な候補日時の選定を補助する。また、招待されたユーザへは、素早く参加可否の意思表示ができるような支援をする。本プラットフォームは全ユーザのカレンダーと密接に連携し、日時が確定したイベントの追加や変更などの処理をユーザに代わって行うようにする。このように、ユーザがカレンダー上でイベントを作成・変更する作業の簡略化、もしくは完全な排除を目指す。

PM: 石黒 浩クリエータ: 竹井 悠人
採択金額: 2,304,000
2013年度未踏IT

外部動力に頼らないメカニカルスーツの開発

これまでアニメや映画等で身体動作の拡大を行うロボットが登場している。しかしながら、現実世界でそのようなロボットは具現化してはいない。本プロジェクトでは、四肢動作を拡大する装置を開発することで、通常の人体では表現できないダイナミックな腕や脚の動きを実現することができる、動作拡大型メカニカルスーツを実現する。本プロジェクトで採用する手法は、平行リンクを駆使した特殊な3次元の閉リンク構造を用いることで、人体とロボット間の同期を行う、機械式マスタスレーブである。 これまで多く開発されてきたロボットの外骨格との最大の違いは、無動力で動作拡大を行う点である。アクチュエータの搭載は外骨格が可能とするタスクの幅を広げるが、信頼性や運用性を低下させる要因となる。外部動力に頼らないメカニカルスーツの高い優位性はこれらの点にあり、派手なパフォーマンスが求められるイベント、展示会、パレード等での利用、または映像作品のためのアプリケーションとしての利用が期待できる。 アクチュエータの有無に係わらず、骨格構造の最適化は重要となる。本プロジェクトでは、本プロジェクト開始前までに開発してきた試作機をベースに、ITを駆使することで構造が最適化された実用機の開発を目指す。機体の設計に際しては、構造解析プログラムや人体寸法・形状データベースを利用することで、

PM: 石黒 浩クリエータ: 白久 レイエス樹
採択金額: 2,304,000
2014年度未踏IT

電車で効率よく座るための支援アプリケーション

忙しく働く人にとって電車で座って休息が取れるか否かは、極めて重要な問題である。しかし、電車に乗った順番通りに座れるかどうかはわからない。自分よりも後に電車に乗ってきた人が、たまたま早く降りる人の席の前に立っていて、自分よりも先に座席に座ってしまう場面が多々ある。電車に乗った時に、早く降りる人がどこに座っているのかが分かり、その人の席の前に立つことができれば、そのような場面はなくなるはずである。 本プロジェクトでは、この先の駅で降りる人を探し出し、席に座れるチャンスを高めるアプリケーションを開発する。本アプリケーションは、自分の近くにもうすぐ降りる人がいるかどうかをBluetooth等の通信機能を用いて検索し、それを知らせる、スマートフォン上での利用を想定したアプリケーションである。 本アプリケーションのバックエンドとして、電車に乗っている人がどの駅で乗降するかの情報を、日々自動的に蓄積するサーバを実現する。本アプリケーションのフロントエンドであるスマートフォンアプリケーションでは、その蓄積された情報を利用して、ユーザの周辺にもうすぐ電車から降りる人がいるかどうかを、スマートフォン上でわかりやすく提示する。バックエンドのサーバ、蓄積されたデータを、本アプリケーションのユーザが誰でもアクセス、更新できるようにすることで、誰がどの駅で降りるのかのデータを、本アプリケーションのユーザ全てで、より新しく正確なものに作り上げていけるようにする。 本アプリケーションを実現することで、通勤中の電車内でのストレスを軽減することが期待される。

PM: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 教授クリエータ: チーフクリエータ 笹川 真奈 (お茶の水女子大学 理学部 情報科学科)
採択金額: 2,304,000
2014年度未踏IT

ダンスパフォーマンスに特化した自走ロボット制御システムの開発

本プロジェクトでは、ストリートダンスなどの激しいダンスに追従できる自走ロボットを利用した新しいストリートダンスジャンルの確立を目的とし、そのためのストリートダンスに特化した自走ロボット制御システムを開発する。 本プロジェクトで利用する自走ロボットはSphero2.0を想定する。これは、他の自走ロボットと比較して球体という単純な形が、ロボットの機能的に見える部分を最大限に削ぎ落したものとなっており、単なる移動するオブジェとして楽しめるデザインであることが理由の一つである。ホイールやローラーが剥きだした状態であれば、物体の移動そのものだけでなく、回転する部分にも人間の意識が向いてしまうため、ダンスパフォーマンスとの相性は悪い。ロボットの機能的な部分を隠したSphero2.0はその点においてダンスパフォーマンスでの利用に向いている。また球体自身が移動する様は機構が直観的にわかりにくく、常人にはできない身体動作の連続を魅せるダンサーと同様に、観衆に不思議な感覚を与えられると考えられる。ダンスは内に秘めた力を外に出すイメージがある。ロボットにもそのように内部で動作する力が外部に影響する機構を備えていることがダンスパフォーマンスの利用には望ましい。 さらにストリートダンスにおいては、ダンサーで円形の人垣を作り、その中で己の技術を見せつけ合う、サイファーと呼ばれる楽しみ方がある。このような場合においても球体であるSphero2.0を上手く移動させられれば、例えばダンスの動作の軌跡に、Sphero2.0の移動の軌跡を合わせることで、上方から見て幾何学的な模様を見せるパフォーマンスも可能になる。また、観客の目線近くにおける舞台上でのダンスにおいても同様に、球体がダンサーの足元を横切る、ダンサーの足や手を通るなど、上方から見えるダンスとは違った3次元での動作の拡張を行うことができる。加えてフルカラーLEDを搭載しており、ダンサーの動作やロボットの移動に応じてその状態を変化させ、ダンスの一部として表現することも可能であると考えられる。

PM: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 教授クリエータ: チーフクリエータ 土田 修平(神戸大学大学院 工学研究科 電気電子工学専攻)・コクリエータ 友近 圭汰(神戸大学 工学部 機械工学科)
採択金額: 2,304,000
2014年度未踏IT

マルチロボットシステムによる居心地の良いバーの実現

本プロジェクトでは、人にとって居心地のよい空間であるロボットバーをマルチロボットシステムにより実現する。近年、ロボット技術の発達が著しく、特に掃除や物体の運搬などの単純な作業をする為のロボットが多く開発されている。iRobot社の自律走行ロボットRoombaやアルデバラン社の人形ロボットNaoが例としてあげられ、今後も人間社会においてロボットが役立つ場面が増えていくと想定される。しかしながら、今までのロボットのようにタスクをこなす機械として働いた場合、人間がロボットとコミュニケーションをとることは困難であり、ロボットがサービス業をこなすには不十分である。今後、よりロボットが人間社会において貢献するためには、今まで取り組まれてきた人間とのインタラクション、人間に危害を加えず行動することに加え、さらに人間を楽しませること(エンタテインメント)を実現する必要がある。 本プロジェクトで創出するロボットバーは、エンタテインメント性、インタラクティブ性、セーフティ性を追求した未来のコンテンツを体現する。具体的には、双腕ロボットにバーテンダー役をさせ、コミュニケーションロボットを乗せた台車型自律移動ロボットにウェイター役をさせ、バーのサービスであるドリンクの提供を行う。その他、ドリンクの注文をとるため、およびロボットをより綺麗に見せるために、例えば天井のカメラ、プロジェクターによるプロジェクションマッピング等を検討・導入していく。

PM: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 教授クリエータ: チーフクリエータ 李 駿 (東京大学大学院 情報理工学系研究科創造情報学専攻)・コクリエータ 笹渕 一宏 (東京大学大学院 学際情報学府学際情報学専攻)・コクリエータ 野田 晋太朗 (東京大学大学院 情報理工学系研究科創造情報学専攻)・コクリエータ 趙 漠居 (東京大学大学院 情報理工学系研究科知能機械情報学専攻)
採択金額: 2,304,000
2014年度未踏IT

ユーザの好みを反映したメイク手法推薦システムの開発

顔は人の印象を最も捉えやすい部位として注目されている。そのため、人はメイクにより顔の魅力を向上させようとする。しかし、メイク手法は膨大に存在し、個人に適したものを見つけ出すことは難しい。さらに、メイクは自分の好みの顔になりたいという女性の主観的な欲求を満たすものであると捉えると、個人に適したメイクだけではなく、個人の好みを反映させたメイクをすることが重要であると言える。 そこで本プロジェクトでは、ユーザの好みを反映したメイク手法を、ユーザの顔の構造を分析した上で推薦するシステムを開発する。本システムは、ユーザの顔画像から画像処理により顔の特徴点を抽出し、魅力的な平均顔やユーザが希望する特定の好みの顔に近づくためのベースメイク手法を推薦する。その上で、ユーザの好みの印象を顔に反映するメイク手法を推薦する。さらに、使用道具や技術ごとにレーティングすることで、ユーザの熟練度に合うメイク手法を推薦する。このように本システムによって、ユーザに適し、ユーザの好みを反映したメイク手法を推薦することで、ユーザが顔の魅力を容易に向上できるようにすることを目指す。

PM: 後藤 真孝クリエータ: チーフクリエータ 神武 里奈 (筑波大学 情報学群情報メディア創成学類)
採択金額: 2,304,000
2014年度未踏IT

三味線演奏の総合支援アプリケーション

近年、Web上の動画サイトで三味線を演奏する動画が人気になったこともあり、三味線について興味を持つ人々が、国内外を問わずある程度の広い範囲に相当の規模でいると考えられる。その一方で、実際に三味線を演奏してみようとすると、楽器自体の価格の高さ以外にも、記譜法の特殊性、音楽的特徴、稽古場が見つからないことなど、いくつもの障害がある。 そこで本プロジェクトでは、調弦・演奏姿勢のチェックや譜面の翻訳、参考音源の再生など、三味線を初めて触る人が一人でも練習できるようにする機能を有する、練習支援アプリケーションを開発する。また、初心者がステップアップした際にも使えるように、演奏に付随する譜面スクロールや演奏評価、譜面編集・記録・共有機能なども搭載する。 本アプリケーションは、楽器の演奏時に手元に置く使われ方を想定し、タブレット端末上のアプリケーションとして開発する。また、本アプリケーションの使われ方や世界的な展開を考慮した、三味線の統一的、普遍的な楽譜表現についても模索していく。この楽譜表現については、最終的には三味線だけに特化せず、琴などの他の伝統楽器にも適用対象を広げられることを目標とする。 本アプリケーションによって、三味線の経験者に対しては、より個人の要望にあった演奏活動(暗譜練習をしたい、採譜・編曲をしたい等)を可能にさせることで、その先にはWeb上に演奏動画や作成された譜面がアップされるなど、三味線の露出の機会の増加と、さらには三味線演奏者や三味線音楽に親しむ人々が増加するなどの効果が期待される。

PM: 後藤 真孝クリエータ: チーフクリエータ 濱中 敬人 (東京大学大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻)
採択金額: 2,304,000
2014年度未踏IT

髪の毛で音を感じる新しいユーザインタフェースの開発

聴覚障がい者、特に手話を第一言語とするろう者は、健聴者が普段耳にしているような車のエンジン音や動物の鳴き声といった、音の大きさやパターンなどの特徴を理解することが困難である。現在市販されている音フィードバック装置は腕時計型のものが多く、電話や玄関のインターフォンが鳴ると振動と文字で音源の位置と種類を伝える。しかし、これらの装置の場合、どの場所から音が鳴ったのかがわかっても、それがどのような音の大きさで、どのようなパターンなのかを知ることはできない。また、家事をする際に汚れてしまったり、夏場であれば蒸れてしまったりすることに加えて、手話をする際に邪魔という理由から、十分に使用されてはいない。 本プロジェクトでは、髪の毛を振動させて音をフィードバックする、新しい音知覚装置を開発する。まるで、ねこのヒゲが空気の流れを感じるように、髪の毛が音を感じるための新しいユーザインタフェースにする。デバイスは、髪の毛にヘアピンのように装着し、音が発生すると髪の毛を揺らして、ユーザに音の特徴をフィードバックする。髪の毛を揺らす振動は、音の振幅によりリアルタイムに強弱を変化させる。さらに、光の強弱でも音をフィードバックすることで、周りのろう者にも音情報を共有することが可能になる。

PM: 後藤 真孝クリエータ: チーフクリエータ 本多 達也 (公立はこだて未来大学大学院 システム情報科学研究科)
採択金額: 2,304,000
2014年度未踏IT

任意キャラクターへの衣装転写システム

産業革命以降、人々は、完全に規格化されたS,M,Lといったサイズの中から衣服を選ばなければならなくなってしまった。時にはどんなに試着しても自分に納得のいくフィッティングが見つけられないことがあるが、そのような場合は高額なオーダーメイドを注文するしかないのが現状である。デザインが同じでも、サイズや体型が異なる人物にフィットする衣装を作るためには、型紙レベルで再度作り直しが必要となる。 そこで本プロジェクトでは、身体に応じてフィット感を維持しながら、衣類のサイズを自由に変換する、衣装転写システムを開発する。本システムでは、任意3Dモデルとマネキンのパーツの対応付け処理と、各パーツ間でのマクロな衣服転写処理の2段階の変換処理を経ることで、最適なフィットを保ったまま衣類を転写することを可能にする。 本システムは工業的利用にとどまらず、クリエイティブ方面に対しても大きな影響を及ぼすことが期待できる。工業的には、店舗にあるすべての服を自分にフィットさせられるセミオーダメイドシステムを、衣料業界が実現する可能性を拓く。また本システムは、実世界ではサイズの問題などがあってフィッティングが難しかった生物や、現実には存在しない架空生物に対しても、3Dモデルを用意するだけで容易に衣装の転写を可能とする。これにより、誰も見たことがない斬新なデザインのファッションがより多く生まれることが期待される。

PM: 首藤 一幸クリエータ: チーフクリエータ 齋藤 隼介 (早稲田大学大学院)・コクリエータ 成田 史弥 (早稲田大学)
採択金額: 2,304,000
2014年度未踏IT

Web上の記事を用いたニュース動画生成システムの開発

近年、スマートフォンが広く普及したことで、情報取得の方法が大きく変わってきた。特にニュースメディア分野に関しては大きな飛躍を見せている。ポケットに収まる端末によっていつでも好きなときに最新のニュースを観覧できたり、利用者の興味に合わせてWeb上のニュース記事を推薦したりするアプリケーションの普及が始まっている。これらは、新聞などの旧来のニュースメディアに比べて利便性の点で上回っているが、未だに文章と写真のみの表現方法が主流であり、テレビのように映像でニュースを伝える場合の利点である、「わかりやすさ」の点で上回ることが出来ていない。 昨年辺りから、この点に着目した動画メディアが立ち上がってきてはいるが、動画の制作はスキルが必要とされるものであり、時間的および金銭的に多大なコストがかかる。そのため、Webニュースメディアや一般の人が、情報を発信するための動画を制作することは難しいという問題が残されている。 本プロジェクトでは、Web上のニュース記事を入力することで、テキスト・写真を活かした動きのあるニュース動画を生成するシステムを開発する。本システムによって、情報の発信者にとっては、情報を動画というよりリッチなパッケージにする方法を提供し、情報の受け取り側に対しては、ニュースを動画で受け取ることができる環境を提供する。

PM: 藤井 彰人クリエータ: チーフクリエータ 稲垣 洸雄 (筑波大学 情報学群 知識情報・図書館学類)
採択金額: 2,304,000
2014年度未踏IT

ユーザ編集WikiデータによるセマンティックSNSの開発

本プロジェクトでは、セマンティックデータを用いて交流し、交流を通じてセマンティックデータが蓄積される、WikiとSNSを融合させたサービスを開発する。 Webがさらに進化するには、コンピュータが理解できる、構造化されたデータであるセマンティックデータが必要であり、10年以上前からそのことは提唱されてきたが、未だに発展途上の分野である。その原因として、セマンティックデータを登録する人間のインセンティブが小さいことが大きい。 現状では、情報量が少ないニッチな分野について検索しようとすると、異なるカテゴリの同名の事象についてのデータがヒットしてしまうなど、自然言語処理のみに頼った検索性の限界があるが、これはメタデータの整備と適切な利用により克服できる。 本サービスは、カテゴリ別にコミュニティを作り、その中での交流にメタデータを含んだタグを用いることによって、カテゴリ別のメタデータを蓄積し、同時に、蓄積されたメタデータをコミュニティ内の交流、情報交換に用いることによって、交流時の情報の検索性をより良くすることを想定している。コミュニティをカテゴリ別にすることで、複数分野にわたる統一的なオントロジーを作る困難さを回避し、カテゴリ別メタデータを迅速に整備できるようになることが期待される。

PM: 藤井 彰人クリエータ: チーフクリエータ 大懸 剛貴 (京都大学 理学部理学科)・コクリエータ 藤村 暖 (京都大学 工学部情報学科)・コクリエータ 藤田 裕樹 (京都大学 工学部情報学科)
採択金額: 2,304,000
2014年度未踏IT

意思決定に資する解析システム付きの共創プラットフォームの開発

近年の消費者行動の変化から、消費者をパートナーとして捉えて、中長期的な関係を築き、エバンジェリストやコアカスタマーと呼ばれる層を厚くする共創マーケティングが注目を浴びている。 北米では数年前から、中長期的な関係を築く場として、共創コミュニティと呼ばれる顧客と対話するオウンドメディアを持つ企業が増えてきている。これらの共創コミュニティの中に、消費者が改善点やアイデアを自由に投稿・投票するユーザサポートコミュニティがある。「どの顧客の声をサービスに反映するか」という意思決定を速やかにし、多くの実績を残すことがコミュニティ活性化する上で必要となる。当然ながら、このような意思決定は容易ではなく、蓄積したデータを解析し、いかに意味情報を抽出するかが重要となる。しかし、現状として、収集したデータに対して、簡単な集計は行われているが、テキストマイニングやアクセスログを用いた高度な解析は行われていない。 本プロジェクトでは、ユーザサポートコミュニティのプラットフォームと、そのプラットフォーム上で蓄積したデータから意思決定を補助する解析結果をリアルタイムに出力するシステムを開発する。 将来的には、企業と消費者の橋渡しになるだけではなく、企業の商品開発・改善のスピードを加速させ、マーケティング面からサポートしていくことを目指す。

PM: 藤井 彰人クリエータ: チーフクリエータ Perez Hernandez Daniel (東京大学大学院 情報理工学系研究科・創造情報学専攻)・コクリエータ 林 佑磨 (早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 情報理工・情報通信専攻)・コクリエータ 曽根岡 侑也 (東京大学大学院 工学系研究科技術経営戦略学専攻)
採択金額: 2,304,000
2014年度未踏IT

手描き画像から簡単にアニメーション制作を行う為のソフトウェア

リミテッド・アニメーションを制作するには、大量の絵を描く必要がある。したがって、数少ない絵からアニメーションを作ることができれば、制作作業における労力の削減ができると言える。また、時間連続性を考慮しながら大量の絵を描くことは難しいため、手描きアニメーションを制作することは難易度が高いが、簡単なイラストを描くことができる人は比較的多く存在する。アニメーション制作において、必要な絵がほんの数枚であれば、簡単なイラストを描ける人なら誰でもアニメーション制作を行えるようになる。そこで本プロジェクトでは、数枚の画像の間を補間することによって、必要な絵の枚数を減らし、アニメーション制作の敷居を下げ、誰もが手軽にアニメーション制作を行うための手助けとなるシステムを開発する。 本プロジェクトにおいて想定するアニメーション自動生成機能は、主に以下の効果、シーンを対象としている。 本プロジェクトで実現するアニメーション自動生成手法は、3D的な矛盾を含む多彩な表現を許容するために、キャラクターの3Dモデリングをせずに2D平面上の情報のみから絵を変形させる点に特徴がある。 アルゴリズムとしては、まず1つのキャラクターから様々なシーンの「中割り画像」の生成ルールを学習する。中割り画像とは、リミテッド・アニメーションにおいて2枚の画像の間を補間する画像のことであり、アニメーションの動きを生み出す役割を担うものである。その後、生成された中割り画像の入力キャラクターの特徴点座標値の変化に着目することで、各シーンの生成のためのユーザ独自のルールを確立する。このキャラクターのルールを、ユーザが最初に描いたキャラクター以外にも適応できるようにすることで、それ以降に描かれるキャラクターについては1枚の入力のみで、様々なシーンが生成できるようにする。

PM: 藤井 彰人クリエータ: チーフクリエータ 古澤 知英 (早稲田大学大学院)・コクリエータ 福里 司 (早稲田大学大学院)
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

深層学習による高性能インテリジェントカメラの開発

近年、画像認識技術への関心が高まり、それを利用したアプリケーションが数多く登場している。しかし、高負荷な計算をサーバサイドで行う現状の構造では、サーバに接続されるカメラ付き端末の数がより増え、また求められる処理も高度化していった際に、サーバの処理能力やネットワークトラフィック等が問題となってしまうため、各クライアント端末で複雑な画像認識処理を行えるインテリジェントカメラというモデルが必要となる。 一方、現在の画像認識処理のメインストリームは深層学習(Deep Learning)であるが、その計算に一般に用いられているGPUは、携帯端末に搭載するには大きさ、排熱量、消費電力等の点で問題がある。しかし近年、FPGAを使ってDeep Learning専用ハードウェアを設計することで高い消費電力対性能比を実現したとする研究が複数発表された。 そこで本プロジェクトではDeep Learningによる高度な画像認識能力を持ったインテリジェントカメラを、FPGAを利用して開発する。本インテリジェントカメラは、写した対象の名前を判断するといった、単純な認識機能付きカメラとしての利用はもちろん、ドローンやロボットへの搭載等、様々な応用が期待される。

PM: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 教授クリエータ: 土屋 祐一郎
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

ユーザの行動を予測し生産性を高めるインタフェースの開発

パーソナルコンピュータ(PC)の普及、発展と共に、様々な種類のタスクがPC上で行われ、ますます多くの時間がソフトウェアの操作に費やされるようになった。これに伴い、ソフトウェアの使いやすさの重要性が高まっているものの、ユーザビリティに改善の余地のあるソフトウェアは多く存在しており、パソコン上の作業の生産性を下げてしまう要因となっている。 本プロジェクトでは、ユーザビリティを高めるため、ユーザが次にクリックする箇所を予測、提示し生産性を高めるインタフェースの開発を行う。具体的には、ユーザのPCのログデータから、どのような場合にどこがクリックされることが多いかを判別するようなシステムを構築する。予測したクリック位置を適切に提示し、そこでのクリックに特定のキーやボタンを割り当てることで、ユーザのより素早い操作を可能にする。 本手法では、ソフトウェアを直接改良することなく、生産性を向上させることが可能である。このような仕組みは作業の生産性を重視するような企業や、マウスでの操作に慣れていない高齢者において需要が見込まれる。

PM: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 教授クリエータ: 安野 貴博
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

空間知覚拡張のための“聞こえる化”デバイスの開発

本プロジェクトでは、カメラを通して得られる視覚情報を神経科学および機械学習の知見に基づいた手法で音響へと変換・提示することで、聴覚による空間構造の知覚機能を拡張させるウェアラブルデバイスを開発する。 デバイスは、カメラ、コンピュータ、ヘッドフォンから成る。コンピュータビジョンの手法により入力映像から特徴量を抽出した後、これらをパラメータとして 音声信号を合成する。映像を音に変換するデバイスは過去にも多く提案されているが、我々は近年急速に進展した物体認識技術および神経系の感覚情報処理に関 する知見を駆使することで新規的かつ実用的な変換手法を提案する。 我々のゴールは、本システムによって「眼という視覚感覚器官の入力なしに、音のみによって新たに得た空間知覚の経験はどのようなものか」という問いに答えることである。さらに、我々の提案する技術は擬似共感覚エンタテインメント、視力補助機器、X線・超音波等の不可視光の可聴化といった産業用途への幅広い アプリケーションも期待することができる。

PM: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 教授クリエータ: 和家 尚希・伏見 遼平・鈴木 良平・宗像 悠里
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

ウェアラブルなアクセサリ型環境計測デバイスの開発

昨今のヘルスケア用途のウェアラブルデバイスの多くは、バイタルサインや移動距離、消費カロリー、睡眠時間といったユーザ自身のステータスをモニタリング、記録、管理するものがほとんどであり、人々の周りの環境をセンシングし、ヘルスケアに役立てるモノやサービスはまだ少ない。 そこで本プロジェクトでは人を取り巻く環境の中で、太陽光から発せられる紫外線に注目した。太陽光は人々の暮らしに必要不可欠なものであり、健康を維持するためにも毎日10から15分の日光浴が必要だと言われている。しかし日光を浴びすぎると、それに含まれる紫外線が皮膚ガンや白内障・失明、免疫低下などをもたらしたり、日焼け、シミ、たるみといった肌へのダメージの原因にもなったりする。 本プロジェクトではまず、女性向けの紫外線対策を目的としたウェアラブルデバイスとサービスを開発する。小型な紫外線計測器などが市販されているが、携帯性やサービスの面で実用性が乏しい。本プロジェクトで開発するデバイスは、装着性とセンシングのしやすさから、カチューシャなどの頭部に装着するアクセサリ型デバイスとする。また本デバイスと連携させ、紫外線量の履歴や服装アドバイス等を表示できるアプリケーションソフトウェアを開発する。 加えて、紫外線以外の環境情報のセンシング、サービス開発の実現も視野に入れ、これらによるQuality of Life(QOL)向上を目指していく。

PM: 後藤真孝クリエータ: 笹田 安那・時 浩源
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

マウントアダプタの自動制御によるレンズ交換式カメラ拡張システムの開発

本プロジェクトでは、カメラの撮影技法であるアオリ撮影を自動的に行い、それをオートフォーカス・オートアパーチャー撮影のように手軽に使用するための制御ソフトウェアとインタフェースを開発する。カメラにおけるアオリ撮影は、ティルト撮影とも呼ばれ、専用のレンズや、マウントアダプタなども各社から販売されている。具体的には、カメラの光学系の光軸に対して、受光素子を焦点が合っている点を基準に回転させ、それにより被写体に対して焦点が合う面を空間的に傾ける手法である。本プロジェクトでは、オープンプラットフォームカメラ(https://opc.olympus-imaging.com)と、オートフォーカス・オートアパーチャーが利用できる交換レンズを、カメラ側から制御可能な電動ジンバル機構で接続し、手動で行っていたティルト操作を電動ジンバルによって自動化することで、これまでできなかったフルオートのティルト撮影を行うことが可能なカメラと、それの制御ソフトウェアを作成する。また、ティルト撮影をソフトウェア制御下にすることで、従来のデジタルカメラのリアルタイムエフェクトのように、複数の撮影モードを予め用意し、ユーザはそれを選択することで容易にティルト撮影を行うことができるインタフェースの開発も並行して行う。従来のティルト撮影においては、ほぼ全てのレンズに関するパラメータを手動による調整で制御する必要があったが、電動化によりそれらを予め設定した動作に従うように全自動で行うことが可能となる。また、動画撮影においては、既存の技術である追跡オートフォーカスと自動ティルトを組み合わせることで、新しいボケ表現や、動きを制御することができるティルト撮影と動画を組み合わせた、新しい撮影技法が実現する。

PM: 後藤真孝クリエータ: 篠田 篤
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

大域照明計算手法開発のためのレンダリングフレームワーク

写実的な画像生成のための大域照明計算手法の研究開発は、コンピュータグラフィックスにおいて重要な要素のひとつである。一般に大域照明計算手法の研究開発において、新たに実装した手法は既存手法との正確な比較・検証が求められ、研究開発のプロセスにおいて正しく・素早く手法を実装し、多数の手法に対して検証できる環境を用意することが肝要となる。 しかしながら、高度化、複雑化する近年の大域照明計算手法に対して、それらを実装・検証するための方法は限られている。多くの場合では、独自のレンダラを実装する、既存のレンダラに機能を組み込むなどして、新たな手法の実装・検証を行うが、これらの方法は必ずしも研究開発のプロセスに最適化されているとは言えない。複雑なレンダラとの整合性を保ちつつ拡張する場合や、フルスクラッチで実装する場合、実装や検証の時間が大きなウェイトを占めてしまい、研究開発として本質的な試行錯誤を十分に行えない可能性がある。また映像制作で用いられるレンダラと比較して、研究開発用途のレンダラではその要求が異なり、実行の最適化よりも正確性と拡張可能性、検証可能性に重きを置く必要がある。 本プロジェクトではこれらの課題に対処するためのレンダリングフレームワークを開発する。具体的には、本クリエータが実装し、実際に研究で用いてきたオープンソースレンダラLightmetrica を改良・発展させる。本プロジェクト開始までの段階で、拡張性の高いクリーンな設計のもと、様々な大域照明手法の実装を行い、マルチプラットフォーム化、クラスタ対応などの大規模化、実用に耐えうる実装を行ってきた。本プロジェクトではこれをさらに発展させ、設計の改良や最新手法の実装を加え、より使い勝手の良いフレームワークを実現する。

PM: 後藤真孝クリエータ: 大津 久平
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

集団運動・動物行動の解析ソフトウェアの開発

動物たちの行動でひときわ目立つものが、集団運動である。魚や鳥は集団を形成し互いに協調して動き回ることで、あたかも集団が意思を持つかのように振る舞う。動物の集団行動を応用しようという試みとして群知能というものが存在し、ロボティクスや最適化アルゴリズムなど様々な分野で応用されている。 このように応用範囲も広く重要な分野であるが、集団運動・動物行動の学会などの発表をみると、個体追跡が出来ないために行動の定量化に苦労している研究者が散見される。そして、いくつかの個体追跡ソフトウェアを実際に使用してみると、それらが利用者のニーズを無視しており、結果として研究の発展を妨げているということに気づかされる。 そこで本プロジェクトでは、集団運動・動物行動の解明に寄与する個体追跡ソフトウェアを開発する。複数の研究者からヒアリングを行い、必要十分な画像処理機能と分かりやすいGUIを備えた、利用者のニーズに合ったソフトウェアを実装する。特に、煩雑となる画像の前処理段階においてビジュアル・プログラミングを導入することにより、見通しよく個体追跡を行えるようにする。さらに、研究者だけでなく、一般の人々も含めて幅広く利用できるツール、応用の実現を目指す。

PM: 後藤真孝クリエータ: 竹内 理人・山中 治
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

ゲームをハックすることでプログラミングを学習する教材の開発

本プロジェクトでは、子供達がプログラミングの面白さに気づき、熱中して学ぶ世界を実現するために、プログラミングを知らない人でもプログラミング学習が楽しいと思えるような教材となるWebサービスを開発する。本プログラミング教材は、学習を楽しむためにゲームを使った形式をとり、そのゲームはプログラミングにおける学習要素に応じた複数のステージで構成され、ユーザはゲームを進行させるために、そのゲームをハックしてステージをクリアする必要がある。 本プロジェクト開始までに開発・公開したゲーム教材は、パラメータの書き換え等、比較的簡単な学習要素を中心にしたステージで構成されている。加えて、ユーザがオリジナルステージを制作、あるいは既にあるステージのソースコードを改変することによる改造ステージを制作して、それを新しいステージとして投稿することを可能としており、これにより本サービスでプログラミングを学んだユーザがコンテンツ提供者になっていくエコシステムが構築されている。 本プロジェクトでは、本システム単体でプログラミング学習が一通り完結するようなシステムを構築することを目指し、より高度な学習要素(例えばプログラミング言語の文法)を学べるステージの追加や、ユーザが学習したプログラミングの技術を活かし、より幅広い種類のステージを制作できるようにする改良を加える。また、サーバ上に保持しているログを元に、ユーザの努力や長所を可視化するシステムを開発することで、本システムにおけるユーザの学習内容を他者が評価し易くなるようにする改良も加える。 更には、ソースコードのバージョン管理や、画像や音楽などのリソースを管理するための機能の追加を追加することで、ステージ制作に慣れてきたユーザがより本格的な開発ができるようにすることや、制作したステージを携帯端末で遊べるようにしたり、ステージごとにユーザがコメントを投稿できるようにしたりすることで、ユーザが本教材をより楽しめるようにする仕組みづくりを目指していく。

PM: 首藤一幸クリエータ: 寺本 大輝・谷口 諒
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

作曲・演奏支援のための候補提案型鍵盤楽器システムの開発

近年、動画サイトや音楽SNSなどの普及により、アマチュアによる音楽創作の需要が急速に高まっている。しかし高品質な音楽作品創作のハードルは高く、本格的に作曲を学ぼうとすると、数年からそれ以上の学習期間が必要になる。 そこで本プロジェクトでは、音楽創作の学習コストを下げるための作曲・演奏活動支援システムを開発する。具体的には、ユーザ入力に対し複数の演奏候補音を提案し続ける、インタラクティブな鍵盤楽器型システムを実現する。 本システムでは、音楽理論や和音進行など学習コストの高い専門知識を計算機内にモデル化し、これに基づく演奏候補音を平易なユーザインタフェース(UI)を介してユーザに提案する。鍵盤上のUIを複数の異なる色やテクスチャで装飾することにより、次に演奏すべき候補音を直感的に誘導することで、ユーザは提案された候補から好きなものを適当に打鍵していくだけで楽曲を創作・演奏することができる。 本システムは言わば表面が動的に変化する鍵盤楽器であり、実際の鍵盤へのUI投影(プロジェクションマッピング)や、タブレット端末のアプリケーションなど、様々な形式で実現が可能である。本システムは既存の演奏支援システムとは異なり、楽器や楽曲の修得に留まらない音楽的な自由度と創造性を尊重する。また、既存の作曲支援システムとは異なり、UIの直感性、身体性、そして即興性を尊重する。システムはこれらの特徴を保証することで、「システムによる候補音の探索・提案」と「ユーザによる候補音の選択・評価」の実時間フィードバックループによる、学習コストの極めて低い創造的音楽体験を提供できる。更に、本システムは鍵盤楽器以外への応用やユーザ演奏傾向の反映、ネットワーク連携による世界的規模のモデル学習などを視野に入れ、最終的には実用性・信頼性が高く、かつ手軽な音楽創作支援環境の実現を目指す。

PM: 首藤一幸クリエータ: 村岡 眞伍
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

鑑賞者を感動させる絵画を創作する人工システムの開発

本プロジェクトでは、鑑賞者を感動させる絵画を創作する人工システムを構築する。 花を見て美しいと感じる、スポーツカーを見てかっこいいと感じる、夕日を見て何か物悲しく感じる。このように人が何かを見ることは、モノの理解に留まらず印象を感じることも伴う。花を花と理解するだけではなく、それを美しいと感じる感性を人は持っている。モノの理解はある程度一意に定まるものであるが、モノから印象を感じ取る感性は人それぞれ異なっている。感じ取った印象を表現し、他者と分ち合おうと絵や音楽、物語を作り出すことが、創作の一側面であるとクリエータは考えている。近年、画像認識の分野において、計算機がモノを理解する技術は飛躍的に進歩している。しかし、モノに対する人それぞれが異なる感性などの認識を計算機が推定することは出来るのであろうか。また、感性を生じさせるような作品を人工システムが作り出すことはできるのであろうか。本プロジェクトではこれらに挑戦する。 本プロジェクトでは、人工システムによる絵画創作で、人の内部から生じる主観的、直感的なものである感性の表出を起こせないか検証する。そして、人に生じる感性を推定する機構と、多様な絵画を生成できる機構を構築し、それらを組み合わせることで、人工システムが人を感動させる絵画を作り出せるようにすることを目指していく。

PM: 首藤一幸クリエータ: 佐藤 哲朗
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

会話の流れがわかるグループコミュニケーションツールの開発

近年、IT技術の発展もあり、様々な場所で多くの人がネットを通じてテキストメッセージを送りあい、リアルタイムなコミュニケーションを行っている。最近では閉じたグループ内でのコミュニケーションを支援するサービスが広く展開され、多くの人々が利用している。グループコミュニケーションツールは、グループでの情報共有を支援し、時にはそのチャットスペースがグループの意思決定の場ともなっている。 しかしながら、このような重要な役割を担っていながらも、これまでのグループコミュニケーションツールには幾つかの問題点がある。リアルタイムグループコミュニケーションでは、複数のグループメンバーが多くのメッセージを発信し合うため、話題の異なるメッセージがグループチャット上に混在し、文脈理解の妨げとなる。チャットスペースごとにトピックを定めたとしても、そのトピックに関連する複数のサブトピックの議論が行われるため、文脈理解の根本的な解決にはならない。 本プロジェクトでは、メッセージをスレッド構造にて、議論の流れをツリー構造にてリアルタイムに表現することで、複数の同時並行する会話の流れを、一瞬にして理解できるグループコミュニケーションツールの開発を行う。本ツールによって、チャットによるグループコミュニケーションの密度、精度が格段に向上し、ひいては対面で交わす通常の会話よりも正確に、円滑にコミュニケーションを取ることが可能になることを目指す。

PM: 藤井彰人クリエータ: 今井 晨介
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

野球のピッチング動作を定量的に解析するアプリケーション

現在の野球界では、野球動作の仕組みを表現するにあたり、感覚的・抽象的な用語が根付いてしまっており、野球動作が正しく理解されているとは言い難い状況が出来上がっている。例えば、「開きを抑える」や「タメをつくる」といった感覚的な表現で野球動作が説明される場面が多々ある。感覚やイメージは人それぞれ違うものであり、それら表現の解釈は人によって異なるため、誤解を生じさせやすい。誤解は間違った知識を生み、それが野球技術の向上を妨げることにも繋がるため、多くの選手やコーチを悩ませている。 そこで本プロジェクトではまず、感覚的表現が多く使われ、動作のバリエーションも多く解析が難しいピッチングに着目し、安価な深度センサー付きカメラを用いてユーザのピッチング動作を撮影し、撮影したデータを使った定量的な動作判定、及び動作の悪い箇所・良い箇所を示すシステムを開発する。さらに、悪い動作になってしまう原因を突きとめ、それを改善するための定量的・具体的な解説も提供する。 本システムがもたらす効果は、大きく分けて二つある。一つ目は、安価な機器のみで動作解析ができるシステムを提供することによって、より多くの人々の技術向上の手助けとなることである。スポーツ科学の研究などで使用されているモーションキャプチャ装置は、高価なもので数千万円もするが、本システムではそれよりも百分の一以下の価格の機器のみで動作を測定し、動作を解析できるようにすることで、より多くの人々が動作解析を享受できるようにする。二つ目は、悪い動作の原因をより定量的・具体的に分析、説明することで、動作の仕組みの正しい理解が促進、普及されることである。正しい動作の仕組みの理解が広まることは、野球界に根付いてしまった間違った知識や勘違いを解消するきっかけになるだろう。また、本システムは野球のみならず多くのスポーツへも応用可能なものであり、それらに対しても同様の効果を生むものと期待される。

PM: 藤井彰人クリエータ: 佐藤 邦彦
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

デザインの継続的インテグレーション支援ソフトウェア

さまざまなIT系サービスが我々の生活に深く浸透した昨今、巨大なソースコード群を組み合わせて作り上げるソフトウェアアプリケーションは大きな複雑さをはらむようになった。各ファイルの履歴をさかのぼり、差分を保管し、必要であれば復元するという基本的動作は、現代のソフトウェア開発において欠かせないものである。CVSを始祖とするオープンソースのバージョン管理システムは、GitやSubversionといったより安全で利便性が高いツールへの発展を促し、開発効率の飛躍的な向上をもたらした。一般的に、こういったコードベースのバージョン管理ツールは、開発者の生み出したプログラミングコードにおける差分を追跡・記録することを主な目的としている。 しかし、デザイン開発においては、こういったバージョン管理ツールとの相性はあまり良いものではない。どの企業のデザイナーもコードの差分とともにスクリーンショットを撮り、それを目視することで多人数での開発を進めている。レンダリング結果を比較し、その差を確認してレビューするだけでも大変な手間である上、自身が予期しないページで画面の崩れやバグが発生することは、デザイナーを悩ます不可避な問題である。 本プロジェクトではその問題の解決策として、デザイン開発における継続的インテグレーションの支援ソフトウェアを開発する。デザインの変更を自動で検知し、変更をもたらしたコードを特定することにより、自動化されたテストで回避できないデザイン上の問題を解決することが本プロジェクトの主な目的である。

PM: 藤井彰人クリエータ: 内藤 剛生
採択金額: 2,304,000
2015年度未踏IT

音楽・マルチメディア用ビジュアルプログラミング言語からHDLへの高位合成ツールの開発

音や映像を扱う芸術家・プログラマ・製品開発者の間では、Cycling’74 Max(以降Max)をはじめとする音楽・マルチメディア用ビジュアルプログラミング言語/統合開発環境がよく利用されている。本プロジェクトでは、彼らへの支援を目的としたMaxからハードウェア記述言語(Hardware Description Language、以降HDL)への高位合成ツールを開発する。本ツールを用いてMaxのコードをHDLに変換し、最終的に集積回路化してFPGAにコンフィグレーションすることで、Maxで書かれたコードの一部をFPGA上の処理として利用することが可能となる。Maxプログラマにとっては、既存のプログラムの高速化/低負荷化に加え、ハードウェア開発も行えるようになる利点がある。また、 HDLプログラマにとっては、Maxで開発したプロトタイプをそのままハードウェア化できる利点がある。 Maxは、ハードウェア上で処理系を実装する価値が高い、並列なデジタル信号処理の記述を得意とするプログラミング言語である。従って、処理のハードウェア化との親和性は非常に高く、本ツールには大きな価値がある。 本ツールにより、Maxでの処理をハードウェア化する有効性とその親和性を示し、ソフトウェア世界で表現を行う芸術家や愛好家たちの手の届く領域を、ハードウェア世界まで拡張することを目指す。

PM: 藤井彰人クリエータ: 青木 海・尾﨑 嘉彦
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

手の動きに特化したコミュニケーションツールの開発

手話という言語は、視覚言語かつ身体言語として音声言語と異なる性質を持つ。例えば現実空間における物を手でそのままに模倣して表現することができたり、空間という3次元性に加え時間軸が存在するため4次元的であったり、ビジュアルのイメージで会話をしたりすることが可能である。手話は人間が日常生活で物や人に対して行う振舞がもとになっている表現が多く、それらの物を無意識的にどう扱って来たか、どのように接して来たかということが基本文法となっており、伝えたい物の質量、材質、軽さ、形状、熱いか冷たいか、等をイメージし、そのものに対しての振舞を表現することでコミュニケーションを図るため、情報空間に対しても物質的な感覚を持ち込むことを可能にするとともに、各国の言語を超えてコミュニケーションをする手段としても有効である。 本プロジェクトでは、画像処理と機械学習を用いて手の動きの「らしさ」と創造性を獲得して表現するコミュニケーションツールを開発する。現在、耳が聞こえない子どもたちは、耳が聞こえる両親の元に生まれ普通学校で育つ割合が多く、手話を覚えるための手段、機会を持つことが難しい。本ツールにより、耳が聞こえない子どもたちが楽しみながら手話の文法を学ぶ機会が提供できるようになることが期待される。加えて、本ツールを用いた表現の共有を可能とする場を提供することで、耳が聞こえない子どもたちだけでなく、より多くの人々に対して、言語の壁を越えたコミュニケーションを可能とさせることが期待できる。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 和田 夏実
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

音声に合う口の動きを実現した吹替え映像を容易に作成するソフトウェア

近年、海外から発信された映像コンテンツに触れる機会が著しく増加しているが、他言語の映像コンテンツを楽しむ上では、言葉の壁が障害となる。この障害を取り除く方法の一つとして吹替え処理が挙げられる。吹替え処理は「映像に集中できる」「音声から感情を読み取りやすい」等のメリットがあることから、他言語映像作品を観る上で一般的な手法である。しかし、吹替え処理には、口の動きと吹替え音声が一致していないという大きな問題がある。この口と音の不一致は視聴者に違和感を与え、吹替え映像を楽しむ上で大きな障害となる。また、耳が不自由な人は口の動きから音声を推測していることから、吹替え処理が施された映像を字幕なしに楽しむことができない。 そこで本プロジェクトでは、より多くの人々が違和感のない吹替え映像を享受できるように、入力された動画の口の動きを吹替え音声に一致させることで、吹替え動画を簡単に作成することができるアプリケーションを開発し、吹替え映像のユニバーサルデザイン化を目指す。本システムにより、従来の映像から感じられた違和感がない吹替え映像を作成できるようになることに加えて、翻訳家が思い描くニュアンスを最大限に表現した映像も作成できるため、翻訳業界に対して新しい吹替え映像の在り方を示せるものと見込んでいる。加えて本システムは、吹替え映像に限らないエンターテインメントへの応用や、オンラインビデオ電話ツール等の実用的なアプリケーションへの応用も期待できる。

PM: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 教授クリエータ: 古川 翔一
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

高品質なセンサシステムを容易に構築可能にするプラットフォーム

本プロジェクトでは、社会インフラの維持管理、農場における生育指標モニタリングなど、実世界のセンシングを支援するプラットフォームを開発する。 既に多くの IoT(Internet of Things)プラットフォームが展開されているものの、それらは無線通信やデータ管理に閉じているものがほとんどであり、各種分野の研究者・技術者が必要としている高品質な計測を直接的に支援するものは存在しない。土木系技術者や農学系技術者など、組み込み技術に精通していない研究者・技術者でも、高品質なセンシングシステムおよび可視化システムを開発可能なプラットフォームが重要である。よって本プロジェクトでは、100マイクロ秒程度の精度で同期してセンサ 値をサンプリング可能で、ロスなくデータを収集できるセンシング基盤を開発する。加えて、同期センシングという特徴に基づいたシンプルなデータ構造を策定し、それを用いた高速なデータ処理とアプリケーションに依存しない可視化機能を提供する、データ解析プラットフォームを開発する。 本プロジェクトを通じて高品質なセンシングとデータ解析への技術的障壁を大幅に下げるだけに留まらず、オープンソース化、ビジネス化を含めた展開を目指す。センサネットワークが重要かつ手軽なツールとして広まることで、革新的なアプリケーションや新しいサービス・ビジネスの創出につながると考えられる。

PM: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 教授クリエータ: 神野 響一
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

手書き文字を美しく書くためのソフトウェア

手書き文字を美しく書くことは、人間の長きにわたるテーマであり、欲求である。現代では、文字を綺麗に書くための元となるものはコンピュータによるフォントである。確かにフォント文字は万人が綺麗に感じる文字であるが、文字本来が表現する美しさは失われている。美しい文字の定義は難しいが、美しさは主観的な評価であり、それは個人が今まで積み重ねてきた文字にこそ見出される。手書き文字の需要は、その美しさの表現にあり、事実、結婚式の両親への手紙等、自分の感情や思いを伝える場面では、手書き文字が用いられることが多い。そのような場面は人間らしさというものが顕著に表れる場面であり、人が豊かな生活を送る上で重要な場面である。 手書き文字を美しく書きたいという欲求を満たすために、本プロジェクトでは、 の二つの条件を満たす、文字を美しくための文字位置を推薦するシステムを開発する。 具体的には、あらかじめ書きたい文章と、書く対象を入力し、美しく見える最適な文字位置をソフトウェアによって計算し、プロジェクタ等を用いてユーザに推薦位置を提示する。 文字位置は文字の美しさを決定する重要ファクターであり、文字位置の決定はプロの書家であっても容易ではない。本プロジェクトで(1)の条件を設定した理由は、文字自体に処理を施すと、手書き文字の良さである個性の表現が困難となるからである。また、条件(2)の設定理由は、手書き文字が実際に使われる場面は実物の紙に筆記用具で書く場面が多いからである。 本プロジェクトによって、個人の文字の美しさを引き出すことが可能となり、人々が文字を書く楽しさを知るきっかけを得て、より豊かな生活を送るための支援となることを目標とする。

PM: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 教授クリエータ: 中村 優文・山口 周悟
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

カーネルソフトウェア開発支援ツール

本プロジェクトでは、DBI(Dynamic Binary Instrumentation)という手法を用いたLinux向けカーネルデバッガをはじめとする、カーネルソフトウェアを開発するための支援ツールを開発する。 DBIとは、対象とするプログラムのバイナリコード、もしくは中間表現内にデバッグ用のコードを挿入し、プログラムの動作を詳細に解析する手法であり、この手法はValgrindのようなバグ検出、プロファイラを備えた動的解析ツールに利用されているが、現存する多くの動的解析ツールは、デバイスドライバなどのカーネルプログラムには対応しておらず、これらの開発にあたっては、デベロッパは依然として古典的なデバッグ手法を強いられている。 本デバッガはカーネル空間にも対応したデバッガであり、さらにDBIを用いることでドライバ開発などのシステムプログラミングの効率を格段に向上させる。本デバッガは開発対象とするOSをQemuベースのVM上で動作させ、ホスト側からそのVM上のOSに接続した後にデバッグを開始する。Qemuの中間表現であるTCG micro codeにDBIを適用することで、Memcheckやデータの流れを追うためのテイント解析など、多種多様なデバッグ手法がカーネル空間に対して利用可能となる。加えて本デバッガはQemuの中間表現を使用するため、異なるアーキテクチャのカーネルに対しても容易に適用・拡張可能なことも特徴である。 本プロジェクトでは、デバッガフロントエンドにTimeless Debugging方式を採用することによるさらなるデバッグの効率化や、デベロッパが使いやすいユーザインタフェースの提供等、カーネルソフトウェアの開発を強固に支援する総合的なツールの実現を目指していく。

PM: 後藤真孝クリエータ: 木村 廉
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

音を用いた農作物の鮮度計測

近年、農作物の輸出入の自由化の流れの中で、日本の農産業の衰退が懸念されている。海外の安価な農作物に対抗するには、その鮮度で競うことが一つの最良な方法である。輸入品は国産の農作物に比べ消費者の手に届くまでの時間がより多くかかるため、それに伴い鮮度も低下する。栄養価と鮮度は農作物の品質を測る重要な要素である。現在、近赤外線を利用した、農作物の『栄養成分の含有量』を計測する手段は多く存在する。しかし、農作物の『鮮度』を計測する技術の開発は進んでいない。 本プロジェクトでは、音プローブに注目した農作物の鮮度可視化システムを開発する。本システムは小型のマイクロフォンとスピーカーを使用し、機械学習を用いて鮮度の識別を行う。具体的には、スピーカーからスイープ音を出力し、それを野菜や果物に当て、その反射音や透過音を採取する。採取されたデータから特徴量を抽出し、それに対して機械学習を用いることで農作物の鮮度を計測する。本システムは音を用いることで、近赤外線では取得困難な情報を得られる。加えて、安価で手軽なデバイスによる鮮度計測が可能となる。

PM: 首藤一幸クリエータ: 片岡 秀公
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

個人に紐付くメディア情報を用いたコミュニケーション可視化ツールの開発

我々は日々、他者との面と向かったコミュニケーションによって様々な情報を受け取っている。コミュニケーションでは、自分が知らなかった情報を得たり、また相手に自分が知っている情報を伝えたり、というような情報伝達手段としての側面は重要である。しかしそれ以上に、コミュニケーションを通した相互理解や自己の承認感を得ることこそが、コミュニケーション欲求を掻き立てる。一方で、コミュニケーションにおける行き違いは人間関係を壊すことにもつながりうる。相手が怒っていたり、もう話に飽きていたりするのに自分の話を続けてしまい、相手の気分を害してしまう、という経験は誰しもあるだろう。このように、他者の心情の推定は人間にとって非常に重要な意味を持つにも関わらず、とても曖昧な形でしか推測することが出来ない。 本プロジェクトでは、このコミュニケーションによって生じる心理的作用の不可視性に着目し、人に紐付けられたメディア情報、及び過去の対話履歴から、コミュニケーションによって生じる心情変化を拡張現実感として付与するシステムを開発する。そのために、画像や音声、言語からリアルタイムで心情認識を行いながら、同時にそれらを統合するようなモデルを構築する。本システムにより、これまで人間が気づかなかったコミュニケーションの新しい楽しさが発見され、より良い相互理解を促すことが期待される。

PM: 首藤一幸クリエータ: 内橋 堅志・宮戸 岳・高濱 隆輔・寺田 凛太郎
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

FPGAを活用したスケーラブルな高速分散データベースの開発

2015年12月にIntelがFPGA(Field-Programmable Gate Array)大手のAlteraを買収したことは、CPUとFPGAが統合されたSoC(System-on-a-Chip) FPGAが今後のプロセッサの主流となりつつあることを示唆している。これにより、近いうちにクラウド上における計算量の大きい処理等は、FPGAにオフロードされるようになると予想される。その意味で、FPGAを効果的に扱えるOS、ドライバ、セキュリティ機構の必要性は非常に高い。 併せて、昨今のIoT(Internet of Things)ブームにより、ビッグデータ処理の必要性は益々高まっている。しかしながら、日本には大規模なデータを捌け、かつIT産業内で普及しているデータベース(以降DB)が存在しない。GoogleやFacebook等の世界に名立たるIT企業はそういったDBを自前で有しており、これが各社の優位性に繋がっている。 本プロジェクトでは、FPGAを活用した、既存のDBよりも高速な、無限にスケールする分散DBを実装する。また、その実現のために必要なOSやドライバに対する機能も同時に実装する。FPGAの活用手法としては、DB機能を向上させる各種オフロード処理に加え、ネットワーク遅延の低減なども想定している。これはプロセッサ統合型FPGAに縛られず、FPGAというアーキテクチャ自体の様々な応用方法を模索するためのものである。本プロジェクトで開発する分散DBは、Apache Cassandra等に代表される、大規模にスケール可能で単一障害点のないP2P型にすることを想定している。分散ハッシュテーブル(Distributed Hash Table, DHT)におけるノード探索等でFPGA処理による低遅延性を活用する他、DBに格納するデータが今後ますます複雑化、大規模化していくことを見据えて、それらの処理の一部をFPGAにオフロードする。

PM: 首藤一幸クリエータ: 粟本 真一・包 含・関 祥吾・今井 雄毅
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

Webサービス開発フローと親和するWeb3Dライブラリ

ゲームの分野でのみ使われてきたリアルタイムな3DCG技術が、一般向けの広報・宣伝にも活用され始めている。インターネット回線の速度向上とモバイル端末の高性能化を背景に、3DCGは文字、画像、動画に次ぐ新しい表現技術として確立されつつある。 一方でHTML5技術である「Web3D」についてはGoogleやFacebookなどグローバル企業以外は大企業ですら活用できていない現状がある。なぜなら、リアルタイム3Dを扱うアプリケーションを簡単に開発できるUnityなどの開発環境は、ゲーム開発に特化して進化してきた結果、ウェブの文化や開発フローに適応できなくなった。仮にWeb3Dを独自で一からサービスに組み込むため開発するとしても、多くの3D数学、及びこれまで長い間リアルタイムグラフィックス技術の分野で培われた難しいアルゴリズムが必要になる。 本プロジェクトでは、Web3Dが真の意味でその力を発揮するために、Webエンジニアが従来の知識の延長線上でWebサービスのフローと融合した3D開発を行えるようにするライブラリを開発する。本ライブラリにより、新たな表現や差別化の手段として、誰もが自由に3DCGを選択できる未来が期待される。Webでの3D表現が当たり前になる近い未来において、本ライブラリはコンテンツ産業の活きる道を広げる基幹技術となりうる。 本ライブラリのレンダラのコア部分は本プロジェクト開始までにほぼ完成している。本プロジェクトでは、Web3Dに求められるライブラリとは何かを考え実装していくとともに、本ライブラリがオープンソースソフトウェアとして新たな開発者、ユーザを増やすための機能も追求していく。

PM: 首藤一幸クリエータ: 石井 翔・秋澤 一史・大谷 拓海・城山 賢人
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

Web技術を利用したモダンなパケットアナライザの開発

本プロジェクトでは、Web技術を応用したJavaScriptベースの新しいグラフィカルパケットアナライザを開発する。パケットアナライザを利用すると、コンピューター上で通信されているデータをキャプチャ・解析して、それを人間の理解しやすい形式で表示することができる。近年のソフトウェア環境では、WebRTCやHTTP/2などの新しいプロトコルの実装やデバッグだけでなく、セキュリティの観点からのアプリケーションの通信の解析など、パケットのモニタリングが有用になる場面は多い。しかし、様々なユースケースに柔軟に対応するためには、従来のパケットアナライザのアーキテクチャでは限界がある。 そこで本プロジェクトでは、Wiresharkなどの既存のパケットアナライザの基本的な機能を踏襲しつつ、Web技術の利点を活かして、より拡張性のあるモダンなコンセプトで設計されたパケットアナライザを開発する。例えば、ソフトウェアを構成する機能をそれぞれパッケージ単位に分離することにより、ユーザは自身が必要な機能だけをインストールしたり、作成した拡張機能を簡単に配布したりすることができる。また、HTMLやCSSを駆使した自由度の高いGUIの開発によって、複雑なパケットの構造を視覚的によりわかりやすく表示させることも可能になる。

PM: 竹迫良範クリエータ: 𣘺本 論
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

ハイパーバイザ技術を用いたクロスOSなLinuxバイナリ互換プラットフォームの構築

本プロジェクトでは、「底の抜けた」ハイパーバイザを用いた、非Linux OS上で動作し、Linuxとバイナリ互換性を持つ全く新しいPOSIXサブシステムを開発し、次世代のLinuxバイナリ互換プラットフォームとしての普及を目指す。 本システムはWindowsのアプリケーションであるCygwinのように、ネイティブアプリケーションとしてPOSIX互換レイヤを実装するものではなく、ハイパーバイザモジュールとその上で動作する薄いカーネルおよびホストOSで動くネイティブプロセスからなるLinuxサブシステムとして実装するものである。例えばWindows OS上で本システムを実現する場合では、ハイパーバイザのカーネル空間に本システムの薄いカーネルが載り、ELFアプリケーションはPEフォーマットにマッピングされることなく直接ユーザー空間にロード、実行される。ELFアプリケーションが発行する各種システムコールはハイパーバイザの機構によって本システムに届けられ、本システムはそれをLinuxシステムとして必要な処理を行った後、ハイパーバイザコールおよびホストプロセスを用いてホストOSのAPIへとマッピングすることで、非Linux OSにおけるLinuxバイナリ互換性を達成する。 さらに本システムでは、apt-getなどの慣れ親しんだパッケージマネージャを非Linux OS上へ導入できるようにする。バイナリ互換性と外部パッケージマネージャの利用により、低コストで本システムの実用性を飛躍的に高めることができる。 本システム自体は特定のカーネルやOSに依存しないアーキテクチャであるが、WindowsについてはMicrosoftによるUbuntuのbashのネイティブ対応が公式アナウンスされており、FreeBSDについては本アーキテクチャとは異なるLinuxエミュレーション機能が既に備わっているため、本プロジェクトでは第一の対象OSとしてOS Xを据える。つまり、本プロジェクトの成果により、OS X、Windows、FreeBSD、そして当然Linuxという4つの主要なOS上でLinuxアプリケーションが動作する時代が来ることになり、今後のアプリケーション開発環境に多大なインパクトをもたらすことが期待される。

PM: 竹迫良範クリエータ: 佐伯 学哉・西脇 友一
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

音声に視覚的特徴を加えて振返りを支援するシステム

音声記録には次のようなメリットがある。 そのため音声記録を学習時に用いれば、振返りに役立つ可能性がある。しかし、音声記録には「一覧性の低さ」という欠点があり、聞き返しには時間がかかってしまう。本クリエータはこれまでに、効率良く授業の音声記録を聞き返すために、音声を軸とした瞬時のタグ付けを可能にする音声記録アプリケーション「Recture」を開発してきた。Rectureの特徴は、録音しながら重要だと思った箇所に対して瞬時にタグ付けできる点で、ユーザは後からそのタグを頼りにして、重要箇所のみダイジェストで音声記録を再生することができる。RectureはU-22プログラミング・コンテスト2015での経済産業大臣賞をはじめとして複数のコンテストで受賞するなど高い評価を受けたが、β版でのユーザーテストを行う中でいくつか課題が発見された。本プロジェクトでは、それらの課題を解決するため、Rectureに対して以下のような改善を行う。 これらによりRectureの使い勝手を大きく向上させてユーザの学習効率を向上させると同時に、授業の振返り以外の目的にもRectureを活用できるようにすることで、さらなるユーザの獲得を目指す。

PM: 藤井彰人クリエータ: 藤坂 祐史
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

日本の医療を救う電子カルテ検索システムの開発

近年病院では電子カルテシステムの導入が進んでおり、医療従事者は電子カルテを使って情報の読み書きや保存をしている。しかし、その大量に蓄積された医療情報は検索・解析されていない。なぜなら医療従事者にとってそれは技術的に難しく、また検索の可能性に気づいていないからだ。医療データは欠損値が多く、不定期の時系列データであり、更に非構造化されたテキストである。また医療従事者によってカルテの記載表現が異なり曖昧な文章が多い。よって容易に検索できない。 現在、医療ビッグデータで解析されているのは、すべてDPC(Diagnosis Procedure Combination, 診断群包括分類)という診療情報であり、カルテの内容が解析されるケースはない。DPCは入退院記録や診断名という明確なデータであるが、患者の一部の側面しか捉えていない。患者の情報の殆どはカルテに記載されている。それにも関わらず、カルテの情報処理については未開拓となっている。 電子カルテの検索を医療従事者が行えば、現在の医療を大幅に効率化できる。例えば「緊急を要する患者が来た時、治療のため患者の既往を調べたい。致死的な持病やアレルギーがないかだけでも今すぐに知りたい。しかしこの患者は高齢者であるため通院期間が長く、多くの合併症を有している。カルテの内容が大量で複雑だ」というケースでカルテを瞬時に検索できれば、時間短縮になり患者の命を救う確率を高める。その他にも「担当患者と類似する患者」を検索することで、その患者の予後を大まかに把握できる。また検索によって「特定の患者群を抽出する」ことができれば、治験や臨床研究が更に効率よく促進される。 本プロジェクトでは既存の電子カルテシステムと競合することなく、検索のみに絞ったシステムを開発する。技術的な課題を機械学習や自然言語処理の技術を用いて解決し、医療従事者に使いやすいGUIを持った高速なソフトウェアを開発する。その結果、電子カルテの情報は効率的に用いられ、今以上に正確で無駄のない安全な医療が行なえる。本ソフトウェアが、毎年増加している国の医療費を削減し、医療費の増加に歯止めをかける一助になることを期待する。

PM: 藤井彰人クリエータ: 中野 哲平
採択金額: 2,304,000
2016年度未踏IT

システムソフトウェア開発プラットフォーム

近年、小型コンピュータとクラウドコンピューティング環境の組み合わせによる「モノのインターネット(Internet of Things, 以降IoT)」が大きく注目されている。最近はクラウドサービス事業者がIoTプラットフォームを提供するケースが増えており、国内事業者の参入も発表されている。しかしながら、それらのプラットフォームで現在提供されているSDKを利用したIoTアプリケーション開発は、例えるならWebアプリケーションフレームワークを使わずに一からWebアプリケーションを作るような面倒臭さがある。 そこで本プロジェクトではIoTアプリケーション(システムソフトウェア)を高速・効率的に開発するためのプラットフォーム・フレームワークを開発する。本プラットフォーム上では、Web IDEやオンラインのビルド環境、エミュレータを利用した実行環境の提供することに加えて、アプリケーションを配布するためのコミュニティも構築する。その上で、Webアプリケーション開発におけるRuby on Railsのような、簡単かつ高速にシステムソフトウェア開発を可能にするためのフレームワークを開発する。 本プロジェクトの目標は、システムソフトウェアの開発における確固たる地位を獲得し、IoTを更に推進していくことである。

PM: 藤井彰人クリエータ: 怒田 晟也・左野 寛之
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏アドバンスト

日本の医療改革へ~医師が患者経過を自動で把握できるソフト開発

現代医療における課題の一つに、患者が病院に来なければ医師は患者の経過を把握できないことがある。このため、完治まで寄り添う医療を実現できていない。 本プロジェクトでは、医師にとっては患者の経過が把握でき、患者にとっては「治るまで医師に診てもらえている安心感」を与えるソフトウェアサービスを提供する事業を具現化することで、この問題点を解決する。 まずクリニック内での医師と患者の会話内容を自動でカルテのように要約をし、その内容を元にLINE BOTが適切なタイミングで患者に経過を尋ね、患者がボタン一つで経過を伝える。医師はWebsiteで経過を閲覧し、状況に応じて患者のLINEに個別にメッセージを送ることで通院していない患者の経過をフォローする。この実現を通じ、患者には「治るまで医師に診てもらえている安心感」、医師には院外リスク管理と診療継続の機会というサービスを提供する。 また、この事業は薬局にも展開可能であり、並行して事業展開を検討する。

PM: GLOBAL CATALYST PARTNERS マネージング・ディレクター兼共同創設者クリエータ: 中野 哲平・池田 一毅・服部 俊佑・加藤 智信
採択金額: 7,000,000
2017年度未踏アドバンスト

CAEプロセスを刷新する自動六面体メッシュ生成技術の開発

CAE(Computer Aided Engineering)は、計算機による物理シミュレーションによって、製品の設計と性能評価を行う技術であり、設計プロセスの基幹技術として重要な役割を担っている。 本プロジェクトは、CAEにおいて最も重要な技術のひとつである解析モデルのメッシュ生成に対して、任意の3D形状データから、より高い解析精度の得られる六面体メッシュを自動で生成するソフトウェアを開発する。本プロジェクトによって品質の高い六面体メッシュを生成できれば、機械学習アルゴリズムと組み合わせて、形状最適化・パラメータ最適化や、解析解の収束性が担保できるなど、これまでメッシュ生成がボトルネックになっていた解析最適化技術の普及を大きく促進できる。 また、本プロジェクトで開発するソフトウェアを活用し、メッシュ生成タスクの請負業務を事業化する。将来的には、大手CAEメーカーへのライセンス販売、メッシャー・CAEスイートの販売・コンサルティングへと事業を拡大するため、事業期間内に、ビジネスモデル構築に向けた企画・マーケティングを実施する。

PM: 久保渓クリエータ: 菅野 朋典・堀江 正信・井原 遊・森田 直樹
採択金額: 6,300,000
2017年度未踏アドバンスト

人工知能建築家「アーキロイド」の開発

建築設計においてユーザーの要求とデザインを一致させるのは難しいものである。建売・売建・商品化住宅では用意されている選択肢が少なく、注文住宅では設計の自由度は上がるが1人の建築家の試行錯誤やユーザーとの打合せの回数には限りがあり、かつ、多数の建築家に設計を依頼することができないため、選択肢は決して多くない、という問題がある。 人工知能建築家「アーキロイド」は、建築家の設計した住宅から独自の評価システムを用いて算出した定量データライブラリをもとに、深層強化学習を用いて住宅の設計を行うことで、住宅産業におけるマスカスタマイゼーションを実現する。これまでの”nLDK”といった空間の要求に加え、「安藤忠雄氏の“住吉の長屋”のような空間が欲しい」といったように、空間構成の特徴も要求することができるようになる。データベースに登録された建築の空間構成データから、建築家独自の創造性を学習することで、建築家が設計するようなアクティビティを誘発する空間の生成を行う。最終的には、不動産会社のホームページで物件を検索するように新築住宅を検索するWEBサービスの提供への展開を目指す。 本プロジェクトでは、「アーキロイド」の「木造住宅自動設計」機能に対してのユーザーテストを限定的に行い、将来の本格的サービス提供に向けた検討と改善を実施する。

PM: 春田真クリエータ: 佐々木 雅宏・藤平 祐輔・亀岡 千花・津久井 森見・松川 昌平
採択金額: 7,000,000
2017年度未踏IT

自身の身体をコントローラとして使うMRシステムの開発

RPGやアクションゲームにおいて、キャラクターはもうひとりの自分である。そう思えば思うほどゲームはより楽しいものとなる。しかし、キャラクターはもう一人の自分であるにも関わらず、実際の自分の身体のように操作できないため、その感覚を想像で補う部分が大きい。本プロジェクトでは、ゲームの世界のキャラクターと、現実の世界の自分の身体との間に存在する、身体的なマッピングの齟齬の解消を目指し、身体を3次元空間のコントローラとして使うためのMR(Mixed Reality、複合現実)プラットフォームと、それを使ったMRゲームを開発する。  クリエータは本プロジェクト開始までに、自身の身体の姿勢や動きを正確に再現した身体のコピー(アバター)を光学透過型ヘッドマウントディスプレイの画面上にリアルタイムに提示する「Body Cursor」というシステムを開発している。本プロジェクトではBody Cursorを利用、拡張することで、以下のような機能を実現する。 これらの機能の実現を通し、本システムを汎用的なMRゲーム用のプラットフォームとして確立させることを目指していく。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 濵西 夏生
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

音楽で楽しくスポーツを上達させるためのソフトウェア

スポーツの上達において、リズムやタイミングを身に付けることは非常に重要である。リズムを学習するための方法としてよく用いられるものに、リズムトレーニング、ラダートレーニング、縄跳びが挙げられる。しかし、これらのトレーニング方法には、「モチベーションの維持が困難であること」や「普段の練習への直結性が不足していること」といった問題点がある。またコーチングの分野では、即時フィードバックを行うことで上達速度が速くなるとされている。 そこで本プロジェクトでは、以下の3点に着目し、音楽を用いたスポーツの上達を促すソフトウェアを開発する。 本ソフトウェアでは、目標となる運動からリズムを抽出し、そのリズムに合った楽曲を推薦した後、練習時のリズムが目標のリズムに合っているかをリアルタイムでユーザへフィードバックする。単調な動作の繰り返しである基礎練習においても、本ソフトウェアを用いることでモチベーションを維持しながら素早くスポーツを上達させることができる。またオープンエデュケーションとして普及させることで、場所や時間を問わない練習環境を実現する。更に、指導が難しいとされていたスポーツにおけるリズムの教育を確立させることで、新しいスポーツ教育の在り方が生まれることが期待される。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 板摺 貴大
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

電気刺激によるリズム学習補助

音楽の三要素がメロディ、ハーモニー、リズムであるように、リズムは音楽において重要である。また、リズムに関係する拍子やテンポも音楽において重要な要素である。楽曲を演奏する際にはリズムを理解し再現する必要がある。しかし、リズムを理解し再現することは音楽の知識や訓練がないと難しい。さらに、楽譜の読めない人に対して、口頭での説明や音で聴かせることによってリズムを理解させることは難しい。このような理由から、視覚や聴覚に依らない情報の提示によるリズム学習の手法が必要とされる。 本プロジェクトでは制御された電気刺激をElectrical Muscle Stimulation(EMS)を通してユーザの手足に与えることによるリズム学習方法により、これら問題を解決するシステムを開発する。本手法であればソフトウェアが指導者役を務めるので、指導者がいない場合や、生徒数に対して指導者数が少ない場合にも対応ができる。 本プロジェクト開始までに実現しているプロトタイプシステムにより、EMSによって人間の体を制御しリズムを刻ませることが可能となっている。しかし、筋肉のつき方や電気刺激の感じ方などの個人差により、それぞれのユーザに適切に設定をすることが難しい。本プロジェクトでは、楽譜から適切な電気刺激を生成するソフトウェアと、その電気刺激をユーザに与えるための小型化したEMSハードウェアを開発する。 本システムが学校や音楽教室等で使用されることにより、指導者の負担を大幅に減らし、指導者は音程や音楽の表現の部分の指導に専念ができるようになる。加えて、指導者のいない個人練習においても、リズムを正確に理解し再現させることを可能にする。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 蛭子 綾花
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

プロトタイピングを通じて論理的思考を学ぶ迷路作成キット

本プロジェクトでは、情報技術(デジタル)を図画工作(アナログ)と融合させた、プロトタイピングを通じて論理的思考を学ぶ迷路作成キットを開発する。本キットは小中学生でも大人でも、誰でも簡単に工作の延長線でプログラミングに必要な論理的思考が学べるものである。 本キットの機能は「ガイドブック」「アナログパーツ」「開発ツール」「アイデア共有SNS」に大別され、パーツとしては汎用マイコンボード、床や壁の素材、サーボモータ、金属レール、金属球、LED、コンデンサ、抵抗、導線が盛り込まれており、誰でも気軽に、ガイドブックを読み進めながら、手を動かし、プログラミングを学び、自分で迷路のコースを考え、組み立て、完成させることができる。本キットによって作られる迷路には、金属レールを用いたセンサが備えられ、チャタリングによるセンシングにより、迷路を動く鉄球に連動して扉や動く壁が操作される。ユーザはif文とfor文を用いてマイコン入りLEDとサーボモータを操作することが可能であり、それにより鉄球をゴールさせることを目指す。最初のうちはゴールできる迷路を作ることを目指すが、徐々にギミックをうまく活用し面白い迷路に作り直していく。その過程で様々な問題が浮上するが、原因を突き止め、部分ごとにデバッグを重ね、修正し、完成を目指すことで論理的思考を養うことができる。また、アイデア共有SNSで面白いと思った他のユーザのアイデアを自分の迷路に実装することもできる。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 坂元 律矛
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

コンパニオンロボットを活用したプレゼンテーション支援システム

プレゼンテーションは現代社会において頻繁に行われるコミュニケーション形態の一つである。学生は教育上の課題の発表、就職活動、学会発表などにおいてプレゼンテーションを日常的に行っている。頻繁なプレゼンテーションの機会において、プレゼンテーションの手間をできるだけ省き、毎回のプレゼンテーションを低負荷で消化したいという欲求は大きい。 本プロジェクトでは、ロボットを含む複数発表者への自動プレゼンテーション割当システムを構築する。本システムは、発表者の作成したプレゼンテーションのスライド構成を元に、コンパニオンロボットを用いた共同プレゼンテーションの台本割当を自動で作成し、発表者はその台本に従うだけで、特別な準備をすることなく発表に向かえるようにする。また、発表者が発表時の台詞や順番を覚えなくても済むように、カンペ機能も備えるようにする。加えて、誰がプレゼンテーションを行ってもそれなりの質になるようなテンプレートを複数用意することで、発表者はある程度の場面に応じた好みのプレゼンテーションスタイルを選べるようにする。

PM: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 教授クリエータ: 橋本 美香
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

触力覚提示内蔵型HMDのためのハンガー反射を用いた提示機構

本プロジェクトは、近年一般的となりつつあるHMDを利用したVRコンテンツ体験に関して、装着の手間を可能な限り増やすことなく触覚・力覚提示を付加することで体験の没入感を向上させることを目的とするものである。 上記目的を達成するために、HMDに触覚・力覚提示機能を内蔵するコンセプトに基づき、HMDの内側に装着するバンド型触覚・力覚提示デバイスを開発する。本デバイスは触覚・力覚提示機能として、頭を触られた感覚を提示するTouch、頭を押された感覚を提示するPressure、敵からの攻撃や頭を殴られた時の感覚を提示するMotion&Force、頭を揺さぶられた時の感覚や悪路を走行する車に乗る感覚を提示するVibrationの4つの機能を有する。これらの機能はバンド型デバイスに内蔵された空気駆動バルーンからの触覚提示により実現され、特にMotion&Forceを実現するための手法として触覚刺激による錯覚現象であるハンガー反射を採用する。 ハンガー反射は針金ハンガーを頭に被ると頭が勝手に回ってしまう現象であり、頭部への特定の位置の圧迫により効率的に生起する。本現象は、Yaw・Pitch・Rollの3軸方向の回旋力・運動と前後左右方向の並進力・運動を生起可能かつ他者によって動かされたと知覚する明瞭な運動を生起することが特徴である。この特徴はHMDに力覚提示を付与する上で好適である。 本プロジェクトでは「空気駆動バルーンを内蔵したバンド型触覚・力覚提示デバイス」「空気駆動バルーン制御ユニット」「触覚・力覚提示アルゴリズム」「体験用VRコンテンツ」の4つを開発する。空気駆動バルーンを用いた触覚・力覚提示を採用する理由は、小型軽量な機構で上記の4つの触覚・力覚提示機能が実現可能であるためである。 本デバイスは既存のHMDの機能と没入感を拡張するものであり、これはVR関連市場を拡大する一助となるとともに、VRコンテンツを製作するクリエータの表現可能な情報の種類を広げることに繋がる。

PM: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 教授クリエータ: 今 悠気
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

CPU+FPGAプラットフォームのためのRubyベースの開発環境

本プロジェクトではCPU+FPGAプラットフォームをターゲットとした、Internet of Things(IoT)/Cyber-Physical System(CPS)のための新しい組込み開発環境を開発する。本開発環境上でユーザはRubyプログラムを記述するが、これまでCPUの負担となっていた外部モジュールとの通信やセンサデータの前処理の部分は、自動的に論理回路へと合成され、Field-Programmable Gate Array(FPGA)へとオフロードされるようにする。CPUからFPGAを扱うためのドライバも本開発環境が自動生成するため、ユーザはこれまでのソフトウェア開発と変わらぬ体験でFPGAを導入することができるようになる。 汎用的なマイコンでは、I/Oの数や処理能力の問題から単一のマイコンで取り扱えるデータ量に限界が発生する。その問題の解決策の一つがFPGAを利用することだが、FPGAを用いたシステムは開発コストが非常に大きいなどの問題がある。本プロジェクトではRuby言語のフレームワークとして開発環境を提供し、ユーザはこのフレームワークに則ってソフトウェア開発を行うことで、CPU上で動作する実行ファイルとFPGAをプログラムするためのビットストリームを生成することができる。また、センサとの通信に関しては、センサに応じたインタフェイスをパッケージとして共有する仕組みを提供することで、本フレームワークのユーザが可能な限りRegister Transfer Level(RTL)の記述をしないで済むようにする。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 照屋 大地・呉屋 寛裕
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

グラフゲノムブラウザ

ヒトを含めたあらゆる生物では、 遺伝情報をゲノム、すなわち塩基配列の形で保持している。ゲノムには生物を形作るために必要な情報のほとんど全てが含まれていると考えられており、生物学・医学・薬学・農学など生物を扱うあらゆる学問分野においてゲノム研究は極めて重要である。同じ生物種でも個体ごとで塩基配列に違いがあるため、参照配列と呼ばれる種を代表する塩基配列が定められている。多くのゲノム研究では、遺伝子の座標区間やさまざまな個体の参照配列からの差分(多型情報)など、多様なゲノム由来の情報を参照配列に対応付けた上で様々な解析を行っている。「ゲノムブラウザ」はそうしたゲノムに関わる情報を統合し、インタラクティブに可視化するソフトウェアであり、情報の解釈を容易にし、新たな知見を得るために、主に研究者の間で広く用いられている。 DNAの読み取り技術はこの12年間で約100億倍の進歩を遂げ、日常的に解析対象となるゲノム配列の数も少なくとも1万倍以上になった。これに伴い、個体間のゲノム配列の違いがより明らかになり、ただ1本の参照配列の上にあらゆる情報を対応付けることが難しいケースも多く存在することが分かってきた。例えば、大規模な構造変異により遺伝子が重複・欠損・融合し、それが遺伝性疾患やがんの原因となっている場合である。このため、ゲノムを1本の線ではなく、グラフ構造を用いて分岐やループなど様々なパターンを表現可能にする「グラフゲノム」を用いた解析が近年有望視されている。しかし、現在普及しているゲノムブラウザではグラフゲノムを可視化することは想定されていない。 本プロジェクトでは、今後のゲノム解析で重要となるグラフゲノムの可視化をするためのグラフゲノムブラウザを開発する。本ゲノムブラウザにより、ゲノム上のグラフ構造をブラウザ上で俯瞰的に捉え、探索的な解析を可能にすることで研究の促進が期待できる。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 横山 稔之
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

動画を入力として自発的に動作するホームAI

近年、AlexaやGoogle Assistantなどの対話型AIが搭載されたAmazon Echo、Google Homeなどのデバイスが出現し、徐々に我々の生活の中に浸透し始めている。これらのデバイスは、人間との対話を通して指示された動作を行うことができる。加えて、多くのWeb APIやIoTデバイスと連携することで、照明を点灯させたり、ピザの注文ができたりするように、多様な動作を定義、対応させることもできる。 しかしながら、これらのデバイスは少なくとも以下の二点の問題があるため、本来求められるホームAIとしての要件を十分に満たしているとは言えない。 前者の理由の一つとして、基本的な入力にマイクが使われることが挙げられる。これらのデバイスは音声入力を必要とするので、基本的に人間が能動的に操作しなければならない。ユーザが寝ている間や不在時などにおいては、AIが自発的に適切な行動を行うことはできないし、人間の指示がない状態で気を利かせて行動することもない。また、予め決められた動作を行うだけであるため、個人個人の生活リズムや好みに合わせたパーソナライズをユーザによる設定を伴わずに行うこともない。 本プロジェクトでは物体検出、行動認識を用いてユーザの行動ログを収集し、それを用いて自発的に動作するホームAIを開発する。本ホームAIは部屋に設置されたカメラを通して常時ユーザの行動認識を行い、ユーザの状況に応じた自発的な動作を行う。また、解析結果に基づき予測されるユーザの行動に応じて、パーソナライズされた動作を行う。ユーザは能動的に本ホームAIを操作する必要はなく、むしろホームAI側が自発的に気を利かせた動作を行うようにする。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 中村 晃貴・野口 裕貴
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

サイバーセキュリティ人材育成プラットフォーム

昨今、日本国内で10秒に1人の被害者が出るほどの、サイバー攻撃が行われている。サイバー攻撃が世界規模で猛威を振るう一方、それに対応するセキュリティ人材不足が深刻化している。セキュリティ人材不足の主な要因として、以下の2点が挙げられる。 本プロジェクトではこれらの問題を解決するために、以下の2つの機能を備えたサイバーセキュリティ人材育成プラットフォームの開発を行う。 ゲーミフィケーションを通して、サイバー攻撃や防御手法を体験しながら学習できるアプリケーションを実現する。本アプリケーションが使用する教材をCMSプラットフォームで共有することで、世界で新しい攻撃手法が登場したときに、現場の様々な状況に応じて最適な学習コンテンツをいち早く提供できる環境の実現を目標とする。 脆弱性のあるコードを修正させることでセキュリティ能力の判定と教育を行うWebサービスとソースコードから脆弱性を発見するテストライブラリなどのフレームワークを実現する。製品リリース後に脆弱性検査を行なって後付けでセキュリティ対策をするのとは別に、最初のものづくりの段階からセキュリティを意識しながらプログラムの設計・開発ができるような体制構築をサポートし、開発工程全体のセキュリティ対策コストを下げることに寄与することを目標とする。 本プラットフォームにより、サイバーセキュリティ人材不足の解決を目指す。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 北村 拓也・森田 浩平
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

自由なPC向けファームウェアの開発

現在普及しているコンピュータにはハードウェアのリセットからOSの起動までを担う、ファームウェアが搭載されている。ファームウェアは通常ハードウェアベンダにより、プロプライエタリなソフトウェアとして提供されており、ユーザに対してはそのソースコードが公開されてはいないため、ユーザがファームウェアを修正することは困難となっている。こうしたことから、既存のファームウェアを置き換えることを目的としたcorebootと呼ばれるオープンソースプロジェクトが存在する。corebootにより生成されるファームウェアはcoreboot本体とpayloadの2つの部分から構成される。payloadには様々なソフトウェアを搭載することができ、例えばSeaBIOSと呼ばれるLegacy BIOSの実装などが存在する。現在の一般的なPC向けファームウェアの規格であるUEFIに対応するオープンソースのファームウェアはIntelにより開発が進められているTianoCoreのみであり、corebootにおいてそのpayloadとして使うことのできるUEFI対応のファームウェアはTianoCoreのみである。プロプライエタリなファームウェアはTianoCoreをリファレンスとして実装されているものが多く、TianoCoreのUEFI実装に脆弱性が存在した場合、その影響は非常に大きいものとなる。 本プロジェクトでは、coreboot上にTianoCore に置き換わるUEFI対応のコンパクトでオープンなpayloadを開発する。UEFIの規格は非常に巨大であるが、通常のOSの起動には使われていない機能も多い。そのため、Attack Surfaceを減らすためにも、UEFI規格のうち必要最小限の機能を備えたベアボーンとしてpayloadを実装し、その他の機能は必要に応じてプラグインとして追加できるようにする。コンパクトでオープンなファームウェアを実現することにより、脆弱性に対して堅牢な環境を実現するだけでなく、PXEブートなどのネットワークブートの仕組みと絡めることによるBare Metalクラウドへの応用などの効果が期待できる。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 師尾 彬
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

環境に対して自動最適化する高性能通信基盤の開発

近年、ソフトウェアによる高性能通信の性能がハードウェアに迫りつつある。Intel DPDKの登場により、Linux上でハードウェアルータに迫る性能をもつソフトウェアルータが実装可能になった。DPDKはメモリコピーとカーネルのコンテキストスイッチを低減することで、ハードウェアに匹敵する高性能通信を可能とする。クラウド/仮想化技術が浸透しつつある今日、ソフトウェア技術による高性能通信の実現は今後様々な応用、発展を可能にする。 しかしDPDKを利用したソフトウェアは設計/設定面で高度なチューニングが必要であり、また、システム全ての実装を行わなければならず、高性能なソフトウェアを開発するためのコストが高い。加えて開発に際しては、ソフトウェアのボトルネックがどこにあるのか、どのように解決するべきなのか、という困難な問題に頻繁に直面する。 本プロジェクトでは高性能通信基盤を開発する。本基盤を用いることでネットワークトラフィックやマシン構成に応じてパラメータ等を自動最適化し、通信ソフトウェア開発の低コスト化、及びパケット転送の役割を担うデータプレーンの自動高性能化を実現する。これらにより、本基盤がより迅速で高性能な通信ソフトウェア開発を支え、今後のソフトウェア通信基盤のデファクトスタンダードとなることを目指す。本プラットフォームの自動自己最適化技術により、通信の高性能化技術に関する、より高次な研究が出現することも期待される。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 城倉 弘樹
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

型による静的検証能力の高い組版システムの開発

マークアップされたコードから文書を生成する組版処理システムは文字社会・印刷文化の根幹をなすソフトウェアであるが、既存の組版処理システムは一般のユーザが高度なマクロ定義や組版上の工夫を凝らしにくい言語設計になっているほか、ユーザの入力のうち問題のある箇所をエラーとして報告する能力が十分とはいえない。そこで本クリエータは既存の様々なマークアップ言語をより柔軟で安全な1つの形式へとラップするためにMacrodownというメタなマークアップ言語を同時に実装した。このMacrodownではマクロ定義にOCaml風のいわゆる函数型言語を用いることができ、現在でも適切なライブラリを与えれば、MacrodownコードからLaTeXコードやHTMLコードへと変換して文書が生成できる。しかしながらバックエンドとしてLaTeXなど既存の組版エンジンを用いていると、変換後のコードを組版処理している最中に見つかったエラーが実際にユーザの書いたMacrodownコードのどの箇所に対応しているのか非常にわかりづらく、その修正が大きな手間となる。 そこで本プロジェクトでは、フロントエンドとしてMacrodownを拡張したマークアップ言語を採用して保守性の高い意味マークアップを可能にし、また主に型システムの知見を用いてバックエンド部分まで加味した静的検査能力を有する組版処理システムを開発する。静的検査は具体的には、実際の組版処理を実行する前にユーザの入力のうち明らかに問題のある箇所を型エラーなどの形で報告することを指し、これにより執筆・編集をより円滑にできるようにする。また、クラウド上での文書執筆支援環境の提供や、ユーザの体裁指定に基づいた書籍生成サービスなど、周辺Webサービスの充実を目指すことで、商業的価値の創出を図る。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 諏訪 敬之
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

GUIによるカスタムマイコン設計プラットフォーム

本プロジェクトでは、誰もが容易に、所望の機能を持ったマイクロコントローラ(Micro Control Unit(MCU)、マイコン)を開発できる世界を実現するため、オープンライセンスなCPUや周辺回路の設計と、GUIによるカスタムマイコン設計プラットフォームの開発を行う。 近年Internet of Things(IoT)というキーワードを背景に、あらゆるデバイスへのプロセッサ搭載が試みられている。各デバイスにより要求は異なるため、開発者は汎用マイコンと他のICとを組み合わせて協調設計を行うか、高価なFPGAを用いなければならず、これがデバイスのコストや実装面積の増大につながっている。ICチップ開発企業は自らカスタムマイコンを開発することが可能であるが、チップの新規開発に伴う設計環境や機能部品の甚大なライセンス料と、人的・時間的な開発コストが足枷となり、汎用品の大量生産というビジネスモデルを選択しているのが現状である。したがって、Trillion Sensors Universeといったキーワードから想像される、多種多様の小型センサノードが遍在する社会の実現は困難となっている。 そこで本プロジェクトでは、半導体開発ノウハウを持たない企業や個人が容易に利用可能なマイコン設計プラットフォームを開発する。本プラットフォームでは、ユーザはWebブラウザ上で機能ごとのGUIモジュールをドラッグ&ドロップするか、HDLコードを入力するだけで、所望のカスタムマイコンを設計することができる。マイコンの中枢を担うCPUとそのプログラミング環境、I/O等の周辺回路はフリーで利用することが可能である。開発したプラットフォームを用いて実際にカスタムマイコンを設計・製造することで、その有用性を示す。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 門本 淳一郎・中川 修哉・丹羽 直也・髙橋 光輝
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

様々なデータソースに対応する高速なグラフ処理エンジンの開発

近年ネットワークやストレージなどの進歩によって様々な大規模データが収集可能になり、そのデータから有益な情報を得るためデータマイニングが盛んに行われている。データマイニングには多くのアプローチがあるが、中でもグラフ構造に注目したグラフマイニングは強力である。しかしながら、RDBに格納されているような非グラフ構造データをその対象にする場合は、グラフ構造を生成しなければならない。特に非構造化データ変換の一般化が難しいことから、グラフ生成から処理までを一貫して高速に行うことができる、グラフマイニングのためのツールは発展していない。 そこで本プロジェクトでは、多様なデータソースを利用可能であり、かつ高速なグラフ処理エンジンを開発する。ここで言うグラフ処理エンジンとは、グラフ構造データのOLAPを実現するミドルウェアを指す。グラフ構造データの生成はプラグインとして実装することで、データソース内の明示的な要素からグラフ構造を抽出する処理フローだけでなく、k近傍グラフやL1グラフといった潜在的なグラフ構造を対象に取ることができる処理フローも合わせて提供する。これらを組み合わせることで、例えば「RDBに蓄積された購買データに対して、グラフ構造に基づいて購買傾向の似たユーザクラスタの抽出をする」といった分析処理を容易にする。また、増加しつつあるCPUコアを適切に利用することで、2コア程度のコンシューマ向けラップトップマシンから100コア超えのNUMA環境HPCマシンまで、広い範囲で一貫して高い処理パフォーマンスを実現する。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 伊藤 竜一
採択金額: 2,304,000
2017年度未踏IT

あらゆる人の声を模倣可能なリアルタイム音声変換システムの開発

本プロジェクトでは、入力音声を他人の声に変換するソフトウェアを開発する。本システムの特徴は、入力音声の声質に依らず変換可能なこと、人が自然だと感じるほど高精度であること、リアルタイムに変換可能なことである。 誰しもが一度は、他の人の声で話してみたいと思ったことがあるかもしれない。しかし、それをシステムとして実現しようとした場合、ある他者の声を真似ることには技術的な困難さがある。画像のピクセル要素と比較すると、音声信号における微小時刻毎の要素は各々が重要な情報を有しており、また時刻間の相関も強い。従って、ある声を他人のものに変えようとしたとき、元の声の発話間隔、強調、イントネーションなどの要素を残しながら、目的とする声へ変換するためには、音声信号を局所的にも大域的にも精密に変換する必要がある。本プロジェクトでは、この技術的な障害を深層学習の高い表現能力によって解決し、実用に堪えるソフトウェアを実現する。 本プロジェクトの手法では、声の模倣を以下の2ステップで実現する。まず、音声認識の技術を応用し、個人の声質に依らずに共通する特徴量を入力音声から抽出する。そして、その特徴量に対して対象の声質情報を付与し、声を再生成することで変声を行う。このような構成でモデルを構築することで、例えばパラレルデータ(入力者と変換先の話者が同一のスクリプトを読み上げた音声データで、二者の時間的対応が取れているデータ)のような特殊なデータを使う必要がなくなり、学習データに掛かるコストが時間的にも金銭的にも小さくなる。 高精度な声の模倣が可能となることで、アニメのキャラクターや声優の声を現実世界で再現でき得ること、亡くなった人の声を再現でき得ること、そして、コミュニケーションに利用でき得ることなどの可能性が考えられる。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 早川 顕生
採択金額: 2,304,000
2018年度未踏アドバンスト

自走式3Dプリンティングシステムを用いた建築施工システムの開発

現在、建築用3Dプリンティングシステムは海外でも開発が進められており、様々なシステムが登場している。しかし、現状では機械が大型であることなどから施工場所が限定的であり、日本の土地にそぐわない点が多い。 本プロジェクトでは、自走式の小型の建設用3Dプリンティングロボットを使用し、自動建設化のためのソフトウェアを開発する。これにより、狭い土地での施工という日本の建設風土に配慮し、かつ高度なデザインの建築物を短期間、低コスト、少ない人員で建設することができるようになる。 本プロジェクト期間中にモデルハウス(タイニーハウス)を構築し、3Dプリンティングシステムによって建物の建設が可能であることを明らかにすると同時に、従来の施工方法よりもどのくらいコストや作業員数を抑えたうえで自由な形状の建築を提案することができるかを検証する。また、商業施設や一般住宅、その他の産業へ展開させるために、スケール・デザイン的な発展と応用マーケットを模索する。

PM: 漆原 茂クリエータ: 平山 雄太・北浦 ひな子・梅沢 啓佑・田窪 竣・坂井 珠麗亜
採択金額: 10,000,000
2018年度未踏アドバンスト

イベントカメラ用高速画像処理ライブラリとアプリケーション開発

自動運転、AR/VR、ドローン/ロボット等の分野で共通して必要なリアルタイム画像処理において、情報取得から出力までのセンサ遅延をいかに減らすかが制御の精度やユーザー体験の質を向上させるために重要である。生物の網膜の仕組みに着想を得たイベントカメラと呼ばれる新しいビジョンセンサは、画素ごとに非同期的に差分検知できるメカニズムによって、遅延の少なさ、データ量や消費電力の効率で従来のカメラを大きく上回っている。しかし、センサそのものが開発されてからまだ日が浅く、データの扱い方も既存のコンピュータビジョンの理論体系と異なる部分が多いため、実利用のアプリケーションはおろか開発者向けのライブラリさえ未だに存在せず、開発人口も少ない。 そこで、本プロジェクトでは、イベントカメラを用いたコンピュータビジョンアルゴリズムとそのライブラリを開発、公開することで開発環境を整備し開発者や研究者への普及を図る。さらに、イベントカメラの高速画像処理を利用した応用技術の開発に取り組み、市場性のあるアプリケーションを決定・実装することで将来的な市場拡大を推進する。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 荒川 陸・芝 慎太朗
採択金額: 8,000,000
2018年度未踏IT

深層学習によるAI実況プレイ動画生成

本プロジェクトでは、ゲームの実況プレイ動画を自動で生成するシステムを開発する。「実況プレイ動画」とは、プレイヤーが実況をしながらゲームをプレイした様子を収めた動画であり、近年、動画投稿サイトでの人気コンテンツの一つとなっている。 本システムは人間がプレイした動画を入力として、以下のステップに従い実況文を自動で生成し、読み上げ用音声合成ソフトウェアを用いてそれを読み上げる。 本システムは、深層学習による物体検出、動作認識を用いてゲーム中の出来事を認識する。例えば、レースゲームのプレイ動画を入力すると、物体検出では、レース中のキャラクターや自身の順位などを検出する。動作認識では、プレイヤーが操作するキャラクターの、ドリフトしている、加速しているといった動作を認識する。また、システムは人間の感情を模倣し、あたかもゲームをプレイしているかのように振る舞う。実況を行う際には、ゲーム内で起こっている出来事を伝えるだけでなく、リアクションなどを通じてエンターテイメント性のある実況を実現する。 本システムの技術は、自身の感情を表現するNPCの開発などへの応用が期待されるものである。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 黒田 和矢
採択金額: 2,304,000
2018年度未踏IT

機械学習分類器を用いたモバイルブラウザ及びページ管理システムの開発

近年、モバイルブラウザの使われ方が変化している。これまでは、自分の分からない事柄を調べてそれを理解したらブラウザのタブを閉じて終了するという使われ方が多かった。しかし近年、記録を行うためにブラウザを使用するケースが増加している。ブラウザを立ち上げ映画や本、コンテンツ等の名前を検索し、そのタブを残して記録とする使われ方である。記録を残す方法は様々な媒体で存在するが、記録したものを検索することが多いため、始めからブラウザで検索しておき、そのタブを残しておくことが効率的である。また検索ワードに紐付いた文章や画像なども表示されるため、テキストだけをメモ帳に記録した場合よりも後から振り返りがしやすい。 しかし、現在のモバイルブラウザはこのような使用ケースに対してデザインが最適化されていないため、膨大なタブの中から目的のタブを探すことが困難である。そこで本プロジェクトでは、「記録のためのブラウザ」としての最適なデザインを設計し、機械学習分類器を用いることで多くのページを開いても効率的にそれらを整理し、ユーザが目的のタブを効率的に見つけ出すことが可能になる、新しいモバイルブラウザを制作する。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 玉津 宗太郎・大坪 新平
採択金額: 2,304,000
2018年度未踏IT

ペットロボットをインタフェースとした高齢者向け健康管理システム

少子高齢化が進む我が国では、テクノロジーを用いて高齢者の介護や生活支援を自動化していく必要に迫られている。完全に機械が医療を代行することは困難であるが、独居老人の見守りや健康管理など、いわゆる「予防医療」についてはある程度の自動化が現実的であり、大きな価値がある。現在、この「予防医療の自動化」を目指す様々なシステムが発表されているが、「自動」のシステムの多くは据え置きであることから対象に対し取れる動作に限界があり、十分な機能を実現するには高齢者自らシステムを利用しようとする意思が必要になる。しかし、現存するシステムでこの「意志誘発」までデザインされているものは存在せず、このため「予防医療の自動化」は十分に実現できていない。 以上より、本プロジェクトにおいては、高齢者に負担なく行動を強制、即ちシステムを利用しようという「意志を誘発」するところまでデザインされた健康管理システムを開発し、これまでに無いレベルでの「予防医療の自動化」を目指す。 具体的には、たまごっちのような、「育成できるペットロボット」をインタフェースに採用し、ロボットと「たかいたかい」(抱え上げる動作)をして遊び、この時の加速度から運動機能の状態を把握する等、様々なインタラクションを介して生体情報を自動的に取得、蓄積、解析するシステムを構築する。また、このうち「育成」が持つ責任感、即ち高齢者の「面倒を見なければ」という気持ちを上手く取り入れることにより、インタラクション(システム利用の意思)を高齢者の自覚無しに誘発することを目指す。さらに、システムの解析結果として得られた健康上の問題は、それが軽度である場合は生活習慣の改善をロボットとの自然な会話の中で高齢者に指示し、健康を自動で管理すると共に、ロボットが「心配」していることを高齢者に感じさせ、更なるインタラクションへの意思誘発にも利用する。また、問題が重度でシステムでは対応不可と判断できる場合は専属の医師、あるいは第三者へ通告を行い、高齢者の容態急変といった最悪の事態を未然に防ぐことを目指す。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 森崎 汰雄・川波 稜
採択金額: 2,304,000
2018年度未踏IT

ブラウザでも動くブロックチェーンフレームワークの開発

本プロジェクトでは、簡単にブロックチェーンを含めた分散システムが構築できるフレームワークを開発する。現在、様々な設計のブロックチェーンが考案されているが、それぞれが独自の規格であるため学習コストが高い。また、論文になっているものの開発コストの高さから実際の実装がないものも多い。このような「構想はあるものの開発のハードルが高いために実装ができない」という層を主なターゲットとして、単純な形でブロックチェーンの実装ができるフレームワークを開発する。 本フレームワークは、拡張性・自由度を高くし、様々なプラットフォームに移植できるものにする。同時に、ブラウザでノードが実行でき、マイニングやチェーンの検証・保存が行え、さらにソースコードの改変も簡単にすることで、従来のインストールや実行・改造に専門的な知識が必要で、実質的に開発に参加できるのが一部の人々に限られるブロックチェーンではなく、多くのユーザが改造、自分自身のチェーンの作成、開発への参加、マイニングができるブロックチェーンの実現を目指す。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 㑹田 寅次郎
採択金額: 1,728,000
2018年度未踏IT

独自マイクによる音声サンプリングおよびそれによる声質変換

本プロジェクトでは、ある人の声を別の人の声に変換する「声質変換」のためのハードウェアおよびソフトウェアを開発する。 声質変換という操作は「変換先話者が発する音素」を「変換先話者の声質」で再現することに他ならず、それは声質変換における最も重要なタスクが「声質」と「音素」という二要素の分離にあることを意味する。メルケプストラム抽出と動的時間伸縮の併用をはじめとした古典的手法や、深層学習を用いる新たな手法など様々な手法があるが、品質が十分でなかったり莫大な計算資源を必要としたりするなどの課題が残っており、声質変換が社会に普及するには未だ至っていない。 本プロジェクトではこれらの課題に対し、独自のマイクを用いることで解決を図る。とくに古典的手法で生じがちな子音やささやき声での誤変換を効果的に、個人で利用可能なレベルの計算資源で解決できる見込みである。本プロジェクトで提案する手法により高品質な声質変換が可能となることで、人々は自由な声で話すことができるようになる。この技術に加え、モーションキャプチャ技術などの自由な外見を得る技術を用いることで、仮想現実空間上でより自由な活動も可能になると考えられる。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 星野 凌我
採択金額: 2,304,000
2018年度未踏IT

分野限定型検索エンジンを複数組み合わせた分散型検索エンジン

検索エンジンはインターネットのインフラである。世界中の人々が検索エンジンを利用し、その検索結果を信用している。そのため検索エンジンには透明性が求められる。しかし現在広く利用されている検索エンジンは民間企業が作成したものであり、検索アルゴリズムが非公開で透明性に欠ける。そこで、透明性が保証された検索エンジンを作るために分散型検索エンジンが開発された。分散型検索エンジンでは検索エンジンのデータベースをネットワーク上に分散して保持する。データベースを分散させることで巨大なデータセンターが必要なくなり、資金のないオープンソースプロジェクトでも検索エンジンを実現することができる。オープンソースプロジェクトなので検索アルゴリズムが公開されており透明性が保証されている。しかし分散型検索エンジンは民間企業のものに比べてその検索結果の品質が劣る。これは全インターネットを対象とするために必要なマシンリソースが、ネットワーク上の善意の提供者のものだけでは不足することが一因である。 この問題を解決するために、本プロジェクトでは新しい分散型検索エンジンの方式を開発する。本プロジェクトの方式では検索エンジンのデータベースを分野ごとに分割して保持する。分野はある分野の検索エンジンを構築するユーザが、その分野に関連する単語や、文書を与えることで定義する。分野を分割することでマシンリソースを集中的に投入でき、また情報収集の際に関連する単語や文書の情報が使える。その結果、その分野の検索結果の品質が向上する。更に本プロジェクトでは複数の分野を統合するソフトウェアも提供する。本ソフトウェアを使えば、広い分野をカバーするための検索エンジンをボトムアップ方式で構築することが可能になる。結果として限定した分野においては従来よりも精度の高い分散型検索エンジンが実現できる。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 河田 旺・稲垣 悠一
採択金額: 2,304,000
2018年度未踏IT

ヒューマノイドロボットのモーション作成支援システムの開発

ヒューマノイドロボットを個人で制作し、その制作手法を公開している人はとても少ない。また、ヒューマノイドロボットを制作したいが、技術情報の不足から制作することができないという人が多く見受けられる。ヒューマノイドロボット制作のハードルが高い原因としては、第一にロボット本体を制作することが非常に高度な技術を要すること、そして第二に、ヒューマノイドロボットの制御が難しいことが挙げられる。 我々は、我々独自のヒューマノイドロボットの制作過程をブログやWebページで公開したり、プログラムや3Dモデル、制御基板の設計情報などをGitHubで公開したりすることで、前者の問題の解決に努めてきた。しかし、後者の問題については未だ解決策がない。そこで本プロジェクトでは、ヒューマノイドロボット制作者にその制御の難しさを感じさせないようにするための取り組みを行う。具体的には、ユーザが入力した学習方針に基づき、ヒューマノイドロボットのモーションを生成するシステムを開発する。本システムによって生成されたモーションは、ユーザが独自に制作したヒューマノイドロボットそれ自体は勿論、異なる設計のヒューマノイドロボットでも使用できるようにする。また、これらのモーションを本システム上で共有・再利用可能にすることで、他のユーザが作った学習方針に新たな学習方針を付け足し、新たなモーションを簡単に生成できるようにする。例えば「倒れない」「交互に足をつく」という既存の学習方針と、「前に進むほど高得点」という新たな学習方針とを本システム上で組み合わせて学習させることで、歩くモーションが作れるようになる。本システムにより、中学生程度の技術力でもオリジナルのヒューマノイドロボットの制作および制御ができる環境の実現を目指す。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 小川 広水・山名 琢翔
採択金額: 1,728,000
2018年度未踏IT

文字形状を自動生成するWebフォント制作支援ソフトウェア

Webフォントは、フォントファイルをWeb上で配信することで環境に依存せずにブラウザに表示されるフォントである。しかし、日本語を始めとした漢字圏のフォントは文字種が多く、フォント制作に多大な労力が必要となる、データサイズが肥大化するためアクセス時間への影響が大きいといった問題があり、これらの言語のWebフォントは普及が進んでいない。 本プロジェクトでは、上記の問題を解決するための新しいフォント制作支援ソフトウェアを開発する。本ソフトウェアでは、フォント中の文字種の大部分が互いに類似するエレメントの組み合わせによって構成されていることに着目し、利用者が最小のエレメントをデザインすることで、フォント中の全ての文字デザインを自動生成する。こうして作成されるフォントデータは、類似するパーツを1つの標本パーツへの参照と変形パラメータにより表す独自のフォント形式に圧縮し、従来のWebフォントと比較してより効率的な配信を可能にする。また、圧縮されたフォントデータをブラウザ上で復元し、Webフォントとして利用するライブラリを合わせて提供することで、実験的な実装にとどまることなく実環境での利用に対応する。 本プロジェクトをきっかけにWebフォントが普及することで、日本、あるいは同様の理由でWebフォントの普及が進んでいない地域におけるWeb体験の向上を目指す。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 玉田 晃寛
採択金額: 2,304,000
2018年度未踏IT

C++ユーザのためのパッケージマネージャの開発

近年、急速にソフトウェア技術が発展を続けており、それに伴って多くのプログラミング言語が開発されてきた。これらの言語には、汎用性の高い関数などを纏めたライブラリが存在し、言語のインストール時に付随する標準ライブラリと、外部からダウンロードを行う外部ライブラリの2種類に分類されることが多い。外部ライブラリを扱うには、外部からダウンロードを行うだけでなく依存関係解決などの作業も必要になるが、このような作業を全て担ってくれるのがパッケージマネージャである。Pythonにはpip、Elixirにはhexといったパッケージマネージャがあるように、C++にもconanというパッケージマネージャがある。しかし、conanは他言語のパッケージマネージャと違い、インタフェースが直感的でない等の理由から、C++ユーザから敬遠されている。このままでは、C++にはパッケージマネージャが存在しないのと等しく、ユーザ自らがライブラリ管理を行う必要があるため、C++は入門しやすい言語とは言えない。 そこで本プロジェクトでは、初学者でも使いやすいC++のパッケージの整備と、それらを管理する独自パッケージマネージャを開発する。クライアントサイドには、様々なコマンドでパッケージ管理を行うことが可能なコンソールアプリケーションを提供する。それに加え、コンソールアプリケーションのコマンドに対応するAPIサーバと、パッケージやドキュメントなどを検索・表示できるWebサーバを提供する。 本システムは、乱立したライブラリ群を同一のシステム上に纏め、共通のインタフェースで提供することで、初学者の入門と優れたパッケージの生成の循環、即ちエコシステムを生み出すことができる。加えて、本システムをオープンソースソフトウェアとして公開し、CI/CD環境を提供することで、本システムの開発がより活発化することが期待される。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 松井 健
採択金額: 2,304,000
2018年度未踏IT

あらゆるアセットを管理するビジネスロジックを兼ね備えた汎用型分散台帳基盤の開発

本プロジェクトでは、あらゆるアセットを管理するビジネスロジックを兼ね備えた汎用型分散台帳基盤を開発する。分散台帳技術とは、高い信頼性が求められる金融取引や重要データのやりとり等を可能にする技術である。分散台帳システムには、システムの一部が故障しても障害の重大性に応じて機能を低下させながらも処理を続行するフォールトトレラント性を持つこと、外部からの侵入攻撃によってデータの改竄を行うことが困難であることが求められる。これらを解決する技術として、昨今ブロックチェーン技術が関心を集めている。しかし、現状のブロックチェーンプラットフォームの多くは合意形成に多大な時間がかかるため、多くの人が十分に潤滑な取引を行うことは難しい。その点を解決するために、合意形成アルゴリズムの改善が試みられているが、研究過程であるものや用途が通貨に限定されたものがほとんどである。本プロジェクトで新しく開発する汎用型分散台帳基盤は、あらゆるアセットを管理することを目的とした、十分高速で上記の分散台帳システムに期待される性質を満たしたシステムである。 この汎用型分散台帳基盤は以下の要件を満たす。 また以下の理念を持たせる。 これらの要件と理念により、だれでも簡単にオリジナルアセットを発行し同一基盤上のユーザと取引することができる。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 山下 琢巳
採択金額: 2,304,000
2018年度未踏IT

機械学習を用いたロボット制御のための汎用システムの開発

ロボットの制御は非常に複雑である。ロボットに使われるアクチュエータの種類など、様々な要因によってその制御パラメータは簡単に変化する。また、ロボットの種類は多種多様であり、それぞれにあった制御プログラミングは非常に大変である。そこで、本プロジェクトでは、どんなロボットでも制御可能な、機械学習を用いた汎用制御システムを開発する。 本システムは、アクチュエータとしてサーボモータを使ったロボットを対象とした、汎用制御システムとしての実現を目標にする。学習するタスクは、目的地までの歩行動作である。これを実用的な時間内に学習する。これらの目標を達成するために、深層強化学習をベースとしたアルゴリズムを使用する。それに加えて、脊椎動物が取り入れている歩行動作の生成器である中枢パターン発生器のアルゴリズムを使用する。これにより、歩行などのリズム性のある動作の学習が容易になるとともに、学習により生成される動作パターンも安定したものになる。 本システムは事前学習フェーズ、実機学習フェーズを通じて、実際のロボットを動かす方法を獲得する。事前学習フェーズでは、シミュレーションにより様々な機構を持つCGモデルの動作の学習を行う。学習したモデルをもとに、実機学習フェーズで、特定の実機のための学習を行う。強化学習を行う際には、目標値と現在のエージェント(ロボット)の状況(位置)を与える必要がある。そこで、実機学習フェーズでは、スマートフォンとARコードを利用して、誰でも簡単に学習環境が用意できるソフトウェアを作成する。 本プロジェクトの新規性は、一つのシステムで、様々なロボットが制御可能になる点である。これにより、機械制御においてユーザは手作業によるパラメータ調節などの作業から解放されることになる。また、ロボット制御の敷居が下がることで、多くの人々が多様なロボットを作れるようになり、ロボットの多様性が広がることが期待される。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 村松 直哉
採択金額: 2,304,000
2018年度未踏IT

ユーザ近傍におけるコンピューティング環境の開発

近年、さまざまなネットサービスが登場し、広くユーザに利用されるようになった。これらのネットサービスは、ネットワークに接続されたサーバにおけるコンピューティング(データ記録、分析、判断などの情報処理)によって提供されている。そのため、クライアントと呼ばれるユーザ端末(スマートフォンなど)とサーバとの通信の維持が必要となるが、そのためにはクライアントが外部インターネットへの接続ができる環境や、安定して接続を維持できる環境の整備が必要となる。ネットサービス利用が一般的になるにつれて、さまざまな状況においてもそれらネットサービス利用機会が求められている。例えば、閉じた会場内での電子ファイル配布やチャットなどのコミュニケーションなどである。これらの閉じた環境でのサービスの提供においては、ネットワークの構築コスト、外部インターネット接続の混雑などが問題になることがある。 そこで、本プロジェクトでは、ユーザ近傍におけるポータブルなコンピューティング基盤環境を開発する。サービスを提供する基盤をユーザ近傍に設置することにより、上記のネットサービス提供における問題を解決する。具体的には、サービス(チャットなど)を提供するサービスノード、基盤を制御する制御ノードとして振る舞う小型コンピュータとそれらの自動制御方法を開発する。サービスノードによる現地ネットワークの形成とサービスの提供を行うことで、そのような環境でのネットワーク構築コストや外部インターネット接続の混雑問題を回避することができる。また屋外や山間地、災害時などのインターネットに接続が困難な状況におけるサービス提供基盤など、さまざまな用途に応用が可能になる。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 𠮷田 朋広
採択金額: 2,304,000
2018年度未踏IT

ボルダリングコース作成支援アプリケーション

ボルダリングは2020年の東京オリンピックの追加種目に決定し、注目されている競技である。近年のボルダリング施設の増加に伴い、競技者人口も増加しているが、いくつか問題も抱えている。 ボルダリングでは競技者の実力を示すための指針として登ることのできたコースの難易度が用いられているが、全てのコース難易度は人の感覚で決定しているため、上手く機能しているとは言い難い。また、ボルダリング施設のコースは、主にビニールテープの印によって利用者に示されることが多いが、印が多くなるとコースの識別が難しくなる欠点がある。したがって、人工壁に表示できるコースの数には限りがあり、自分の体格や柔軟性、難易度に合ったコースが人工壁上にない場合が起こりうる。 そこで、本プロジェクトではボルダリングのコース作成を支援するアプリケーションを開発する。本アプリケーションはボルダリング施設の利用者・管理者の2種類のユーザをターゲットとする。本アプリケーションは、タブレットやスマートフォンのような電子端末上の仮想の壁を使い、コースの作成支援、ユーザへの提示を行う。ユーザが自分に合ったコースを作成し、提示されるコースを登ること、管理者が現実の壁に仮想の壁のコースを作成し、コース作成に費やす手間を減らすことを目的とする。また、ソフトウェアがコース作成の支援を行うことで、難易度の設定を統一することができる。 本アプリケーションにより、ボルダリング業界とIT業界を大いに盛り上げ、最終的にはボルダリングの普及と定着の実現を目指す。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 桂 大地
採択金額: 2,304,000
2018年度未踏IT

ファブリケーション指向の折紙設計支援ツール

折紙は折り鶴などの伝統的な遊びとして国内だけでなく、世界各地で親しまれている。折紙は などの点で様々な領域に応用可能である。しかし、実際に折紙技術を具体的な製品にする際には様々な制約があり、現状実用化に至っている例は非常に少ない。通常、折紙の動きを考える際には厚みが無いものとして理想化したモデルを用いるが、家具や建築などの製品レベルに落とし込む場合、厚い板材をヒンジでつなげて作るため通常のモデルが適用できない。現状ユーザが使えるソフトウェアでは厚みを処理することができず、製品化への大きな障害となっている。また、厚みのある板材をデジタル加工機器で加工する際には加工用のデータを生成する必要があり、手軽にプロトタイピングができない状況となっている。 本プロジェクトでは、建築事務所やデザイン事務所で多く使われるCADソフトウェア上に、建築家やデザイナが簡単にデザインでき、かつ紙だけではなく厚みのある板材をCNC加工機や3Dプリンタでファブリケーションできるデータを出力する、ファブリケーション指向の折紙設計支援ツールを開発する。また建築事務所やデザイン事務所とのワークショップを通してフィードバックを得ながら、ツールの改善及び折紙構造の応用可能性を模索していく。さらに、折紙ファブリケーションに適したより一般的な入出力の形式、仕様を考案し、第三者の開発者がその仕様に基づいて本ツールを発展、開発できるような土台づくりを目指していく。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 須藤 海・谷道 鼓太朗
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏アドバンスト

漫画の高精度な機械翻訳技術および多言語漫画配信サービスの実現

現在、日本国外における漫画の海賊版被害は甚大であり、海外の漫画読者を海賊版から正規版へ誘導することは、出版業界にとって喫緊の課題となっている。海賊版を駆逐するためには、法的規制の強化以上に、読者が利用しやすい正規版コンテンツ配信サービスを提供することが有効である。しかしながら、単一言語で制作される漫画を他の言語に翻訳するプロセスが煩雑・高コストであるため、実際に正規版として配信される作品・言語数は極めて限定的である。 本プロジェクトでは、まず翻訳プロセスの大幅なコスト削減を目的とし、漫画に特化した高精度な機械翻訳技術の実現を目指す。画像情報・言語情報から得られる様々な「文脈」を考慮可能な機械翻訳の研究開発を行い、従来不可能であった実用水準の漫画翻訳エンジンを実現する。並行して、翻訳した漫画を世界中の読者に届けることを目的とし、漫画の多言語配信サービスの事業化に取り組む。機械翻訳による漫画の翻訳コスト削減により、サービスに掲載される全ての漫画を最初から多言語で全世界に向けて配信するサービスが実現可能となる。 また、本プロジェクトでは、翻訳エンジンと配信サービスの試験運用を通して、開発した技術が実用水準に達しているかを検証するとともに、ユーザースタディによって得られた知見を元に提案技術で展開可能なサービスを検討し、具体的なビジネスモデルの構築を目指す。

PM: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 教授クリエータ: 石渡 祥之佑・日並 遼太
採択金額: 10,000,000
2019年度未踏アドバンスト

食卓を七色に彩るデジタルガストロノミーの開発

3Dプリンターやレーザーカッター等のデジタルファブリケーション技術を食に導入するデジタルガストロノミーは、人間の手作業では実現不可能であった料理の創作を可能としてきた。従来のデジタルガストロノミーは、積層や彫刻、切削など、食品をマクロなスケールで加工することで形や味の創作を可能とし、食の付加価値を高めてきたのに対し、本プロジェクトでは、食品をミクロなスケールで加工することで色や食感のコントロールを可能とし、食卓を彩る技術を提供する。 本プロジェクトでは、デジタルガストロノミーの一環として、色素とは異なった鮮やかな色彩を呈する構造色に着目し、微細加工技術を活用して、食品に対して任意の加飾を可能にする技術及びレシピを確立する。また、食べ物の見た目以外の機能をデザインする手法の探索を行うことで、デジタルガストロノミーの領域を多角的に広げていく。そして、本プロジェクトでの成果技術を活用し、製品を共同開発・販売する協業先を探すなどして、食の高付加価値化を提供する技術の事業化を目指す。

PM: 大阪大学 大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 教授クリエータ: 蛭子 綾花
採択金額: 5,600,000
2019年度未踏アドバンスト

やわらかさを撮影できる次世代カメラの社会実装

本プロジェクトは、「やわらかさ(粘性・弾性)」を撮影可能な次世代カメラを社会実装することを目的とする。 これまでの研究成果として、超音波アレイで物体表面を加圧・加振し、その微小変化をカメラで撮影することで物体の粘弾性を非接触・非破壊で計測する技術を確立した。しかし、現状のプロトタイプでは、装置の安定性や操作性が低く、誰もが手軽に扱える状態ではなく、工場のラインや検査現場で利用するには十分ではない。 そこで、本プロジェクトでは、現場で求められる要求を抽出し、現場で使用可能な安定性と操作性を持つ撮影装置および技術を構築する。具体的には、熱による計測値のドリフトを低減し、安定性を向上する。また、外部システムから制御可能なAPIおよび現場での調整が容易なGUIを実装し、操作性を向上する。さらに、プロトタイプを現場に持ち込み、必要な要件および事業性の評価を行い、事業化を推進する。薄膜や液体の検査現場において、経験に頼っていた手続きを置き換え、定量評価に基づく自動化を目指す。

PM: ウルシステムズ株式会社 代表取締役社長クリエータ: 青砥 隆仁・髙谷 剛志
採択金額: 10,000,000
2019年度未踏アドバンスト

小児先天性心疾患のリアルタイム3DCG可視化

生まれつき心臓や心臓の周りの血管の形(構造)に異常がある疾患である「先天性心疾患」は、約150種類前後の細かい病名に分類され、同じ病名でも一人ひとり異なる心臓であるゆえ無数の差異があり、複数の先天性心疾患が組み合わさっている場合もある。特に、小さく複雑な子どもの心臓の手術の成績や安全性を少しでも高めるためには、手術前に心臓の立体構造を可能な限り細かく把握し、十分な手術計画を立案できることが極めて重要である。 そこで、本プロジェクトでは、一般的なPC(GPU搭載ゲーミングPC)を用いて短時間(数分~10分)で3DCGデータを作成した上で、画面上でリアルタイムに切開や変形が可能なシステムを開発する。これによって、医師自身が自由な角度で心臓断面を生成したり、外科手術時の様子を模した簡易的な変形や切断を加えたり、見え方の微調整を行うことができるようになる。これらの操作は3Dプリンタなどによる心臓模型では不可能であり、且つより低コストで治療計画・診療に役立てることができる。 本プロジェクトでは、現場医師にレビューを求めながら改善を重ね、市場や提供方法の戦略も考え、社会への貢献を目指す。

PM: 原田達也クリエータ: 瀬尾 拡史
採択金額: 5,600,000
2019年度未踏アドバンスト

メカデザ×機械学習による混雑コントロールシステムCRABの開発

身動きを許さない通勤電車、ごった返す病院の待合室、3時間待ちのジェットコースター。混雑はいたるところで我々の快適な都市生活を脅かしている。 しかし混雑を予測、コントロールすることは難しい。それは「人間同士による行動の読み合いを制御する」という本質的な困難を伴うからだ。たとえリアルタイムで混雑情報を提供できても、それに対する人々の行動をコントロールしなければ混雑を回避することはできないのである。 本プロジェクトではこの課題に対してメカニズムデザインと機械学習から解決策を提案する。提案するシステムの名称は「Credible Recommender based on Agent-made Billboard (CRAB)」である。CRABは混雑が発生する市場における仲介者として働く。ユーザーはCRABに自身の選好を申告することで、混雑を緩和するよう計算された均衡に基づいた、自分にとって最適な行動を知ることができる。 未踏アドバンストでは、CRABをアプリとして実装し身近な混雑緩和に使用して効果を検証する。さらにより均衡に近い行動を誘導するメカニズムや動学的に人々の流れを最適化するメカニズムの開発、実験を行う。これらは人々が自らの意思で協力し合い社会全体を改善できることの証明であり、多くの社会問題に通底する意思決定の個人性に対して包括的な解決策を作る第一歩となる。

PM: 原田達也クリエータ: 池上 慧・松下 旦・奥村 恭平
採択金額: 10,000,000
2019年度未踏アドバンスト

画像分類器による消化管カプセル内視鏡診断補助システムの開発

小腸は人体において食物の消化と栄養吸収という役割を果たしており、生命活動維持において重要である。しかしながら、口からも肛門からも遠い位置にあるため、かつて非侵襲的に小腸を検査することは難しかった。消化管カプセル内視鏡は、ダブルバルーン内視鏡などの大掛かりな検査器具を必要とせず、カプセルを飲むだけで手軽に消化管病変を非侵襲的に観察することが可能な優れたスクリーニング検査であるが、数万枚に及ぶ検査画像から正確に小腸疾患を診断するには、豊富な臨床経験を有する医師の知見が必要である。臨床経験の多寡によりカプセル内視鏡検査の診断精度は大きく変化する可能性が報告されており、診断精度の向上や標準化のための大きな課題となっている。また、専門医であっても読影に長時間を要することが、負担となっている。 本プロジェクトでは、深層学習を用いた消化管カプセル内視鏡診断補助システムを開発することにより、医療現場の負荷軽減にとどまらず、カプセル内視鏡検査の診断精度の向上と診断の標準化を目指す。また、開発したシステムの事業化に取り組み、ビジネスモデルの考案・構築を行う。

PM: 藤井彰人クリエータ: 高峰 航・澤邉 一生
採択金額: 9,378,000
2019年度未踏アドバンスト

インセンティブ設計とスマートロックを活用した自転車シェアの最適化「Incentivizing bike sharing」

都市への人口集中とそれに伴う自動車保有率の減少が進むなかで、シェアサイクルに対する需要は一層増すものと期待される。しかし、既存のシェアサイクルは2つの構造的な問題を抱えている。第一は、自転車・ポート・人件費といったコストがすべてサービス運営者持ちであることである。高コストのため、サービスの拡大が困難である。第二は、適切なポート位置を調査するにはコストがかかるため、ニーズの取りこぼしが多く発生していることである。 上の問題を解決するため、本プロジェクトでは、一台から、どこでも、個人でも事業主でも、自転車を貸してお金を稼ぐことができるという、新しいシェアサイクルサービスを構築する。まず、貸主が自転車とポートを用意し、メンテナンスを行うため、運営コストがかからず、サービスの拡大が容易となる。また、現地事情に通じている人が貸主となってポートを決めるので、人々のニーズが反映されやすい。本プロジェクトでは、スマートロック、アプリ及びサーバーシステムを開発し、パイロットプロジェクトを遂行して改善を重ね、市場での事業化の道筋を作る。

PM: James Kuffner クリエータ: 髙𣘺 新吾・森名 出日人・髙𣘺 アナ マリア・Krupali Mistry
採択金額: 10,000,000
2019年度未踏IT

先行研究をインタラクティブに要約するシステムの開発

あるトピックに関して先行研究を網羅的にまとめたレビュー論文(サーベイ論文とも言う)の存在は、先行研究のサーベイにおいて重要な要素の一つである。しかし、サーベイをしたいトピックや分野でレビュー論文が存在するとは限らない。その場合、関係があると思われる論文を個別に確認し、さらに関連する論文を深堀し続けることで、先行研究を網羅的に把握しなければならず、調査コストは非常に高くなってしまう。そのため、レビュー論文の有無に係らず、低コストで先行研究の情報を集約し、かつ各論文のメタ的な要素で関連付けされた情報を提示できるシステムの必要性は高い。 本プロジェクトでは、ユーザが入力したトピックや分野の情報から関連する論文を収集し、内容を要約するシステムを開発する。具体的には、以下の三点の機能を実装したウェブアプリケーションを実現する。 本プロジェクトでは、1、2は自動化、3は半自動化を想定する。本システムを利用することで、ユーザが先行研究の情報を容易に収集することと、ユーザがサーベイをする過程でインタラクティブに調査領域のスコープを調整しながら、ユーザに対し包括的に関連する論文の要約情報を提供することを可能にする。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 周 静芳・鈴木 理紗
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

機械学習を用いたSNS向けテロップ自動生成

近年、SNS(Social Networking Service)で動画を視聴する、SNSに動画を投稿することは身近なエンターテイメントの一つとなり、「格好いい・可愛い・面白い動画を作りたい」というニーズが、特に若者のSNSユーザにおいて大きくなっている。従来、動画にテロップを付加するには、PC上の動画編集アプリケーションと、それを使うための編集技術と作業時間を要したため、専門知識や編集環境が整っていないユーザはテロップを付与した動画を投稿することが困難であった。特殊な技術を必要としない動画編集ソフトウェアは多くの若者に求められている。 本プロジェクトでは、人気を集めている動画投稿者がテロップを有効活用していることに着目した。単なる字幕生成とは異なり、より効果的なテロップを作るためには登場人物や遷移する場面の文脈を考慮する必要があり、その自動化は未だ先行事例がない。本プロジェクトでは、複数のDNN(Deep Neural Network)を使うことで、視聴者に印象付けるテロップを自動生成し、それを効果的に動画に重ねるスマートフォンアプリケーションを開発する。本アプリケーションにより、今まで数時間以上かかっていた動画編集作業が数分程度に短縮し、特殊な編集技術を持たない個人が容易に魅力的な動画を作成できるようにする。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 大峠 和基・森 篤史
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

歩きVRの開発

VRヘッドマウントディスプレイ(HMD)を日常的に被るような未来が来ることが考えられる。このような未来では、自分の好きなVR空間を好きな箇所に好きなだけ出現させることができ、人間の様々な活動や社会の機能を拡張することができる。これを実現するために、本クリエータは人間の最も日常的な行動のうちの一つである歩行に着目し、歩きながらHMDを被る行為(以降「歩きVR」と呼ぶ)の研究を行なってきた。現在までに、ユーザからの距離に応じて現実映像とVR空間の映像を提示しわけ、その二つの空間を同時にユーザに見せることで、周囲を視認しながら歩行できるプロトタイプを作成した。そこで得た知見から、「HMDを被る日常」を実現するためには、「歩きVRの安全性」だけでなく「歩きVRの動機の創出」が必要であると実感した。 本プロジェクトでは、歩きVRのユースケースを想定し、ユーザにそれを利用する動機を与えるようなエンタメやユーティリティコンテンツを複数開発する。本コンテンツ開発を通して、人々に歩きVRで何ができるかを具体的に想像させ、その導入コストを下げることに加えて、歩きVRのシステム開発のさらなる発展を目指す。また、歩きVRのコンテンツ開発のためのSDKの整備等を行い、多くの人々が歩きVRのコンテンツ開発を行える環境を整える。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 小沢 健悟
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

VR空間における食体験の構築

近年、VR技術が発展し、小説やアニメ、ゲームなどの空想現実の世界を疑似体験することが可能となってきている。現実空間では難しいことも、空想現実では可能である。本プロジェクトは特に食事について着目する。空想現実の世界では、食事制限などで食べられないものや、誰も食べたことがない「ドラゴンの肉」も食べられるはずだ。しかしながら、空想現実空間では食事をすること自体が非常に難しい。ヘッドマウントディスプレイと呼ばれるメガネ型のディスプレイで空想現実空間を体験しているときは、現実世界にある実際の食べ物が見えない。ヘッドマウントディスプレイに装着するフロントカメラの映像などを通して現実世界を見ながら食事をすることは可能であるが、それにより「空想現実世界に自分が存在している」という実在感が失われてしまう。 本プロジェクトでは、空想現実世界での実在感を保ったまま食事を可能にする要素技術を開発する。空想現実世界での実在感を保ったまま、人間が現実空間の物体を認識する方法として、現実世界のものをそのまま表示するのではなく、空想世界のイメージに合ったVRオブジェクトを作成し、現実世界の物体と置き換えて表示する方法がある。例えば、現実世界の電柱をそのまま表示せずに、大自然の中ならば木のVRオブジェクトに、氷河の世界ならば氷柱のVRオブジェクトに置き換えて表示する。本プロジェクトでは、 という3つの手順を行うことで、空想世界での実在感を保ったままの食事を実現する。加えて、現実世界の食事を空想現実世界の食事に錯覚させる仕組みの実現を目指す。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 中野 萌士・堀田 大地
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

指先の触覚を身体の他部位に転移させるデバイスの開発

近年VRは低価格な頭部搭載ディスプレイ等が入手可能になったことから、広く普及しつつある。特にVR環境中での触覚情報の提示を試みる研究は数多く存在し、その主なターゲットは指である。そのため、指先に触覚情報を提示するデバイスが数多く発表・発売された。しかしながら、これらのデバイスは幅広く社会に浸透しきれていない。これは、指に対して多自由度の力触覚や温感等の様々な触覚情報を提示した上で、指の動きを妨げないデバイスが実現困難なことが一因である。これは主にデバイスどうしの干渉など、アクチュエータによって生じる制約が大きいためで、未だに一般的に使用できる触覚提示デバイスは開発されていない。 そこで本プロジェクトでは、VR空間内においては、指先で触れた触覚情報は必ずしも指先に提示する必要は無いのではないと仮定する。指先の触覚提示位置を指先に限定しないことで、アクチュエータの問題が解決でき、提示できる触覚情報が限定されずに済む。同時に、初めは不自然で違和感が生じたとしても、トレーニングを行うことによって違和感が軽減でき、触覚提示デバイスとしての納得感が得られるのではないかと考える。 本プロジェクトでは、指先への触覚提示手法の問題点に対し、指先への触覚を身体の他部位、特に背中に転移させる手法を実現し、これが有効であるという仮説を検証する。また、その有効性を証明するためのVRコンテンツを併せて制作する。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 森山 多覇
採択金額: 1,888,000
2019年度未踏IT

IoTを活用した介護予防のためのリハビリテーション支援システム

2016年の日本人の健康寿命は男性が72歳、女性が74歳であり、平均寿命とは約10年の差がある。これは世界的にも共通の現象であり、つまり人間は人生最後の10年間を何かしらの介護が必要な状態で過ごす可能性が高いことを示している。介護施設では要支援・要介護者を対象としてリハビリテーション(機能訓練)を実施している。しかし、多くの介護施設では、設備もノウハウも十分に整っておらず、リハビリテーションの最適化はおろか、利用者のデータ収集さえも十分にできていない。さらに、リハビリテーションの効果の質は現場の介護スタッフのノウハウに依存しており、組織として体系化することはできていない。そのため、どのような高齢者が、どのようなリハビリテーションをして、どのような生活をすれば、どの程度介護度が改善するか、データに基づいて明示できるリハビリテーションサービスが求められている。 本プロジェクトでは、高齢者それぞれの特徴に合わせたリハビリテーションの実施や、転倒事故などによる介護度悪化の未然防止のために、高齢者の歩行特徴を記録し、身体状況を把握するためのIoTデバイスを開発する。さらに、どのようなリハビリテーションをすれば、どの程度介護度が改善するかを定量的に評価するための、高齢者のバイタルデータやトレーニング内容などの臨床データを登録するウェブアプリケーションを開発する。これらの機能から収集、蓄積した情報を統合することで、高齢者それぞれの身体特性に最適化したリハビリテーションメニューの提供を実現する。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 田脇 裕太
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

プロセッサトレースを用いた組み込みデバイス向けファザーの開発

近年IoTデバイスやスマートフォンの普及に伴い様々なチップセットが開発されている。中でもARMプロセッサシリーズは組み込みデバイス産業において支配的と言えるほど普及しており、多種多様なベンダがデバイスドライバやファームウェアを開発している。本プロジェクトは、ファジングと呼ばれるランダムな入力を次々と生成し、それをプログラムに与えることでソフトウェアをテストする手法を用いることで、Androidを始めとする組み込みデバイスシステムソフトウェアのバグや脆弱性を高効率に検出するツールを開発する。 本システムはARMプロセッサの持つCoreSightと呼ばれる命令トレース機能とハイパーバイザ技術を組み合わせることで、ゲスト上で対象のシステムソフトウェアを動作させながら、カバレッジ情報を記録する。この情報をフィードバックとしてファザーが入力を生成することで、システムソフトウェアに対するカバレッジベースファジングを実現する。本システムはCPUの提供するハードウェアトレーサと仮想化支援機構を使用するため、エミュレーションやトレースによるオーバヘッドはほぼ無く、ネイティブ動作時と殆ど変わらない速度で高速なシステムソフトウェアファジングを行うことが可能となる。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 大塚 馨
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

Visual SLAMフレームワークの開発

本プロジェクトではVisual SLAMを統一的かつ簡潔に記述できるフレームワークを開発する。 SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)とは、センサ等による観測結果を用いて、ロボットなどのエージェントの周辺の環境地図を構築しながら、環境地図中でのエージェントの自己位置を推定する技術である。このうちカメラから得られる視覚情報を用いるSLAMがVisual SLAMと呼ばれる。Visual SLAMは自動運転やロボット掃除機、ドローンの制御、あるいは不動産まで、あらゆるものへの応用が可能である。環境地図を構築しながら自己位置を推定すれば自動運転に応用できることは自明であるとして、同様のことを屋内で行えばロボット掃除機の制御にも適用することができる。また、十分に密度の高い環境地図を構築することができれば、部屋の3Dスキャンを行えるため、不動産の売買にも応用することができる。 Visual SLAMにはさまざまな手法が提案されているが、用途によって最適な手法は異なる。例えば自動運転にVisual SLAMを用いるのであれば、照明変化に対して頑強であり、大規模なマップを高精度に構築できる手法が好ましい。一方で、部屋の3Dスキャンをするのであれば、密なマップ(点群によるマップ表現ではなく、面によるマップ表現)を得られる手法が好ましい。しかしながら、Visual SLAMには用途に対して適切な手法を選ぶことが難しいという欠点がある。要因の一つとして、実装が手法ごとに全く別々に存在していることなどが挙げられる。現状ではほぼ全ての手法の実装が別々のソフトウェアとして存在しているため、複数の実装を試す際にはそれぞれを全く別々にビルド・実行しなければならず、目的の用途にあった手法を見つけるまでに非常に大きな手間が必要となる。 本プロジェクトはVisual SLAMを統一的かつ簡潔に記述できるフレームワークを開発することで、用途に適した手法を選ぶことが難しいというVisual SLAMの欠点を解消する。また、内部をモジュール化することによって実装効率を上げ、論文の再現実装や新規手法の開発をも容易にする。本フレームワークにより、Visual SLAMを応用した製品開発やVisual SLAMそのものの研究開発が促進されることが期待される。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 石田 岳志
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

スペクトログラム生成による多重奏からの聴音支援システムの開発

ジャズではアドリブソロなどで弾かれている音符が楽譜に記入されていない場合が多く、演奏するにあたりミュージシャンの演奏している音を聴き取らなくてはいけない。しかしビッグバンドジャズのように演奏が複数種類の楽器で構成されている場合、自分の聴き取りたい楽器とそれ以外の楽器の音が混ざり、聴き取りがしにくいことが多々ある。そこで本プロジェクトでは、CDなどに収録されている多重奏の曲から、その曲を構成している複数楽器の音をそれぞれ抽出し、聴音(耳コピ—)を容易にするシステムを開発する。 本システムで用いる手法では、多重奏と、多重奏を構成している各楽器のスペクトログラムを画像として扱う。スペクトログラムとは音を短時間フーリエ変換することで得られる3次元グラフである。まず、多重奏と各楽器のスペクトログラム間の関係を機械学習によって導き、関係性モデルを作成する。次に、その関係性モデルを多重奏に適応することで、多重奏の中の各楽器のスペクトログラムを生成する。その後、生成した各スペクトログラムを逆フーリエ変換して音に戻すことで、多重奏から各楽器の音を生成する。これが多重奏から抽出した各楽器の音となる。本システムは、ユーザがスマートフォンに保存している曲に対して使用できるように、スマートフォンアプリとして実装することを想定する。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 久野 文菜
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

準同型暗号によるバーチャルセキュアプラットフォームの開発

本プロジェクトでは、準同型暗号を用いたCPUエミュレーションにより、ハードウェア的に脆弱な環境でもセキュアな計算を行えるバーチャルセキュアプラットフォーム(Virtual Secure Platform)を開発する。ここで用いる準同型暗号とは、暗号文に対して暗号化されたまま演算を行うことができるような暗号のことであり、任意の論理演算を達成できることが知られている。バーチャルセキュアプラットフォームとは、ハードウェアによる特別な機能に頼ることなく、C言語など既存のコンピュータ向けプログラミング言語で書かれたプログラムをセキュアに実行できる環境を構成するプログラム群を指す造語である。 近年台頭するクラウドコンピューティングサービスにおいてユーザがプログラムを実行する際、ユーザは利用するクラウドベンダを信用することを余儀なくされる。本プロジェクトで掲げる理想は、ビットコインが「通貨」から「銀行」への「信用」を取り除いたように、クラウドコンピューティングおける「情報処理」から「クラウドベンダ」への「信用」を取り除き、真の分散コンピューティングを達成することにある。この理想実現の第一歩として、本プロジェクトでは、ユーザが暗号化したプログラムを、その暗号化状態を保ったままクラウド上の準同型暗号によるCPUエミュレーションで実行することを可能にする。 本プロジェクトでの主な開発対象として、以下の3点を想定する。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 松岡 航太郎・伴野 良太郎・松本 直樹
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

プログラマブルな音楽制作ソフトウェアの開発

近年、音楽プログラミングを用いた表現は、Algoraveのようなダンスミュージックの生成の例など、大衆音楽文化とも接近しつつある。しかし、既存の音楽制作ソフトウェア(Digital Audio Workstation、以降DAW)は、既存の音楽表現に特化する代わりに拡張性が乏しく、直接プログラミングを用いた生成的表現を行うことは難しい。そこで本プロジェクトでは、DAWと音楽プログラミング環境の中間的位置づけとして、楽譜のように機能する音楽プログラミング言語を設計し、そのソースコードをDAWのようにグラフィカルに配置し編集することができる、音楽制作環境を開発する。具体的には、マウスを用いたプロシージャルな波形生成や、アルゴリズミックなパターン生成の支援を行えるようなインタフェースの設計を試みる。 本プロジェクトの実現により、これまでプログラミングで生成した素材をDAWに取り込んで編集するといったワークフローから、音楽制作の根幹部分に対しても生成的表現を行うことが可能になり、プログラミングを用いた音表現の領域が更に広がることが期待される。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 松浦 知也
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

OSに依存しないキーマッピングのカスタマイズシステム

キーボードは、キー入力によりコンピュータを操作するインタフェースである。あるキー入力に対し特定のコンピュータの操作を対応付けることをキーマッピングと呼ぶ。キーボードユーザが自身の嗜好に合わせた柔軟なキーマッピングができるようになれば、ユーザの生産性を向上させることが期待できる。しかし、キーマッピングの認知は一般ユーザのみならず開発者の間でも高いとはいえず、キーマッピングを実現する環境構築の難しさがキーマッピングの普及の障害となっている。さらに、既存のキーマッピングツールにおいて各種OSを横断してキーマッピングを実現するものは存在せず、環境をまたいでユーザがナレッジを共有することは難しかった。 本プロジェクトでは、OSに依存しないユーザフレンドリーなキーマッピングのカスタマイズシステムを開発する。ユーザが本システムを利用することにより、どのOSのどの端末でも同じキーボード操作感を実現できるようにし、快適なタイピング環境の構築をサポートする。さらに、キーマッピングに馴染みがないユーザが手軽に試すことができるプレイグラウンド環境や、キーマッピング設定ファイルの配信環境といった周辺サービスを充実させる。キーマッピングを導入するための障壁を取り払うことでユーザの裾野を広げ、環境ごとに分断されていたキーマッピングのノウハウを統合し、キーマッピングの普及と発展を目指す。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 福田 優太朗
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

電気の様子が手に取るようにわかる回路学習ツールの開発

近年注目されるVRやテレイグジスタンス、IoTなどの分野に共通する課題として、「測定」がある。これら分野ではすべからく、人・環境の状態を測定することが基本とされる。測定情報の問題は、サービス品質の劣化に直結する重大な問題となる。人・環境の測定に際しては、ハードウェアインタフェースと電子回路を作成することが必須であり、ソフトウェア人材だけではなくハードウェア人材の育成も必要不可欠である。 昨今ではSTEM教育などに代表される、IT技術を応用した多くの教材が開発・導入されており、一見するとソフトウェア・ハードウェアの教育環境は充実しているように見える。しかしながら特にハードウェアに関しては、モジュールの利用に関する教育であり、モジュールの設計・創造にまで踏み込んだものはほとんど存在しない。また、小学校の中学年・高学年ころより、電気の振る舞いについて教育が行われているが、抽象概念の把握の難しさから、十分な効果があるとは言い難い。結果、中学校・高等学校で行われるように物理現象を数式として解くことができても、実際に回路を組み立てることができない状態を招いてしまう。別の言い方をすれば、数式を解くことができても、数式の意味するところを、現実の回路に重ね合わせつつ、肌感覚で理解するまでには至らないのである。すなわち、電子回路を作成するにあたって、真に必要となる基礎的な「電気の振る舞い」に対する理解を促進するものは少なく、既存ツールではこれを利用していく中で学習者自身が身につけることを暗黙的に期待しているに過ぎない。 そこで、本プロジェクトでは電子回路を作成するにあたって必要な素養のうち、より根源的な原理原則に対する「感覚」を身につけることを目標とする。具体的には、回路中の電圧や電流、RLCなどのパラメータを直接手で触れて感じ、手で操作可能なプラットフォームやインタフェースを製作する。本装置を利用することで、ユーザに対して電子のイメージや受動部品の振る舞いの直感的理解を促す。これにより、電気や回路に対するより正確なイメージの定着や、後の学習過程における数式での理解を促すだけでなく、他の不可視な情報や状態の「触れるようにすることで理解を促す」技術への応用を狙う。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 岸田 聖生
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

DIY的IoTサービスに向けた運用・維持・管理SaaSのサーバレスによる実装

Arduino、Raspberry Piなどのコンピューティングデバイス、BLE、LPWAなどの通信技術の登場によりIoTサービスを構築・運用・改良する成功事例が増えてきた。しかし、運用に関する部分を現場の人が自前で構築するのは難しいため、本プロジェクトではネットワークの知識があまりない人でも、自分たちで購入したセンサやマイコンを組み合わせた、言わばDIY的に構築したIoTサービスの運用を可能にするSaaSを開発する。 本SaaSはIoTサービスの構成部品の稼働状況の監視、故障率の抽出、故障対応、故障予測、IoTサービス自体及び構成部品の稼働・故障推定といった機能や、未対応機器の後付け型簡易監視デバイスによる監視サービスを提供する。 本プロジェクトの斬新さは、世界中のIoTサービスの運用・維持・管理の部分をプラットフォームとして提供する点である。ソフトウェアエンジニアによる作り込みをサポートするために多様な機能を提供する既存のIoTプラットフォームに対し、本プロジェクトはどんなIoTサービスでも必ず発生する、運用・維持・管理に特化したプラットフォームを提供する。また、現場の人たちのDevOpsを助けようという観点は既存のIoTプラットフォームにはないものである。 期待される効果は、単体のIoTサービスの構築が楽になることだけでなく、IoTサービスの構成情報や各構成部品の故障情報を横断的に利用した新しいサービスの創出である。各IoTサービスでどのような部品が使われているかを全て把握することができるため、部品の故障推定や故障予測の精度向上にはもちろん、新たなIoTサービス向け製品の開発にも役立てることができる。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 永野 元基・新井 悠介
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

高速なVMI機構を実装したバイナリ解析基盤

マルウェアの解析や、ソースコードの与えられていないバイナリの解析など、リバースエンジニアリングはあらゆる分野において需要が高い技術である。特に情報セキュリティにおいては、マルウェアの解析をいち早く行い、攻撃手法や動作をいち早く解明する必要がある。 マルウェアの解析には静的解析と動的解析の2種類の手法が存在する。静的解析はデコンパイラでアセンブリを読み、得られるコードグラフや文字列の列挙などから文字通り、マルウェアを動作させずして解析を行う。一方、動的解析はマルウェアを実際に動作させ、ネットワークアクセスをトレースしたり、システムファイルの改ざんや攻撃のトラフィックなどを解析したりする。静的解析に比べ動的解析はすばやく動作を把握することができるため初期対応としての解析手段としては重宝される傾向にある。しかし、マルウェアの中には動的解析耐性を持つものがあり、単なるデバッガでは解析を妨害されてしまう恐れがある。そうした中でハイパーバイザ(仮想マシンモニタ)を用いた解析システムが提案されている。特にベアメタルハイパーバイザは、ハードウェアの上で直接動作し、ゲストマシンとして実際のOSやアプリケーションを動作させることができ、ハードウェア仮想化支援技術を用いて、特権的にゲストのレジスタやメモリを読み書きすることができるため、ゲストから不可視の解析を行うためのプラットフォームとして近年注目されている。しかし、ハイパーバイザを用いた解析基盤には、ゲストマシンの解析によるオーバーヘッドやタイミング解析への対応の甘さなどの問題が存在する。 そこで、本プロジェクトでは全く新しいシステムコールのトラップ機構、CPU時間の改ざん、ゲストマシンの挙動解析手法を開発する。これによりインシデントが発生した際のマルウェア解析を、高速かつ迅速に行うことができるようになる。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 森 瑞穂
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

カスタマイズ可能なネットワーク型IDPSをFPGA実装するためのソフトウェア

5GネットワークやIoT、クラウド、IPv6などの普及により、今後ますますネットワークの規模が大きくなることが予想されている。その中で、今まで以上にセキュリティ向上を行う必要がある。IDPS(Intrusion Detection & Prevention System)を導入することで、不正なパケットを防ぐことができるが、Snortなどの既存のIDPSはその処理でCPUのみを使用するため、処理性能に問題がある。処理性能の向上のために、IDPSをFPGA上に専用回路として実装する研究や製品が存在しているが、それらは専用回路の実装を主目的としており、FPGAがReconfigurableである特徴を十分に活かせていない。 そこで本プロジェクトでは、カスタマイズ可能なネットワーク型IDPSをFPGA実装するためのソフトウェアを開発する。本ソフトウェアにより、ユーザそれぞれが求めるセキュリティを柔軟に実現することができる。さらに、FPGAへの実装までを本ソフトウェアがサポートすることで、クロックなどのFPGA特有のハードウェア制御からユーザを解放する。 本プロジェクトの成果により、ネットワーク型IDPSがより普及し、ネットワークセキュリティが向上することで、サイバー攻撃の被害に遭う人達が少なくなることが期待される。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 中岡 典弘
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

能動学習に対応したデジタル病理画像アノテーションソフトの開発

病理診断とは、患者の体から採取した病変組織を固定・染色した得られた病理標本を顕微鏡で観察し病気の種類や進行度合いを評価するプロセスである。病理標本の中には104~108個の細胞が含まれており、特定の細胞の有無(がん細胞など)や組織構築(細胞の集まり方)などを評価して病理診断を下す。病理診断により治療の方針が決定されため、このプロセスは臨床現場において必要不可欠である。しかし、本邦の人口あたりの病理医の割合は米国のそれの1/5であり、また病理診断手法の多様化などを背景として近年の病理診断件数は上昇し人手不足が深刻化している。そのため、深層学習をはじめとした人工知能技術を利用した病理診断の一部自動化・効率化プロセスの導入が期待される。 病理画像への深層学習による画像認識モデルの応用例として、特定の細胞検出による診断補助が提案されている。例えば、リンパ節に浸潤するがん細胞を検出できるモデルが報告されている。このモデルは、病理標本の中に存在する無数の細胞の中からがん細胞を検出することを目的としており、実用化により病理医の負担軽減と診断精度の向上が期待できる。このような細胞検出モデルでは、教師データとして分類対象とする細胞の画像データを用意する必要がある。深層学習を用いたモデルのうち特に医療応用の分野では、教師あり学習が用いられることが多く、一般に安定した性能を発揮するためには大量のデータが必要である。細胞検出モデルに教師データを大量に用意するためには、数十から数千枚の病理標本を準備し、それぞれの標本について顕微鏡を用いて関心のある特定の細胞を数百から数万個探し出してアノテーションをつける必要があり、病理医の負担が大きい。 この現状を踏まえて、本プロジェクトでは能動学習により効率的にアノテーションを行うことを可能にするソフトウェアを開発する。本システムは、細胞検出モデルをはじめとする自動病理診断モデルの教師データ作成を簡単にすることで、優れた自動診断を実現し患者の利益をもたらすとともに医療ITにおいて新しいシーズを提供する。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 太田 悠自
採択金額: 2,304,000
2019年度未踏IT

生命情報解析向けインタプリタを搭載した秘密計算用クラウド

本プロジェクトでは、ゲノムデータのような機密情報を攻撃者から保護しながら統計等の計算を行う「秘密計算」を行う上で、「ソースコードを含めて厳重な保護が可能」「計算コストが低い」「利用難易度が低い」という3点を全て満たせるような世界初の生命情報解析向け秘密計算用クラウドを開発する。 これを実現するために、本プロジェクトではIntel SGXと呼ばれる技術を利用する。SGXは、CPUパッケージ内に組み込まれた暗号化エンジンによる暗号処理と、特殊な命令セットを用いる事で、RAM上に暗号的に保護された小区画(Enclave)を形成し、それを利用して情報を攻撃者から保護しながら処理を行う技術である。SGXはデータ保護をハードウェアの力で実現できる画期的な技術であり、高い安全性と非常に小さい計算コストを実現できるが、SGXで動作させるコードの実装難易度が著しく高いという欠点が存在する。そこで本プロジェクトでは、生命情報解析に特化したユーザフレンドリな文法仕様を持つ独自のインタプリタをEnclaveに搭載するアプローチを取る。同時に、インタプリタをEnclave内で動作させることで、計算定義に自由度を与えることによるセキュリティリスクについても、言語仕様から根本的に不可能にする等、細かいセキュリティ管理を行う。 以上により、少ない計算コストと安全性を実現しつつ、秘密計算を行うユーザの負担をも大きく減らせるような秘密計算用クラウドの実現を目指す。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 櫻井 碧
採択金額: 2,304,000
2020年度未踏アドバンスト

電気自動車をエネルギーストレージ化する充放電システムYanekaraの開発

2030年までに100万台を超える電気自動車(EV)が国内に普及すると予測されている。EVは車であると同時に蓄電池でもある。もし卸電力市場の変動に合わせてEVを充放電できれば、EVに蓄えた電力を収益化できる。また充放電のパワーを秒刻みで制御できれば、電力システム全体の需給バランスを調整できる。これは再生可能エネルギーが主力となるこれからの時代に欠かせない技術である。しかしこれまで、低コストで制御性に優れたEV充放電システムがなかったため、EVは蓄電池としての価値を発揮できなかった。 本プロジェクトでは、EVを蓄電池化する充放電システムYanekaraを開発する。期間中は、EV保有企業の事業所にYanekaraシステムを構築し、卸電力市場からの電力調達コストを最小化するように充放電を制御する。既存の充放電システムに比べ、EV保有企業にとっての費用対効果をどれほど改善できるのか、物流・通勤などの用途毎に検証する。同時に、電気事業者と協力して、電力システムの需給調整に関する技術実証も行う。

PM: ウルシステムズ株式会社 代表取締役社長クリエータ: 松藤 圭亮・佐藤 浩太郎
採択金額: 10,000,000
2020年度未踏アドバンスト

暗号資産の健全な取引を促すための法令遵守支援ソリューションの開発 「Transaction analysis solution for better compliance of cryptoassets」

本プロジェクトでは、Ethereumブロックチェーン上でスマートコントラクトとして実装されるDapps(分散型アプリケーション)やDeFi(分散型金融)サービスを対象として、リスクコンプライアンスソリューションを開発する。暗号資産事業の運営者は、AML/CFT(Anti Money-Laundering / Combating Financing of Terrorism)などの規制に準拠する必要があるが、小規模な暗号資産関連プロジェクトにとって、この法令遵守に対する障壁は高すぎる。これは、現存のリスクコンプライアンスツールが、手頃な価格で入手できないことや、自律的に動作させたい分散型サービスに容易に統合することができないことなどが原因である。本プロジェクトの目的は、リスク対応のためのソリューションをDapps / DeFiフレンドリーな形で提供して、小規模な暗号資産関連プロジェクトがコンプライアンスを維持しながらブロックチェーンの可能性を活かしたサービス提供を行いやすくすることである。 プロジェクト期間中に、リスク情報を必要としたDappsやDeFiサービスと対話し、リスク情報を適切なデータソースに問い合わせるモジュールを開発する。このリスク情報は、ブロックチェーンに記録されたトランザクションや、ダークウェブを含むウェブ全体から発見された情報を横断的・総合的に分析し、算出する。 さらに、照会されたアドレスの実世界におけるアイデンティティ、カテゴリ、行動について洞察した結果をスマートコントラクトの開発者に手頃な価格で販売するサービスを開始して、クエリごとの従量課金制にて収益を得ることを目指す。

PM: Global Catalyst Partners マネージング・ディレクター兼共同創設者クリエータ: 竹井 悠人・WALRAVEN AYA ASHLEY・KARAMATOV NAVRUZBEK・平元 尚貴
採択金額: 10,000,000
2020年度未踏アドバンスト

非クリエータが簡単にテロップを製作できるモバイルアプリ

本プロジェクトでは、非クリエータが簡単にテロップを製作できるアプリ「telorain」を開発する。 現在、テロップ付き動画を作るためには 1.PCと2.専門技術と3.作業時間を要する。そのため、若者の間で投稿される動画のほとんどにテロップがついていない。 本プロジェクトでは 1.スマホで 2.簡単に 3.作業時間なしでテロップを製作できるアプリ「telorain」を社会実装し、新しい動画コミュニケーションの文化を創成することを目指す。 テロップをアプリで簡単に作れるようにするためには 1.煩雑なテロップ製作の工程の自動化アルゴリズム 2.スマホに適したユーザインタフェースの設計の2点が必要である。 2019年度未踏IT人材発掘・育成事業を通じて、上記2点を満たすプロトタイプを開発し、ユーザ検証によりプロトタイプの有効性を確かめた。また、インタビューやアンケートを重ねることでアルゴリズムやユーザインタフェースの改良を続けた。その結果、アプリリリース1週目の継続率として20~29%を達成し、ユーザがSNSにテロップ付き動画をアップロードしている姿も見受けられた。これはアプリが継続して使われており、実用的であることを示唆している。 未踏アドバンスト事業では、検証したプロトタイプを社会実装していくために 1.自動生成アルゴリズムの多言語化 2.インタラクティブにテロップが描画される描画エンジン実装 3.アプリとサーバのアーキテクチャの一新による自動生成リクエスト処理能力の向上・セキュリティ強化・DX(Developer Experience)向上を実施する。

PM: 原田達也クリエータ: 大峠 和基・千北 一期
採択金額: 10,000,000
2020年度未踏アドバンスト

救急外傷全身CT診断における「重症度評価装置」の開発

高齢化が進行し患者が急増する中、日本では医師不足による医療崩壊が現実味を帯びてきている。救急搬送数の増えた救命現場は既に対応のキャパシティーを超えており、直近では新型コロナウイルスの出現など、不測の事態が生じるとスタッフが病院に泊り込んでも業務が回らない。 本プロジェクトでは、救急疾患の中でも最も緊急性の高い外傷診療において、救命医が多大なる労力と時間を割いている全身CT診断をAIで補助する「重症度評価装置」を開発する。AIモデルの作成に必要となるデータセットとしては、外傷全身CT画像とそれに対応する画像専門医のレポートを用いる。現役の救命医でAIモデルの開発経験がある代表者と、企業でのAIモデル開発経験があるプロジェクトメンバーが、現場の医師と協力しながら学習用データセットを作成し、複数臓器の評価モデルを開発する。開発と並行して評価モデルを現場で試用することで、常にフィードバックを受け、現場に最適な実装を最速で実現する。開発する装置の導入は、CT診断を正確かつ迅速なものにするのみならず、今までCTを読むために割いていた人員を患者処置に当てることを可能とする。少人数でも今まで以上に命を救うことのできるシステムの開発、つまりは医師不足と患者予後両者の改善こそが本プロジェクトの目標である。

PM: 原田達也クリエータ: 岡田 直己・井上 周祐
採択金額: 10,000,000
2020年度未踏アドバンスト

ドライブレコーダー型路面性状検査システムの開発

道路は生活に欠かせない最重要インフラであり、人々の安全を守るため適切な維持管理を実施していく必要がある。しかしながら、日本の道路延長は120万kmと膨大であるにもかかわらず、高齢化に伴う専門職員の引退により、道路管理の専門家がいない自治体が約30%あり、また、専用車両による道路点検はコストがかかりすぎるため、網羅的な点検はコスト面で難しいというのが現状である。 イノベータは、2016年度よりスマートフォンやドライブレコーダーのみで道路損傷をリアルタイムに検出するシステムの構築に取り組んできた。しかしながら、現在の仕組みでは、危険な損傷箇所全てを検出するのみにとどまっており、長期的な修繕計画の策定の際に用いられる「ひび割れ率」の算定ができていないという課題がある。 本プロジェクトでは、従来レーザースキャナやラインカメラを搭載した専用車両で計測していた「ひび割れ率」を、一般的な乗用車に後付け可能なスマートフォンやドライブレコーダレベルの簡易デバイスのみを用いて算出するシステムを開発する。これまでデジタルカメラ等を用いてひび割れ率を算出する研究は多く報告されているが、カメラの設置位置やカメラパラメータが固定であるという仮定を置くことが多かった。本プロジェクトでは、これまでの研究で前提とされてきた仮定を置かず、カメラパラメータが変動する車載カメラのみを用いて「ひび割れ率」を算出するシステムの開発を目指す。 また、いくつかの自治体において、開発したシステムと専用車両による点検結果を比較することで、開発したシステムが実用水準に達しているかを検証するとともに、市場への提供方法を検討し、道路の安全性を高めることに貢献することを目指す。

PM: 原田達也クリエータ: 前田 紘弥
採択金額: 6,400,000
2020年度未踏アドバンスト

画像解析技術を用いた鉄スクラップの自動解析システム(EMMA)の開発

本プロジェクトは、画像解析技術を用いた鉄スクラップの等級分類及び不純物検出システムを開発し、鉄鋼材のリサイクルプロセスを抜本的に改善することを目指す。 現在、世界のCO2排出量のうち、鉄鋼材生産による排出はおよそ10%を占める。SDGsの視点から、CO2排出量を1/3に低減し資源循環が可能な鉄スクラップを原料とした電炉法の拡大は社会にとって大変重要である。ところが、リサイクル過程で鉄以外の不純物が混入することで、鉄鋼材の機能低下を引き起こすことが知られている。鉄リサイクルを促進しCO2排出量を削減するためには、不純物の濃化を防ぎ、鉄の品位を維持することが必要になる。 不純物濃化の防止のためには、不純物の除去・不純物混入量に応じたスクラップ等級分類が求められる。一方、鉄鋼スクラップのリサイクルを行う電炉メーカーは、運び込まれる大量の鉄スクラップの品質・不純物混入度合いを、熟練社員の目視で行っており、品質と作業効率に大きな課題を抱えている。この工程が、鉄鋼材リサイクルの促進に大きな歯止めをかけている。 本プロジェクトでは、画像解析技術を用いた鉄スクラップの等級分類及び不純物検出システム(EMMA)を開発し目視による工程を代替する。加えて、EMMAをベースとし、不純物量に基づいた定量的かつ客観的な新しい鉄スクラップの価格設定システムを策定する。これによりSDGsの主要目標である鉄鋼生産のCO2排出抑制を実現すると共に、スクラップ取引の健全化とコスト削減によるビジネス課題解決を目指す。 本プロジェクト期間中に協賛企業の拡大・データセット構築の元、等級分類・不純物検出の両モデルの構築を行う。その後、電炉メーカー各社にて画像解析モデルの実操業上での実証実験を行い、年度内の社会実装を目指す。

PM: 藤井彰人クリエータ: 田島 圭二郎・佐伯 真
採択金額: 10,000,000
2020年度未踏アドバンスト

治癒状態共有webサービスの開発

本プロジェクトでは、医療行為等による治癒状態を共有できるwebサービスの開発を行う。開発するシステムは以下の3つの要素から成り立っている。 まず、患者は治癒状態記録アプリに疾患名と身体状態について記録する。次に、スマートフォンのカメラを用いて自分の動作を録画しサーバにアップロードする。サーバ上で解析された結果は患者の治癒状態として自動的に記録される。記録された結果は設定されたプライバシー権限の範囲内でコミュニティに共有される。 初期のユーザは脳梗塞等を患い、運動療法リハビリを実施している患者を対象とする。運動療法における治癒状態は、既存の学会ガイドラインに則ったアンケート形式の指標と、スマートフォンのカメラやIoTセンサを用いた動作解析から判定する。継時的に測定された治癒状態を構造化し、同様の悩みを抱えた患者と共有するシステムを構築することが本プロジェクトの目的である。 将来的には「どのような患者が、どのようなリハビリをしたら、どれくらい改善したか」というデータを構造化することによって、患者の状態に合わせたリハビリメニューやアドバイスを提案することができるほか、リハビリ製品効果の測定やリハビリ専門職とのマッチングにも応用することができる。

PM: 藤井彰人クリエータ: 田脇 裕太・森山 多覇・孫 暁白
採択金額: 10,000,000
2020年度未踏IT

ARフィルタを用いたヘアアイロン使用補助システムの開発

近年SNSなどで、ヘアアイロンを用いたヘアアレンジの解説動画が数多く投稿されている。しかし、動画内のヘアアイロンの動きを、自身が持っているヘアアイロンをどう動かしたらいいのか、正確に把握・再現することは難しい。その原因として、一つは動画内と自身が向かい合わせになっており、三次元の感覚が分からなかくなること、もう一つは動画を見ることと自分自身の動きを鏡で確認することを同時にすることが難しく、動画と鏡のどちらか一方しか見えていないということが考えられる。これらの問題により思い通りにヘアアイロンを動かせないことは、力加減とタイミングが重要であるヘアアレンジ技術の向上の妨げとなる。  そこで本プロジェクトでは、AR(拡張現実)を用いたヘアアイロンの使用を補助するアプリケーションを開発する。具体的には、髪の毛の状態とヘアアイロンの動きを検知できるセンサデバイスを作成し、それから得られるデータに応じてスマートフォンに表示されるヘアアイロンの動かし方の指示アイコンが変化していくフィルタを作成する。開発するフィルタは顔の角度に追従して指示アイコンの角度が変化し、どの角度でも指示が分かりやすく見えるようにする。これにより、先に挙げた画面上で三次元の感覚が分かりにくいという問題を解決する。また、ARを用いることでカメラに映る画像とヘアアイロン動作の指示を同時一つの画面に表示するで、動画と鏡を同時に見ることが難しい問題を解決する。  加えて、本アプリケーションでユーザがセンサデバイスを装着して独自に行ったヘアアレンジのフィルタを、ユーザ間で共有できるようにすることも目指す。これにより、ユーザ全体のヘアアレンジスキルの向上とアレンジの幅が広がることが期待できる。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 松井 菜摘
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

機械学習を活用してデザインからモバイルアプリのコードを自動生成するソフトウェア

現在モバイルアプリの市場は急速な拡大を見せている。そんな中、自身のアイデアを活用したモバイルアプリを作成し社会問題を解決したいと考える人は少なくない。しかし、実際にアプリの開発を行うとなると相応の技能の習得が必要となり、挫折してしまう人が多くいる。また現在の日本では、技能を習得した開発者の数が不足しており、多くの企業にとっても高速なアプリケーション開発は簡単ではない。 本プロジェクトでは、デザインとコードの対応関係に注目して、デザインを元にアプリケーションのコードを自動生成するシステムを開発する。デザインにはUIパーツの意味やレイアウト情報が含まれていないため、機械学習を活用してこれらを補う。またバージョン管理システムと連携することで、チーム開発での利便性を高め、UIとデータの紐付けのコードやサーバレスアーキテクチャとの連携をIDE上で行う仕組みにより、ビジネスロジックの自動生成も行う。これらの機能をまとめて使用できるIDEを提供し、ほとんどコードに触らなくてもアプリケーションの開発が行えるようなシステムを実現する。 本システムにより、今まで実装力を持たなかった人によるイノベーション創出の促進が見込まれ、ひいては日本におけるベンチャー起業の促進や、新しいサービスの創出につながる。そして現在アプリケーション開発を行なっている企業においても、開発の大幅な高速化が見込まれる。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 大渕 雄生
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

一人一人に合った理由でイベントに誘ってくれるシステムの開発

あるイベントに対し、SNSで宣伝された情報を見た時はそこまで興味が湧かなかったが、後から参加した人の話を聞いて「自分もそのイベントに行けばよかった……」と後悔することがよくある。参加した人の話の魅力的な部分をイベントが始まる前に聞くことができていたら自分も参加できたのだが、これがなかなか難しい。まず、参加した人の話はイベントが終わってからでないと聞くことができない。また、そのイベントのどこに興味を持つかは多種多様であるのに対して、既存のイベントを宣伝するようなメディアでは全てのユーザに対して一律の内容でしか伝えることができないため、「これは自分のためにあるイベントだ!」と突き動かされるようなメッセージを受け取ることがなかなかない。 本プロジェクトでは、一人一人に合った理由でイベントを提案するアプリケーションを開発する。本アプリケーションはイベントに関する情報を収集し、知識グラフを活用することで、ユーザ一人一人が最も魅力的に感じるポイントを発見し、ユーザが「これは自分のためにあるイベントだ!」と突き動かされるような理由付きのイベント提案をすることで、多種多様なユーザそれぞれが魅力的に感じるイベントに、より多く参加できるようになることを目指す。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 安藤 真之介・新田 洸平
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

時間を操作する映像型ノートの開発

自分が録ったノートに授業の映像が紐づくと、ノートはその効果をより効果的に発揮する。加えて、授業のリアルタイム映像に直接メモを書き込めるようになると、板書の内容をそのまま写す必要がなくなる。さらに、要約・言い換え等による符号化を促進することで、ノートの内容がより記憶に残りやすくなることに繋がる。このような、映像と書いた内容とを紐づけるノートを、以降「映像型ノート」と呼ぶ。 しかし、講義形式の授業では、教師の発言とノートを書くタイミングにはラグが発生するため、映像型ノートはそのような従来の同期型の授業にはマッチしない。そこで本プロジェクトでは、同期型と非同期型の双方の利点を取り入れた授業を実現する映像型ノートシステムを開発する。 本システムは、同期型授業において非同期型授業のように画面上のその授業映像の時間を操作できるようにすることで、各生徒が授業の進行を思い通りにコントロールできるようにする。また、同期型授業の双方向性を保ったまま、タブレット上で学習に効果的な映像型ノートテイキングが行えるようにする。時間操作によって生じた授業の進行のずれは、映像の内容を解析して自然に吸収されるようにする。 本システムは、学校での対面授業とビデオ会議システムを使用したオンライン授業の二つの同期型授業に対応させる。これらによって生徒に時を操作するような授業体験を提供し、生徒の学習能力の拡張を目指す。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 青山 柊太朗
採択金額: 1,520,000
2020年度未踏IT

文脈に基づいたemoji推薦とその選択インタフェースの開発

本プロジェクトでは、文脈から情報を抽出することで文章に合致するemoji(絵文字)を推定・提示し、ユーザに選択をさせるインタフェースを開発する。現状emojiの入力手段としては、OSやアプリケーションに備わっているemojiの一覧から入力する方法と、文字変換を利用したものが存在する。前者は目的のemojiを探し選択する時間的コストが大きく、後者は英語圏など文字変換の無い言語圏で使用することができないといった問題点がある。  そこで本プロジェクトでは、入力した文章について文脈に合致したemojiを自動で推定し、ユーザに選択させるシステムを開発する。既にWord2Vecを用いた試作があるが、これは各単語の情報にしか着目していない。例えば逆説や二重否定などにも対応できるよう、文構造も含めて情報を抽出し、ある種文章をemojiに翻訳するようなタスクをこなすことを目指す。そして、推薦されたemojiを人間にわかりやすいように可視化し、直感的に入力することのできるユーザインタフェースを開発する。  emojiが世界中で使われ出してからまだ10年も経っておらず、最近になってemojiにまつわる研究が学際的に行われるようになってきた。その中でemojiの入力インタフェースに焦点を当て、成果を出した研究はまだ存在しないため、本システムは様々なOSやアプリケーションに組み込まれる可能性がある。本システムにより、emoji利用のハードルが下がり、多種類のemojiの利用が促進されることで、emojiを使ったよりリッチなコミュニケーションの創発が期待される。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 大原 嶺・青田 香菜子・藤井 樹里
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

VRを用いた野球球審ジャッジトレーニングシステムの開発

近年の野球において、球審のストライク・ボールの判定(ジャッジ)のミスが問題視されている。本プロジェクトでは、このジャッジのミス(誤審)を改善するために、VRを用いたジャッジトレーニングシステムを開発する。ユーザは野球場、投手、捕手、打者が配置された仮想空間において審判の視界を体験し、投手が投げる球に対してジャッジを下すことでトレーニングを行う。 本システムは、テストモードとトレーニングモードに分かれており、テストモードではユーザの誤審率を測定し、トレーニングモードではジャッジ技術を高めるための様々のフィードバックをユーザに与える。仮想空間内の各オブジェクトの動作は、実世界でのそれらの動きに基づいた、それぞれの3Dモデルの動作によって再現する。例えばボールの軌道は、弾道測定機器を用いて実世界で投手が投げるボールの軌道を測定してデータ化することで再現することを想定する。 本システムは、ユーザが時間や場所、道具の制限なくトレーニングを実施できるように、スマートフォン用VRゴーグルを用いて利用可能なアプリケーションとして実装する。本システムでのトレーニングを経たユーザの、実世界での誤審率の推移を計測する実験を行い、システムの有用性検証、フィードバックの収集とシステムの改善を繰り返すことで、実世界のジャッジ技術向上に有効なシステムの完成を目指す。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 菅野 龍太
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

聴覚障がい者向けスポーツ上達支援デバイス

私たちはスポーツをする際、プレー中に発生する音を頼りにプレーをしており、プレーに使用される聴覚情報は全体の約20%を占めていると言われている。そこで聾学校でインタビューをしたところ、スポーツで音が聞こえなくて困っている、卓球などの一部のスポーツでは音を感じてみたい、という回答が得られた。さらに調査を続けると、聴覚障がいのある子供たちはスポーツの技能が上達しづらく、それが原因でスポーツにおいて自己効力感や達成感を感じにくいという潜在的な課題を発見した。 そこで本プロジェクトでは、音情報を触覚(ハプティクス)情報に変換してプレーヤーに伝える、プレーヤーの首に巻きつけて使用するデバイスを開発する。本デバイスは、入力情報としてスポーツ中に発生する音の強度・向き・タイミングを得て、出力情報として触覚の強度・向き・タイミングに変換してプレーヤーに伝える。これにより、音が聞こえない状態でもスポーツを楽しみながらプレーでき、また技能向上を加速することができる。本プロジェクトでは本デバイスをまず卓球に応用し、その後、応用対象のスポーツを拡充していく。 本デバイスの特徴として音の識別が挙げられる。聴覚障がい者へのインタビューの結果によれば、例えばボールがどのような回転・速さ・強さなのかが分かる手段が求められており、それが技能上達にも関係する可能性が高い。 スポーツ界ではデフリンピックという聴覚障がい者の競技大会が存在し、聴覚障がい者のスポーツは健聴者とも他種の障がい者からも切り離されている。本デバイスによりその垣根を無くし、誰一人取り残さずに平等にスポーツを楽しめる世界の実現を目指す。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 森田 崇文・籾山 陽紀・栃本 祥吾
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

パックツアーコンサルティングシステム

2018年の日本人海外旅行者数は前年比6.0%増の1895万4031人と過去最高となった。観光庁の「旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究(2018年)」によれば、2016年の日本人の観光消費額の内訳は、国内宿泊旅行は16兆円、国内日帰り旅行4.9兆円、海外旅行の国内消費分が1.3兆円、訪日外国人市場が3.6兆円で、総額は25.8兆円にのぼる。観光消費がもたらす生産波及効果は53.8兆円、このうちの付加価値効果は26.7兆円、雇用効果は459万人と、これはGDPの5.0%、就業者総数の6.9%に相当し、いまや旅行・観光産業は日本の主要産業のひとつである。 では日本人はどのような旅行をしているのだろうか。主要旅行業者の取扱高の内訳をみると、海外旅行、国内旅行とも募集型企画旅行が半分以上を占めている。募集型企画旅行、いわゆるパックツアーは、旅行業者が一般の人から参加者を募り、運送・宿泊・観光の料金を一括して集めておこなう団体旅行のことだ。コースがあらかじめ決まっていて、押付がましいイメージもあるが、メリットも多く、英語の不得手な日本人が便利に利用している。 割安で便利なパックツアーだが、その一方で大きな問題もある。ツアー内容の表示方法が各社まちまちで統一した基準が存在せず、「移動時間は何時間なのか」「何ヶ所の観光地をまわるのか」「活動時間は何時間あるのか」「ホテルのランクはどの程度か」「食事はついているのか」などといった旅の基本要素を比べることさえ難しく、どのツアーが自分に最適なのか判断することができない。旅行者は、せっかく大金を払うのだから、できるだけよいツアーを選びたいはずだが、星の数ほどある選択肢から、自分に最適なものを選ぶのは至難の技である。かなり旅慣れた人でさえ、パックツアーの良し悪しを判断するのは相当に骨の折れる作業だ。 本プロジェクトでは、旅行者のこうした不安を取り除き、損しないお得な旅を推薦するシステムを開発する。本システムは、地域ごとに訪問すべき観光地を明らかにし、旅の要素情報を抽出して客観的な統一基準で比較し、最もコストパフォーマンスに優れたパックツアーを決定する。あくまでも旅行者目線で、いままでのガイドブックが教えてくれなかった「パックツアーの選び方と歩き方」を提供する。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 菅野 楓
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

強力なグラフィック機能を備えた日本語組版処理システムの開発

TeXに代表される従来の組版処理システムは、レポート作成や論文執筆などに用途が限定されており、装飾性の高い文書を制作することは困難である。Microsoft WordやAdobe IllustratorなどのWYSIWYGエディタはグラフィカルな文書を直感的に作成することが可能な反面、文章構造とスタイル定義が混在しており、自動処理や拡張性に乏しい。 本プロジェクトでは、「グラフィック機能の大幅な強化」と「強力な日本語組版機能」に主眼をおいた、新たな組版言語・レンダリングエンジン・周辺システム群により構築される組版処理システムを開発する。 組版言語はテンプレート(独自言語)・スタイルシート(CSSを拡張)・スクリプト(JavaScriptを拡張)により構成される。Web開発に広く用いられている言語を拡張して採用することで、高度なスタイリング機能や自由な拡張性を継承しつつ、開発コストとユーザの学習コスト削減を達成する。テンプレートに用いる独自言語では、HTMLで用いられる要素に「継承」の機能を追加する。言語自体では、テキスト・図形等の基本的な要素(オブジェクト)の実装に集中し、テーブルやグラフといった高機能なオブジェクトは「拡張要素」としてライブラリを通じてサポートする。拡張要素は容易に定義可能であるため、本開発ではカバーしきれない細やかなニーズやハウスルールに対し、ユーザ自身での対応が可能となるとともに、有志によるライブラリ開発も期待できる。 本システムにより、WYSIWYGに依存することない、高度なグラフィックを兼ね備えた雑誌・ポスター・リーフレット等の媒体作成のワークフローが実現することが期待される。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 和田 優斗
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

布製ウェアラブル手書き入力デバイスの開発

近年ARグラスやスマートウォッチが多数発売され、スマートフォンに代わるデバイスとして注目を集めているが、そうはなっていない。その大きな原因として、文字入力の難しさが挙げられる。その課題を解決するために様々なウェアラブル文字入力デバイスが開発されているが、その多くはデバイスが固く装着時に違和感があったり、独自のジェスチャーの習得に時間がかかったりする。 そこで本プロジェクトでは服に組み込まれたウェアラブル手書き入力デバイスを開発する。本デバイスは伸縮性の高い導電糸を用いるため装着時に違和感がなく、手書きという直感的な入力方法を用いるので習得にも時間がかからない。ARグラスやスマートウォッチに加えて文字入力専用のデバイスを持ち歩くことはそれらのウェアラブルであることの利点を損なうが、誰もが身につける服に入力機構を組み込むことでその問題を解決する。 服で手書き文字入力を実現する上では、以下の3つの課題がある。 本プロジェクトではこれらの課題に取り組み、直感的で生活に溶け込む文字入力デバイスの実現を目指す。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 篠田 和宏・佐野 由季・原田 珠華・安齊 周
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

ソフトウェアのインストールを必要としないNIC型セキュリティ機構

ホスティング事業者はログインできないサーバを管理する。マルウェア感染などのインシデントやカーネルパニック等が発生した際には、問題の解析を行う必要があるが、このようなサーバ内のマルウェア感染の検出は上述の制約により既存の手法が殆ど使用できず、難しい。VM Introspectionを用いた検出手法は存在するが、メモリ空間を恒常的に監視しなければいけない、付随する負荷が許容されなければいけない、物理サーバには適用できないなどの問題がある。カーネルパニックについても、コアダンプの出力はユーザの設定に依存し、ファイルシステムが暗号化されていれば顧客が復号しない限りコアダンプが使用できないといった問題がある。 本プロジェクトではこれらの問題を解決する、ネットワークインタフェースコントローラ(NIC)を搭載したPCIeデバイスとサーバからなる、NIC型セキュリティ機構を開発する。PCIeデバイスはDMAによりメモリダンプを取得、プロセス空間を復元し、計算した特徴量や、不自然な割り込みハンドラやコードの書き換えの有無をサーバに送信する。サーバは受信した特徴量からマルウェアの感染を検出し、それを報告する。これにより、事業者はサーバのメモリ空間を一切閲覧せずにセキュリティサービスを提供できる。プロセス空間を復元するため、ファイルレスマルウェア、パックされたマルウェアの検出、コンテナごとの監視も可能になる。キャッシュヒット率やPCIeの帯域を考慮すると、メモリ-メモリコントローラ、PCIeコントローラ-PCIeエンドポイントまでの帯域は通常のサーバとしての使用では十分な空きがあると考えられるため、CPU負荷のオーバーヘッドは僅かとなる。カーネルパニックが発生してもDMAは可能なため、PCIeデバイス内の顧客の署名を検証し、許諾が得られた場合のみメモリダンプをサーバへ送信することで、事業者はコアダンプと同等の情報を迅速に取得できる。既存のフォレンジックツールではシステムマップを用いてプロセス空間を復元するが、本システムではシステムマップ自体を動的に復元し、OSのカーネルのバージョン情報のみからプロセス空間を復元することができる。以上により、個々のマシンにインストールされたセキュリティソフトウェアのバージョンを管理する必要がなくなり、セキュリティ機構本体がPCIeデバイスを管理するサーバに集中するため、事業者の管理コストが低減される。本システムにより、世界中のサーバ管理者が一層強固なセキュリティを提供可能となることが期待される。なお、本システムはLinuxを監視対象のOSとして開発するが、他のOSにも応用することは可能である。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 上田 侑真
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

シェーダライブコーディング・アーカイブシステムの作成

CGプログラミングの世界では、GLSL、p5.jsなどのグラフィック描画言語を駆使し、少ないデータ量かつリアルタイムで映像を制作する文化がある。中でも一定時間内に即興で空のテキストデータから複雑な図形を描画するGLSLコードを作成するシェーダライブコーディングと呼ばれるパフォーマンスが存在し、プログラマのみならず様々な層から注目を集めている。 このライブコーディングは、作品を制作する際に残るコードをもとに鑑賞者が自分の好みに合わせて作品を改変できる点や、音楽やウェブカメラの情報を取得してインタラクティブな映像を生成する点など、他のプログラミングにはない特徴を多く持つ。 現在、パフォーマが行ったライブコーディングをアーカイブするには、動画ファイルとして保存するのが一般的だが、ライブコーディングを動画ファイルに変換してしまうと、上に述べたようなライブコーディングが本来持つ環境とのインタラクションや鑑賞時の改変体験といった様々な情報が失われてしまう。 本プロジェクトでは、GLSLコードさえあればシェーダの描画結果を再現できることに注目し、ライブコーディング中のコードの時間変化を記録したデータを保存することによって動画データに依存せずにシェーダライブコーディングをアーカイブし、それが持つ情報を失うことなく鑑賞者の側が再現できる独自のアーカイブシステムを開発する。本システムにより、時間的・空間的に離れた人にもシェーダライブコーディングの魅力を伝えることを可能にすることによって、ライブコーディングやアートプログラミングの文化の更なる発展に資する。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 平井 龍之介
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

次世代分散型アプリケーションプラットフォームのためのプロトコル開発支援システム

現在、ブロックチェーンのスケーラビリティ問題解決策としてシャーディングが注目されており、世界最大の分散型アプリケーションプラットフォームであるEthereumは、シャーディングやProof of Stakeなどを導入した新しいEthereum 2.0に生まれ変わろうとしている。シャーディングはEthereumに限らず様々なブロックチェーンプロジェクトで採用が検討されており、また、アカデミアでも盛んに研究が進んでいる。シャーディングを組み込んだブロックチェーンにおいて、コンセンサスプロトコルレイヤでの安全性やアルゴリズムの検証は実用的にも学術的にも進んできているが、分散型アプリケーションプラットフォームで肝心なスマートコントラクトレイヤでのプロトコル開発および検証は未だ進んでいない。また、プロトコル開発におけるベストプラクティスもない。 そこで本プロジェクトでは、そのような次世代の分散型アプリケーションプラットフォームのプロトコル開発を効率的かつ統一的に行えるプロトコル開発支援システムを構築する。本システムにより、プロトコル開発が大幅に効率化し、また、負荷集中現象やユーザエクスペリエンスの分析に用いることで、より良い分散型アプリケーションプラットフォームを実現できる。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 岡南 直哉・中村 龍矢
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

ハードウェアセキュリティ検査システムの開発

近年、SpectreやMeltdownなどのマイクロアーキテクチャに対する脆弱性が発見され、ハードウェアセキュリティのリスクがさらに高まっている。また、オープンソースなRISC-VコアやSoC(System-on-a-Chip)の実装も増え、IoT機器やAIアクセラレータとしても利用されるようになり、プロセッサデザイン検証の必要性も増している。しかし、ソフトウェアセキュリティを検査するための技術やツールは多く存在するが、ハードウェアセキュリティを検査するためのものは少ない。 本プロジェクトでは、RTL(Register Transfer Level)で記述されたハードウェアデザインに存在するバグや脆弱性を、ファジングを用いて効率よく検査するシステムを開発する。既存のハードウェアセキュリティ検査手法は、ハードウェアセキュリティに関する専門知識やハードウェアデザインを別の言語で書き直す必要があり、手動で行わなければならない作業が多く、とても大変な作業である。また、キャッシュの状態や実行時間の違いによって発生するバグや脆弱性を発見することが難しいことや、大規模なハードウェアデザインに対して効率よく検査を行うことが難しいといった課題もある。そこで、セキュリティポリシーに基づいたセキュリティ検査を行う機構をハードウェアデザイン内に追加し、ファジングを用いてそのセキュリティポリシーに違反する入力値を効率よく生成し、既存の手法では発見することが難しかったバグや脆弱性を、より短い時間で発見できるようにすることを目指す。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 杉山 優一
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

宇宙ごみの運動推定システムと実証衛星の開発

宇宙空間に存在する使い終わったロケットや人工衛星などを「宇宙ごみ」という。宇宙ごみは地上から確認できない微小なものも含めると約5兆個あると言われており、秒速7kmで地球を周回する。莫大な運動エネルギーを持つ宇宙ごみが運用中の衛星に衝突した場合、衛星の機能に致命的な損傷を与える。これにより、天気予報、通信、安全保障サービスなど、我々が日常的に利用するサービスが使用できなくなる危険性がある。 現在、様々な宇宙ごみの除去方法が研究されているが、宇宙ごみの除去に成功した例はない。そのボトルネックは、除去衛星の設計時に地上から宇宙ごみの運動が正確に把握できなかったことにあった。例えば、除去対象となる宇宙ごみが高速に回転していれば、網や粘着剤で捕獲しようと試みても除去に失敗する可能性が高い。しかし除去対象の運動をあらかじめ把握することができれば、対象に対して捕獲を行う際の成功率を格段に向上することができる。 本プロジェクトでは、宇宙ごみの運動推定システムとその実証衛星を開発する。本システムは、宇宙ごみの明るさの時間変化(ライトカーブ)から宇宙ごみの運動を高精度に推定することで、将来の宇宙ごみ除去衛星のミッション設計をサポートする。加えて、推定システムの実証のため小型衛星を開発し、衛星から送られる運動データと推定システムを用いた運動推定結果を比較することで、システムの精度や汎用性の向上を継続的に行う。本システムの「安価で高精度な手法の確立」と「世界初の実証」という特徴から、宇宙環境の改善が期待される。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 松下 悠里・近藤 耕太・平岩 尚樹・高橋 雄文
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

アルゴリズミック・ロボットデザインの開発

近年、デザインや建築の分野において、要求される課題や問題を解決するために、アルゴリズムを用いてデザインや設計をする「アルゴリズミック・デザイン」という設計手法が取り入れられている。一方、ロボットの設計は、様々な制約の下でそれぞれのロボットに求められる目的を果たすための最適な設計をすることは難しい。 そこで本プロジェクトでは、ロボットの設計・製作にアルゴリズミック・デザインを応用する「アルゴリズミック・ロボットデザイン」を開発する。また、アルゴリズミック・ロボットデザインを開発する前段階として、パラメータを調整することによって無数の様々なロボットの形態やパターンを生成することが出来る、パラメトリック・デザインを用いたロボットの開発にも取り組む。アルゴリズミック・ロボットデザインでは、ロボットは動的なものであるため、パラメトリック・デザインによって得られる様々な形態やパターンに動きを与えるとともに、それぞれの形態や動きを評価することで、要求されている課題に対して最適なロボットの設計や構造を求め、ロボットを設計・製作する。加えて、アルゴリズミック・ロボットデザインに動きを与えたり、評価を行ったりする段階においては、機械学習や強化学習等を用いることで、最適な結果を得ることを目指す。 以上のように、ロボットの設計に対してパラメトリック・デザインやアルゴリズミック・ロボットデザインを用いることで、それぞれのロボットが果たす目的に合う最適な設計が可能になるとともに、アルゴリズムや機械学習を用いることで生み出される、新たなロボットの出現も期待される。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 秀島 裕樹
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

送迎バスの位置情報・到着予想時刻情報提供アプリケーション

学校や幼稚園への通学や高齢者・介護施設へ通うときなど、日常で送迎バスを使う機会は多い。しかし送迎バスが遅れることは珍しくなく、バスの現在地や到着予想時刻を確認することができずに困ることがよくある。またアメリカの場合、スクールバスの到着が遅れたことによる遅刻は遅刻の扱いにならないが、自分の車での移動で到着が遅れた場合は遅刻となるため、スクールバスが既に通過したかどうか、素早い判断が必要になる。 このようなニーズに応えるため、本プロジェクトではリアルタイムで送迎バスの現在地とバス停への予想到着時間が確認できるアプリケーションを開発し、実用できるシステムとして完成させる。本アプリケーションではユーザにとってシンプルかつ有用な情報を提供するため、バスの現在位置、自分のバス停への到着予想時刻を、リアルタイムで更新しながら表示する。公共交通機関のバス事業者では、バスにセンサを取り付け、その情報を集積する大規模なサーバを用意することによって、バスの位置情報、到着予想時刻をリアルタイムに提供するアプリケーションを提供している場合があるが、本プロジェクトではそのようなセンサ、サーバを必要としない安価で手軽なシステムを実現することで、スクールバスのようなローカルな送迎バスにターゲットをフォーカスする。 本アプリケーションが実用化されることにより、日本やアメリカに限らず、世界中で送迎バスのサービスを使用している様々な団体や施設で、その利便性が向上することが期待される。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 酒井 駿
採択金額: 2,736,000
2020年度未踏IT

高速な自動立体造形を実現する手軽で安価なカット加工機の開発

近年、3Dプリンタを中心にレーザーカッターやCNCフライスといった自動造形機を使用するデジタルファブリケーションの分野は、PCの性能向上などのITの発展とともに大きな成長を遂げ、産業向けに限らず一般向けとしても広く普及している。今後は教育分野にも積極的に普及させ、誰もがデジタルファブリケーションを扱える社会を作ることが重要となる。しかしながら学校教育での導入においては、以下の3点の課題が存在する。 そこで本プロジェクトでは、「数分の加工時間」「数万円のコスト」「子供でも扱える手軽さ」を兼ねそろえたカット加工機を開発する。具体的には、紙に描いた形を撮影し、画像処理することで加工データを生成し、スチロールカッターのような線状加工手段とXYテーブルを用いて材料を切断する加工機を開発する。PCに依存しない独立したスキャナを開発することで、PCを持たない環境でも導入を可能にする。 本プロジェクトにより、学校教育に限らず建築模型製作など、これまで導入が困難だった多くの分野で、デジタルファブリケーションの活用ができるようになる。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 関根 史人
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏アドバンスト

海洋資源探査を効率化するための3次元海洋観測システムの開発

本プロジェクトでは、魚介類等の水産資源探査を効率化し、持続可能な水産業を実現するための3次元海洋観測システムを開発する。日本の水産業を取り巻く環境は、資源減少や担い手減少・高齢化が進行しており、持続可能性が失われつつある。そこで、漁業/養殖業の業務効率を改善することで、持続的な水産業を実現し、「儲かる水産業」に変化させ、人材の流入を図り、SDGsにも掲げられている「海の豊かさを守ろう」を可能にする。 本プロジェクトで開発するシステムは、低コスト・小型・リアルタイム性・3次元性(水平方向・鉛直方向)を全て兼ね備えていることが強みである。事業期間中は、漁業を営む事業者の協力のもと、本システムの実証実験を行う。漁場に本観測システムを設置し、陸上から漁場データを見ることができるか確認する。その間取得されたデータを実際に漁師の方々に活用してもらうことでユーザースタディを行い、市場開拓を進め、年度内の社会実装を目指す。

PM: ウルシステムズ株式会社 代表取締役社長クリエータ: 野城 菜帆・早田 圭之介・宮ノ原 優斗・笹川 大介・坂間 奏斗
採択金額: 10,000,000
2021年度未踏アドバンスト

姿勢推定技術を用いたかけっこ指導システムIDATEN(イダテン)の開発

幼児期における運動神経、とりわけ足の速さは子供の自己肯定感に大きな影響を与え得る要素である。しかし、初等教育では教員側が必ずしも体育専門ではないため「正しい走り方」を体育の授業内で指導するのは困難である。そのため現状では、スポーツクラブに通っているか、マンツーマンコーチの指導を受けられるか、といった教育機会格差が子供の自信を左右してしまう。この教育機会格差は、走りを含むスポーツ全般の指導ノウハウが属人的であるためにコーチが偏在化し、コーチ数が不足することに起因する。 しかし、マンツーマンをはじめとした多くのスポーツの指導は、(1)理想の動きとの差分を発見し(2)その差を埋めるためのメニューを指導者が提案する、という流れを繰り返すことによって行われており、姿勢推定技術を用いれば実際のコーチの指導ノウハウをスマホ一つで再現することが可能になる。 そこで本プロジェクトでは、プロコーチのノウハウをバーチャル化することによって、どこにいてもオンラインで対話型の指導を受けられるためのシステムを開発し、スポーツの教育格差是正に取り組む。プロジェクト期間中には元五輪代表コーチの指導ノウハウをAI化し、実際に小学校で実証実験を繰り返すことによりシステムのニーズと有用性を確認し、年度内に事業化することを目指す。

PM: ウルシステムズ株式会社 代表取締役社長クリエータ: 藤田 旭洋・大熊 拓海・村井 輝
採択金額: 10,000,000
2021年度未踏アドバンスト

高速なネイティブアプリ開発を可能にするノーコードプラットフォーム

現在モバイルアプリは社会課題解決の1つの手法となっており、自身のアイディアを実現したいと考える人や、モバイルアプリ開発を行うエンジニアは多数存在する。しかし、モバイルアプリ開発においては「プログラム知識がないために自身でサービスを開発できない」、「アプリケーションを短時間で開発できない」といった問題が存在する。本プロジェクトでは、これらの問題解決を目的としたノーコードプラットフォーム「AxStudio」を普及させ、既存のアプリ開発の枠組みを革新する。 AxStudioではデザインとノードからコードを自動生成することで前述の問題を解決する。プログラミング能力がない人でも、アイディアのモバイルアプリでの実現が可能となる。またAxStudioは開発コストのかかるレイアウト・コンポーネントを自動で予測して生成する為、開発時間の大幅な短縮が可能となる。さらに、AxStudioは可読性の高いコードを書き出す独自のシステムを備えている。これにより既存のノーコードソフトウェアでのプラットフォームへの依存や開発プロセスへ組み込むことができないといった問題を解決しており、エンジニアの業務効率化が可能になる。 本プロジェクトではFlutterへの書き出し、プッシュ通知やアプリ内課金への対応など更なる機能拡充を進め、ユーザー体験を向上させる。またユーザーが独自の機能を追加できるカスタムノードやFireBaseやAWSなどのSaaSとの連携機能を追加しプログラマとの連携をより容易にし、AxStudioの社会実装を進めていく。

PM: Global Catalyst Partners マネージング・ディレクター兼共同創設者クリエータ: 大渕 雄生
採択金額: 6,400,000
2021年度未踏IT

寝ながらの使用に最適化したVRシステムの開発

布団に入ったまま学校に行きたい、排泄以外布団の中で全部出来るようになれば良いのに。この願いは誰もが一度は抱いたことのある、人類共通の悲願であろう。 布団の中にいる状態で、リモコンやスイッチが手元になくともテレビの電源を入れたり電気を消したり。そういった課題はスマートデバイスの登場によって解消されてきた。しかし、例えばいつもPCで行っている作業や人とのコミュニケーション、それらを包含した社会活動全てを布団の中で完結させる事が出来るデバイスは存在しない。 布団の中に居ながらにして学校にいるのと同等の体験、職場にいるのと同等の生産が出来るようになれば人類のQOLは大きく向上するはずである。そこで得られる価値・体験が同じであるならば、人はよりモチベーションが低くとも実行できる手段をとるはずであり、必要なモチベーションが低ければ低いほどより多くの物事に対して働きかけられるようになると仮定するならば、寝ながらという人間にとっての基底状態は最も行動に適した状態であると考えられる。 本プロジェクトでは、寝ながらに最適化した完全据え置き型のVRシステムを開発することで、人が基底状態にいながらにして最大限の行動・体験が出来るようにする。完全据え置き型という時代に逆行した、寝ながらに最適化しているからこその長所を最大限に生かし、これまで小型化軽量化のトレードオフの中で切り捨てられてきた多くの機能やインタフェースを実装し、新たな体験を生み出すことを目指す。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 迫田 大翔・浅野 啓
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

ソースコードの注釈をプログラミングの知見として共有するソフトウェア

プログラミングを学び、エンジニアとして社会問題を解決しようと考える人が増えている。これは「高校生の将来就きたい職業ランキング」の上位にエンジニアが入っていることからも分かる。しかし実際にプログラミングを学習すると、必要な知識の多さに圧倒される。また、ソースコードを書く上での知見の多くは言語化されて共有されていない。つまり学習者にとって有用な知見が熟練者の頭の中に経験として存在している。 本プロジェクトではこれらの経験から来る知見を注釈としてソースコードに紐付けて保存し、共有するシステムを開発する。注釈を付けたソースコード部をハイライトし、その注釈を紐づけることで「なぜその実装方法なのか」「どのように発想したのか」「その処理を行う上でのTips」といったソースコードに内在する知見を共有することができるようにする。また、注釈を付けるソフトウェアだけでなく注釈をホスティングするサービスも同時に開発することで、GitHubのような、ユーザの貢献によってデータが更新されていくエコシステムの作成も目指す。 本システムにより、今まで共有されてこなかった知見が共有されることで初学者の学習効率化、中級者のスキルアップ、ひいてはエンジニア全体の技術力の向上が可能となり、良質なソースコードの生産やイノベーティブなサービスの創出に繋がる。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 藤永 弥太郎
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

Web技術を活用したプログラミング学習基盤の開発

2022年度から高校で「情報I」の必修化が始まるが、高校の教科に「情報」が新設された2003年~2020年の17年間で、7県が一度も情報科の教員採用を行なっていなかったことや、情報科専任教員の割合が8割を超える県が3県ある一方、1割未満の県が26県もあることから、情報教育に明確な地域格差が存在していると言える。 高校では個人の端末を授業で利用するBYOD(Bring Your Own Device)を前提としていることから、GIGAスクール構想による端末導入の補助がないため、生徒一人ひとりの端末に合わせて実行環境の構築と管理をする必要がある。そのため、多くの学校でオンラインの実行環境を利用してプログラミングの授業を行うことが考えられるが、現存するオンラインの実行環境ではログインに時間がかかることや、実行ボタンを押してから結果が表示されるまでが遅いことにより、生徒に使いにくいという印象を与えている。 本プロジェクトでは以下の開発を行うことで、これらの問題の解決を目指す。 個人情報保護に関する法律・条例は、地方自治体でそれぞれ制定されたものも含めて2000個近くあり、それぞれで個人情報の定義や解釈が異なる部分もある。本プロジェクトでは、バージョン管理システムで収集した学習データが、それら個人情報保護の法律に則って適切にユーザに提供されるように、システムを設計・開発する。 バージョン管理システムのデータを元に、生徒のプログラミングの過程を分析・可視化できるようにすることで、教員不足でも生徒一人ひとりに合った学習のサポートが可能となり、地域格差の解消、指導の質の向上や効率化が期待できる。 教師用プラットフォームによって蓄積された問題の中から、生徒のプログラミング能力に合った問題を提示できるようになれば、文部科学省がGIGAスクール構想で推進する、いわゆる「AIドリル」が実現する。本プロジェクトを通して、GIGAスクール構想における最終的な目標である、生徒の教育データを収集・分析し、個別に最適化した学習の実現を目指す。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 坂口 楽
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

構造化会議による効果的な会議の実現のためのプラットフォーム開発

会議は学校や会社で基本となる生産の場である。しかし、この会議の非効率さについては様々な指摘があり、新しい働き方が定着していく中で、会議が抱える課題は一層大きな問題になっている。調査をした範囲では「計画・事前準備・結果」が無い会議は生産性が低く、参加者のモチベーションにも影響が出ることが分かっている。 先行研究で会議の議事録を構造化・アーカイブする試みが行われている。本プロジェクトではその手法を参考に、会議を議題設計の段階から構造化する手法を研究し、それを基にした「計画・事前準備・結果」のアウトプットを強力に推進する会議(以降「構造化会議」)を実現するためのプラットフォームを開発する。構造化会議は、会議に重要な要素を前提に進行全体をフレーム化して自由度を低くする代わりに、効率や会議の質を向上することを狙う。 構造化会議では「結果」「事前準備」「報告」「議論内容」の4つの項目を明確に定義し、そこから議題を作成する。こうすることで、プロセス毎の目的・役割がはっきりし、議論の逸脱を防止して効率的な進行を可能にする。そして、これを支援するプラットフォームをWeb上に実装し、ユーザに提供することで、効果的な会議の実現を支援する。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 三宅 健太郎・寺門 幸紀・横浜 希・山縣 帆高
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

3Dプリンタで創る音の触感

現代において普及している非接触での情報伝達手段としては、視覚および聴覚に依存するものが多い。X Realityが普及する中、これではRealityを実現する技術として不足があると言わざるを得ない。装着型の触覚提示デバイスなども開発されているが、旧来のメディアと同様にそれ自身が巨大な存在感を持っているため、結果的にデジタルコンテンツと人の距離を引き離してしまう。 この問題を解決するデバイスとして音響放射圧を用いた非接触での触覚提示装置が存在するが、普及には至っていない。その理由は、装置の稼働に大量の並列演算資源を必要とし、高い技術力や多くの資金が必須であるため、研究開発並びに装置の入手・導入が難しいからである。 そこで本プロジェクトでは、3Dプリンタの造形物を用いた新たな超音波の位相制御手法により、非接触で触覚情報提示を容易に実現するソフトウェアとハードウェアを開発する。使用目的・環境に応じ、自作のソフトウェアで3Dデータを生成することにより、3DプリンタやCNCを用いて位相制御を行う構造体を容易に作製することができるため、本システムの汎用性は非常に高い。 本プロジェクトにより膨大な計算資源を必要としない安価で簡便な非接触型の触覚提示装置の提供が可能となるため、触覚提示技術の研究開発と普及の促進が期待される。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 望月 草馬
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

合気道の体の使い方の習得を支援するソフトウェア群の開発

体格や体力に関係なく相手を制することが出来る武道である合気道は、女性や子供でも大男を投げ飛ばせるところが魅力的で、近年では護身術として人気が高い。合気道の団体では「小よく大を制す」ことが出来るその独特な体の使い方を頻繁に練習する。しかし、その習得には以下のような問題が存在する。 本プロジェクトでは、これらの問題を解決する2つのソフトウェアを開発する。 一つはユーザの体の周りに視覚映像を追加することで、合気道的な体の使い方のコツをユーザに素早く掴ませることが出来るMR(複合現実)向けのソフトウェアである。これにより、合気道の体の使い方の習得の難しさを下げること、合気道の指導者がいなくても合気道の習得ができるようにすることを目指す。もう一つのソフトウェアは、筋電センサとスマートウォッチを利用することで、ユーザの体の使い方を評価するソフトウェアで、これによりユーザ自身の動きがどの程度合気道の体の使い方になっているのかを数値的に分かるようにする。 本システムを使用した合気道の体験会を開催することで、合気道に興味を持ってくれる人を増やすだけでなく、合気道の体の使い方を習得することにより、日常生活や介護の負担軽減など、合気道によって恩恵を得る人を増やすことを目指していく。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 鈴木 湧登
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

実世界植物検索システム

道端の植物観察が人気になってきている。フランスでは「道端の雑草の名前をチョークで紹介する」というムーブメントが起こり、ヨーロッパ全土に広がっている。ロンドン在中のフランス人植物学者Sophie Leguilは雑草の概念を変えようと、「#MoreThanWeeds」というプロジェクトを立ち上げた。日本でも同様に、「やけに植物に詳しい悟空」という雑草の特定をするTwitterアカウントがフォロワー13万人を超えたり、雑草約100種の花を紹介する「美しき小さな雑草の花図鑑」が2018年2月の初版から12刷を重ねて発行部数が4万5千部にも上ったりして、関心が高まっている。 しかし、既存の検索システムに道端の植物の情報は載っていない。例えば、Googleで「つくば 春日 植物」と検索すると、近くの花屋や植物観光スポットである筑波山が検索結果として出力される。一方で、TwitterなどのSNSでは、写真とともに道端の植物がツイートされている。しかし、タイムラインのツイートは見逃しやすく、そのアカウントをフォローしていないと気付くのも難しい。また、Googleマップにも道端の植物の情報は載っておらず、実際に植物が生えている場所を知ることはできない。 そこで本プロジェクトでは、現実世界とリンクした植物検索システムを開発する。TwitterのツイートとGoogleストリートビュー中の画像をマルチモーダルに活用し、実世界にある植物を検索できるようにすることで、ユーザが従来気づけなかった道端の植物に目を向け、名前を知ることができるようにする。アプリケーション内で、植物のカテゴリーや季節でフィルタリングを行い特定の植物を検索する機能、マッピングされている道端の植物や雑草がユーザの現在地から行動範囲内であれば通知をする機能を提供することで、ユーザが地図上のどのマーカをタップしたか、実際にその場所まで移動したかなどのデータを蓄積し、ユーザが興味を持つ植物を学習する。さらに、ユーザが見つけた植物の情報を写真とともに地図に追加する機能や、ユーザが勧める見頃の植物の情報を共有する機能なども検討して実現していく。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 依田 実波
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

微細加工技術によるWebカメラのToF(トフ)カメラ化

距離計測手法の一つであるTime-of-Flight(ToF)は、 (1)小型化が可能、 (2)CPU負荷が小さい、 (2)CPU負荷が小さい、 (3)比較的長距離計測が可能、 (4)画素単位で独立して距離計算が可能、 といった特徴を持つため、近年、研究開発が盛んに行われている。 ToF(トフ)の原理は、照射光が被写体に反射して戻ってくるまでの時間を測定し、距離を計測するというものである。しかし、既存のToF(トフ)カメラは時間を計測するための回路を必要とするため、受光面積的な観点から高解像度化することが困難であり、またS/N比的な観点から距離計測精度の向上を行うことが困難であるという問題が存在する。 そこで本プロジェクトでは、これら既存のToF(トフ)カメラにおける構造的な問題を解決するために、電気偏光光学素子を用いた「時間偏光相関イメージング」を開発する。時間偏光相関イメージングは、光源およびカメラ前面に設置された電気偏光光学素子によって偏光状態を時々刻々と変化させ、距離によって生じた偏光状態の変化を偏光相関として計測する。 これにより、距離を推定するための情報は実空間上で計算された状態で素子に入るため、既存のToF(トフ)カメラのように距離計測のための回路を必要とせず、ToF(トフ)カメラにおける多画素化とノイズ低減というブレイクスルーをもたらすことが可能である。本プロジェクトでは、カメラのフィルタとしての電気偏光光学素子を微細加工技術によって実現し、時間偏光相関イメージングシステムを構築する。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 蛭子 綾花
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

服のサイズ感がインタラクティブに分かるAR試着モバイルアプリケーション

EC(Electronic Commerce)は人々の生活に根ざした存在となっている。コロナ禍をきっかけとしたニューノーマルにおいてショッピングのあり方は変容し、ECの重要度は今後さらに増していくと考えられる。しかしファッションECには、商品を事前に試着できないという課題が存在している。AR試着はそのソリューションの一つとして注目されているが、既存の事例はサイズ感の表現の限界や使用デバイスの制約などの課題があり、広く普及するには至っていない。 本プロジェクトでは、スマートフォン上で洋服のサイズ感がリアルに分かるAR試着アプリケーションを作成し、この課題の解決に取り組む。具体的には、ユーザの身体の3Dメッシュを生成し、それに対して洋服の3Dデータを着せてリアルタイムで物理シミュレーションすることで、ユーザの身体に応じた生地の余裕や動きをAR上で表現する。 また、洋服のメッシュがAR上で現実にはあり得ないような変形をした際に、ハプティクスでユーザに通知した上で、生地が伸びすぎている部分をUIで表示する。これにより、AR上でリアルかつインタラクティブに洋服のサイズ感を試着シミュレーションできる。加えて、本アプリケーションは鏡に写った自分をスマートフォンのカメラで写すというUXを想定しており、誰もが持っているものだけで実現できる。外部装置を一切使わずにいかに試着をリアルに再現できるかが重要だが、機械学習を用いた人体の3Dメッシュの生成や姿勢推定をうまく組み合わせることで、その実現を目指す。

PM: 岡 瑞起クリエータ: 新井 康平・小泉 裕之介
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

チャット型インタフェースを用いた集団発想法支援ツールの開発

集団発想法(以下、ブレインストーミング)とは、複数人でアイデアを出す企画手法である。集団でアイデアを出し合うことによって、発想の誘発や提案の連鎖反応が期待できると言われており、それぞれの提案を付箋に記入しアイデアを出していくといった進め方が一般的である。本来のブレインストーミングは対面で行うものであるが、近頃はオンライン化の加速により、リモートでもブレインストーミングを行う機会が増えている。その際によく用いられるオンラインホワイトボードツールでは、付箋の形をしたオブジェクトを配置し編集するという表現が用いられているが、デジタルに最適化されているとは言えない。 ブレインストーミングは、「発言を重ね、提案を記録していく」「提案の量が重視される」といった特徴がある。そこで本プロジェクトでは、オンライン上での会話に日常的に使用されているチャットアプリケーションのインタフェースを参考に、オンラインでブレインストーミングを行えるWebアプリケーションを開発する。加えて、アイデアを出してまとめるまでの段階ごとに適した機能を用意し、進行を支援する方法を模索する。これにより、ユーザが不慣れでも、手順に沿ってスムーズにブレインストーミングの進行を行えるようになることが期待できる

PM: 岡 瑞起クリエータ: 野崎 智弘・三橋 優希
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

スマートグラスではじめる日頃のヘルスケアの新常識

少子高齢化やCOVID-19の影響により医療現場のリソース不足が問題視されている中で、近年ヘルスケアデバイスを用いた予防医療が注目されている。ヘルスケアデバイスを用いた予防医療は、常時インターネット接続されたデバイスによって得られた情報をもとに個々の疾患への予防や健康増進の適切な方法を早期発見することを目的としており、医療や介護の現場でもヘルスケアデバイスが導入され始めている。 ヘルスケアデバイスとして腕時計型、シューズ型など多様な形態が提案されているが、ヘルスケアデバイスとして求められていることは「有用な数多くの情報を取得できること」「日頃から身に着けられること」であると考えられる。まず、前者の観点から考えると、顔は心拍や体温といった情報に加え、顔筋の動きや姿勢といった有用な項目が計測可能である。次に後者の観点から顔に装着するデバイスを検討すると、ヘルスケアデバイスとして適している形態はメガネなのではないかと考えられる。しかし、従来形状のメガネでは鼻と耳で支えるデバイスであるため重量を重くできず、搭載可能なセンシング用ICの種類が限られるという問題がある。 そこで本プロジェクトでは、メガネの構造を一から再設計し、メガネとしての安定性を考慮しつつ、大量のセンシング用ICを載せることにより、様々な生体データ、環境データを取得可能にする。 本プロジェクトの目的は予防医療を前提としたヘルスケアデバイスとしてのスマートグラスを開発し、ユーザがデバイスの存在を強く意識することなくヘルスケアの体験を享受し、健康寿命を延伸することである。そのために、スマートグラスの実装、センシングしたデータを基にした行動変容提示アプリケーションの実装を行う。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 伊藤 優太
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

XR向けWindow System

昨今XRに注目が集まっているものの、日常的普及には至っていない。その大きな理由の一つとして、XRがゲームの一つのジャンルとしての位置づけが強く、実用的ツールとして認識されていないことが考えられる。VRが実用的な作業空間として利用されるためにはハードウェア側の発展(解像度や装着感の改善)と同時にソフトウェア側の発展も必要である。 Linuxなどのデスクトップ環境ではX11というWindow Systemが採用されており、それにより複数のアプリケーションが同時に起動してディスプレイ上に表示され、ドラッグ・アンド・ドロップやコピー・アンド・ペーストなどの入力を適切にアプリケーションに渡しながら、アプリケーション間で協調して作業を進めることができている。一方VRアプリケーションはそのようなアプリケーション間の協調を可能にする抽象化レイヤが存在しない。 そこで本プロジェクトではX11をXR向けに拡張したZ11を開発することで、3Dアプリケーションが複数起動し、協調可能な環境を実現する。これにより、乱立するXRデバイスに対してアプリケーションが個別にそのドライバへの対応をしなければいけない問題を解決し、2Dアプリケーションへの後方互換性を保ちつつ、この上ない広範囲なディスプレイ環境で実用的な作業空間を備えるXRが実用面で発展することを目指す。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 木内 陽大・江口 大志
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

筋力トレーニングを全自動で記録するシステムとデバイスの開発

フィットネス業界の市場拡大と新型コロナウイルスによる外出自粛の影響により、人々の運動への意識は高まりつつあるが、実際には運動を始めても途中で断念してしまう人が多く、運動習慣の継続を支援する環境は十分ではない。 本プロジェクトでは筋力トレーニング(以降、筋トレ)の記録の自動化というアプローチで運動習慣の継続をサポートすべく、以下を開発する。 ユーザがウェアラブル端末を装着して筋トレすることで、デバイスから筋トレ中のモーションデータが取得され、筋トレ判別アルゴリズムによって筋トレの内容と回数が記録される。ウェイトマシンによる筋トレの際は、回数と同じく重要なウェイト量のデータを、ジム用デバイスで取得する。筋トレの記録はユーザ用アプリケーションで確認でき、モチベーション維持や効率的な筋トレに役立てることができる。また、記録されたユーザの運動データを利用して、新たなコミュニティを形成したりパーソナルトレーナーの役割を果たしたりすることが可能となる。 さらに、本プロジェクトのジム用設置型デバイスを応用することで、ジムのIoT化にも貢献することができ、ジムの混雑度やマシンの稼働率を測定することが可能となる。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 山本 恒輔・下島 銀士・海老原 祐輔
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

風呂を掃除するタコ型ロボットとシミュレータの開発

本プロジェクトでは浴槽内の掃除を行うタコ型ロボットと、そのシミュレータを開発する。これは風呂掃除が可能な自動化家電である。 風呂掃除をさぼると付着した水分が蒸発し水垢が残る。水垢自体が人体に害を及ぼすことはないが、放置すれば雑菌が繁殖しやすくなり悪臭の原因となる。したがって日常的に取り組む必要があるが、風呂掃除は時間もかかり大変である。多くの人々が家事労働の中で最も大変だと感じているのが風呂掃除であり、その自動化家電に需要があることが分かる。 ルンバのような従来の掃除ロボットは天井や浴槽の内壁を移動したり、垂直な壁を上り下りしたりできない。磁力による吸着で移動する窓拭きロボットは、その移動原理から浴槽内の複雑な環境を自律的に移動することは不可能である。 そこで本プロジェクトでは、タコの持つ吸着性や腕の多用途性を取り入れ、天井や壁などの複雑な環境も歩行可能な移動性(吸着性)を獲得し、防水性、浴槽の隅を掃除できる伸縮自在の腕を兼ね備えたロボットを製作する。また、壁や天井とハードウェア間の多点接触の各接触点から受ける力をモデル化し、それに基づいてタコ足の多関節の動作計画をシミュレートするシミュレータを開発する。シミュレータ上で学習を行い、あらかじめ歩行方法を獲得させたロボットを実際の環境に投入し、強化学習させることで、浴槽内を自律的に移動し、付着した水分を自動で拭きとることが可能な機械システムを開発する。 この機械システムを利用することで、ユーザの日常における家事労働の負担が減り、風呂掃除に費やしていた時間を別の有意義な時間へ割けるようにすることで、ユーザのより快適な暮らしを実現したい。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 原田 慧
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

シェルスクリプトへのコンパイルを行う静的型付けスクリプト言語の開発

POSIX規格に規定されたシェルスクリプトは、多くの環境で動作する非常にポータビリティの高いスクリプト言語であり、そのポータビリティから広く開発者に配布するスクリプトなどの用途に適しており、実際にそのような目的で多く利用されている。しかしながら、シェルスクリプトはあくまで補助的に利用される言語であり、シェルスクリプトを書く開発者もそれを専門としているわけではない事が多い。さらにシェルスクリプトは古い言語であり、一般的なプログラミング言語とは異なった構文を持っていることから記述するのが難しく、生産性を低下させており、バグの原因にもなっている。 本プロジェクトでは、現代的なプログラミング言語に近い構文と機能を持つシェルスクリプト言語を開発する。この言語は POSIXに規定されたポータビリティの高いシェルスクリプトへの変換を行うことによって、書きやすい言語でありながら、POSIX準拠のシェルスクリプトと同等のポータビリティを実現する。これによって開発者はポータビリティの高いシェルスクリプトを簡単に書くことができるようになり、ポータビリティがより高いスクリプトの配布が促される効果が期待できる。 また、近年では多くの言語で採用されていながらシェルスクリプトでは利用できなかった静的型検査の手法を採用することで、より安全でバグの少ないスクリプトを書くことが可能となり、生産性も向上することが期待できる。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 矢尾田 貴大
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

レースドローン向け低遅延IP映像伝送システムの開発

レースドローンとは、ドローンが指定のコースを周回し、そのタイムを競うドローンレースと呼ばれる競技で使用されるドローンである。パイロットは、無線で中継されたドローン上のカメラの映像をモニターやゴーグルに表示し、それを見ながらドローンの操縦を行う。ドローンの最高速度は150km/h以上にも達するため、レースドローンにおける無線映像伝送ではレイテンシが小さいことが重要である。 そのため、現在のレースドローンにおける無線映像伝送では、レイテンシに優れるアナログ映像伝送が主流である。しかし、アナログ映像伝送には、低い解像度、ノイズの多さなどの点において大きな問題がある。本プロジェクトでは、FPGAを用いたノイズの少ない高解像度なデジタル映像でのレイテンシの低い無線伝送技術を開発する。 旧来、デジタル映像伝送は、高解像度、低ノイズの鮮明な映像を伝送することができるが、レイテンシが大きく、レースドローンには適さないと考えられていた。本プロジェクトは、デジタル映像伝送を構成する各コンポーネントにおけるレイテンシを測定し、ボトルネックを明らかにすると共に、そのボトルネックをFPGAで代替するシステムを開発するものである。 本システムにより、ドローンのパイロットは鮮明な映像を見ながらドローンを操縦することが出来るようになるだけでなく、その映像を配信する際にはコンテンツとしての価値が高まり、結果としてレースドローンの人気を高め、その地位向上に寄与することが出来る。 また、この技術はレースドローンのみに適用されるものではない。自動運転車、無人航空機の自律運転など、カメラを搭載するあらゆるデバイスが送信した映像をエッジ処理するための重要な基盤となりうる。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 水野 史暁
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

全身の姿勢推定が可能なイヤーアクセサリの開発

近年、人間の全身姿勢推定技術が、スポーツの採点や医療におけるリハビリ支援、アニメーション制作などの分野で広く用いられている。そのために、全身の姿勢推定が可能なウェアラブルデバイスが求められてきたが、従来のデバイスは高額な導入コストや社会的な受容性の低いデザインに課題があり、日常的に利用することは難しかった。 そこで本プロジェクトでは、人々に受容されやすく日常的に利用可能なイヤーアクセサリで、場所や動作の制約のない全身の姿勢推定を実現する。本アクセサリは、ユーザの全身映像を撮影する小型カメラと、カメラ位置を補正する加速度センサから構成される。本アクセサリを両耳に装着すると、左右のカメラで取得した2つの全身映像と加速度データから、深層学習によって全身の3次元骨格座標が取得できるようにする。加えて、本アクセサリと連携し、自らの過去の姿勢の振り返りや、現在の自分の姿勢に応じたリアルタイムな音声フィードバックなどが行えるアプリケーションを開発する。 本アクセサリが普及することにより、ユーザの運動データを膨大なライフログとして蓄積できるようになり、既存のスマートデバイスで取得される心拍数などの生体データと合わせて、ヘルスケアの分野で有効活用されることが見込まれる。また、スポーツ中の選手の姿勢データの取得と共有が可能になれば、より効果的なオンラインコーチングの実現が期待できる。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 原 拓也・田丸 裕己・平城 裕隆
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

釣りのサイバーフィジカルシステムの開発

本プロジェクトでは、アナログな釣りをリアルタイムセンシングによりサイバー空間に投影し、現実空間とサイバー空間の情報を融合させ、デジタルコンテンツと釣りの体験を結びつけるプラットフォームを開発する。 そのために、釣り人の行動をリアルタイムで認識し記録する釣り竿に装着するデバイスと、ディープラーニングによる魚検出モデルを使用した水中を自動撮影するエッジ画像処理デバイスを開発し、これらIoTデバイスの収集データのWebシステムによる可視化を実現する。 本デバイスによって過去に収集されたその地点での水中映像情報や釣果データが、現在の自身の釣りの行動ログと組み合わさることで、新しい釣りのスタイルが開拓される。 将来的には、今までのアナログな釣りがデジタル空間に拡張されることで、釣りがeスポーツとして発展することが期待される。今までの釣りは水辺で一人楽しむスポーツであったが、位置情報と行動認識技術により釣り選手がサイバー空間に投影され、その水中映像が常に確認できるようになることで、オンライン上の観客が釣り選手を応援したりアドバイスを伝えたりできる環境ができると考えられる。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 福田 修之・冨田 周作・松井 智一
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

自律分散的に展開される遊び場を実現するための遊びの制作支援ツールの開発

本プロジェクトでは、子供たちのやってみたい遊び方を実現可能にする遊び場環境(ハードウェア・ソフトウェアを含む)の構築と、それらの遊び場をユーザが自律分散的に展開、維持していくことができる仕組みを開発する。従来の遊び場のように実環境内でその仕組みが閉じられるのではなく、ユーザが実環境と情報環境を往来することで生じるそれらが重なりあう環境にまで拡張された、これまでになかった新しい遊び場の仕組みの実現を目指す。 実環境では、森林から間伐された、製材されていない状態の間伐材を構造材として使用し、板材やロープなどを二次部材として使用する。そして、子供たちと共に、それらの部材などを用いながら、遊びや遊び場を制作していく。情報環境では、実環境での子供たちの遊びや遊び場の制作を、誰もが容易に支援できるソフトウェアを開発する。 具体的には、部材の3Dスキャンプロセスの環境構築、部材の生成アルゴリズムのプログラム化、自然木を使用して生成された構造体の構造解析、それらの情報を実環境上のユーザに可視化するためのAR・MRインタフェースの開発、複雑な形態の加工や施工などを簡易化し自動化するためのデジタルファブリケーション技術の開発などを行う。最終的には、実際の子供たちとのインタラクションを行いながら、本システムによる遊び場環境の構築を実践する。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 関口 大樹
採択金額: 2,736,000
2021年度未踏IT

動画認識を用いたテニスの戦術コーチングシステム

テニスにおける試合の勝敗は、主に技術の熟練度と戦術によって決まる。しかし、一般的にテニススクールや部活動で教えるのは技術に関することが多く、戦術を学ぶ機会や方法はあまり存在しない。この理由として、第一に個人の能力やテニスに関するデータや傾向によって最適な戦略が変わること、第二に個々人に最適化するためには個々人のデータ(試合中の配球・ショットのミス率・プレイヤのポジショニングなど)が必要だがその計測が難しいこと、第三にデータを取得できたとしてもそこから戦術をどうするべきかという具体的な行動指針に落とし込めないことが挙げられる。 プロジェクトでは、アマチュアユーザが撮影できる程度の動画から、プレイヤ・ボール・コートの情報を計測する。このデータに基づき、試合中のシチュエーションごとにスタッツ(サーブの成功率などプロの公式戦でポイント間に表示されるデータ)や配球を可視化し、可視化した結果とプレー中の動画を結びつけるインタフェースを作成する。加えてプロのプレイスタイルを比較対象とすることで、自分の戦術を評価できるようにする。これらにより、誰でも自分のプレーをデータ化でき具体的な戦術も得られるコーチングシステムの構築を目指す。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 開 航平・鈴木 碩人・髙草木 和史
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏アドバンスト

感情共有を促進する心拍フィードバック装置の開発

もしも「心」が可視化されたら、社会はどう変わる? 本プロジェクトでは、身近な「心拍」による脈動変化を可視化し、感情を「見せる」新たなコミュニケーション方法を提案したい。 これは以下の通り、学術面・社会面の両側面からインパクトをもたらす取り組みである。 学術的意義 我々が幸福でポジティブな人生を歩むために、対人コミュニケーションが重要な役割を果たすことは、昨今のポジティブ・コミュニケーション研究で明らかになっているものの、それらがどのような要因で促進されるかは、現在も議論の段階にある。 そこで、Emotionと関連性の高い生体情報を可視化するデバイス(Biofeedback Object)を開発し、これまで生体情報利用が多く行われてきていた個人場面から対人コミュニケーション場面へとシーンを拡大させ、実証研究を行うことは、ポジティブ・コミュニケーション領域に大きく寄与すると考えている。 社会的意義 また、バイタルセンシング技術を、医療や健康管理の場面からよりカジュアルな日常生活のコミュニケーション場面に広げていく試みは、 既存の市場領域から、生体情報利用の可能性を大きく広げる新たな挑戦となると考えている。 遠くない未来、我々のコミュニケーションの障壁は限りなく無くなり、全てを超えて、この瞬間のこの感覚を、共有していけるようになるのかもしれない。 そのような過程において、本アイディアは、これまで伝えられなかった感覚を伝えられるようになる、コミュニケーションの「きっかけ」を生み出すものになると考えている。 小型な心拍フィードバック装置を起点に「生体情報の可視化」が当たり前の選択肢として社会実装されれば、「日常のコミュニケーションが、これまで経験していたよりも遥かにエモーショナルなものに変わっていく」だろう。そのような世界を、プロダクトを通して社会に問いかけていきたいと考えている。 未踏アドバンスト期間では、プロダクトの製品化に向けた量産設計・試作と様々な場面での社会実証実験を行っていく。

PM: 石黒 浩クリエータ: 山本 愛優美・西田 翔平
採択金額: 10,000,000
2022年度未踏アドバンスト

C++によるWebアプリ開発を普及させるフレームワークの開発

Web ブラウザ上において、高度な視覚表現や複雑なインタラクション、高速な計算を、簡潔なC++コードによって実現するプログラミングフレームワーク、およびその開発の敷居を下げるWeb IDE等の周辺ツールを公開・普及させる。 競技プログラミングの流行を背景に、C++を学ぶ若い世代が増えている。しかし、C++プログラミングを使った Web及び高レイヤ領域の開発は難しいことから、C++プログラマ人口の増加が、世の中のアプリケーションやサービスの新規開発の活性化に直結していない。さらに、開発現場でのC++の需要は一部の分野に偏っているため、せっかく学んだC++の知識を就業時に活用できないケースも多い。一方で、デバイスの多様化とWeb 技術の進展を背景に、Webブラウザ上で動作するWebアプリケーションへのニーズは一層高まっている。 本プロジェクトでは、C++のための高度なアプリケーション開発フレームワーク「Siv3D」と、そのフレームワークにおける、Web標準技術を活用したWebバックエンドおよびWebAssemblyツールチェーン、Web IDEという一連の開発環境を構築・整備することで、C++を学んだ人たちがWeb領域でも活躍できる機会を創出する。並行して一般社団法人を設立し、個人・法人スポンサーの拡大やそのための施策検討、それ以外のマネタイズ施策の検討・実践を行う。本プロジェクトを通して、エンジニアが OSS によって世界に貢献しつつ事業化を実現できることを示すと同時に、C++コミュニティの活性化に貢献する。

PM: 漆原 茂クリエータ: 鈴木 遼・吉崎 幸樹
採択金額: 10,000,000
2022年度未踏アドバンスト

貢献を可視化する意見交換プラットフォームの開発

本プロジェクトでは、オンラインで実施される意見交換において、参加者の貢献を可視化するシステムの開発とその事業化を行う。メンバーはこれまで、オンライン上で円滑な意見交換を実現するプラットフォーム「LearnWiz One」を開発し、参加者間の相互評価のデータを用いることで「参加者から注目されている意見」を可視化してきた。この意見交換の過程で得たデータを用いて、良い意見を出したか、良い意見を良いと見抜いたかなどといった、意見交換における貢献度合いを可視化するシステムの開発を行う。 意見交換における貢献度評価は、企業の採用活動や人事評価、教育現場の成績評価など、様々な場面で行われているが、本システムは、意見交換における参加者の活動を分析することで客観的な貢献度を可視化できるという点において、特定の評価者に依存していた従来の評価手法とは大きく異なる。これは、情報技術を活用することで初めて実現できる手法といえる。 事業期間中は、従来開発してきた意見集約プラットフォームを拡張する形でシステムの開発を行う。また、実証実験とユーザスタディを行い、その結果に基づいた改善とビジネスモデルの構築を行う。以上の取り組みを通じて、年度内の社会実装を目指す。

PM: 大澤 弘治クリエータ: 中條 麟太郎・岩田 風多・勝見 舜
採択金額: 10,000,000
2022年度未踏アドバンスト

3Dスキャンによる空き家改修の支援ツール開発

本プロジェクトでは、3Dスキャン技術を用いた空き家改修の設計支援ツールSAKIYA(サキヤ)を開発する。日本では空き家が増加の一途をたどり、地方を中心に放置された状態の物件が頻繁にみられる。空き家は不動産価値が不透明で、市場の流動性が低く、多くの空き家を抱える過疎地域の自治体はその処分に頭を抱えている。テレワークや多拠点居住等、ライフスタイルの多様化に伴い、地方の空き家物件に対する需要は広がりつつあるが、空き家特有の改修に対する技術的、コスト的ハードルが課題となっている。 本プロジェクトは3Dスキャン技術とセンシング技術によって空き家の現況をデータ化し、改修や移築案の検討を圧倒的に簡易化する設計支援ツールを開発し提供する。具体的には、空き家の形状をスキャンするカメラと腐食等の要補修箇所を検知するミリ波レーダー、サーモグラフィを搭載したドローンを開発し、多角的な空き家評価情報を組み込んだ3Dモデルの作成を自動化する。3Dモデルによる空き家の正確な現状把握は、改修に係る検討までのプロセスをシームレス化し、改修コストの見通しを明確にできるため、新築や分譲住宅市場に代わる第三の選択肢として空き家市場を位置付けることが可能となる。

PM: 原田 達也クリエータ: 山口 大翔・張 啓帆・渡辺 顕人
採択金額: 10,000,000
2022年度未踏アドバンスト

ZIGEN: XR Windowing System

昨今XRはゲームとしての利用だけでなく、コミュニケーションや作業環境としての活用が期待されている。 現代の2Dデスクトップ環境ではWindowing Systemによって異なる開発元のアプリケーションでも、1つのディスプレイに自然な形で重なって表示できている。一方で現状のXR環境では 基本的に1つのメインアプリケーションがXR空間全体を支配している。そのため、その1つのアプリケーションが空間内の全ての機能を提供しなければならないが、特に作業空間としてのXRにおいてはユーザが空間内に求める機能は多種多様であるため、全ての機能の提供は不可能である。 ZIGENではXR空間にもWindowing Systemを導入することで、通常の2Dデスクトップ環境のように、自身が必要とする3Dアプリケーションをインストールし、開発元の異なる複数の3Dアプリケーションを同時にXR空間に配置して、自分用の3Dマルチタスク作業空間を作り上げられるようにしている。ここでの3Dアプリケーションとは、ホワイトボードや3Dモデル表示などの特定の機能だけを実装し、空間の一部を支配するようなものである。 本プロジェクトではこれをユーザが日常的に利用できる形まで実装し、3Dアプリケーションの開発基盤を整えることで、3Dアプリケーション開発者とユーザからなるエコシステムをつくっていく。また、このシステムを手にできるユーザの幅を増やし、認知度を向上させるとともに、OSSとしてのプレゼンスを高めることで、ZIGENの社会実装を進めていく。 加えて継続的な開発のために、OSSプロジェクトを支援する財団への申請や収益化のための検証を行なっていく。

PM: 平野 豊クリエータ: 木内 陽大・江口 大志・伴 玲吾・渡辺 耀介(宇部工業高等専門学校制御情報工学科
採択金額: 10,000,000
2022年度未踏アドバンスト

少量多品種の包装箱詰め作業を省人化するロボットシステムの開発

日本の人手不足は年々深刻化しており、自動車産業、電機・電子産業、金属産業を中心にロボット導入による省人化が進んできた。一方で、とりわけ三品産業(食品、医薬品、化粧品等)では省人化が進まず、労働確保は多くの事業者にとって年々問題が深刻化している。なかでも2017年の食品産業の有効求人倍率は、全産業平均より1ポイント以上も高い水準となっており工場ラインや物流倉庫の省人化は急務である。これまでも、複数にわたる工場の視察・ヒアリングを実施しており、人手による包装箱詰め作業が依然として多く存在することを確認してきた。 しかし、このような省力化が進まない現場は、中小の工場や倉庫が多く、多品種少量生産で、既存のソリューションを適用しようとすると、大量生産向けで汎用性・拡張性が低く、丁度よいソリューションが存在しないのが現状である。 そこで、本プロジェクトでは、このような食品産業の包装箱詰め作業に着目し、AI画像処理、ROSベースのソフトウエアとモバイルアプリケーションベースのUIUXで、少量多品種生産に対応可能な汎用性・拡張性が高く、使いやすいロボットシステムを構築する。 開発した技術を用いてロボットシステムの社会実装を行い、産業用ロボットという日本の技術アセットを使いながら世界で戦うAIロボティクススタートアップの創出を目指す。

PM: 平野 豊クリエータ: 樋口 翔太・山根 広暉・岡村 柾紀・小熊 一矢
採択金額: 10,000,000
2022年度未踏アドバンスト

あらゆる衣服をバーチャル試着可能にする3Dモデリングシステム

コロナ禍において、バーチャル試着は非対面での衣服の購入を補助するツールとして注目されている。しかしながら、バーチャル試着に必要な衣服の3Dモデルの生成コストは高く、導入の障壁となっている。本プロジェクトでは、以下二点を開発することでこの課題を解決し、バーチャル試着の普及を目指す。 第一に、型紙や専門知識がなくても、商品情報から簡単に衣服の3Dモデルを生成できるモデリングツールを開発する。社会実装の方法として、第一段階はアパレルブランドの運営者が手動でUIを操作することで簡単に衣服の3Dモデルを生成できるシステムを開発する。そして、そのシステムを用いてデータを収集し、第二段階として機械学習を用いた自動生成の仕組みも実装することで、さらに事業をスケールさせる。 第二に、アパレルブランドの運営者がECサイトに簡単に組み込める3D試着アプリケーションを開発する。このアプリケーションの目的は、データセットの収集の促進と、事業展開の加速化である。3Dモデリングツールで生成した3Dモデルをアプリ上で試着できるようにすることで、3Dモデリングツールのユーザー数を獲得し、データ量の増加を見込める。また、試着アプリケーションで実際に商品を購入したユーザーからフィードバックを得ることで、より表現力のあるモデリングと試着機能を目指し、事業の収益化に繋げる。 本提案の成果は試着用の3Dモデル作成に止まるものではなく、メタバースで着用可能なデジタルな衣服の生成などへの応用も見据えている。本プロジェクトを通じて、デジタルネイティブ時代の新たな「洋裁」のシステムの実現を目指す。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 新井 康平・松下 日昇・杉浦 昇太
採択金額: 10,000,000
2022年度未踏IT

建築土木の鋼構造体工事における膜厚管理システムの開発

本プロジェクトは、鋼構造物の改修塗装工事において、「膜厚管理業務」の業務を根底から改善するハードウェアとソフトウェアを開発することにより、現行の手法と比較し、より短時間で適切な品質管理を可能にするものである。 膜厚管理とは、主に建築・土木分野の公共事業において、橋や鉄塔など鋼鉄製の構造体の建設/改修の際に、塗料を塗布し塗膜厚が一定の水準を満たしているかを検査し管理する業務のことを指す。この業務は着工から完工までに、設計に基づく仕様の塗装工程のたびに必要となる。現在の膜厚管理では特定の“点”を計測するので、品質保証のため多くの点を計測する必要がある。本プロジェクトでは“面”を測定・管理する手法を開発し、品質を担保すると同時に計測する回数を減らす。 具体的には、既存の測定方法と波長の計測を併用することで、膜厚分布を測定できる膜厚測定器を開発する。加えて、測定器と連動し、所管の官庁への提出書類を自動作成できるアプリケーションを開発する。この組み合わせにより業務フロー自体をデジタル化することで管理業務を減らし、従来よりも適切な品質管理を可能にする。 現在、橋梁などの鋼構造物のインフラの老朽化が社会課題になりつつある。2020年代後半には全国72万ある橋の6割が建設後50年以上を迎えるため、適切なメンテンナスによる長寿命化が喫緊の課題だ。しかし、少子高齢化により建設業従事者数も減少傾向にあり、厳格な品質管理が求められる公共工事を実施するために高いスキルを持つ人員を確保することは年々難しくなっている。現在でも、必要な人材を確保できず、公共事業を受注できない業者が多くいる。これらから増加する鋼構造物のメンテナンスのニーズと、実施できる人材不足のギャップは、インフラ維持に影響を及ぼすだろう。本プロジェクトは、管理業務の人員や業務時間を削減し、品質管理の質も上げることで、老朽インフラの維持に貢献したい。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 中村 凌平
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

トラッキング技術を用いたサッカー試合映像の検索・分析システム

サッカーにおいて勝利を追求する為の手段の一つに試合映像の振り返りがある。この分析活動はプロチームから育成カテゴリまで数多くのチームが実施しており、分析を支援する製品も存在する。一方試合の分析プロセスでは、既存の分析ツールが解決出来ていない課題が2つある。 1つ目は『映像編集の負担』である。振り返りの為の映像選定・編集には大幅な時間を要する。これはチームの練習も毎日指導するコーチにとって大きな負担となる。また選手はそれぞれプレーに課題を抱えているが、映像選定の負担から選手個人の分析も難しい。2つ目は、『データの活用方法』である。昨今スタッツ分析等の試合分析手法が興隆しているが、選手やコーチは数理統計を専門に学んでおらず、映像と紐付いていないデータの活用方法がわからないなどの課題もある。 本プロジェクトではこれらの課題を解決する為に、ビデオトラッキングベースの自動分析ツールを開発する。本ツールではトラッキング技術を用いて以下の機能を実現する。 1つ目は『類似シーンの検索機能』である。映像から取得したトラッキングデータをもとに、シーケンス間の選手の移動軌跡を出力し、軌跡の類似度を算出することでプレー映像の検索を行う。軌跡の類似度を算出しているため、自由度の高い検索が可能となる。そのため選手とスタッフは見たい映像を容易に取得可能となる。 2つ目は『自動分析レポート作成機能』である。走行距離やスプリント回数、疲労度などの指標は試合の分析に多く用いられる。本ツールはこれら指標をトラッキングデータから算出し、レポート化することでフィードバックの充実を図る。また取得したデータと映像はツール内で時系列的に結び付くので、試合の文脈を考慮したデータ分析も可能となる。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 内田 郁真・スコット アトム
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

抜かない型を前提とした型設計支援ツールによる物作りの自在化

型成形技術とは、型に材料を流し込み、固め、取り出すことで所望する成形品を得る技術のことである。型成型技術は、大量・安価に成形品の生産が可能であり、材料選択の自由度も高いため、日常的に使うプラスチックや金属、シリコンなどでできた数多くの製品の製造に用いられている。 しかしながら、成形品は型から抜けなければならないという強い製造上の制約を持つため、ユーザがCAD(Computer-Aided Design)ソフトウェアを用いて作成したモデルを型から抜けるように形状を編集することが必要不可欠である。また、型から抜くという制約以外にも「充填不足」、「収縮や気泡」、「溶着不良」などの成形不良の問題があり、作成したモデルの検証をコンピュータ上で行うことが困難でもある。 そこで本プロジェクトでは、これらの問題に対する新しいアプローチとして、抜く以外の方法で型自体を除去する仕組み「抜かない型」を、型から抜くこれまでの型成形技術に導入する。これにより、型成型における製造上の形状に対する制約を緩和し、従来、3Dプリンタでのみしか製造できないとされてきたラティス構造や機械機構などといった構造物を、安価に量産可能にする。 具体的には、まず、目的の成形物を「抜く型で造形する部分」と「抜いた後に除去をする部分(抜かない型)」に分け、「抜かない型」自体を型成形で造形する。そして、それと「抜く型で造形する部分」の型と組み合わせて造形したものから「抜かない型」を除去することで、従来の型では製造不可能な形状の造形を可能にする。 この「抜かない型」を前提とした型成型技術を誰しもが簡単に利用できるようにするためには、本技術専用のCADソフトウェアとCAE(Computer-Aided Engineering)ソフトウェアが必要不可欠である。そのためにまず、入力された成形品の形状に対する型を生成するための設計支援ツールを開発する。 次に、成形品の作成の際に熟練の技術者の暗黙知をユーザが利用できるようにする機能を開発する。例えば、成形不良が出た際に、現在のパラメータと成形不良の概要を入力することで、原因や改善点を絞り込めるようにする機能や、「抜かない型」を利用することで一体成形が可能となる具体的な機構を蓄積し、ユーザがそれを参照・利用できるようにするライブラリなどを実装する。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 皆川 達也
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

VRと電動トレーニング機器を用いた筋力トレーニングシステム

近年、筋力トレーニング(以降、筋トレ)の健康的価値が認識されてきたことや、フィットネス市場が拡大してきたことに伴い、筋トレを行う人が増加している。それに伴って、筋トレを行うためのツールも拡充しつつある。その中でも電動トレーニング機器は、多様で豊富なデータを取得できる点や、トレーニング中に負荷をリアルタイムで調整できる点に強みを持ち、急速に広がりつつある。 このような特徴により、電動トレーニング機器は従来の金属製の重りに比べて、他の情報技術と多様で密な連携をすることができる。この連携によって電動トレーニング機器は、新しいトレーニング体験・価値を生み出すポテンシャルを秘めているが、現在の訴求ポイントは、トレーニングデータが自動記録される点や、負荷調整によりトレーニングの補助をする点など、一部に止まっており、そのポテンシャルを十分に発揮しているとは言い難い。 一方、近年技術的進歩が進み、筋トレへの応用を期待できる情報技術として、VR(Virtual Reality)が挙げられる。VR空間では、クロスモーダル効果をはじめとする錯覚効果を生成したり、物理世界では実現できない体験を作ったりすることができる。こうした現象や体験を筋トレに応用することは、新しい効果や体験の創出に寄与すると考えられる。 本プロジェクトでは、独自の電動トレーニング機器にVR技術を連携させることで、トレーニングにおける新しい効果や楽しさを生み出すことを目指す。トレーニングデータに基づいてVRの錯覚効果を提供して挙上支援をしたり、VR空間と連動して負荷を変えたりして、これまでにないトレーニング支援や楽しいトレーニング体験を実現し、筋力トレーニングに対する「辛い」「つまらない」といったネガティブなイメージを刷新する。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 栗本 知輝・黒木 琢央・松田 響生
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

動画でフィギュアスケートの練習を支援するシステム

本プロジェクトのクリエータである山形と麻は、学生時代にフィギュアスケートの競技者として、練習や後輩への指導に向き合ってきた。練習や指導に取り組む中で、特にジャンプに苦戦してきた。まず、ジャンプは一瞬なので、頭で考えている暇がない。 次に、着氷は後ろ向きにしかできないので、徐々に回転を増やしていく練習ができない。最後に、作用反作用の法則により、空中では、各部位の動作を独立にコントロールできない。例えば「右足以外はそのままで、右足の動きだけを変える」ことはできない。これらの結果、言葉で直すべきポイントを理解するだけでは、実際には直せないという壁に何度も直面してきた。 競技者達は、直すべきポイントを言葉で理解して実践しようとするだけでなく、上手な人のジャンプをお手本として見ることで、ある程度の感覚を掴み、ジャンプを習得してきた。しかし、自分の動きとお手本の動きの違いが大きく、特に練習しはじめのジャンプでは、そのお手本を自分が跳ぶ感覚に繋げるのが難しい。そこで本プロジェクトでは、スマホで練習を撮影した定点映像から競技者を追跡し、ジャンプを検出して切り抜き、そのジャンプを加工した映像もしくは画像を生成して見せることで、ジャンプの感覚的な理解を促進させるシステムを開発する。 このアプローチの応用は、フィギュアスケートに留まらない。今後、あらゆる競技において科学的な分析が進むにつれて、その際にネックになるのは、分析そのものではなく、「分析によって得た情報を、人間が理解できるように伝えること」である。そこで本プロジェクトのように、動画によって感覚を人間に伝える方法が必要になると考えている。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 山形 昌弘・麻 大輔
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

レイアウトの自由度とキー操作性を両立したノートテイキングアプリケーションの開発

テクノロジーの進化により、デジタル端末を用いてノートを取る機会が増え、紙では困難だった保存・管理・削除が容易になった。デジタルなノートテイキングに用いられる端末としては、主にPCとタブレット端末が存在する。 既存のノートテイキングアプリケーションの問題点として、PC用のノートアプリケーションでは、タイピングにより記述スピードが速い一方で文章レイアウトが直線的になるという問題がある。タブレット用のノートアプリケーションでは、レイアウトが自由な一方で書くスピードがタイピングより遅くなる。そのため、ユーザにとっての使いやすさという点で、両者は一長一短であると言える。 本プロジェクトでは、レイアウトの自由度を保ちつつ、キー操作性を高めることで、書くスピードも高速にしたノートテイキングアプリケーションを開発し、既存のノートテイキングアプリケーションの問題解決を試みる。 本アプリケーションでは、ページを文字単位の細かいマスに分割し、テキストはそのマスを起点に生成されるようにする。一文字入力するごとに一つ右のマスへ移り、エンターキーで一つ下の行に移動するなどの動作は既にあるノートテイキングアプリケーションと変わらない。本アプリケーションの特徴は、ユーザのキー操作によってカーソルがグリッド間を縦横に移動する点にある。これにより、マウス操作を介することなく、表計算ソフトウェアでのキー操作でのセル移動のような快適な操作によって、テキストを自由な位置に生成・配置できるようになる。 本アプリケーションではテキスト・図形・画像などのあらゆるオブジェクトを、ページ内の位置やフォントなどの情報を持つ「ブロック」という要素として表現する。マウス操作に加え、キーによってブロックを快適・柔軟に操作できるインタフェースを提供することにより、オブジェクト全般、特にテキストの操作を効率化する。 また、ブロックを先に述べたグリッドに沿って配置することで、崩れにくく自由度の高いレイアウト機能も実現する。これらによって、PCの扱いに長けたユーザのみならず多くのユーザが操作感を楽しめるような、今までに無いノートテイキングアプリケーションの実現を目指す。

PM: 岡 瑞起クリエータ: 稲葉 皓信
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

切磋琢磨を促すリモートフィットネスアプリケーションの開発

本プロジェクトでは、健康維持や体力強化に効果的な運動ができるようにすることを目的とした、遠隔地にいる人同士が切磋琢磨しながら運動することを促すスマートウォッチアプリケーションを開発する。 身体的な運動を行うことは、体力や集中力の向上、肥満予防など、人間の健康維持のために必要不可欠であるが、個人ではモチベーション低下などの理由から健康維持や体力強化に効果的な運動を行うことは難しい。 一方、複数人で行う運動はモチベーションを維持しやすいが、事前に計画し、同じ時刻に同じ場所で集まって運動を行わなくてはならない。また、技能・体力レベルの異なる他者と行う運動は、モチベーションをかえって低下させ、効果的な運動にはならない。 そこで本プロジェクトでは、近年急速に普及しているスマートウォッチなど身近にあるデバイスを使用して、世界中の体力レベルの同等な人同士をマッチさせ、離れた場所から一緒に運動し、切磋琢磨することを促すアプリケーションを開発する。 本アプリケーションでは、種目や運動時間を入力すると、世界中で同じ運動をしたいと思ったユーザとマッチし、スピードや距離、心拍などお互いの運動中のステータスを確認しながらその運動ができるようにする。オプションとして、音声を繋いで会話をしながら運動することも可能にしたい。 また、合言葉を共有することで、離れた場所にいる知人と一緒に切磋琢磨しながら一緒に運動することができるようにもする。本アプリケーションを使用することで、従来のフィットネスアプリケーションでは運動が長続きしなかった人でも、他者と一緒に運動することによって、より効果的な運動を継続できるようになることを目指す。

PM: 岡 瑞起クリエータ: 石井 峻
採択金額: 1,368,000
2022年度未踏IT

UVプリンタを用いたラインストーン造形システムの開発

本プロジェクトでは、紫外線硬化インクを用いることで多様な質感を出力できるUVプリンタを用いてラインストーンを造形する手法と、簡単にラインストーンをデザインできる制作支援システムを開発する。 ラインストーンは、ガラスやアクリル樹脂製の模造宝石の一種であり、被服やアクセサリー、日用品への装飾などに使用される。ラインストーンのレイアウトを支援するための既存の研究はあるが、ラインストーン自体の見え方やきらめきのデザインを支援する研究やプロダクトは存在しない。そこで本プロジェクトでは、UVプリンタを用いて半球状のラインストーンを造形する手法と、それを前提として、ラインストーンの底面のパターンを設計することで多様な見え方を簡単に制作できるシステムを開発する。 本システムでは、レイトレーシングを使用した3Dプレビューで実際のラインストーンの見え方を確認しながら、形状や底面のパターンをパラメータとして操作することを可能にすることで、簡単にラインストーンをデザインすることができるようにする。さらに本システムでは、デザインした複数のラインストーンをレイアウトし、装飾する対象に直接印刷することができるようにする。

PM: 岡 瑞起クリエータ: 島元 諒
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

麻雀プロのためのAI牌譜解析ツール

近年、ゲームAIの成長は著しく、将棋や囲碁などのプロがAIを利用して勉強することが一般的になってきている。一方、麻雀にもAIを用いたネット麻雀用の学習ツールが存在するが、プロにはあまり浸透していない。 原因は主に2つあり、1つ目は既存の麻雀AIがネット麻雀のルールに特化しており、ネット麻雀と順位点(1着から4着がもらえる点数)の配分が異なるプロの試合の一般的なルールで使用することが難しいこと、2つ目は麻雀プロの多くが、自身のフィールドはネット麻雀よりレベルが高いと考えているため、ネット麻雀のデータを教師とした既存の麻雀AIを、あまり高く評価しない傾向があることである。 本プロジェクトでは深層強化学習を用い、順位点の配分を入力に加えた報酬関数を設計することで、ネット麻雀のルールだけでなく、プロの試合のルールなど様々なルールに対応可能な麻雀AIを作成する。強化学習を用いることで、ネット麻雀のデータに依存する必要がなくなるため、プロへの普及のための障壁が少ない。 そして、作成した麻雀AIを用いた牌譜解析サービスを作成することを目指す。このサービスが実現すれば、麻雀プロをはじめとした、麻雀に真剣に取り組む人の勉強が効率化される。運の要素が大きい麻雀では、麻雀プロの実力の正当な評価さえ難しく、理不尽な批判を受けることも多くある。人間のトッププレイヤーと同じ土俵で人間を超える麻雀AIが作成できれば、将棋などと同様にAIとの判断の一致率などの指標で麻雀プロの実力を測ることが可能になり、麻雀が将棋や囲碁などと同様に知的ゲームとしての地位を確立する一助になるはずである。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 大神 卓也・奈良 亮耶・天野 克敏・今宿 祐希
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

ハードウェアを意識しない組み込み開発環境

近年、Web技術では次々と便利なフレームワークが開発され、開発の敷居が低くなるイノベーションが次々と起きている。しかし、組み込み開発ではそのようなイノベーションが起きていない。そこで本プロジェクトでは、組み込み開発の敷居を下げるハードウェアとそれを使用した開発環境を開発する。 組み込み開発の敷居を下げるために一番ボトルネックになっているのはハードウェア開発である。本システムのハードウェアは といった単位にブロック状にパッケージ化されたデバイスで構成される。ユーザは必要なブロックを組み合わせるだけで、困難なハードウェア開発を伴うことなく、目的の組み込み機器を組み上げることができるようにする。加えて、ハードウェアの概念を最小化したライブラリを提供することで、基本的なソフトウェア開発ができるプログラマであれば、誰でも組み上げられたハードウェアの制御をできるようにする。 一般的な組み込み開発では、基板を作ったとしてもそれを実際に運用するためにはそのケースを設計したり、基板の設計ミスを修正したりするなどの工程が発生しうる。本システムではケースと基板は完璧にパッケージ化されるので、ユーザが開発したプロトタイプを即時に運用することが可能になる。 本システムはオープンソースとして公開したり、販売してビジネス化したりする展開を考えている。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 饗庭 陽月
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

祭り運営を支援するアプリケーションの開発

本プロジェクトは、祭り運営を支援するアプリケーションを開発する。 祭り運営は、会場中の人や物を協調して制御する必要があるため、準備段階から本番当日にかけて、メンバー間の連携コストが大きい。また、予測できないトラブルへの対応やボランティアの管理など、運営メンバーは常にタスクに追われ、当日に祭りを楽しむ余裕すらない。 そこで本アプリケーションが祭りの連携作業を支援することで、運営メンバーのタスクの束縛時間を減少させて当日に祭りを楽しめるようにする。さらには、誰でも気軽に運営に参加できる仕組みを提供することで、コロナ禍の中で減少傾向が加速している市民参加型の祭りの運営メンバーの確保も支援する。 本アプリケーションは、2つの要素で構成される。一つは運営リーダー用のタブレットアプリケーション、もう一つは当日ボランティアを含む実働メンバー用のスマートフォンアプリケーションである。リーダー向けには会場図面の操作を通したタスク管理機能により、メンバーへの指示出しや祭の進行ができるようにする。実働メンバー向けには、スマートフォン上でリーダーの指示出しに応じた視覚的なナビゲーションを提供することより、深い事前知識がなくとも運営に協力することができるようにする。さらに本アプリケーションで得られたデータから、視覚的な引き継ぎ資料を生成することで、祭りの継承支援もできるようにする。 以上の機能を実現するために、本プロジェクトではタスク割り当ての最適化アルゴリズム、GPSや屋内位置測位技術を活用した地図インタフェースなどを開発する。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 阿部 優樹・辻口 輝
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

直和型の代わりにユニオン型を持つ静的型付け関数型プログラミング言語の開発

静的型付けプログラミング言語は、動的型付けプログラミング言語と比較して安全性やパフォーマンスの面で優れている。また、関数型プログラミング言語の機能や考え方は、プログラムの書きやすさを向上させ、安全なプログラムを書く上で役立つことが多い。 動的型付けプログラミング言語に型注釈を付ける際の型システムなどで広く用いられているユニオン型は、静的型付け関数型プログラミング言語の世界でも便利な機能となると考えられるが、静的型付け関数型プログラミング言語の中でユニオン型をもつものは少ない。また、Scala 3などのユニオン型をもつ数少ない静的型付け関数型プログラミング言語でも、ユニオン型は直和型やシールドクラスなどの他の機能の補助的な役割を担うのみに留まっている。 そこで本プロジェクトでは、代数的データ型や網羅性検査機能を備えたパターンマッチ、bind(flat_map)に対するシンタックスシュガー(Haskellのdo記法や、Scalaのforのような機能)などの、関数型言語によくある機能を取り入れつつも、直和型(ここでは、Haskellのデータ型やRustのenumのような、複数のバリアントを持っていて、それぞれのバリアントの型は独立した型ではなくそれを束ねている直和型になっているような型のことを指すものとする)やシールドクラスなどではなくユニオン型を採用した型システムを持つ、シンプルな静的型付けプログラミング言語を開発する。それにより、静的型付け関数型プログラミング言語にユニオン型を採用する有用性を実証する。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 伊藤 謙太朗・福間 遼太郎
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

内部処理分析を基にしたWebアプリケーションのセキュリティSaaSの開発

本プロジェクトでは、内部処理分析によって頻繁な脆弱性検査を代替する自動Webアプリケーション検査とバイパスに対応可能なWAF(Web Application Firewall)をSaaS(Software as a Service)として実現し、Webアプリケーションをより高度な仕組みでセキュアにするサービスを提供する。 本サービスではWebアプリケーションにプロファイラという内部処理を計測するソフトウェアをインストールする。本番環境では攻撃者から攻撃を受けた際にプロファイラで計測した内部処理データを分析し、異常な処理を見つけることで攻撃を検知・遮断し防御するWAFサービスを提供する。開発環境では脆弱性の自動検査手法の一つであるFuzzingを使用する。 FuzzingはFuzzと呼ばれる問題を引き起こしそうな様々なデータを送り込み、脆弱性に起因する挙動を監視するソフトウェア検査手法である。Fuzzingには各Fuzzに対してどのような内部処理が行われたかを計測・フィードバックすることで効率を高める方法があり、この手法を用いたプロファイラによって計測した内部処理データを基に、高効率な検査サービスを提供する。 そして、WAFと検査を同じサービスで実現することにより、WAFで検知した実際の攻撃を学習した検査ができる。攻撃者が目星をつけるような脆弱性が存在する確率が高い箇所を、実際の攻撃を学習したFuzzで検査するため、より精度の高い検査が可能となる。 また本プロジェクトでは、WAFで検知した攻撃・検査で見つかった脆弱性から「どこに脆弱性が多いか・どんな脆弱性があるか」を解析し対策方法も合わせて開発者に報告する、セキュリティ対策の管理機能サービスも開発し、導入するだけでWebアプリケーションの「防御・検査・対策」ができるサービスの実現を目指す。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 赤松 宏紀・大迫 勇太郎
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

翻訳IMEとInput Method抽象化レイヤの開発

本プロジェクトではキーボードから日本語をひらがなで入力し、適切な漢字かな交じり文を選択すると、翻訳された英文を入力するIME(Input Method Editor)を開発する。これにより、日本語ネイティブなユーザが一から英文を考えることなく、IMEが出力した英文を必要に応じて少し直すだけで簡単に英語を用いたコミュニケーションを取ることができるようにする。一般的な翻訳アプリケーションではなくIMEとして実装することで、いつでもどんなアプリケーションでも翻訳サービスの恩恵を得ることができるようになる。 またIMEの開発の過程で、各種OSに存在するIM(Input Method)の上にインタフェースを共通化した抽象化レイヤを開発する。IMEと抽象化レイヤの間はsocketで通信をする。そのために、IME開発者にとって使いやすいプロトコルを設計・開発する。この抽象化レイヤと通信プロトコルにより、IME開発者は変換エンジンの開発に注力することができるようになり、各OS向けにIMEを実装する際の手間を省くことができる。IME開発者の負担が軽減されることは、本プロジェクトの翻訳IME以外にも様々なIMEの開発が促されることにつながり、今まで種類や活用の幅が限られていたIMEの可能性が広がることが期待できる。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 竹村 太希
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

HDCアクセラレータとRISC-Vを組み合わせたエッジサーバの開発

HDC(Hyper Dimensional Computing)は、人の脳から着想を得た計算手法の一つである。HDCによる計算は、従来の機械学習による手法と比べロバスト性の向上、高速化、低消費電力化が特徴として挙げられる。これらの特徴はエッジコンピューティングで用いられるエッジサーバやIoTデバイスが抱えている課題に対して有効なものである。 本プロジェクトによりHDCを活用できるエッジサーバの仕組みが実用化され、その優位性を示すことができれば、医療や街開発などの重要なインフラシステムがHDCによって改善される未来につながる。具体的には、医療分野についてはスマートホスピタルにおける患者のモニタリング精度の向上や異常検知速度の改善、街については交通整備や自動運転技術への応用など、文字通り人の命を救うものから我々の生活を快適にするものまで幅広い活躍が期待できる。また、小型な回路で高速化・低消費電力化が実現できるため、従来の機械学習の手法ではハードウェアの性能不足で推論の処理をしきれないような小型で安価なIoTデバイス上でも、音声認識などの複雑なタスクを高い水準で行える可能性がある。 そのため、本プロジェクトでHDCを活用できるエッジサーバを実用化し、その有効性を検証することは、社会的に大きな意義を持つ。仮に大きな有効性が示されなかったとしても、HDCは比較的新しい技術ではあるため、HDCの今後の改善にとって有用なデータが必ず得られるはずである。具体的には以下の開発を行う。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 井阪 友哉
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

ラップバトル対話システムの開発

本プロジェクトは、ラップバトル対話システムの開発に取り組み、実際にラップバトルの大会に出場させることを目標とする。ラップバトルとは、2人のラッパーが対話形式で即興ラップ(バース)を行い、どちらのラップが優れているかを競う競技である。ラップバトルは主にライム(韻)、アンサー(返答)、フローの3つの観点から評価されるが、この3つの観点をふまえたバースを考えることはプロでも難しい。これらの条件をクリアするには、優れた頭の回転と豊富な語彙が必要である。そこで、速い処理速度と大きな記憶容量を持ち合わせる計算機を用いたラップバトル対話システムを開発する。 本システムの実現により、創造的な即興ラップ(バース)の生成が期待でき、人工知能技術にあらたなインパクトを与えることができる。これまでに、チェスや将棋など、人間VS人工知能の挑戦は社会に大きなインパクトを与えてきた。しかし、それらは強い制約に基づくルールが決められた競技での勝負であったが、ラップバトルのような、創造的な要素が強いルールにおいての人工知能との勝負は、チェスや将棋以上のインパクトがあると考えられる。 本プロジェクトの目標達成のために、具体的には大きく3つ、 (1)バース生成手法、 (2)ラップ音声変換手法、 (3)多様なデモシステム を開発する。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 三林 亮太
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

複数のARMマシンを一つに集約するハードウェア仮想化レイヤ

ビッグデータ時代の到来により、生物学におけるゲノム解析などをはじめとする様々な分野で大規模なデータを扱う機会が増加している。これらの影響で、計算機科学の専門家以外でもクラスタリング環境を使用する機会が増えている。 英Armは新しいアーキテクチャであるArmv9と、Intel Xeonに対抗する省電力・高性能なプロセッサArm Neoverseを発表しており、これからサーバにおけるARMアーキテクチャの割合が増えてくると見られているため、ARMマシンで構成されたクラスタリング環境の需要が増えると予想される。 既存のクラスタリング手法においては、ミドルウェアを用いて複数の物理マシンに跨っているCPU、メモリを活用していた。この手法では、ミドルウェアのインタフェースに従ったプログラミングを習得する必要があり、計算機科学の専門家ではない人々にとってハードルが高い。 本プロジェクトでは複数の物理ARMマシンに跨って動作するハイパーバイザを実装する。実装されるハイパーバイザ上で動作するVMは、ゲストOSからは集約された一つの物理マシンとして認識され、その上で動作するアプリケーションはクラスタリング環境であることを意識することなくリソースにアクセスできるようにする。つまり、クラスタリング環境上で既存のOS・アプリケーションがそのまま動作するようにする。具体的には、クラスタのノードとしてRaspberry Pi 4、ゲストOSとしてLinuxを想定した上で、以下の実現を目標とする。 本プロジェクトの成果により、計算機科学の専門家以外でも容易にクラスタリングによる処理性能の向上ができるだけでなく、あらゆる分野の研究・開発の高効率化に寄与することができると考える。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 飯田 圭祐・柚山 大哉
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

リアルタイムな動画内物体認識技術を用いた物探しシステム

スーパーなどの店舗で買い物をする際、買いたい商品がなかなか見つからないことがある。既にその商品が視界に入っていてもその存在に気付けないことも多く、時には広い店内を探し続けて時間を浪費してしまうこともある。 そこで本プロジェクトでは、ユーザの探したい商品をリアルタイムに探し出すスマートフォンアプリケーション(以降、「アプリ」)を開発する。ユーザはまず、探したい商品の画像をインターネットから取得してアプリに登録する。すると、アプリはカメラを通じて周囲を観察し始める。ユーザが店内を移動し、登録しておいた商品がカメラに映ると、アプリは即座にそのことを認識し、商品の存在をユーザに通知する。本アプリを利用することで、ユーザは探したい商品を見落とすことなく素早く発見できるようになる。また予め複数の商品を登録しておき、本アプリに購入の有無を管理させることで、買い忘れを防止するといった使い方もできる。 本アプリは商品に限らず、様々な物体の探索に応用可能である。例えば、道路標識を登録しておけば運転者が標識を見落とすのを防ぐことができ、自動車の安全運転支援として応用できる。このようにユーザがより豊かな生活を送ることができるようなアプリを開発することが本プロジェクトの目的である。 本プロジェクト実現に向けての技術的なチャレンジは、登録した商品がスマートフォンのカメラに映った時に、そのことを正しく認識する技術を開発することである。置かれる場所、角度、照明などによって物体の見え方は様々に変化する。そのような変化に対して頑健な物体認識技術を深層学習によって構築する。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 長沢 瑛史
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

スマートフォン向けにカスタマイズが可能なサイレントスピーチインタフェース

本プロジェクトでは音声不要の、誰でも自由自在に利用できる無声発話(サイレントスピーチ)インタフェースを開発する。具体的には、スマートフォンの内蔵カメラを用いた利用者の口元画像を元にリップリーディングを行い、発声を必要としないサイレントスピーチ入力を実現する。 従来のリップリーディングシステムはデータ収集に膨大な手間がかかったり、使用可能な語彙数も限られていたりするなどの課題が存在する。本プロジェクトでは、One-shot転移学習を用いたリップリーディングモデルを実装し、大規模なデータセットで事前学習を行うことよって、1サンプルだけでコマンドを登録できるリップリーディングシステムを実現する。これにより、語彙数の制限が解消され、サイレントスピーチコマンドをその場でカスタマイズすることが可能になる。 このリップリーディングによる認識手法とモバイル端末のボイスアシスタント機能を連動させることで、モバイル端末で気軽に利用できる、直感的で表現力の高い無声発話による入力を実現する。 音声インタフェースは、今やどこでも誰もが使えるインタフェースとして普及しているが、発話を前提とするため、騒音の影響を受けたり公共の場での発話が難しいなど、環境面での制約が多いのが課題である。 本提案は、リップリーディングに基づいたサイレントスピーチインタフェースをスマートフォンに実装することを目指している。具体的にはOne-Shot転移学習を用いてリップリーディングを実装するとともに、スマートフォンのカメラとマイクを利用した個々にカスタマイズ可能なサイレントスピーチコマンド機能も計画しており、発話を前提とする音声インタフェースの「次」を担うことができるユニークな提案と考え採択した。 リップリーディングとスマートフォンで、これまでに経験したことない新しい世界を開いてくれることを期待したい。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 蘇 子雄・方 詩涛
採択金額: 2,736,000
2022年度未踏IT

ハイブリット会議のためのマイクシステムの開発

コロナ禍においてテレビ会議システムが急速に普及し、会議形式の選択肢が増えることとなった。オンラインでの会議は場所に制約されない点にメリットがあるが、対面での会議の方が意思疎通をしやすい傾向にあり、両者は一長一短の関係にある。そこで両者の中間にあるハイブリット会議という形式がとられることも多い。 ハイブリット会議では会議室に出席できない参加者はオンラインにて参加するため、ビデオ会議システムを用いて会議室での議論をオンライン参加者に共有することとなる。ここで議論の共有方法は重要な課題であり、特に参加者の声をローコストかつ自然な形で共有する方法は確立されていない。会議室の参加者が各自のマイクを使うと発言のたびにミュート解除をする必要があり生産性が低下してしまうため、会議用のマイクとして無指向性かつ遠くの音を拾うことができる高性能なマイクを購入する場合が多い。このハードウェア購入のコストという問題に加え、会議室で複数の人が同時に話しているとオンラインでの参加者は聞き取りづらくなるという問題も存在する。 本プロジェクトでは、対面参加者が各自のスマートフォンをマイクとして利用し、音声を統合するシステムを開発する。このシステムでは追加のハードウェア購入を必要とせずに全ての参加者の声を拾うことが可能となる。さらに、音声統合システムでは音のVRを用いた処理を行うことで、複数の話者が話している状況でも聞き取りやすいシステムを構築し、円滑なハイブリッド会議を実現する。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 関 健太郎・大澤 悠一
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏アドバンスト

カメラ映像から自動構築される人流デジタルツインの開発

公共空間や商業施設などの多様な人々が集まる空間を対象とし、その流動の解析や予測を行う技術が活発に研究されている。このような技術を組み合わせ、現実空間をコンピュータ上に模擬し、人流の将来予測や施策の効果検証を行えるデジタルツインの実装が様々な領域で期待されている。例えばイベント時の混雑制御や商業施設の広告・店舗配置など、現実空間で検証することが難しい施策を仮想空間上で試行するためのツールとして注目を浴びている。 人流は個人の属性や周囲の環境など様々な要素の影響を受けるため、デジタルツインの構築には様々なチャレンジが存在する。人々の意思決定や流動を記述するモデルの開発はその内の一つであるが、この点については世界中の研究者が活発に取り組んでおり着実に進歩している部分である。しかしながら、デジタルツインを社会に実装する上で依然大きな障壁となっているのは、対象空間を設定するたびに必要となる事前準備・作業の負担の大きさである。例えばどのような観測を用いてモデルを学習させるか、どのような時空間解像度で対象空間や人々の動きを表現するかなど、計算の精度や速度を考慮しながら検討・調整しなければならない事項が対象空間を追加するたびに発生する。人流の予測が必要な空間は多数存在するものの、対象空間を変えるたびに必要となる作業の負担が大きすぎることが、デジタルツインの普及を妨げている要因の1つとなっている。 本プロジェクトの目的は、任意の空間を対象とした人流デジタルツインをカメラ映像から自動で構築する技術の開発である。具体的には、対象空間の特徴量や移動特性の学習を画像認識により行い、その空間の移動特性に基づいてデジタルツインの時空間解像度を設定する独自技術を活用することで、実装・計算負荷を適切に削減した、実用的な人流デジタルツイン構築技術を開発する。これにより、対象空間を設定するたびに必要となる作業の自動化や、異なる空間を対象とした学習結果の共有や連携を可能とし、様々な空間でデジタルツインを活用できる社会の実現を目指す。

PM: 石黒 浩クリエータ: 安田 昌平・文山 草・片山 広樹・山西 博雅
採択金額: 14,400,000
2023年度未踏アドバンスト

力覚遍在化技術の社会実装のためのプラットフォームの実現

家が「かしこく」なる未来に、私たちの生活はどう変わる? 本プロジェクトは、「ひとと空間のふれあいを再構築する」というビジョンに基づいて、計算機科学によって高度に知能化された生活空間が人間の意図や行動を理解するための技術開発を目指す。プロジェクトの核となるのは、空間内のデジタル化されていないあらゆる物体の表面をタッチセンサ化する「力覚遍在化技術」である。未踏アドバンスト事業では、遍在化した力覚入力システムを自由に設計できるソフトウェアと、既存の空間を力覚化できるハードウェアの開発によって、本技術の社会実装を促進するプラットフォームを実現する。 力覚遍在化技術は、提案者チームがこれまで開発してきた「力覚センサグリッド」と「力覚解析アルゴリズム」を利用して、空間内の物体の力学的接触の3次元位置とその力の強さ・向きを同時に推定する技術である。これらの技術によって、床面に力覚センサを埋め込むだけで、机や棚などのあらゆるインテリア表面がタッチセンサとなり、タップやスワイプなどのジェスチャーを認識できるようになる。人間の意図や行動をリアルタイムに空間が理解することによって、インタラクティブで革新的な空間体験を実現する。 私たちが提案する技術は生活する人間の意図や行動を空間が理解する基盤的技術である。そのため、応用範囲はインタラクション分野にとどまらず、スポーツ科学・アミューズメント・医療ヘルスケアなど幅広い範囲にわたる。力覚入力は直感的で認知負荷が低く、操作性が高い入力手法である。さらに音声や映像入力システムと組み合わせることで、高い身体性・操作性をもつ入力システムを実現する。本プロジェクトを通じて、私たちはすべての人々が誰ひとり取り残されることなくデジタル化の恩恵を受けられる世界を目指す。

PM: 石黒 浩クリエータ: 吉田 貴寿・近藤 豊生・渡辺 貴史・橋本 大輝
採択金額: 14,400,000
2023年度未踏アドバンスト

犯罪捜査を支援する動画処理ソフトウェアの開発

防犯カメラやドライブレコーダーの普及は年々進んでいるが、多くの場合においてその動画品質は、犯罪捜査や車両特定などのために十分な水準ではない。本プロジェクトでは、深層学習を活用して、防犯カメラやドライブレコーダーで撮影された様々な品質の圧縮動画を実用レベルで復元する技術を開発する。従来の技術では、特定の条件下でしか復元ができず、その復元精度も不十分だったため、実用化に至っていなかった。私たちは、犯罪捜査や車両特定で特に重要となる人物の顔や車両ナンバープレートに焦点を当て、独自の学習データとアルゴリズムを開発することで、復元精度と汎用性の向上を試みる。 本技術により、以前は認識不可能であった人物の特定や、読み取れなかったナンバープレートの判読が実現可能となることが期待される。本技術が広く普及すれば、犯罪捜査や交通事故調査の証拠映像の価値が大幅に向上するため、社会的意義も大きいと考える。未踏アドバンスト期間中には、すでに開発を進めているプロトタイプの改善と製品化を進め、年度内の事業化を目指す。

PM: 漆原 茂クリエータ: 前田 舜太・関根 和希
採択金額: 14,400,000
2023年度未踏アドバンスト

アニメ制作工程のデータ資産を有効活用するAI管理システム

日本のアニメ業界はクールジャパン戦略に一役買う一方で、グローバルにおける競争の中で変革を迫られている。アニメ制作現場では作業量の増大、人材不足、報酬体制の問題などが課題となっている。 このプロジェクトの目的は、ITとAI技術の導入によりアニメ制作の工程を効率化し、作業環境の改善を目指すことである。 アニメ制作は各工程を経て進行する。それは絵コンテから始まり、レイアウト、原画、背景、動画、仕上げ、撮影と続く。しかし、レイアウトと原画の段階で遅れが生じ、結果的にスケジュールがタイトになり、重労働が強いられることが多くある。絵コンテから取得した画面の設計図をもとにレイアウトを制作する工程は、非常に時間がかかるクリエイティブな作業であり、これがボトルネックとなっている。 この問題を解決するために、本プロジェクトでは制作現場のデータを活用し、クリエイターに必要な参考情報を迅速に提供する仕組みを導入し、クリエイティブな作業をサポートする。具体的には、(1)アニメ制作会社のデータをデータベース化するAIアルゴリズムを開発し、(2)そのデータベースを日本語チャット形式で操作できるアプリケーションのβ版を構築する。これにより、アニメ制作現場の効率化と労働環境の改善を実現する。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 張 鑫・蘇 子雄
採択金額: 11,790,000
2023年度未踏アドバンスト

HMDを用いた疲労推定及び疲労軽減システムの開発

ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は現代社会においてエンターテイメント、教育、医療、リモートワークといった多様な領域での利用が拡大している。しかしながら、HMDの長期間の使用は眼精疲労や精神疲労といった問題を引き起こしており、これらはHMDのディスプレイと目との光学的距離による光の強度、輻輳調節矛盾、現実との違和感などから派生している。これらの問題に対する決定的な解決策は、現在のところ確立されていない。 本プロジェクトでは、上述の問題を解消するため、HMD利用者の疲労状態を推定し、その状態に応じたフィードバックを行うことで、疲労状態の改善を実現する。 未踏アドバンスト期間では、HMDに内蔵されたアイトラッキングセンサーを利用した独自のアルゴリズムによる疲労の検出手法を開発する。さらに、HMDの特性を活用した疲労状態の軽減・改善を行うようなデスクトップ環境アプリケーションを開発する。本アプリケーションを用いてデータ収集を行い、システムの有用性を検証するためのユーザーテストを実施する。 本システムの社会実装によって、多くの人々がHMDを快適に利用できる社会を実現できる可能性がある。加えて、本システムはHMDを利用していないときでも、人間の状態を推定し、それに応じたフィードバックを提供する新たな基盤となりうる。未踏アドバンスト期間では、本システムがHMDをおけるデスクトップ環境だけでなく、どのような領域で活用可能であるかについて、広範に検討・検証を行う予定である。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 籾山 陽紀・生田 光輝
採択金額: 14,400,000
2023年度未踏アドバンスト

胸骨圧迫の質を向上させるフィードバックデバイスの開発

我が国において心肺機能停止状態で救急搬送される患者は、年間12万人を超える。このうち80%を超える患者が虚血により死亡し、生存者の7割超が低酸素脳症により通常の生活に復帰できずにいる。一般的に脳虚血が5分以上持続すると、不可逆的な機能障害が発生する。虚血および低酸素脳症の予防には、院外心停止患者への一次救命処置が重要であり、心停止を目撃した市民や救急隊員が現場で適切な胸骨圧迫を実施することが必要不可欠である。 しかしながら、胸骨圧迫の質は術者によって大きな差が存在する。現状、屋外での緊急時や救急搬送時において、適切かつ継続的な胸骨圧迫が実施されているかどうかを評価し、改善するといった行為は行われていない。術者間の技量の差をなくし、質の高い胸骨圧迫を全国規模で実現するための技術開発は、極めて重要な社会的課題である。 そこで本プロジェクトでは、生体情報をもとに院外心停止患者に対する胸骨圧迫の効果をモニタリングし、術者にバイオフィードバックする非侵襲的かつ小型なデバイスを開発するとともに、事業戦略を立案・推進することを目的とする。

PM: 原田 達也クリエータ: 江國 翔太・三澤 俊英・田中 柚希・桐山 皓行
採択金額: 14,400,000
2023年度未踏アドバンスト

胎児超音波検査の自動化システム開発

妊娠中の胎児状態を推定する手段は限られている。胎児超音波検査は、最も詳細かつ非侵襲的に行える検査手法である。しかし、習得に数年かかり、実施できる産婦人科医の数も検査を必要とする妊婦数に比べると非常に少ないという課題がある。そのため、医療現場の負担は大きく、妊婦も長い待ち時間を余儀なくされている。更に、検査結果は実施者の熟練度によって大きくばらつくという現状もある。これらの問題の根幹は、検査が手動で行われていることにあると考える。 そこで、自宅で妊婦本人が装着・計測できる胎児超音波検査を開発し、得た信号から胎児状態を復元するモデルを構築する。そして、胎児の形態および動態を簡便かつ自動的に評価することを目指す(特許出願中)。得られた胎児のデータは妊婦手元のディスプレイに分かりやすい形で表示される。より専門的な解析結果や、異常値は医療機関にも通知される。 時間や場所、医療機関のキャパシティに関わらず検査を実施することができれば、胎児異常の早期発見が可能となり、早期介入・治療につなげることで周産期死亡や脳性麻痺の発生を防げる。また、産婦人科医がより多くの時間を治療や患者説明に割くことができるようになり、患者満足度が向上する。更に定量的でバイアスフリーの検査が行えることで、将来的には医療格差の抑制や、教育効果の向上が見込める。 未踏事業期間中には、超音波反射像から対象物の3次元構造を推定するアルゴリズムの選定と要件定義、基本設計と実装、評価方法の策定を行う。

PM: 原田 達也クリエータ: 小笠原 淳
採択金額: 7,200,000
2023年度未踏アドバンスト

スポーツにおけるアダプティブラーニングシステムの開発

部活動の練習を超効率化することを目的として、スポーツにおけるアダプティブラーニングアプリケーションを開発する。本アプリケーションは、スポーツ動作をリアルタイムで解析し動作をスコア化することを通じて、個人に最適な練習方法を導きだすシステムである。このシステムを社会に浸透させることで、誰でも成長を実感しながら最適な練習を行えるようになり、誰でも最短距離で上手くなれる世界を作る。それにより、部活動の長時間練習問題を解決する。 部活動の長時間練習問題は、部活生の健康上や教育上において解決すべき課題を抱えている。特に、高校や大学野球部では他の部活動よりも練習時間や疲労による怪我が長く、熱中症の死亡数が最も多いことが報告されており、早急な改善が必要である。そこで本プロジェクトではまず、最も問題の根深い高校以上の野球部を対象として、野球部員が全員練習する打撃の上達の効率化を実現するサービスの開発に着手する。練習中の打撃動画を解析することで動作のスコア化を行い、スコアに対する最適な練習をリアルタイムでフィードバックするシステムの構築を行う。これによって、打撃の上達に必要な練習量を大幅に減らし、理想のスマート部活動を実現する。さらに、このシステムの対象をあらゆるスポーツの、あらゆる年齢の人に広げることで、全部活動のスマート化と生涯スポーツへの動機づけを高めていく。これによって持続可能な開発目標である『全ての人に質の良い教育を』および『全ての人に健康と福祉を』の実現に貢献する。

PM: 原田 達也クリエータ: 早川 怜志・藤野 倫太郎
採択金額: 14,400,000
2023年度未踏アドバンスト

組合せ最適化手法を用いたAGV群運用計画最適化システム"BLACK STONE BRAIN"の開発

技術革新や労働力不足の影響により、産業界において自動化技術の積極的な導入が進められている。特に、製造業や物流業においては、産業用ロボットや無人搬送車(AGV)の導入が効率化やコスト削減を実現している。ロボットやAGVといった自律エージェントが作業主体である環境は、状態が観察可能・決定論的・静的という特徴があり、組合せ最適化手法にとって好ましい条件を備えている。当該手法をそれら機器運用に適用することで、作業効率の大幅な向上が期待される。 しかしながら、現状では製造・物流業におけるロボット等の運用効率の最適化は十分に成されておらず、さらなる効率化が求められている。 本プロジェクトでは、リフターAGVを用いた無人搬送システムに焦点を当て、当該システムの効率向上を目指す。具体的には、複数台AGVの行動計画に特化した組合せ最適化手法を用いたAGV群運用計画ソフトウェアの開発を行う。 開発するソフトウェアでは主に二点に注力する。一点目に、AGV群の高精度な行動計画モジュールの開発、二点目に高効率な搬送タスク割当モジュールの開発である。 本プロジェクトの成功により、AGVを用いた無人搬送システムの効率向上と産業界全体の競争力強化が期待される。将来的には、当該技術をさらに発展させ、他の自動化技術や産業分野へも適用を拡大し、産業界全体の最適化を推し進める。 また、国際市場においても、提案技術の導入を促進し、世界的な産業革新の推進力となることを、究極の目標として掲げる。

PM: 平野 豊クリエータ: 井上 亮太郎・大澤 琢真・髙田 悠太・山崎 泰貴
採択金額: 13,608,000
2023年度未踏アドバンスト

既存設備へ適応する、低導入コスト資源ごみ小型AI選別機の開発

日本国内では、一般廃棄物はゴミ収集車で回収された後、ごみ中間処理施設で選別が行われ、リサイクル可能なものは選別後リサイクラーで再商品化される。しかし、国内の多くの中間処理施設では手選別が行われる。手選別は、作業員にスキルが求められる他、危険な異物による事故のリスクがある。また施設にとっても高い人件費や人手不足の課題がある。 しかし、海外メーカーの既存の選別機は存在するが、国内では導入が進まない。理由には、(1)選別機が大型のため、国内の狭い既存施設には導入がしづらい、(2)国内の処理施設にとっては処理速度が不十分、(3)処理施設は収益性が低く、高額な設備投資が困難という要因がある。 我々は国内の施設の環境に特化するため、小型で既存の設備に対してフレキシブルに対応ができるAI自動選別機の開発を行っている。 小型の特性を活かし、多種多様なユニット式カスタマイズ機能をハード設計に取り入れる。既存の施設は選別手順や回収時の分別ルールなども異なるが、このカスタマイズ機能によって柔軟に対応することが可能である。これにより、処理ラインの拡張・大幅変更をせずとも高い処理速度を実現可能にする。そして、長期的な財政計画を立てたい自治体にとっては段階的導入も可能になる。 画像認識技術では、既存の深層学習ベースの物体検知だけでなく、複数の認識手法を組み合わせることで、高精度の認識を可能にする。 加えて我々の画像認識技術を用いたソフトウェアを開発実装し、廃棄物の定量データ化・選別品質管理業務の代行サービスも行う。また、学習機能としてセミオートアノテーション機能を実装予定である。これは、選別機が認識しなかった異物・選別対象を、共働する選別作業員の選別結果を元に、選別機に追加の学習を自動で施すことでそれを可能にする機能である。 我々は、低設置コストでかつ、選別工程の省人化と選別品質の維持・向上の両立を可能にする選別機を普及させることで、国内の静脈産業の収益性アップを実現し、サーキュラーエコノミーの国内普及へ繋げ、日本を資源循環立国にすることを最終目的としている。 未踏事業期間中では、国内のペットボトルリサイクラー・民間の中間処理施設から実証実験パートナーを数社獲得し、プロダクトの無償提供による壁打ちから徐々にお金を出す価値のあるものにまでプロダクトを改善、場合によってはピボットをしていくことで、スケールアップせずにProduct Market Fitを達成することを目標とする。

PM: 平野 豊クリエータ: 亀田 晃希・細谷 朋生・徳永 優也
採択金額: 14,400,000
2023年度未踏アドバンスト

AIでアパレル二次流通ECの購買体験を最適化するアプリケーションの開発

アパレル産業全体のCO2排出量は12億トン。これは国際航空業界と運輸業界の排出量合計を超えており、アパレル産業のサステナブル化は、環境問題を解決するための重要な課題の1つである。我々は、アパレルの二次流通を拡大し、服の消費のシェアを奪うことで、環境負荷の大きい膨大なアパレル生産に歯止めをかけられると考えている。 アパレルの二次流通商品はファストファッションにも対抗できる価格競争力があることに加え、服のバリエーション、ブランド、唯一性などを求める若者の需要にフィットしており、若者を中心に多くの購買がなされている。さらに、ECによって全国の消費者と二次流通企業から適切な服を買える体験を作れれば、アパレル二次流通は巨大な産業となるポテンシャルがあるだろう。 一方で、現状のフリマアプリでの古着探しは、「欲しいアイテムの言語化」「検索結果をスクロールして目的の商品を探す」という過程がストレスフルなうえ、着用したイメージが掴みにくいため魅力的に思われないという問題があり、この問題がEC市場拡大の障害となっていると考えられる。 我々はMVPを用いた仮説検証を通じて、キュレーションおよび着画画像の用意によってこれらの問題を解決できることを明らかにした。さらに、古着は多品種単一商材であることから、自動化によってスケールさせることが不可欠であると考えた。 そこで、本プロジェクトは、AIによるスケール可能なアパレル二次流通アプリの開発により、次世代の二次流通の購買体験を作ることを目指す。全自動のキュレーションシステムと高精度な着用画像生成技術の開発を行い、それらをアプリとして実装することが開発の目標である。我々はアパレル二次流通に関するドメイン知識とユーザー接点から、適切な体験や機能を描くことができる。さらに、深層学習に関する研究開発スキルに加え、独自のデータセットやレコメンデーションシステムを保有しており、リアルなデータに基づいた分析や学習を行うことが可能である。 本プロジェクトで作成するアプリを通じて、アパレルの二次流通市場の拡大、そして産業のサステナブル化を目指す。

PM: 平野 豊クリエータ: 熊澤 龍生・池田 悠也・石井 修都
採択金額: 14,400,000
2023年度未踏アドバンスト

テレプレゼンス技術のための低遅延IP映像伝送システムの開発

人が持つ技能の展開に関する課題は、技能というソフトウェアと、人間の肉体というハードウェアが不可分であることから発生している。例えば今日の日本の建設業界では2025年に約95万人もの労働者が不足するとされている。これは、建設現場で必要な技能が職人と不可分な状態となっているため、高齢化で移動が難しくなった職人が、現場に参画できないことが原因の一つである。 この不可分性に起因する課題は建設業界のみならず、製造業、インフラ産業、医療など多くの分野で顕在化しており、「遠隔臨場」「遠隔支援」「遠隔操作」などのテレプレゼンス技術を用いた改題解決に多くの企業が取り組んでいる。こうしたテレプレゼンス技術では、映像伝送による遠隔化を行うことで技能と肉体の不可分性の克服を試みているが、特に遅延に関する技術的な課題によって実現に至っていない場合も多い。 現状の映像伝送技術では概ね200ms以上の遅延が発生しており、これは、テレプレゼンス時の操作感や存在感へ多大な違和感を与える。本プロジェクトではこの問題を解決するべく、テレプレゼンス技術のための低遅延IP映像伝送システムを開発する。 現状、無圧縮で映像伝送することで数ms程度の遅延が実現されているが、その帯域は720p60Hzで1.2Gbpsを超える。そのため複数同時に映像伝送を行う際、インターネット網、無線区間を含めたEnd-to-Endで十分な帯域を確保するのは難しい。一方でH.264/H.265等のフレーム間圧縮を用いることで帯域を数十Mbps程度まで削減できるが、数百~数千ms程度の遅延が発生するという問題がある。 本プロジェクトではカメラセンサの信号入力からディスプレイ信号出力までのI/Oレベルでアーキテクチャを最適化し、ハードウェア上に実装することで、Glass-to-Glass(カメラ~ディスプレイ間)遅延が15ms未満かつ帯域10-100Mbps程度を目指す。 本技術は自動運転車・ドローン等移動体の遠隔操縦、テレプレゼンスロボット、遠隔医療など今後ロボットを用いたシステムを社会実装していく上で必要不可欠な要素であり、それらの根幹を成す基礎技術である。将来的にさまざまなシステムへの応用が期待される技術である。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 水野 史暁・山本 恒輔・海老原 祐輔
採択金額: 14,400,000
2023年度未踏アドバンスト

洪水浸水予報アプリケーションの構築

気候変動に伴い気温や災害リスクが上昇しており、特に洪水は世界中で深刻な問題となっている。我々は、気候変動で誰も傷つかない世界を目指し、東京大学で開発された洪水シミュレーション技術を活用したリスク分析プラットフォームを開発してきた。本プロジェクトでは、長期のリスク分析にとどまらず、リアルタイムに浸水範囲や浸水深の予測が可能な実用的な洪水予報アプリケーションを開発することが目的である。 現行の洪水予報ソリューションは主に河川水位の予測にとどまり、浸水範囲や浸水深を予測するものは稀である。我々が活用する東京大学で開発された洪水シミュレーション技術は、世界中で河川水位や浸水深を計算でき、高解像度地形データを用いたダウンスケーリングにより実用的な解像度で提供可能となる。 本プロジェクトでは、まず洪水シミュレーションの精度向上開発を行い、実用性を高める。次に、過去の洪水イベントにおける精度検証を行い、技術の有効性を確認する。実用レベルの洪水予報技術をアプリ化し、自治体による避難指示等に役立てることを目指す。ユーザーとの協議を通じて、実際に必要とされるデータ精度の改善や機能開発を行う。さらに、避難指示の判断などに資する、災害の予測などの付加機能も実現する。 さらなる展望として、開発途上国を含む世界中で洪水リスクの適切な評価・対策・予報を行う仕組みを実装することで、世界的な災害リスク軽減に貢献できる可能性を見込む。

PM: 三木 寛文クリエータ: 北 祐樹・出本 哲
採択金額: 14,400,000
2023年度未踏アドバンスト

機械学習を用いたダンサー向けARエフェクト合成アプリ

ダンスが今、多角的な面から盛り上がりを見せている。日本では2012年よりダンスが中学校の体育で男女ともに必修化し、2024年のパリオリンピックでブレイクダンスが正式競技として採用されるなど、教育や競技としてのダンスが注目されている。また、日本発のプロダンスリーグ、D.LEAGUEが2021年に発足しダンサーがダンスのみで稼ぐことができる世界を目指す取り組みがなされている。これらを鑑みると、今後ダンスの市場規模がさらに拡大する可能性がある。 こういったダンスに対する追い風を「テクノロジー」を使うことでより加速させる。具体的には機械学習を用いることで既存のダンス表現を拡張し、「ARダンス」として昇華させる。このARダンスを簡単に撮影・制作・共有できるようにする。 本プロジェクトでは、「スマートフォンからの操作で機械学習を行い、ダンス表現を拡張するARエフェクトを付与した映像を他者と共有できる」アプリケーションを制作し、運用する。エフェクトが付与されることで生身の肉体だけではできない表現が可能になる。既にダンスに自信がある人はより魅力的に踊ることができ、ダンスに自信がない人でもエフェクトの力で自分をより魅力的に見せることが可能になる。これによりダンスに対する敷居を下げ、かつ表現をより豊かにすることで、ダンス業界の間口を広げる。このARダンス事業を通してダンス業界を盛り上げていく。 事業計画としては、まず機械学習を用いたARエフェクトの精度向上および表現力向上に取り組み、アプリケーションのブランディングに注力する。その後、継続利用したくなるような施策やファンコミュニティ形成などにより、ユーザー獲得を行う。その上で、ダンサーコラボフィルター制作や、ダンサーへのマネタイズ機能の制作、ダンススタジオやイベントとのコラボなどで収益化を図る。

PM: 三木 寛文クリエータ: 伏木 秀樹・辰己 佳祐
採択金額: 9,999,000
2023年度未踏IT

サッカーのゴールキーパーのための練習データ分析システム

ゴールキーパー(以降、GK)はサッカーにおいて特殊なポジションであるが、育成年代では専門のコーチがいないチームが多く、選手は十分な指導を受けられていない。 GKコーチは全国的に不足しており、日本サッカー界のGK人材不足の大きな要因となっている。 試合用のデータ分析システムは数多く存在するが、1試合でGKが受ける枠内シュート数は平均5〜7本程度であり、GKのプレー改善に十分な情報を得られない。 また、試合用のシステムは練習で使用するにはコストが大きく、様々な形状でグラウンドを使用する練習の多様性にも対応できない。 そこで本プロジェクトでは、GKコーチの役割を支援、さらには代替することができる、GKの練習や振り返りの質を高めるためのデータ分析システムを開発する。 本システムは、練習中のゴール前のプレーに集中してそれを詳細に分析することで、GKの練習データを安価で大量に取得し、練習の多様性にも対応できるようにする。加えて、シュートの軌道や速度の計測も可能にすることで、ポジショニングを自由視点で確認できるようにすることも目指す。 これらにより、GKのデータを数百倍のコストパフォーマンスで取得でき、出場機会の少ないGKでも効果的な振り返りと練習ができる環境の実現を目指す。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 王 方成・松尾 勇吾・染谷 大河
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

ロボット記述言語に基づくドローン開発支援ツール

近年ドローンの産業分野への応用が急速に進んでいる。その背景にはPixhawkに代表されるカスタムドローン用ハードウェア・ソフトウェアの発展があり、非専門家でもドローンの開発がしやすい環境が整ってきている。しかし、現在のドローンの開発環境には2つの課題がある。 1つ目は、既存の飛行制御器の拡張性の低さである。既存の飛行制御器は簡略化された機体構造を想定しており、ドローンなどの複雑な機体構造を持つドローンに既存の飛行制御器を無理に適用すると制御が不安定になる恐れがある。また、既存の飛行制御器自体にユーザのプログラムから指令を送ることはできず、そのためには追加のコンピュータが必要となる。2つ目は、ミッション遂行に必要な機体のスペックを事前に調べるのが困難な点である。カスタムドローンを簡単かつ現実に即した条件でシミュレーションできる既存のツールはないため、ドローン開発においては試行錯誤に多くの時間がかかる。 これらの課題を解決するために、本プロジェクトでは新しいドローン開発支援ツールを開発する。1つ目の課題に対しては、ロボット記述言語に基づく制御器を構築する。既存の飛行制御器と異なり機体のリンク構造や質量特性を詳細に考慮することで、あらゆるドローンに対して高精度な制御を可能にする。2つ目の課題に対しては、読み込んだドローンを元に現実に即した空力シミュレーションを提供する必要な設定はGUIで完結し、専門的な知識がなくてもユーザが設計したドローンをシミュレーションできる環境を実現する。 ソフトウェア全体をROS(Robot Operating System)に対応させ、その拡張性を最大限確保する。また、専用のハードウェアを用意し、シミュレーションとほぼ同じインタフェースで実機でも動作するようにする。 本プロジェクトにより、ドローンを開発する際の時間的、金銭的コストが大幅に縮小され、産業用のドローン開発を加速させる効果が期待できる。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 土肥 正義
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

みんなで遊べる競技かるた

「競技かるた」は、百人一首の札を早く取ることを競うゲームである。クリエータは高校・大学と競技かるた部に所属していたが、部活の練習以外でも、親戚や友人との遊びやかるたの体験会を通して、様々な人々とかるたを行う機会があった。札を早く取る楽しさや、札を払う楽しさを一緒に感じられることを嬉しく思っていたのだが、百人一首の和歌を覚えているかどうかや、取る動作に慣れているかどうかが札を取るまでの時間に大きく影響してしまうかるたでは、かるたが好きなもの同士にも関わらず、一緒に楽しむことがとても難しかった。素朴な解決方法として、ハンデをつけることも試したが、大きくルールを変えたり、実力を制限したりすることになり、双方にやりづらさや申し訳なさ、遠慮が生まれてしまった。 そこでお互いが意識しなくて良いようなスキル調整をすることができれば、たくさんの人々が一緒にかるたを楽しむことができるようになるのではないかと考えた。本プロジェクトでは、スキルの差に関係なく一緒に楽しめる、VRを用いた競技かるたシステムを開発する。VRを用いて視覚や聴覚の情報をプレイヤごとに変化させることで、それぞれのプレイヤに異なるスキル支援を行うことが可能になり、相手のスキルセットに影響を与えずにスキル調整が行える。また、双方のプレイヤが知覚することすら困難な支援にすることで、プレイヤの意識をスキル調整に向きにくくすることができる。さらに、現実空間では行うことが難しい支援を行うことも可能になる。 本システムは将来的に、他の対人ゲームにおけるインクルーシブ化(スキルの差や、障がいのあるなしに依らず楽しめること)にも応用、発展が期待できる。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 丸山 礼華
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

五感情報を記録・共有するセンサリーマップの開発

本プロジェクトでは、感覚過敏などの感覚特性によって外出に課題がある人々の外出、移動、買い物、レジャーなどをサポートするセンサリーマップを開発する。 感覚過敏とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの諸感覚が過敏になっていて日常生活に困難さを抱えた状態である。感覚過敏は、発達障害(特に自閉症スペクトラム)に多く見られる症状であるが、うつ病やPTSDなどの精神疾患、自律神経失調症、認知症や高次脳機能障害など後天的にも生じる症状でもある。感覚過敏自体は病名ではなく、これらの障害や疾患の「症状」であるため、一般的には診断されるものではなく、感覚過敏自体の緩和方法も確立されていない。 感覚過敏の課題はたくさんあるが、社会的な部分での問題は、感覚特性によって学校に通えない、就労できない、外出が困難である部分が大きい。感覚過敏がある人は、光や音、匂いなどの刺激で外出に苦労をする。対策として、イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホン、サングラスや調光レンズなどを使用するが、刺激のカットは完全ではないため体力消耗が激しくなる。小さな子どもの場合、メルトダウンというパニック状態になり、落ち着くのに数時間かかる場合もある。 本プロジェクトでは感覚過敏の人々の外出の課題にフォーカスし、移動・買い物・レジャーなどのハードルを下げるサービスを開発する。具体的には、地図APIを利用した、特定場所の五感情報をユーザが口コミ形式で投稿でき、誰もがそれを閲覧できるサービスを想定している。手軽にスマートフォンで外出先の感覚情報を見られるようにすることで、感覚過敏の人々がその場所に行く際の心構えや対策、あるいは回避ルートを考えることができるようにする。また、センサリールームやカームダウンスペースなどの、感覚刺激が少ない落ち着けるスポット情報も表示できるようにする。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 加藤 路瑛・安東 鷹亮・寺﨑 優葵
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

視線とキーボードで完結する高速なGUIポインティングシステム

我々はグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を通してPCとの対話を行なうことが多い。その操作にはマウスを始めとするポインティングデバイスが主に使用されるが、GUIでの操作においてポインティングの対象を認識し、マウスカーソルを移動させ、選択するという流れには少なくない時間が要求される。これはモニタの数や解像度が増えるとより顕著なものとなる。一方でランチャのようなプロンプトベースのツールや、Vimのような特定のキーバインドによってGUIの操作を行えるようにしているツールなど、キーボード入力を用いた効率的なGUIの操作手法がある。これらを用いることで、キーボード入力よってポインティングデバイスを用いた場合と比べてより効率的なGUIでの操作を可能にする場合があるが、ドラッグ&ドロップに代表されるような複雑化したGUIでの操作は、キーボード入力だけでは効率的には行えない。 そこで本プロジェクトでは、ユーザの視線を組み合わせることによるマルチモーダルなインタラクションに着目する。ユーザの見ている点(注視点)を推定し、それをポインティングに活用することで、GUIにおける操作を効率化する。視線推定技術を活用したインタフェースはユーザが手を使わずに高速なポインティングをすることを可能にする一方で、その導入コストと精度の限界が普及の障壁となっていた。本プロジェクトではこの課題を解決するため、次の2つのシステムの構築を行う。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 泉 和哉
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

手話認識による逆引き検索が可能なクラウド型手話辞典の開発

クリエータは参加していた手話サークルでの活動を通して、手話の初学者が「ろう者が使う手話の意味を自分で調べることが出来ない」という問題により、ろう者と上手くコミュニケーションが取れずに挫折してしまうことが多いことに気がついた。つまり、既存の手話辞典やクラウドサービスには手話から日本語の意味を調べる、所謂逆引き機能が十分備わっていないということであるが、逆引き機能を実現するには解決しなければならない課題が2 つある。 1 つ目はデータセットの規模の課題である。手話動画から単語の意味を予測する手話認識ついて、近年のディープラーニングベースの手法では、精度を高く保つには大規模なデータセットが必要であることが分かっている。さらに日本手話の公開データセットも少ないため、日本手話の逆引き機能の実装は大規模データセットの収集が高コストとなって実用には至っていない。 2 つ目は手話の多様性の課題である。手話は日本語以上に地域差や個人差が大きく、手話辞典に記載されている標準形の動作以外にも様々な動作が実際には使用されている。その為、調べたい手話動作が標準形とは異なるため手話辞典が対応していないという場合がある。紙の手話辞典やディープラーニングベースの手法で標準形以外の手話動作を全て網羅することは現実的でなく、この問題は多くの手話学習者を悩ませてきた。 そこで、本プロジェクトでは逆引き検索が可能なクラウド型手話辞典を作成する。姿勢推定技術と手話言語学の知見を取り入れることで頑健な手話認識ができるシステムを開発し、集合知を活用したアルゴリズムと統合することで、あらゆる手話動作から意味を逆引き出来るようにする。また、手話辞典の性質上、誤った知識を提供しないようにすることは必須であるため、ユーザが常に正しい内容を学習できるよう出力を工夫する。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 髙橋 亮太
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

ぬいぐるみ専用の組み込みAIモジュールの開発

本プロジェクトではぬいぐるみ専用の組み込みAIモジュールを開発し、あらゆる種類のぬいぐるみにロボティクスを適用する。そして、幅広いぬいぐるみに効率的に知能を埋め込むためのプラットフォームの構築を目指す。 ペットを飼うことは、現代においては非常に大きな決断となりうる。昔も今もペットに世話が必要なことは変わりない。しかし、特に犬や猫では現代特有の事情が絡んでくる。一つは、都市化が進み、ペットを飼いづらい環境になってきていることである。もう一つは、ペットの長寿命化である。医療の発展に伴い、犬や猫の寿命はこの数十年で飛躍的に伸びている。これは喜ばしい一方で、ペットを迎える行為が自身の今後15年の生活を左右する決断になったことを意味する。そういった背景も踏まえてか、近年では家庭用犬型ロボットなども販売され始めている。しかし、これらはペットとしての犬を意識しているためか、高機能な一方で価格が非常に高い。 そこで本プロジェクトでは、機能を抑えた上でも違和感を最小限に止めるべく、普段は動くことのないぬいぐるみに知能を埋め込む方針でペットロボットを開発しようと考えた。しかし、それでもぬいぐるみ固有の問題が生じる。 ぬいぐるみとは究極的には自身の鏡である。つまりそれは自己を投影しうる対象であり、外見には人それぞれ好みがある。そして、事実として世の中には犬や猫、熊、うさぎ、ねずみなど、あらゆる種類のぬいぐるみが存在する。もしこれらすべてにロボティクスを適用しようとしても開発費が莫大となり現実的ではないし、いくつかについて実装しただけでは需要を満たしきれない。 そこで本プロジェクトでは、ぬいぐるみのロボット化に特化した組み込みAIモジュールを開発し、ぬいぐるみの骨格の規格化を目指す。そして、ぬいぐるみの毛皮と骨格の開発過程を分離することで、幅広いぬいぐるみに効率的に知能を埋め込むための土台を築き上げる。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 小山 高
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

GPSと合成音声による防犯スマートフォンアプリケーションの開発

本プロジェクトでは防犯用のスマートフォンアプリケーション(以降「アプリ」)を開発する。既に本アプリのプロトタイプに当たるWebアプリケーションを開発しており、プロトタイプでは以下の機能を実現している。 本プロジェクトではプロトタイプで検証したソリューションを、実際にユーザが毎日使えるネイティブアプリへと昇華させる。 本アプリケーションの開発背景として、夜道を歩く女性は男性と比べて多くのことに恐怖を感じ、普段歩く道を足早に歩く・遠回りをすることで不審者への対策を講じている現状がある。本アプリケーションは、このような明確な男女の差である夜道のジェンダーギャップを解消することを目的としている。まずは、プロトタイプでは動作が不安定であったフェイク通話、防犯ブザー、緊急通報、録音等の機能を安定させてネイティブアプリ化することに取り組む。その後、リアルタイムの犯罪共有機能、フェイク通話におけるAIとのスムーズな会話、アプリ内での通話、犯罪率を視覚化したマップの搭載などの機能拡張に取り組むことを想定している。 本アプリは緊急時のみに使用される防犯アプリとは異なり、「日常から女性の帰り道に安心を届ける防犯サービス」をコンセプトとしているため、友人・知人との通話等の日常から使用できる機能を搭載する。普段から利用してもらうことで身近に感じてもらうことでユーザへの定着を促し、日本社会全体への浸透、及び日本社会のジェンダーギャップの解消に寄与したい。

PM: 岡 瑞起クリエータ: 石戸谷 由梨・金城 拓登・江畑 敬太
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

月経中のストレス緩和を目的としたショーツ型経血量測定デバイス

本プロジェクトでは、月経中の女性の悩みのひとつである経血の漏れを解決することを目指し、ショーツが汚れる前に経血を察知するためのデバイスを組み込んだショーツ(「アンリークショーツ」と呼ぶ)と、その状況をユーザに通知するためのスマートフォンアプリケーション(以降、アプリ)を開発する。 多くの女性が生理中の紙ナプキンの使用に問題を抱えている。例えば、生理期間中は漏れが目立たないよう黒色のボトムスを履かなければならならないことや、漏れを気にするあまり激しい運動に抵抗感を覚えるなど、紙ナプキンの使用には依然として課題が多い。そこで本プロジェクトでは、ナプキンの状態をセンシングし、漏れる前にユーザに通知するシステムを構築することで、これらの問題から女性を解放する。 具体的には、センサや無線装置、マイコンを内蔵したフレキシブル基板(FPC)をシリコーンでコーティングしショーツに縫いつける。センサにはカラーセンサを利用し、ナプキンの縁に複数個配置する。そのセンサデータを解析することで漏れをユーザに通知する。また電源供給には磁気共鳴を利用したワイヤレス給電を用い、露出する端子を完全に排除する。もし汚れてしまった場合も丸ごと洗えるようにする。 また、本システムでナプキンが吸収した経血量を測定することを想定している。過多月経や過少月経は子宮などの病気のサインになるが、女性の感覚では経血量の異常に気づきにくいため、これらの早期発見が期待できる。

PM: 岡 瑞起クリエータ: 吉田 紗彩・常次 舞・高安 優多・能﨑 直紀
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

テーマパークでの満足度を最大化するためのプラン作成支援アプリケーション

本プロジェクトでは、テーマパーク内で使用可能な、効率のよいアトラクションの回り方などのおすすめプランを提案するアプリケーションを開発する。 テーマパークでは、多くの人々が「待ち時間が多くて、思ったより乗れない」「たくさん歩いて疲れる」といった悩みを感じているものの、有効な手立てはなくほとんどの人々が解決を諦めてしまっている。全く解決方法がないわけではなく、例えばテーマパークの公式アプリではアトラクションごとの現在の待ち時間を見ることできるが、それを見ただけではこの後さらに混むのか・空くのかを判断することは困難である。本プロジェクトでは、そのような課題を解決することが可能な、テーマパーク内で使えるプラン提案アプリケーションを開発する。本アプリケーションはテーマパーク内で使いやすいよう、スマートフォンアプリケーション(以降、アプリ)として実装する。アプリには「効率重視派」と「自由度重視派」という2つのユーザ層を想定した機能を実装する。とにかく多くのアトラクションに乗りたい「効率重視派」のユーザ向けには、ルート提案機能を実装する。この機能は、アトラクションの待ち時間の予測には機械学習、ルートの最適化には進化計算を用いて少ない待ち時間で回れるルートを計算し、ユーザに複数候補を提案するものである。ノープランを好む「自由度重視派」のユーザ向けには、予測待ち時間情報が確認できる機能やレコメンド機能を実装する。ユーザは自分で自由に次の行動を決めながらも、未来の待ち時間やレコメンド情報を参考にすることで、待ち時間のより少ない回り方を選択できるようにする。

PM: 岡 瑞起クリエータ: 竹味 和輝・小島 聡太・刀禰 有紀彦
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

対話可能な選択的機械除草ロボットの開発

農業の有する多面的機能として、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承が挙げられる。近年、特に中山間地域で耕作放棄地が増加しており、雑草の種子や病害虫の源泉となる等の問題が起きている。農家の耕作面積を増やすことで、収入を増やしつつ多面的機能を果たすことは意義深い。 本プロジェクトでは、従来のスマート農業の影になっていた中山間の農家に光を当てた機械除草ロボットを開発する。本ロボットによって、農薬を使う必要がなくなり、経済的なメリットだけでなく、生物多様性や地力の向上など様々な効果を生み出す。さらに、「雑草」を雑に一括りにするのではなく、種類ごとに選択的に除草することを可能にする。雑草には良い雑草と悪い雑草があり、悪い雑草だけ取れば良いと考える自然栽培系の農家は多い。こうした細かな要望に応える柔軟性を持たせるために、「対話可能」で「トポロジカルマップ」によるナビゲーションを実装する。例えば「トマトの畝を除草しておいて」と自然言語を通じて指示することができるようにすることで、より動的に除草ロボットの経路を生成し、タスクを遂行できるようにする。近年の技術的革新であるLLMや視覚・センサ・計算機の性能の飛躍的な向上によって可能になる機能も考えられる。これらを農業分野にも応用し、組み合わせることで、研究以上の価値を持つプロダクトの実現を目指す。 また、副次的には、中山間の農家をより魅力的な選択肢として引き立てる効果も期待される。本プロジェクトによって、耕地面積が増えて収入が増加した、精神的に豊かなライフスタイルが送れるようになった、ロボットのおかげで泥臭い除草から解放された、といった魅力を生み出したい。

PM: 落合 陽一クリエータ: 子安 竜司
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

乳化量最大化を目指したエスプレッソ抽出制御システムの開発

本プロジェクトでは家庭用エスプレッソマシンで乳化量が最大化できる制御システムを開発する。これはエスプレッソ抽出において乳化量が最大となる条件を見つけ出し、それに合わせて温度・時間・圧力などの制御を可能にしようとするものである。 エスプレッソはイタリア発祥のコーヒー抽出方法で、世界中で楽しまれている。例として、エスプレッソベースのアレンジドリンクの販売、カプセル式エスプレッソシステムが挙げられる。これらは世界中の人に楽しみを与え、生活水準を向上させ、生産性を向上させている。エスプレッソはドリップコーヒーと違い、コーヒー豆に9気圧をかけて抽出するため、エスプレッソマシンなどの専用の機械が必要である。そして、美味しいエスプレッソを作ることを目指し、一般的な家庭用のエスプレッソマシンを改造することは不可能ではない。また、美味しさを作る一つの基準として、エスプレッソが上手く乳化するかという点が挙げられる。エスプレッソは乳化すると3層になり、泡状になってコーヒーの香りを閉じ込めるため美味しく感じるようになる。そして、最高の乳化を目指して、エスプレッソマシンのアナログ温度制御にPID制御装置をつけ、温度を一定に保つことで上手く乳化させる改造方法がよく知られている。 一方で、エスプレッソの乳化にはその日の気温・湿度・豆の焙煎日数などが関係し、熟練のバリスタはそれらの情報を元に経験的に抽出温度と挽き具合を調整しているため、実際には常に同じ結果になる装置ではなく、その時の状況によって設定が変化する装置が適切である。 本プロジェクトでは、機械学習モデルに気温・湿度・豆の焙煎日数などの変数とその時の乳化度合いの関係を学習させ、乳化量の最大化を目指す変数を推論させ、それをエスプレッソマシンの制御に組み込んだエスプレッソ抽出制御システムを開発する。本システムによってエスプレッソの美味しさを向上させ、あっと驚く体験を新たに作り出すことによって、世界中の人々に感動体験を届けたいと考えている。

PM: 落合 陽一クリエータ: 岡田 拓真
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

Wasmを実行するunikernelとWasmコンパイラ

本プロジェクトではWasm(WebAssembly)の実行に特化したunikernelと、独自のWASI(WebAssembly System Interface)実装をWasmバイナリに挿入できるWasmコンパイラを開発する。 unikernelはプロセスをただ1つだけ持つという特殊な軽量OSであり、サーバレスコンピューティングのカーネルとして非常に適している。ところが、unikernelはその互換性の低さの問題で今まで日の目を浴びることがなかった。 Wasmとはウェブブラウザ上で実行することができる新しいバイナリコード(仮想命令セット)である。従来ウェブブラウザ上ではJavaScriptで記述されたプログラムが動かされてきたが、Wasmはバイナリコードであるため、JavaScriptよりも高速に動作する。WasmバイナリはC, C#, Zig, Rust, Go といった様々なプログラミング言語からコンパイルして生成することができる。昨今はLinuxなどのOS上にWasmランタイムを実装してそれをサンドボックス化することで、Wasmバイナリの動作環境をウェブブラウザ以外にも広げようとする動きもある。 そこで本プロジェクトではWasmバイナリを実行できるunikernelを開発することで、unikernelの軽量さを保ちつつ互換性の問題を解決する。これにより、クラウドにおけるFaaSを用いた処理の高速化・高密度化を可能にする。さらには、他のWasmランタイムなどと組み合わせることで、新たなIoTアーキテクチャが実現することが期待される。 また本unikernelの開発の過程で、WASIの実装とWasmのバイナリを繋げるためのWasmコンパイラを開発する。WASIとはWasmに対してシステムのリソースを提供するAPIである。本コンパイラはWasmバイナリに対して独自のWASI実装を挿入することを可能にすることで、Wasmバイナリを実行できる新たなカーネルの開発を促進する。さらには、Wasm/WASIがカーネルに対する標準的なAPI/ABIとして普及し、特定のアプリケーションを動作させることに特化したカーネルの開発がよりカジュアルになる世界を実現する。

PM: 曾川 景介クリエータ: 上田 蒼一朗・野崎 愛
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

生成AIを使った制作システムで実現する循環型プラットフォーム

本プロジェクトでは、生成AIを使ったデザイン制作アシスタントシステムと循環型プラットフォームを開発する。 近年、廃棄問題は世界的な社会問題となっており、国内外の様々なブランドがアップサイクルプロダクトや再生可能な素材を使ったプロダクトを開発する取り組みを行なっている。このような取り組みの数は年々増えているが、まだ一部の人々にしか届いておらず、問題解決にはなっていない。より多くの人々に普及させるには、従来の消費行動を超えるインセンティブを設計する必要がある。 アップサイクルプロダクトの魅力は、モノが持つ唯一性と意外性のある組み合わせである。しかしながら、このようなプロダクトのデザインは独創的な発想と素材への知見が必要である。結果的に一部の人々しか制作のプロセスに参加することができない。 そこで本プロジェクトでは、生成AIを使い非デザイナーのユーザでもデザイン制作ができるアシスタントシステムと循環型プラットフォームを開発することで、この問題を解決する。 本プラットフォームでは、生成AIと探索するシステムを用いて、廃棄予定であったり使われなくなったりした素材などから自分好みのデザインを制作できるようにする。そして、好きなデザインの制作によって出る廃材や他のユーザから提供される素材がプラットフォームを循環することで、ユーザと環境の双方に価値を創出する。本プロダクトが普及することで、従来の消費の楽しさである新たなデザインを手にいれる行為を肯定しながら、大量生産・大量消費を減らし、環境問題や廃棄物問題を解決することが期待される。

PM: 曾川 景介クリエータ: 加藤 優・森口 椋太・木付 碧
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

Pythonにトランスパイル可能な静的型付けプログラミング言語の開発

本プロジェクトでは動的型付けプログラミング言語Pythonにトランスパイル(変換)可能な静的型付けプログラミング言語、及びその周辺ツールを開発する。Pythonは産業・学術・教育用に広く普及しているプログラミング言語であるが、実行時にコードを検査する動的型付けという方式を採用しているため、実行するまでバグに気づきにくい、実行効率が悪いなどといったデメリットがある。またPythonはそのシェアに比して公式の開発ツール群が貧弱であり、環境構築が難しい言語とされている。これは再現性が重視される学術計算分野においては大きなデメリットである。本プロジェクトで開発するプログラミング言語でそれらの問題を解決する。 本プログラミング言語はPythonコードにトランスパイル可能にする。これにより、Pythonで書かれたコードやライブラリをゼロコストで流用可能となる。本プログラミング言語は強い静的型システムを持ち、より多くの潜在的バグをコード実行前に検出可能にする。このような動的型付け言語に静的型システムを載せる試みは、TypeScriptなどの先例があり、その有用性が実証されている。ただし本プログラミング言語はTypeScriptと違い、トランスパイル対象の言語との文法の互換性に拘らない。問題のあるPythonの文法を修正し、他言語で有効性が実証されている最新のコンセプト(トレイト、関数型プログラミングなど)を導入する。 また、ネイティブコードを出力する機能も実装し、高速な実行を可能とする。更に、ランゲージサーバ、Linter、フォーマッタ、パッケージマネージャなど、開発を補助するツール群を組み込み、それらをコマンド一つで呼び出せるようにする。これにより低い環境構築難度と高い再現性を実現する。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 芝山 駿介
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

空間を奏でる電子楽器の開発

本プロジェクトでは、空間から音を生み出す電子楽器を開発し、実際の音楽シーンに実戦投入できるレベルの楽器に仕上げ、空間と音のコラボレーションによる新たな音楽表現を生み出すことを目標とする。 電子楽器は小型化によって、様々な場所に持ち運んで、いつでもどこでも演奏できるようになった。この「楽器を持ち運んで場所を変える」という点に注目し、楽器が置かれた空間でしか鳴らない音を生み出す仕組みを開発することで、その場、その瞬間でしか生まれない音楽体験を実現する。具体的には、測量や自動運転などに用いられるLiDARを楽器に搭載し、空間の形状をリアルタイムに取り込むことで、その結果を反映した音を演出できるようにする。また、空間にリアクティブに音が変化する仕組みを開発することによって、空間内に存在する人やモノと、音とのコラボレーションを容易に生み出せるプラットフォームとしても展開する。 近年、音楽表現がデータによるやり取りになりつつある中で、表現のためのシステムが複雑化し、一般人にとって参入障壁の高いものとなりつつある。そこで、空間、人、モノといったフィジカルな要素を音楽表現に取り入れ、身体性を伴って表現を生み出せるようにすることで、より直感的に音を扱える世界を実現する。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 長谷川 泰斗
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

TEEを用いたセキュアかつ高性能なデータベースシステムの開発

クラウドコンピューティング(以降、クラウド)の利用は増加の一途を辿っている。GoogleやMicrosoft、Amazonなどの大企業がクラウド事業を提供しており、それらは外部からの攻撃に対する様々な策を講じているため、安全であると考えられている。しかし、安心は満たされていない。なぜなら、クラウド事業者は自身が提供しているマシンの管理者権限を有しているため、彼らがデータの読み取りや改ざんを行うかもしれないという疑念が残るからだ。クラウドを利用するときは当然、組織の重要なデータベースをクラウド上において運用するが、クラウド事業者等の管理者権限を有する者が不正アクセスを行っていないことを保証するのは難しい。 この対策として、データベースに準同型暗号やTEE(Trusted Execution Environment)を適用したデータの機密性を保証する手法が提案されているが、前者は暗号演算による膨大なオーバーヘッドがあること、後者は旧型の並行性制御法や逐次ロギングが採用されていることから、スケールアップを行うことは困難である。 本プロジェクトでは、「高セキュリティ」「高性能」「高分離レベル」「スケーラビリティ」の4つ全てを満たす、セキュアかつ高性能なデータベースシステムを開発する。具体的には、TEEの一つであるIntel SGXによって提供される隔離実行環境(Enclave)に、トランザクション処理プロトコルのSilo、インデックス及び機密データを配置することにより、OSやハイパーバイザ、クラウド事業者からの読み取りや改ざんを防ぎつつ、高性能化を実現する。また、出力したログに関しても、暗号化とログ改ざん検知プロトコルの適用を行うことで、機密性と完全性を保証する。 本システムは高セキュリティかつ高性能を提供するため、金融、医療等、機密データを扱う様々な分野の高性能化と安全性付与に寄与することが期待できる。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 福山 将英
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

RISC-Vベースのプロセッサを自動生成するシステムの開発

FPGA(Field Programmable Gate Array)は論理回路を集積したデバイスであり、開発者の要求に応じて自由に配線を変更することができるものである。開発者は、デバイスに搭載された論理回路の規模の制限内において自由に回路を構成することができるほか、実際のハードウェア上に回路を直接構成することから、ソフトウェアによる実装よりも高速な処理を実現することができる。このような特徴から、FPGAは音声処理や画像処理などの分野において、特定の処理を高速に行いたいというニーズに応えてきた。しかし、FPGAを用いた開発はハードウェア・ソフトウェアの両分野における高度な知識・経験が要求されるため、一般的な開発者にとっては敷居の高いものとなってしまっている。 本プロジェクトでは、このようなFPGAに関連する様々な問題を解決することを目指し、RISC-Vベースのプロセッサを自動生成するシステムを開発する。RISC-VのISA設計はプロセッサとして最低限必要な基本命令を軸として、目的に応じて拡張命令をユーザが自由に選択して実装できるという、カスタマイズ性に優れた設計となっている。本プロジェクトでは、この設計を利用することでプロセッサを自動生成する仕組みを実現する。具体的には、プロセッサコアとコプロセッサという2つの概念を導入し、ユーザがこれらを自由に組み合わせることによって目的のプロセッサを得る仕組みを実現する。また、これに合わせ、生成したプロセッサ上で動作する専用の制御ソフトウェアを開発し、ユーザに提供する。プロセッサの自動生成および専用制御ソフトウェアの組み合わせにより、高度な知識・経験などをもたずともFPGAを用いた開発を行える世界を実現する。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 中神 悠太
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

魚群や動物プランクトンの空間分布を可視化するシステムの開発

SDGsが重要視される中、水産業界も持続可能な水産業の実現を目指している。世界の水産業の漁獲量のうち半分は広大な海を相手にする天然漁業によるものであるが、国内の漁獲量は年々減少しており、漁業の効率化が求められている。効率的な漁業を目指す取り組みとして、餌が豊富に存在する好漁場がどこなのかを推定する技術開発が挙げられる。しかし、植物プランクトンの分布は衛星観測やモデルによる予測により捉えられるようになりつつあるが、魚類の餌である動物プランクトンの分布は衛星観測ができず、モデルによる予測精度も低いという問題点があり捉えきれていない状況である。このような餌資源の分布予測が可能となれば、より正確な漁場予測も可能となると期待される。 そこで本プロジェクトでは、一定海域における対象となる水産資源である魚の群れや、魚の餌である動物プランクトンの密度空間分布を推定して1日単位で予測・提供するアプリケーションを開発する。本アプリケーションでは、海水温、塩分、クロロフィル濃度(植物プランクトン濃度の指標)、流動構造など、衛星観測、運航船による観測、海流の流動モデル、生態系モデル、海洋物理・生態系モデルなどを通して得られる海洋環境のデータを説明変数として、運航船の魚群探知機で得られた魚群・動物プランクトンの空間分布と漁業船のトラッキングデータを基にした魚群データ漁場データを目的変数として教師あり学習を行い、新たに提供された海洋環境・空間分布データを逐次教師データとして取り込み、モデルをアップデートしていくことにより、1日単位の魚群・動物プランクトン分布を可視化できるようにする。本プロジェクトでは、水産研究・教育機構が毎年魚群探知機による空間分布データを採取している水産資源対象種から何種か選択し、それぞれの漁獲時期、漁獲海域における1日単位の魚群・動物プランクトンの空間分布の可視化を実現することを想定している。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 松村 優作・佐藤 寛通
採択金額: 2,736,000
2023年度未踏IT

Capabilityを主軸とするマイクロカーネル

近年IoTやクラウドの普及が進み、分散コンピューティングの重要性が高まっている。IoT機器が社会のインフラとして機能するようになってきた一方、セキュリティ対策が不十分であることが多く、サイバー攻撃の踏み台にされることがしばしばある。これはIoT機器内部のユーザに対して必要以上の権限を与えてしまうことが原因の一つであり、Linuxではアクセスコントロールリスト(ACL)を利用して細かく権限を分けることで対処している。しかしACLではユーザ単位でアクセス制御をすることから、「Confused Deputy Problem」(混乱した使節の問題)と呼ばれるセキュリティホールを生む問題となっている。このような問題を緩和するアクセス制御の一つに「Capability-based security」がある。Capabilityとはあるリソースとそのリソースへのアクセス権をまとめた概念であり、Capabilityを経由してのみ、そのリソースへアクセスできるようにするものである。Capability-based securityを採用したOSはいくつか存在するが、チップ制御用であったり、リアルタイムOSであったりと、Linuxを置き換えるようなものではない。 本プロジェクトではCapabilityによるアクセス制御を中心としたセキュリティ重視の汎用OSを開発する。ターゲットとするアーキテクチャはRISC-Vである。本OS上で表現されるCapabilityには次の特徴がある。 本OSは最小権限の原則に則り、可能な限りカーネルの機能を減らすためにマイクロカーネル方式で実装する。カーネルが提供する機能は次の通りとする。 カーネルが提供する機能を利用するためには、対応するCapabilityを所有している必要がある。 本プロジェクトでは実用的なOSを目指すため、カーネル本体以外にも次のユーザプロセス(サーバ)を開発する。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 今村 翔太
採択金額: 2,736,000
2024年度未踏アドバンスト

盆栽のデジタルツイン化と樹形美の科学

空前の盆栽ブームである。今や COOL JAPAN 代表の一つでもある盆栽—BONSAI—は、その神秘的で荘厳な魅力から世界中の人々を魅了し、日本国内の見事な盆栽は海外へ向けて非常に高値で取引されている。日本貿易振興機構に依れば盆栽輸出額は2016 年で既に 80 億円を突破しており、市場規模は現在も急拡大の最中にある。 一方、日本国内においては、盆栽はご年配の方の趣味とのイメージが未だ強く、後継者不足による技術衰退も懸念されている。提案者らはこのような背景を受け、「より多くの人が、より身近に、より盆栽を愉しむ」為の開発にこれまで挑戦してきた。初期プロジェクトでは、盆栽特有の複雑な水やり管理を、IoTを用いて見える化・自動化を試み、さらに三次元再構成技術を用いた3D成長記録システムの開発により盆栽界に新しい愉しみ方・可能性を提案してきた。 そして今後は、この3D盆栽データを用いて更に魅力的なプロジェクトを始動する。本プロジェクトでは、「日本が世界に誇る盆栽文化の保存・継承と、新時代の盆栽文化の提案」を目的に、以下2つに取り組む。

PM: 漆原 茂クリエータ: 内海 忍・小山 賢晋・丈野 仁寿・進 聡一郎・石丸 大晟・岡田 憲・松岡 伸龍
採択金額: 15,040,000
2024年度未踏アドバンスト

生成AI型3Dプリント製造システムの開発

本プロジェクトでは、生成AIによる設計自動化と3Dプリントによる製造自動化を掛け合わせた革新的なモノづくりシステムの構築を目指す。 背景には、近年3Dプリントなどのデジタルファブリケーション技術が発展し、世界的に産業利用され始めていることが挙げられる。 こうしたモノづくりは、従来型の大量の部品を組み立て、製品を生み出すパラダイムから、3Dデータが製品にほぼ直結し、製造を行うという可能性と革新性を秘めている。 それに加え、生成AI技術によってこのような製造のための3Dデータを自在に作成できれば、製品レベルの品質のモノづくりに、多くの人が関わることができるサービスが可能となる。 そこで本プロジェクトでは、生成AIを活用した製造のための3Dデータ生成を行う技術基盤(アルゴリズム・ユーザーインターフェース・システム)を確立する。そして、製品レベルのクオリティを生み出すケイパビリティをすでに持つ複数の組織を巻き込むことで、具体的なモノを実例として生み出し、事業化を行う。 本プロジェクト期間中には、こうした事業を行うための技術基盤とプラットフォーム基盤を確立し、具体的なモノを実例として作成することで、複数企業とプロジェクトをスタートさせる座組の構築までを行うことを目標とする。

PM: 漆原 茂クリエータ: 大日方 伸・堀川 淳一郎
採択金額: 15,040,000
2024年度未踏アドバンスト

冷熱蓄熱を活用した大型冷凍機の自動制御システムの開発

冷凍冷蔵倉庫業界において、近年の電気料金高騰による運用コスト増加は大きな課題であり、クリーンエネルギーへの移行要請も相まって、事業者の経営を圧迫している。さらに、冷凍機の温度設定には統一された制御方法が存在せず、そのことも倉庫の運用にかかる電気料金を上昇させる一因となっている。また、倉庫の老朽化も深刻な課題であり、資金不足から建て替えが進んでいない事業者は、今後廃業を余儀なくされる可能性がある。 このような状況にもかかわらず、日本の「食」を支える冷凍・冷蔵食品の市場は今後も大きく成長し続けていくと見込まれており、日本全国で倉庫の需要の逼迫が起こることが予想されている。 今、2050年にカーボンニュートラルを達成するという目標実現に向けて、再生可能エネルギーを活用したCO2排出量の少ない電力システムの構築が求められている。しかし、太陽光や風力といった自然エネルギーは、需要とは無関係に日照や風況の変化により発電量が変動するため、電力需給バランスに大きな影響を与えかねない。実際、西日本を中心に太陽光発電の余剰電力が昼間に大量発生し、出力制御を行わなければならない事態となっている。このような実例から、再生可能エネルギーの余剰電力を有効活用する動きが加速している。 そこで本プロジェクトでは、冷熱エネルギーを蓄熱しながら冷凍機を自動で最適に制御するシステムを開発する。具体的には、JEPX(日本卸電力取引所)の電力市場価格や倉庫の翌日の入庫量・出庫量・外気温などの情報により、電力市場価格が安価な時間帯に冷凍機を稼働させ、高価な時間帯に稼働を止める市場連動型デマンドレスポンスを行うことで、倉庫の運用にかかる電気料金が最も低くなるような最適制御を可能にする。冷凍冷蔵倉庫をいわば「蓄電池」として機能させることで、電気料金の削減にとどまらず、再生可能エネルギーの余剰電力を有効活用することができ、カーボンニュートラルな電力システムの実現につながると考える。 未踏事業期間中では、「倉庫管理者が、翌日の倉庫の入庫量・出庫量の情報を入力するだけで、自動で翌日の冷凍機の最適な制御アルゴリズムを計算し、制御を行うシステム」のプロトタイプの完成を目指す。

PM: 漆原 茂クリエータ: 水野 竣介・和泉 陽大・穐山 公宏・秦 珠実
採択金額: 15,040,000
2024年度未踏アドバンスト

文章をマンガに自動変換するAIサービスの開発

日本が誇るマンガは、その独自性と質の高さで世界中のファンを魅了してきた。しかし、漫画家になるためのハードルは依然として非常に高い。優れた作画技術、巧みなストーリーテリング、繊細な演出力、そしてマーケティング力が必要とされる上に、膨大な時間と努力、下積みが求められる。これらすべてを兼ね備えた漫画家はごくわずかである。 この状況を変え、誰もが自分のアイデアをマンガという形で表現できる世界の実現を目指す。その鍵となるのが、最先端の生成AI技術である。本プロジェクトでは、Large Language Models (LLM)と画像生成AIの融合により、文章から高品質なマンガを自動生成できるクラウドサービスを開発する。このサービスは、マンガ制作において不足しがちな作画・コマ構成スキルを自動生成でサポートし、文章を書けるすべての人にマンガ創作の可能性を広げる。 事業化としては、マンガの自動生成をクラウドサービスとして提供し、生成されたマンガの出版・販売も視野に入れる。これにより、新たな漫画家の育成や漫画業界の労働環境の改善に貢献し、AIとの共創を前提とした次世代のマンガ制作フローを提案する。

PM: 梶田 真実クリエータ: 比留間 大地
採択金額: 7,520,000
2024年度未踏アドバンスト

多軸3Dプリンタ用汎用スライサーの開発

3軸の3Dプリンタが広く用いられてきており、その3Dプリンタを動作させるためにはGコードを作るCAM(Computer Aided Manufacturing)としてのソフトウェア(以下、スライサー)が必要である。また、3軸の3Dプリンタでは、樹脂が下方に垂れることを防止するために、サポート材・インフィルを本来の造形物に追加して印刷する必要がある。 ここで、マシニングセンタのような、3軸を超える軸数を有する多軸の3Dプリンタが存在している。多軸の3Dプリンタは、5軸・6軸などを有しており、造形物に対して様々な姿勢にノズルまたは造形ベッドを制御することができるため、ノズルの下方に樹脂がない場合でも、あたかもノズルの下方に樹脂があるかのように樹脂を積層させることできる。そのため、サポート材・インフィルの追加印刷を不要とした造形が可能となる。また、3軸の3Dプリンタでは、Z(高さ)を変えながら水平面を積層していくため、層間剥離や、等高線がでてしまう問題がある。これらの問題も、多軸の3Dプリンタで造形することで解決することができる。 このように多軸の3Dプリンタには利点があるものの広まってはいない。その理由として、多軸の3Dプリンタ(鶏)が非常に高価で入手することができないことと、安価な多軸のスライサー(卵)が存在しないことがある。ともに安価なものが存在しないことによって、「鶏が先か、卵が先か」という問題が発生している。 私は、数十万~数百万円で購入できる安価な多軸の3Dプリンタを製作している。加えて、多軸の3Dプリンタ用の汎用スライサーを開発し、OSS化することで、多軸の3Dプリンタおよび多軸のスライサーともに安価で入手できるようにする。これにより、多軸の3Dプリンタに関する用途開発などの研究が始まり、多軸の3Dプリンタ利用が広がり始めると考えている。将来的には、多軸の3Dプリンタが今の3軸の3Dプリンタのように普及し、現在不可能な造形が可能になっていくと考えている。その実現に向け、本プロジェクトでは多軸3Dプリンタ用スライサーを開発する。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 反保 紀昭
採択金額: 7,520,000
2024年度未踏アドバンスト

高精度な物理モデルベースのフライトコントローラプラットフォームの開発

ドローンは現在、世界で利用が拡大しており、産業用途での機体の大型化、複雑化(可動部を有するものや、対称形状でないもの)が進んでいる。ドローン機体開発において、飛行制御や飛行ミッションの内容のプログラミングには、フライトコントローラプラットフォーム(例: DJI SDK、ArduPilot、PX4)が用いられる。後者二つはオープンソースソフトウェアであり、ドローンプログラミングの民主化に貢献してきた。 しかしながら、これら既存のプラットフォームは、複雑な機体形状の登録や、大型化した機体の重心計算といった産業/研究サイドのユーザが求める機能に対応していない。ユーザは他に選択肢がないことから、機会/経済的損失を被っているという課題がある。 そこで、我々は日本初のオープンソースソフトウェアのフライトコントローラプラットフォームを開発し、誰でも簡単に機体設計から実飛行まで行えるようにすることをビジョンとしている。汎用の小型コンピュータを用いることでアクセスを向上し、現実に即した物理シミュレーション機能による事前の機体性能チェックで、実機試験段階での機会/経済的損失を減らすことを価値提供する。 これまで2023年度未踏IT人材発掘・育成事業においてプロトタイプを作成し、複雑な機体形状に対応した飛行制御器とシミュレーション機能の動作を確認した。本事業期間中には、既存プラットフォームでは難しいとされる1)モータの回転数フィードバック制御、2)推進系の異常検知と制御系の切替、3)風外乱やモデル化誤差への適応制御を、新たに機能として組み込むことを目的とする。また産業用途にドローンを利用する顧客をターゲットに、プロダクトを導入した機体開発を行い、産業用途に求められる信頼性と拡張性のニーズ検証を行う。ビジネスモデルにおいては、競合調査やクラウドファンディング・SNSでの周知、パイロットユーザの獲得により、オープンソースでの収益性/拡張性を検証する。 全世界に通用し、フライトコントローラプラットフォームのデファクトスタンダードとなるように、事業化を目標とする。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 土肥 正義・植竹 空
採択金額: 15,040,000
2024年度未踏アドバンスト

シイタケほ場のデジタルツインに基づいた栽培管理支援システムの開発

本プロジェクトでは、ほ場の3Dモデル(デジタルツイン)を基に菌床シイタケの栽培管理を支援するシステムを開発することで、日本のシイタケ栽培における勘と経験をデータ化し、シイタケ産業全体での品質・生産効率の向上及び新規就農の促進を目指す。 健康志向の高まりなどを背景にキノコ市場は拡大しており、2021年時点で8兆円のキノコ市場はCAGR 9.7%で更に成長する見込みである。また最近はヴィーガンなど新しい食のスタイルの広がりも受け、シイタケの需要は拡大を続けている。世界的な需要の拡大の中で、高品質な日本産のシイタケが注目され始めている。 シイタケの主要な栽培方法である菌床栽培では、安定した収量を得るために高度な栽培技術が必要とされる。栽培管理の支援のため、これまでICT技術を活用したスマート農業では環境センシングが主に行われてきた。しかしながら、実際の栽培技術の核となるのは作物の形態情報を用いた状態把握である。 本プロジェクトでは、自動走行するロボット台車を用いてほ場の3Dモデルを構築し、3Dモデルの解析に基づき、芽かきや菌床ブロックの位置変えなどの栽培管理作業を支援するシステムの開発を目指す。栽培管理上必要となる判断をAIによって支援することで、シイタケ農家の収量向上を実現する。

PM: 原田 達也クリエータ: 石塚 達也・佐々木 佑介・松井 誠泰
採択金額: 12,032,000
2024年度未踏アドバンスト

組合せ最適化とBIMを用いた省エネ建築設計支援サービスの開発

本プロジェクトでは、省エネ建築設計支援サービスの開発・社会実装に取り組み、環境に配慮した建築物の普及、及び設計の効率化に寄与することを目的とする。 2030年度以降に新築される建築物は、年間エネルギー消費量の収支ゼロを目指したZEB(Net Zero Energy Building)基準の水準が求められている。ZEB実現には大幅な省エネルギーが求められるため、設計時に先進的な設備や建材を特定の制約条件の中で適切に組み合わせる必要がある。 建築設計では環境性能だけでなく複数の領域を統合的に検討する必要があるため、コンピュータ上に作成した3次元の形状情報に加え、属性情報などを併せ持つ建物情報モデルを構築するBIM(Building Information Modeling)の活用が、先進的な設計手法として注目されている。 2025年からの小規模建築への省エネ基準適合義務化により、評価対応に迫られる設計事業者の増加が見込まれる。また、建設業界全体の生産性向上のために、BIMの普及は一層推進されている。 以上の差し迫る社会課題に先駆けて、本プロジェクトでは量子アニーリング技術等の組合せ最適化技術を用いて省エネルギー観点で最適な建築仕様を効率的に取得し、その仕様の組合せからBIMを構築することができる設計支援サービスを開発する。 設計事業者に対する無償提供によるPoCからプロダクトを改善していくことで、未踏アドバンスト事業期間内で本サービスが、ZEB化実現に向けた業務支援(建築設計、その他設計、コンサルティング等)に採用されることを目標とする。

PM: 原田 達也クリエータ: 豊田 鈴・森上 寛菜・豊田 章一郎・石田 崇人
採択金額: 15,040,000
2024年度未踏アドバンスト

効果的フィードバックを実現する口腔ケア教育システムの開発

口腔内細菌と内科疾患、また口腔機能と老化・認知症との関連性が明らかになっており、口腔環境が高齢者の健康に密接に関わっていることが知られている。これらを予防するためには歯磨きをはじめとする「口腔ケア」が重要であるが、医療知識や経験の乏しい介護者だけでは、質の高い口腔ケアの提供が難しく、歯科医療従事者との関わりが必要不可欠である。しかし、歯科衛生士を中心とする歯科医療従事者の人材不足により、リスク管理が必要な要介護高齢者への口腔ケアは介護者のスキルに依存しており、90%以上の高齢者の口腔はケア不十分な状態で放置されている。 今後も高齢者の増加と医療ニーズの高まりが予想され、歯科衛生士を含む歯科医療従事者だけでは対応は困難となる可能性がある。この医療環境と社会動態の変化に対応するためには、介護を担う介護従事者も最低限の医療技能を習得し、社会やコミュニティレベルで高齢者を支援する体制を構築すること、また歯科医療従事者不足に対応するシステムの構築と、歯科医療従事者が持続可能な方法で活躍できるような働き方改革が急務である。 そこで、本プロジェクトは介護者が口腔ケア技能を習得するための教育システムの開発を行う。具体的には、高度なセンシング機能が搭載された歯科模型・歯ブラシシステムによって効果的なフィードバック機能の実現を目指す。また、遠隔での歯科医療従事者が介護従事者に対する指導を可能とするシステムを構築することによって、数が限られた歯科医療従事者でも多くの介護従事者に知見を広げることを可能とする。さらに、本プロジェクトにおける実証実験を通して得られた大量の指導データを分析し、全自動トレーナーを実現することで、広域的な口腔ケア教育システムの普及を目指した事業立案と推進を行う。

PM: 原田 達也クリエータ: 丸山 朋華・関根 史人・奥田 知華
採択金額: 15,040,000
2024年度未踏アドバンスト

術具トラッキングを用いた医療手技の動作評価システムの開発

従来、医療手技の訓練は実地訓練にて行われ、手技を習得するまでに長時間を要していた。手技技術の高度化により手技習得に要する時間が更に長時間化する一方、医師の長時間労働問題により労働時間規制が開始されたため、訓練にかけられる時間は更に減少すると予想される。つまり、これからの医療手技訓練は、労働時間が制限され訓練機会が少ない中で、高度な手技技術を効率的に習得するための新たな訓練手法が求められているのである。 手技技術を効率的に向上させるには、客観的な評価に基づいた、構造化されたフィードバックが重要とされる。しかし、現在の手技評価手法の多くは、評価者である指導医が主観に基づいて評価するしかないため客観性に欠けており、指導医の時間的負担も大きい。また、評価項目は手技全体に対しての評価に留まり、手技における個々の動作についての詳細な評価項目はないため、個々の動作の具体的な問題点や改善法を修練医に提示することは困難である。近年、手技における個々の動作をより詳細に、客観的に評価する評価手法の研究が進められている。しかし、この手法も、指導医が修練医の手技を確認して採点する必要があるため評価に長時間を要し、修練医の個々の動作を全て評価することは難しい。 本プロジェクトでは、術具のトラッキングデータを基に、手技を個々の動作の評価項目に基づいて評価することにより、客観性が高く、指導医の時間的負担が少ない手技の動作評価システムを開発することを目指す。これにより、指導医からの指導機会が減少するなかでも修練医が客観的評価を得て、自身の手技を改善させることができる社会の実現を目指す。

PM: 平野 豊クリエータ: 永代 友理・崔 正行
採択金額: 6,744,500
2024年度未踏アドバンスト

農家ごとに学習可能な農作物選別システムの開発

現在、日本国内では地方で若年層の人口が減少しており、農業の働き手不足の問題が生じている。十数回にわたる農家への訪問を経て、国内の農業サイクルの中で省人化のボトルネックになっているのが、作物の選別工程であると判明した。年間約3,300億円が国内の作物選別工程に費やされており、これは日本の農業経営費の1割に相当する。その中でも、品質選別工程の自動化は全く進んでいない。既存のAI選別機は、大規模な設備投資を要する上に、選別基準が一律化されており、農家単位の選別基準の変動や多様な作物品種へ対応できない。さらに、農協施設のサービス利用には、選別だけでなく梱包や販路決定までを農協に任せる必要があり、価格決定権担保のために利用しない農家も多い。 これらの問題点を解決するため、本プロジェクトでは、農作物の品質選別を行うAIモデルを作成し、個人農家が導入できる自動選別システムを開発する。小型な外装かつシンプルな操作性にすることで、農家側の経済面・デジタル面での導入障壁を下げ、パソコンを触ったことがない高齢農家にも導入できるようにする。国内農業で最も人手がかかっている品質選別工程を省人化することで、地方人口流出の下での農業生産の維持に貢献する。 未踏アドバンスト事業期間に、我々は選別向けAIソフトウェア及びアプリケーションを組み込んだ初号機を設計/製造し、提携農家へのテスト販売を目指す。その後は、ビジネスアドバイザーと相談しながら要素技術の特許化を進めつつ、個人農家や農業法人への販売に向けた量産体制に移る。将来的には加工食品や自動車部品、ICデバイスなどの他業界での選別業務へ応用し、事業体としてのカバー範囲を広げていく予定である。

PM: 平野 豊クリエータ: 水谷 航悠・平田 裕也・樋口 雄紀・杉山 詩歩・杉山 月渚
採択金額: 15,040,000
2024年度未踏アドバンスト

様々な環境に導入可能な重さ計測プラットフォームの実現

重さとは、時間、長さに並び、この世界において重要な物理量である。この物理量はモノの量を示すものであり、製造や商取引といった経済活動を支えてきた。そのため、古来より天秤やバネばかりといった重さを計測する装置があり、現代では、電気的に重さを計る技術が開発されてきた。 これまで我々は重さ計測技術の開発に取り組み、型成形可能な素材を重さ計測センサにできる新たな技術を開発した。この技術により、棚や床自体を重さ計測センサにでき、省スペースな重さ計測が可能となる。また、薄型のセンサを製造でき、後から取り付けて計測することも可能となる。さらに、素材自体には配線が無いため完全防水・防塵を実現でき、重さ計測センサを過酷な環境に置くことが可能である。この技術を活用することで、我々は様々な環境に導入可能な重さ計測プラットフォームの実現を目指す。 重さ計測プラットフォームは、モノや人の数を常に重量で把握することを可能にする。また、このプラットフォームは、倉庫などの設備にコンパクトに組み込むことができ、水回りが多い飲食店、屋外の荷捌き場、工場の過酷な環境への導入が可能である。このため、様々な環境下でスペースを最大限に活用しながら、常にモノの数量を把握する必要がある在庫管理業務への活用が期待できる。 我々は未踏アドバンスト事業期間中に、「独自の重さ計測技術を活用した様々な環境に導入可能な計測デバイス」と「計測したデータを集約・表示・解析可能なクラウドシステム」で構成されるプラットフォームを開発する。そして、このプラットフォームを活用し在庫管理システムを構築し、実証実験等を通じて構築したシステムの改善を行い、事業化に取り組む。

PM: 平野 豊クリエータ: 皆川 達也・永瀬 拓也・田上 大智
採択金額: 15,040,000
2024年度未踏アドバンスト

ゲーミフィケーションを活用した内視鏡トレーニングシステムの開発

本プロジェクトでは、「いつでも」「どこでも」「簡単に」「楽しく」内視鏡処置のシミュレーションを行えるように、ゲーミフィケーションを活用した携帯型の内視鏡トレーニングシステムを実現する。まず、モバイル機器上で動作する内視鏡のシミュレーションアプリケーションと、内視鏡操作部の操作感を再現したコントローラーを開発する。内視鏡医の協力のもとでシステムの精度・ユーザーインターフェースを調整し、ユーザーへのフィードバック機能を実現する。 内視鏡は疾患の早期発見・治療を可能にする先進的な低侵襲医療技術であり、日本の内視鏡分野は世界の先駆的な地位にある。実際、日本企業の軟性内視鏡機器は世界シェア9割を有し、多くの革新的な診療技術が日本の内視鏡医により生み出されてきた。そのような中、世界の先進国・新興国では、高齢化の促進による内視鏡治療の需要が更に高まっており、高度な技術を持つ内視鏡医の不足が加速している。一方、内視鏡医育成のための内視鏡治療トレーニングは、高額な機材や面倒な準備なしに実施することはできない。 そのため現状では、実際の診療以外での継続的なトレーニングは実現困難であり、医師が満足にトレーニングを積めていない状態で診療が行われることも多く、結果として患者への不利益や、医師以外の医療従事者の負担増に繋がる可能性がある。 ここで、我々が開発を目指すトレーニングシステムが実用化されれば、スマートフォンやパソコンを持つ世界中の内視鏡医のトレーニング機会を増やし、内視鏡技術の底上げとPatient Experienceの向上が可能となる。さらに本システムは、医療従事者ではない一般のユーザーにも幅広く普及するような、「シリアスゲーム」の要素を持つゲームとしても応用でき、ユーザーは本システムをプレーすることで内視鏡治療・低侵襲治療への親近感を高め、内視鏡治療を選択するハードルを下げることができる。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 鷲見 直・牛丸 智晶・御手洗 陽紀・伊藤 守
採択金額: 15,021,200
2024年度未踏アドバンスト

組織の主体的な価値創出を促進する社内提案システムの開発

近年、AIをはじめとする急速な技術革新により、多くの業務の自動化が進む一方で、人間には機械に代替できない価値や能力がこれまで以上に求められるようになった。このような変化は企業経営にも影響を与えており、人材を単なる労働力ではなく、重要な資本と捉え、従業員一人ひとりの強みや経験を活かすことで、企業の競争力や価値向上につなげようとする「人的資本経営」が世界的な潮流となっている。 人的資本経営の実現において、各従業員が持つ多様な視点を活かすことは、組織独自の価値や競争優位性を育むために重要であり、その方法の一つとして、従業員のアイデアや提案を事業や社内環境の改善などに継続的に取り入れていくことは有効である。実際に、従業員のアイデアや提案を取り入れる制度を導入し、新規事業や社内制度などが生まれている企業も存在する。しかし、そのような従業員のアイデアから新たな取組みが継続的に生まれる組織環境を構築するには、単に従業員からアイデアを集めるだけではなく、活用や実現に導くための様々な仕組みの整備が不可欠である。そういった仕組みを整備し、機能させることは容易ではない。 こうした課題を解決するため、本プロジェクトでは、自然言語処理を用いた機能等によって、アイデアの収集から活用までの一連のプロセスを包括的に支援する、社内提案プラットフォームシステムを開発し、企業向けにWebアプリケーションとして提供する。また、実証実験等の価値検証を通じて得たフィードバックを元に改善を繰り返し行い、収益化を図る。 本プロジェクトを通して、あらゆる組織における主体的な価値創出を促進し、誰もが個性を発揮して協働できる創造的な社会の実現を目指す。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 野崎 智弘・三橋 優希
採択金額: 15,040,000
2024年度未踏アドバンスト

スポーツの指導体験と視聴体験が向上するAI駆動型映像システム

世界トップ50のスポーツクラブの平均評価額は約5,600億円に達し、5年前の2,950億円から87%増加している。一方、グラスルーツ(本プロジェクトでは社会人・育成年代を含めたセミプロ以下のクラブと定義)のスポーツクラブは、放映権やスポンサー契約へのアクセスが限られているため、同様の収益を上げることは難しい状況にある。しかし、日本の高校部活動やアメリカの大学スポーツに見られる熱狂的な人気は、競技レベルに関わらずスポーツに大きな市場機会があることを示唆している。本プロジェクトでは、そのようなグラスルーツレベルに焦点を当て、スポーツクラブ、現場の選手・スタッフ、視聴者コミュニティをターゲットユーザーとする。 グラスルーツのスポーツクラブの主な提供価値は、①指導体験:選手の上達を目的とした監督・コーチによる指導と、②視聴体験:ファンや保護者を含む視聴者コミュニティへのコンテンツ提供である。選手には上達したいという明確なニーズがあり、指導力が高いクラブに選手が集まる。視聴者コミュニティは、選手の成長や活躍を見守り、応援することに喜びを感じている。特に選手の家族や友人といった身近な関係者は、その思いがより一層強い。しかしながら、未だに指導者の経験に基づくアナログな指導による成長機会の損失や、映像を撮影していても編集や共有作業が負担となり、活用できていないクラブが多く存在する。 そこで我々は、スポーツ映像の撮影・編集・共有を自動化し、指導向け・視聴向けにスポーツ映像をコンテンツ化するAI駆動型映像システムを開発する。本製品の機能はパーソナライズされたズーム機能と、個人レベルのハイライト機能で構成される。これにより、グラスルーツのスポーツクラブの提供価値を根本的に向上することで収益性を高めるだけではなく、より良い指導と熱狂的な視聴者コミュニティの形成がスポーツのレベルに関わらず実現可能になる。 グラスルーツのサッカーをエントリーマーケットとして、将来的には他のスポーツへの展開と欧米のプロスポーツ市場への参入見据えて、世界で戦う企業の創出を目指す。

PM: 三木 寛文クリエータ: スコット アトム・内田 郁真・セレスタ プラギャン
採択金額: 15,040,000
2024年度未踏アドバンスト

HSIライブラリ構築と森林火災未然防止システムの開発

気候変動の影響により、世界の森林では深刻な火災が発生している。火災の被害は、頻度や激しさが増すことで将来的に悪化する可能性が高い。本プロジェクトでは、大規模森林火災の未然防止システムを構築するため、ハイパースペクトル(HS)センサを用いた画像処理システムの開発を行う。最終的には、開発したシステムを衛星に搭載し打ち上げることを想定しているが、未踏事業の期間では、HSイメージング(HSI)ライブラリの構築とそれを活用したリアルタイム処理を開発する。 衛星画像による地球観測には、主に、光学センサと合成開口レーダ(SAR)のようなマイクロ波センサが用いられる。光学センサには、単一バンド、マルチスペクトル、HSの三つがある。HS画像は、観測衛星の打ち上げ計画が進んでいるにも拘らず、バンドの選択や計算コストの大きさから解析が難しく利活用が進んでいない。しかし、波長分解能が高く、空間・時間的情報も多く含むHS画像では、これまで困難だった観測も可能となり、植物の判別や水位の推定など様々な活用方法が考えられる。そこで、本プロジェクトではHS画像処理のためのライブラリを作成する。 ライブラリは、汎用型ライブラリと、特定のユースケースに焦点を当てた特化型ライブラリの2種類を想定している。汎用型ライブラリでは、バンド選択の最適化、フォーマットの異なる画像やプラットフォーム間での連携、可視化や処理の高速化などをサポートすることで、HS画像の利活用推進に寄与する。さらに、解析のハードルを下げることで、宇宙事業でのIT促進やルールメイキングにおけるプレゼンス向上も期待される。リアルタイム処理では、汎用型ライブラリを元に、火災検知に特化したライブラリを作成し、衛星搭載に向けたPoCとしてドローンでの実装を試みる。目標は、SARでは難しい大規模火災の予兆を検知することである。また、火災検知のような用途特化での実装にライブラリを活用し、当事者としてライブラリの改良を重ねることで、火災検知以外のリモートセンシングタスクにも汎用的なHS画像処理ライブラリの作成につなげていきたい。

PM: 三木 寛文クリエータ: 竹田 悠哉・李 在原・髙橋 淳一郎
採択金額: 15,040,000
2024年度未踏アドバンスト

AIを活用した統合型採用システムの開発

日本では企業と人材(従業員)とのミスマッチによる早期離職率の上昇・従業員のエンゲージメントの低下が深刻な問題となっている。これらの問題を未然に防ぐため、企業は採用活動に真摯に向き合い、マッチする人材(入社後に活躍する人材)を獲得することが求められている。その一方で、現在の日本では企業がマッチする人材を効率的に収集・選考するための採用活動の仕組みが整っていない。 現在の日本における企業の採用活動の問題点は、大きく分けて二つある。一つ目は、採用活動に膨大なコストが掛かる点である。採用活動の各工程の多くは人力で行われており、そのコストは膨大なものとなる。そのため、企業が十分なリソースを採用活動に割り当てられないのが現状である。二つ目の問題は、採用活動の各工程が分断されている点である。採用活動は多くの細かな工程で構成されており、現在は各工程が異なるプラットフォーム上で実行されている。そのため、工程をまたいだ応募者情報の有効活用・採用全体を改善するサイクル構築ができず、企業と人材のマッチ度の予測を困難にしている。 これらの問題点を解決するため、本プロジェクトではAIを活用した統合型採用システムの開発を目指す。このシステムの最大の特徴は、採用の各工程でボトルネックになっている作業を、AIで自動化する点である。各企業が採用にかけるリソースを大幅に削減し、リソース不足による採用の質の低下を防ぐことができる。また二つ目の特徴は、本システムは採用の全工程を同一プラットフォーム上で管理することができる点である。採用の各工程をつなぎ合わせたプラットフォームを実現することで、企業と人材のマッチ度を従来方式よりも高精度で予測するためのAI学習の仕組みを作り上げる。 本プロジェクトは採用活動の各工程におけるミクロな課題をAIによるサポートシステムによって解決し、採用活動全体におけるマクロな課題を統合的プラットフォームの構築によって解決する。企業がよりマッチする人材を多く獲得するのを支援することで、日本企業の国際的な競争力・従業員のエンゲージメントの向上、ひいては日本社会全体の活性化を達成できると、私達は確信している。

PM: 三木 寛文クリエータ: 山室 公平・松本 拓樹・奈良 亮耶・大山 慶悟・野田 栞穂・宮沢 宙
採択金額: 15,040,000
2024年度未踏アドバンスト

日本アニメの世界観を崩さない吹き替え制作AIプラットフォーム

日本のアニメは世界的な人気を集めているが、日本アニメ産業の国際市場における成長は鈍化傾向にある。日本のアニメが国際的な市場で競争力を保つためには、日本語以外の言語で吹替版を製作し、世界中の人々へ作品を届けることが非常に重要となるが、資金・期間の課題、翻訳や海外声優の演技の質の課題など、数多の課題を抱えている。 そこで我々は、「日本アニメの世界観を崩さない吹き替え制作AIプラットフォーム」の開発を行う。AIが人間の作業を援助、代替することで、低コストで吹替を製作できるようにし、資金の課題を解決する。また、我々のプロダクトを用いて一人で吹替製作できるようになることで、外部との連携の必要性を格段に減らし、完成までのフローを大幅に削減できるため、期間の課題を解決する。さらに、日本の声優の声質や演技を模倣した音声の自動生成や、文脈・性格などのメタな情報を活かした翻訳、翻訳者が少ないマイナー言語の市場への進出など、これまで人間の力だけでは成し得なかった表現をもAIの力で実現させる。 開発は二つの軸を中心として進める。一つ目は、翻訳AI・音声合成AI等、各種AIの研究開発である。既存の最先端技術を活かすだけではなく、キャラクターの特性に合わせた翻訳や、元となる音声の特徴を崩さないAI開発を押し進める。二つ目は、これらのAIを組み込んだプロダクトの開発である。ユーザが全工程を一元的に管理でき、また真に使いやすいUI/UXと、必要十分な機能を兼ね備えたプロダクトを、想定顧客にヒアリングを行いながら開発する。 我々のプロダクトをもとに、低コストに・短期間で・高品質な日本アニメの吹替版を提供できるようにすることで、国際市場における日本アニメ産業の発展に貢献することを目指す。

PM: 村上 明子クリエータ: 大嶽 匡俊・加藤 大地・廣岡 聖司・金澤 爽太郎・恩田 健太郎
採択金額: 15,040,000
2024年度未踏IT

スムーズな多言語交流を実現するためのARによる会話支援システム

本プロジェクトでは、ユーザが話している文章の続きの候補をARグラスで視界内に表示することで、スムーズな多言語間の会話を支援するシステムを開発する。 既存の様々な翻訳アプリケーションは、ユーザの代わりに会話をしようとするものが多い。例えば、翻訳した文章をお互いに見せ合ったり、合成音声でユーザの代わりに発話をしたりするものがある。これらのアプリケーションは、異言語間で正確な情報交換ができるという利点がある一方、ユーザ自身が発話をする機会を奪ってしまっている。さらに、情報交換に遅延が生じるため、会話と比較して情報量が少なく、密度も低いコミュニケーションとなる。 そこで本プロジェクトではユーザの会話を邪魔することなくサポートするシステムを開発する。本システムでは、ユーザが会話をしている途中で単語や文法が思いつかず詰まってしまった際に、次に続く文章を言語モデルによって予測し、それをモバイルアプリケーションと連動したARグラスに表示することで、ユーザが会話を継続できるようにするサポートをする。 本システムはARグラスを用いて視界上に会話のヒントを表示することにより、ユーザは相手の顔を見ながら会話することができ、コミュニケーションを妨げることがないという点で、従来の翻訳アプリケーションよりも優れている。また、ユーザが話した文章の続きを生成するため、アプリケーションに全てを委ねるのではなく、ユーザ自身の語学力を活かした会話ができることも本システムの利点である。さらに、会話が途切れた際に、次に何を言うべきかが画面に表示されるので、特定の言語でのコミュニケーションに自信がないユーザでも、安心してその言語を使用して話すことが可能になると期待される。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 青原 光・伊藤 朝陽
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

機械学習を用いた語源的英単語分割手法の開発

本プロジェクトでは、機械学習を用いて任意の英単語を語源的に意味のある最小単位に分割する方法を開発する。具体的には英語の先祖の段階での変化を英単語の分解に表面的に対応づけることである。例えば“cohere”はラテン語のレベルでは、“con-”と“haereo”が結合して“cohaereo”になったという語源を踏まえて、英単語の“cohere”を“co-”と“here”に分割する、などである。これを実現するために、まず既存の大規模言語モデルをファインチューニングして、Webから収集した語源の文章から単語間の継承関係を取り出すようにし、収集した語源データを一つのグラフに統合する。次に英単語を入力として、その語源的な分割を返すニューラルネットワークモデルを開発する。この際、シーケンスデータの処理技術を用いて単語内の配置や前後の文字との関係の情報も含めるようモデル構造を研究する。 加えて、本方法で学習したモデルを使い、任意の英単語に対し、どの部分が何と同語源なのかをひと目で学習することができるアプリケーションを開発する。また、語源的分割を言語モデルに活用することも目指す。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 中澤 正樹
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

人工遺伝子回路設計のための統合開発環境

本プロジェクトでは、人工遺伝子回路の設計を画期的に効率化する統合開発環境(IDE)を構築する。「視覚的に遺伝子パーツを配置する人工遺伝子回路図の設計UI」「遺伝子回路動作シミュレータ」「DNA配列最適化モデル」を組み合わせた、人工遺伝子回路の設計を一気通貫して行うことができるプラットフォームを実現する。 人工遺伝子回路とは、制御工学的手法を応用して設計された、複雑に制御される生体高分子ネットワークのことである。人工遺伝子回路を生命体システムに外挿することによって、生命体の挙動をプログラミングできる。そのため、エンジニアリングされた「人工生命システム」の社会実装において、極めて重要な基盤技術となると期待されている。 しかし、現在の人工遺伝子回路設計のプロセスは非常に複雑である。設計者は複数のツールやデータベースを行き来しながらDNA配列を直接編集し、シミュレーションプログラムを記述する必要がある。このプロセスは効率的ではないため、生命科学の研究者が専門性を十分に発揮することを妨げている。 本プロジェクトで開発するIDEはそれらの障壁を全て取り除くことを目指す。本IDEによって、人工遺伝子回路のアイデアを即座にシミュレーションし、DNA配列をデザインするためのシームレスなパイプラインを提供することで、アイデアの具現化を加速させることが期待できる。本IDEは、計算機科学における機械語から高級言語への移行に匹敵するパラダイムシフトをもたらす可能性を秘めている。これにより、人工遺伝子回路を用いた「人工生命システム」設計の民主化、応用先の多様化に大きく貢献することが期待される。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 奥田 宗太・外尾 航季・須賀 幹太
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

ユーザとモノのネットワーク体験を創作するためのARシステム

本プロジェクトでは、生活空間内に存在するモノに着目して、ユーザが自由に創作できる「モノのエージェント」を作り出し、ユーザとエージェントによるネットワークを生活の中に組み込みためのARシステムを開発する。 本システムは、ユーザがシステム上でモノのエージェントを作成するところから始まる。システムがモノ(例えばマグカップやゴミ箱など)を認識した後に作られるエージェントは、AR空間上ではモノに目がついたような見た目で、特定のキャラクターを持つ。ユーザはそのキャラクターを設定し、自分の世界観を反映することができる。作成されたエージェントは自然言語による会話とアイコンタクトを通してユーザとのインタラクションを行い、その内容は設定された性格によって決まる。また、エージェントを複数体作ることもできる。エージェントが複数体存在するとき、エージェントはユーザとのみならずエージェント同士でのインタラクションを勝手に行う。 本システムを実現するために、視覚的・聴覚的なAR、画像認識、生成エージェント、自然言語処理などの技術を使い、既存の機器の活用に加えて、ユーザへの聴覚提示と視覚提示を行うための専用デバイスと専用アプリケーションも開発する。 本システムにより、エージェントによってモノとのネットワークが正確に組み込まれた空間での新しい生活体験をユーザが楽しく作っていく世界を実現し、それを多くの人々に体感してもらうことで、新しい文化を生み出したい。さらに、いまだ日常的ではないXRデバイスを生活に落とし込むための方法論として、XRデバイスによって可能となる体験と日常体験の中間層を作り出すアプローチを提示したい。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 後藤 汰誓・大塚 敏郎・石山 遼
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

バーチャル空間における飛翔体験の構築

本プロジェクトでは、バーチャル空間で身体像を拡張し、自分自身の翼を用いてハンズフリーで空を飛ぶ感覚を提示するシステムを開発する。 人々は昔から空への憧れを抱いてきた。特に自分の力で空を飛びたいという欲求は強く、鳥人間コンテストなどの人力飛行機の大会に参加したり、ハンググライダーなどのスカイスポーツを楽しんだりする人々が多くいる。ハンググライダーや専用のハードウェアを用いたシステムにより、現実空間とバーチャル空間のいずれでも空を飛ぶ体験を得ることができるが、いずれの場合も自分自身に生えている翼を用いて空を飛び回る体験は実現できていない。 立位の姿勢で特定の部位の力みと背中への感覚提示を組み合わせることで、バーチャル空間内で身体像を拡張し、仮想翼を開閉する体験ができることがすでに分かっている。よって、複数部位の筋肉の動きと姿勢変化を統合させ、バーチャル空間内での翼の操作に反映させるシステムを構築することで、バーチャル空間内での飛翔感覚の提示ができると考えられる。そこで本プロジェクトでは、バーチャル空間で以下の機能を備えたプロダクトを開発する。 このプロダクトから、身体像の拡張を用いた新しいVRゲームなどのコンテンツが生まれることが期待される。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 谷澤 健太・甲斐 貴一郎・酒井 鴻
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

自分自身と気を交わすためのMRによる剣道稽古システムの開発

本プロジェクトでは日本が世界に誇る文化である剣道において、自身の試合中の「動作」と「気」を反映した3Dモデルを作成し、MR(Mixed Reality)を活用してそのモデルと剣を交えることができる、新しい稽古システムを開発する。本システムを用いて相手の視点から自分と向き合うことで、自分自身の「動作」と「気」を客観的に捉え、自身の成長に繋げることが可能になる。 「気」とは剣道の試合で有効打突の条件である「気剣体の一致」の要素の一つで、これまで情報技術的な再現は難しかった。本プロジェクトでは複合的な手段を検証しながら剣道におけるこの「気」の正体を探り、これまでの剣道を築いてきた文化背景を尊重しつつ、剣道にテクノロジーを融合させる。また、剣道は高齢になっても続けることができる生涯スポーツだが、日々の鍛錬による身体への負担は大きい。本プロジェクトで、骨折・腰痛を抱える者や高齢者が無理なく剣道を生涯続けられるような、身体にやさしい稽古システムを実現し、世界中のすべての剣士にMR剣道を通じた心身の成長の機会を提供したい。

PM: 岡 瑞起クリエータ: 古田 花恋
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

認知症当事者の意思決定支援のためのエージェントシステムの開発

本プロジェクトでは、アルツハイマー型認知症当事者(以降、「当事者」)の手段的日常生活動作(入浴準備、洗濯など)をサポートする対話型エージェントシステムを開発する。本システムの特徴は、対話エージェントによる傾聴とプロンプティング、支援者との自律的な連絡によるケアプラングラフの作成にある。 アルツハイマー型認知症の初期から中期の当事者は、身体機能が比較的保たれていることが多い。現場での支援では、傾聴と情報提供により活動のリズムを作ることが重要となるが、この手の自立支援には知識と時間・忍耐が必要であり、リソースの限られた高齢者福祉の現場や在宅環境では、生活全域に至るまでの十分な支援の提供は困難な状況にある。本システムでは、AIエージェントが過去の対話履歴をもとに、支援者と自律的に連絡をとりながら特定の場面に対応したケアマニュアルのグラフを作成する。対話時には、積極的な傾聴により、現状がどの場面のどの状態に対応するかを推論する。そして、ケアマニュアルと状況に応じてAIエージェントがプランを作成し、対話を通じて当事者にプロンプティングすることで、困惑や不安の緩和を図る。副次的効果として、支援者による定型的で繰り返しの多い介入の一部を代替し、当事者の自立性を尊重することで、依存や過干渉に陥りにくい関係バランスへのナッジが期待される。 現代においては、非タスク指向型対話エージェントが人間との対話で人間らしい応答ができるようになった。このような時代の中で本プロジェクトは、エージェントが当事者の個人情報に直接アクセスすることと、当事者がエージェントを直接活用することを同時に可能にするために、双方の橋渡しをする試みであるといえる。本プロジェクトを通じて、「認知症は個性の一部に過ぎない」という新たな認知症世界の実現を目指す。

PM: 岡 瑞起クリエータ: 宮下 拓磨
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

ニューラル言語モデルによる個人最適な日本語入力システムの開発

本プロジェクトでは、ニューラル言語モデルによる高度な個人最適化機能を有する日本語入力システムを開発する。既存の日本語入力システムは「変換精度」「個人最適化」「予測入力」の3点で不十分である。これらをニューラル言語モデルと「文脈」のデータベースによって解決することを提案する。 文脈データベースは本システムにおける個人最適化のために構築する。本システムは、趣味・職業・年齢などのプロフィールや、ユーザ自身が過去に執筆した文書、さらに画面録画や、ブラウザ拡張によって記録されたユーザが読んだテキストを、日本語入力システムのためにユーザの同意に基づく範囲で取得・整理して保持する。これらの情報により、ユーザの広義の「文脈」をシステムが理解できるようにする。 本システムではニューラル言語モデルを前提とした、かな漢字変換アルゴリズムを採用する。これらのモデルによって高度な意味理解に基づく正確な変換を実現する。さらに、ニューラル言語モデルのファインチューニングによってシステムの振る舞いを柔軟に変更できるようにする。これを文脈データベースと組み合わせることで、高度な個人最適化を実現する。ファインチューニングは処理に時間がかかるプロセスであるため、ルールベースの個人最適化手法を組み合わせるなどの工夫により、現実的に運用可能なシステムを構築する。日本語入力は高速かつ軽量な処理が重要なため、量子化や投機的デコーディングを活用し、高速かつ省メモリなシステムを実現する。 最後に、ニューラル言語モデルを基盤とする本システムで、数文単位の予測入力の実現を目指す。従来のシステムでは、ユーザの文脈の理解の欠如のため、期待される候補の提案が難しかったが、文脈データベースに基づいた個人最適化により、十分に有用な候補の提案ができると期待している。

PM: 岡 瑞起クリエータ: 三輪 敬太・高橋 直希
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

機械学習に基づく中山間地域向け農業用散布ドローン群

地理的条件が悪く斜面地が多い「中山間地域」に特化したロボット開発は、技術的困難を伴うため、未だ実用化に及んでいない。一方、受粉や農薬散布だけを目的としたロボットシステムにはいくつかの前例が存在する。しかしこれらはいずれも自己位置推定と環境地図作成に関して高度に整備された屋内環境(ハウス栽培)を想定しており、屋外の不整地環境においては適用が難しい。また、ほとんどの既存事例は大型ドローンを想定しており、棚を利用した果樹園において、棚の下側から散布を行う作業にとっては最適ではない。 上記を踏まえ本プロジェクトでは、中山間地域での使用を想定した、高度な農作業を代替する小型自律ドローン群システムを開発する。本プロジェクトの目標は、不整地環境における果樹の棚下からの人手による受粉作業を、小型自律ドローン群によって代替することである。 本システムでは、「モーションキャプチャ等を用いずに、カメラ画像のみから自己位置推定を行う手法(Visual Inertial Odometry)」「機械学習に基づき花の姿勢を認識する画像認識技術」「草木や果樹棚、他ドローンとの衝突を避けながらドローンを群制御する制御プランナ」等により、未知の不整地環境でも作業を可能にする。さらに、棚下に潜り込んで、葉面や花弁に対する直接的な散布を行うことができる機体も開発する。 本システムが農業従事者にとって低コストで逐次投入可能な農業支援ロボットとなることで、高齢化が進んでいる一次産業を自動化によって支援し、中山間地域や果樹園等の不整地における農業の生産性と持続可能性を大きく向上させることが期待できる。

PM: 落合 陽一クリエータ: 有田 朋樹・和田 唯我
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

粘菌ファブリケーションのための粘菌の自動培養システム

粘菌は環境や刺激に応じて広がり方が変化する特性を持ち、HCI研究や芸術表現にとって可能性のあるマテリアルである。一方、粘菌の培養を初心者が手軽に行うことは難しい。温度や湿度を一定に保ったり、餌を適度に与えたりするだけでなく、培地を定期的に交換する必要があるためである。 そこで本プロジェクトでは、餌入りの寒天をプリントし続けることで粘菌を常に動かし続ける自動培養装置を開発する。さらに本装置を拡張することで、ただ粘菌を培養するだけでなく、自動培養装置上で粘菌を使った作品作りや簡易的な実験ができる粘菌ファブリケーションの基盤構築を行う。粘菌をデジタルファブリケーションの系に組み込んだ「粘菌ファブリケーション」という新たな分野を開拓することで、粘菌をセンサ・アクチュエータとして活用し、インタラクション研究やメディアアート、バイオアート分野で活用されるマテリアル化を目指す。また、粘菌を培養し続け、共生を続けた先に粘菌文化が醸成されることを期待し、そのための基盤を作る。この基盤構築によって、粘菌を愛でる、楽しむ、食べる、着るといった、人間の生活の一部に粘菌が組み込まれた新たな体験と感動を生み出すことを目指す。

PM: 落合 陽一クリエータ: 迫田 海斗
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

Capability-Based Microkernelによるセキュアなユーザレベルメモリ管理システム

本プロジェクトでは、Object-Capability ModelによるCapability-Based Microkernelを基盤とし、POSIX APIを備えるOSと、それを用いたユーザレベルメモリ管理システムを開発する。 通常のOSでは、カーネル内で固定されたメモリ割り当て方針を持つため、ユースケースに最適化したメモリ割り当ては困難である。この問題を、Capability-Basedなマイクロカーネルによるユーザへのメモリ管理の委譲によって解決する。Object-Capability Modelでは、オブジェクトに対する操作を偽造不可能かつ譲渡可能な操作権限トークンであるCapabilityによって行う。そのため、必要な権限のみを持つ細粒度なアクセス制御が可能となる。本カーネルでは抽象メモリCapabilityと、それをカーネルオブジェクトCapability、もしくは物理メモリフレームCapabilityに変換可能な機構を備える。これにより、カーネルのメタデータをユーザに漏洩させることなく、実用OSと同等のSLAB Memory AllocationやBuddy Systemといったメモリ管理をユーザレベルで実現する。その結果、柔軟性と安定性を付加し、ソフトウェアの互換性を保ちつつも最適化されたメモリ管理を実現する。 本プロジェクトは、現代の仮想化技術における1レベルのセキュリティに加え、より高レベルなメモリ安全性を保証する。

PM: 曾川 景介クリエータ: 伊組 烈火
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

ソースコードとGUIで編集可能なシナリオテスト作成ツールの開発

本プロジェクトでは、GUIおよびソースコードでの編集が可能な、APIシナリオテストの作成ツールを開発する。 APIサーバにおいて、複数のエンドポイントを跨いだ操作を行った時の動作を確認する「シナリオテスト」というテストがある。本ツールは、GUIでテストシナリオを簡単かつ高速に構築できるアプリケーションである。テストシナリオがGUIで表示されるため、テストの一覧性が高まり、シナリオの抜け・漏れを簡単に確認できる他、複数のシナリオをツリー状で表示することで、より視認性を高めることが可能になる。さらに、リアルタイムにYAML形式のシナリオファイルに変換し、このファイルをGitで管理することで、継続的インテグレーション(CI)環境上で実行することも可能になる。書き出されるYAML形式のファイルは、既存のOSSのテストランナーツールと互換性を持たせることで、OSSツールのエコシステムを最大限活かすこともできる。 加えて、生成AIを利用したシナリオテストの自動生成をサポートする。生成AIによって提案されたテストシナリオをGUIで簡単に確認・編集できるようにすることで、シナリオテストの作成において生成AIの力を最大限に引き出すことが期待できる。

PM: 曾川 景介クリエータ: 池奥 裕太
採択金額: 14,400,000
2024年度未踏IT

ジェネラティブVJソフトウェアの開発を容易にするシステム

本プロジェクトでは、ジェネラティブVJソフトウェアを容易に開発できるシステムを開発する。 VJとはVisual Jockeyの略であり、音楽イベント等でリアルタイムに行われる映像演出である。その中でもジェネラティブVJとは、リアルタイムCG技術を用いたVJであり、Unity, TouchDesigner, p5.jsなどのツールを用いて開発したビジュアル生成ソフトウェアを用いて行われる。通常のVJは事前に生成済みのプリレンダ映像を組み合わせて行われるのに対して、ジェネラティブVJはリアルタイムに映像が生成されるため、事前に生成済みの映像では出来ない表現ができるという特徴がある。しかしジェネラティブVJは、先述の開発環境を使いこなして自らジェネラティブVJ専用のソフトウェアを開発する必要がある上に、リアルタイムCGに関する知識も必要になるため、難易度が高い。 そこで本プロジェクトでは、Webブラウザで3D画像処理を行えるAPIであるWebGPUを活用し、プログラマ向けにジェネラティブ表現に特化したライブラリと、ノンプログラマ向けにそのライブラリを使うためのWebアプリケーションを開発する。このWebアプリケーションは、ノードベースのGUIを採用することでプログラムの処理の工程の視覚化を容易にする。また本ライブラリを利用するJavaScriptコードの文法に近しい使用感と、構築したノードの構造をJavaScriptコードに変換する機能を提供することで、ノンプログラマが本Webアプリケーションを通してジェネラティブVJを構築することきっかけに、プログラミングに興味を持つようになる効果も期待できる。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 椎名 貫太
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

ゼロトラストネットワークアクセスの導入を容易にするクラウド型プロキシの開発

新型コロナウイルスの蔓延により、我が国においても情報通信技術を活用した在宅勤務、いわゆるテレワークを導入する企業が大幅に増加した。総務省公表の令和5年版の情報通信白書によると、テレワークを導入している民間企業は50%を超えている。このような情勢の中、従来のネットワークセキュリティモデルである境界型防御の見直しが必要になりつつある。これまではファイアウォールやUTMを介すなど、イントラネットとインターネットを分けるアプローチが主流であった。この場合、イントラネット内部であれば自動的に信頼されてしまうため、テレワークが普及した今日、これはセキュリティリスクにつながる恐れがある。 境界型防御の代替として、境界内外問わずアクセスする人間を厳格に検証するゼロトラストネットワークアクセス(Zero Trust Network Access, ZTNA)が効果的であるとされている。本プロジェクトでは、Microsoft Windowsをはじめとする各種オペレーティングシステムに対応した、ゼロトラストネットワークアクセスを簡単に導入することが可能なクラウド型プロキシを開発する。本システムにより、ZTNAをより普及させ、もって我が国のセキュリティ強化、安全なテレワーク環境構築に寄与することを目標とする。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 小林 麟太郎
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

トラックボール型3Dマウスの開発

本プロジェクトでは、3D CADなどの3Dモデリングソフトウェアにおける直感的な視点移動を可能にする3Dマウスを開発する。 近年3Dモデリングは様々なユーザに広く親しまれており、それを補助するデバイスも多数存在する。中でも3Dマウスは、3Dモデリングソフトウェア上での回転や移動などの複数の視点操作を同時に行える片手デバイスであり、それを使用することで効率的な作業が可能となる。しかし3Dマウスには、操作が直感的ではないという問題点がある。例えば、3Dモデリングソフトウェア上で「オブジェクトの角度」を操作することを考える。現状の3Dマウスはジョイスティック型であるため、3Dマウスが操作するのは「オブジェクトの角速度」である。そのため、ユーザは入力時に「入力角度」と「入力時間」を意識しなければならないばかりか、入力量が複数回変換されて実際の操作量となるため、使いづらさを生じている。 本プロジェクトでは、この直感性の不足という問題を解決するため、トラックボール型入力装置を用いた新たな3Dマウスを開発する。トラックボールによる、地球儀のように3軸とも360回転する機構を開発することで、ユーザに直感的な視点操作を提供する。本デバイスの開発によって、3Dモデリングソフトウェアユーザがより直感的でより効率的に作業を進めることができる環境の実現を目指す。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 西村 陽向・髙𣘺 伊織・成瀬 宏亮
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

ゼロデイ攻撃の対象となるIoT機器を早期特定するシステムの開発

近年、IoT(Internet of Things)機器の急速な普及に伴い、IoT機器に存在するセキュリティ上の欠陥である脆弱性を狙ったサイバー攻撃やマルウェア活動による被害が深刻化している。こうしたIoT機器を狙う攻撃の中には、脆弱性の修正プログラムや緩和策が製品ベンダーから公開される前に攻撃が行われるケースが存在する。このような攻撃のことをゼロデイ攻撃といい、有効な対策手段が存在しない無防備な状態の機器が狙われることになるため非常に大きな脅威となりうる。 これらのサイバー攻撃の動向を把握し適切な対応へと役立てるため、ダークネット上に届く通信パケットの監視やハニーポットによる観測が行われている。これらの観測網において観測された攻撃が公知の脆弱性を狙ったものである場合、インターネット上で公開されている脆弱性情報やエクスプロイトコードを調査することにより観測した攻撃の対象機器及び脆弱性の特定を行うことが可能である。一方で観測した攻撃が未知の脆弱性を狙ったもの(ゼロデイ攻撃)である場合、前述の手法では観測した攻撃がどの機器を狙ったものであるかを特定することが困難であるという問題が存在する。 そこで本プロジェクトでは、事前にIoT機器のファームウェアの大規模収集・解析を行い、ゼロデイ攻撃の観測時にファームウェアの解析結果と攻撃情報を照合することにより、観測したゼロデイ攻撃のターゲットとなっている機器を早期に特定するシステムを開発する。本システムを利用しゼロデイ攻撃の観測ログから攻撃のターゲットとなっている機器を早期に特定することにより、実際に悪用されている脅威度の高いゼロデイ脆弱性についての情報を当該製品のベンダーへ速やかに共有することが可能になり、脆弱性の早期修正、並びにサイバー攻撃による被害の拡大防止に寄与することが期待できる。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 九鬼 琉
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

スマートフォンを活用して理想のデジタルペットを作成するためのプラットフォーム

人々に癒しを与えるロボットとしてデジタルペットが存在するが、現代のデジタルペットは動物らしさや癒しを与えることを追求して高価なものが多く、入手が難しい。安価なデジタルペットではバーチャル空間上のみで育成するものがほとんどで、手触りなどの感触から得られる癒し体験が薄い。また、生命を持つペットであってもデジタルペットであっても、今までは与えられた選択肢から選ぶことしかできなかった。それだけでは、各個人の最も癒されると感じるペットが選択肢の中には存在しないこともある。 これらの課題から本プロジェクトでは、各個人が理想とする最も癒される存在を簡単に作り出すことのできる世の中を実現するために、低価格でかつ様々な動物や架空の生物をデジタルペットとして作成するためのプラットフォーム(以降「デジタルペットプラットフォーム」と呼称する)を開発する。 本プラットフォームでは、外観を担うロボットと、それに差し込むスマートフォン、およびスマートフォンにインストールするアプリケーションの構成によって、ユーザが触れ合うことができる実体を持ったデジタルペットを実現する。スマートフォンをロボットの一部とすることで、ロボット本体に組み込むアクチュエータ数を抑えることができ、低価格化が実現できる。さらに、本プラットフォームでは飼育対象をアプリケーション内で制御されるロボットの「魂」とするため、ロボットの外観に縛られることがない。よって、着せ替えパーツの組み合わせを変えることで、自分だけのオリジナルデジタルペットを簡単に作り出すことが可能となる。 本プラットフォームによって、各個人が理想とする最も癒される存在を簡単に作り出すことができる世の中を実現することが期待できる。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 今野 佑星・川尻 千遥・吉田 海翔
採択金額: 2,880,000
2024年度未踏IT

RISC-Vの拡張を仮想化できるハイパーバイザの開発

本プロジェクトでは、RISC-Vの拡張を仮想化し、容易な管理を可能にするハイパーバイザを開発する。 RISC-Vでは、モジュール化された仕様である「拡張」が次々に策定されているが、ハードウェアの実装は全くと言ってよいほどされておらず、大量の拡張が策定されるだけされて利用されない宙吊りの状態が続いている。仕様は命令セットに関するもの(ISA)から、命令セットに変更は加えないが RISC-V のエコシステムに関連するハードウェアの機能やソフトウェア割り込み、ABI などを規定するもの(Non-ISA)まで、多種多様であるが、独自命令の実装や CSRs(Control and Status Registers)の追加などの変更が中心で、ハイパーバイザによる改変によって再現可能なものも多い。 そこで本プロジェクトでは、RISC-Vの拡張をハイパーバイザ上のモジュールで再現し、ソフトウェア上で管理可能なシステムを開発する。ユーザは使いたいRISC-Vの拡張に対応したモジュールを本ハイパーバイザにインストールすることで、新しい拡張の環境を手元のハードウェアに導入することができる。RISC-Vの拡張とそれを仮想化する本ハイパーバイザ上のモジュールは1対1で対応するため、ユーザにとっても開発者にとっても管理・配布が容易になる。ユーザはより簡単にRISC-Vの拡張を使うことができ、開発者はユーザが増えることによりフィードバックを得て、仕様の策定やツールチェインの実装を進めることができる。本システムのユーザが増え、ソフトウェアツールチェインが充実すれば、需要に応じてハードウェアに拡張を実装する開発者の登場も期待できる。 本システムの狙いは既存の宙吊りになっている拡張の活用を支援し、エコシステムの開発を加速させることと、システムに追加する機能をRISC-Vの仕様と結びつけて記述できるハイパーバイザモジュールを実現することの2つである。本プロジェクトは、単にRISC-Vのシステムにハイパーバイザで仕様や機能を追加可能にするだけでなく、続々と策定されるRISC-Vの仕様とエコシステムのあり方に一石を投じるものである。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 髙名 典雅
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏アドバンスト

認知症向け仮想ヘルパーの開発と自立支援プラットフォームの創出

認知症大国の日本では予備軍を含む認知症人口は約1,100万人にも及ぶと推計される。認知症人口が増える一方で介護従事者の人口は減少しており、従来の施設介護による十分な受け入れが難しくなってきた。突如始まった在宅介護では、経験不足に起因するトラブルにより当事者と家族の双方が不利益を被ることも少なくない。いま、在宅環境での新たな認知症ケアが求められている。この課題を解決するために、我々は「認知症向け仮想ヘルパーと自立支援プラットフォーム」を開発する。ここでの仮想ヘルパーとは、LLMエージェントと遠隔にいる人間が分業して支援を行うものであり、この手法により来たるAIエージェント時代を見据えた価値提供を実現する。軽度から中等度の認知症の中でも、特に徘徊や当惑に代表される行動・心理症状(BPSD)を有するケースに焦点を当てて、開発および実証実験を実施する。特にBPSDは、本人の不安を理解したうえで適切なコミュニケーションを取ることにより緩和されうることが知られており、LLMによる支援が効果を発揮する可能性が高い。開発は以下の2つの軸に沿って実施される予定である。1つ目は遠隔支援システムおよび家族との連絡機能を含む自立支援プラットフォームの開発である。そして2つ目は対話エージェントの認知症向け最適化とデザインである。技術的課題として、高齢者音声の認識精度の向上、認知負荷を考慮した発話調整、当事者の真意を汲み取るための積極的な傾聴の実現に取り組む。また法的・倫理的なリスクの解消に努めることで、事業基盤を固める。これらの取り組みを通じて、温かみのある認知症ケアの世界を実現することを目指す。

PM: 石黒 浩クリエータ: 宮下 拓磨・後藤 汰誓・本田 純也・山本 賢人
採択金額: 16,000,000
2025年度未踏アドバンスト

クラウド連携型 地図SDK統合プラットフォームの開発

地図アプリケーション開発の効率化とコスト削減を目的に、クラウド連携型地図SDK統合プラットフォームの開発を行う。複数の主要地図SDKを抽象化・統合し、共通APIで操作可能にすることで、開発者が「地図上にデータを表示・活用する」という本質的な作業に集中できる環境を提供する。 開発者は特定のSDKの仕様や煩雑な処理から解放され、本来注力すべき「地図上にデータを表示し、活用する」という本質的な作業に集中ができるようになる。コード構文の共通化に伴うライブラリの統一化、再利用性の向上、モバイルアプリへの地図機能の容易な組み込み、Android/iOS間の実装差異の吸収、高度なGIS機能やリアルタイム位置情報共有、オフライン対応などを可能にすることを目指す。 地図データの表示とデータの管理を分離することで、開発者とデータの運用者の責務を分離し、非エンジニアや中小事業者・自治体でもデータを活用できる仕組みを実現する。まさに「地図アプリ開発のためのKubernetes」として機能し、地図SDK選定の自由度向上と開発負担の軽減を図る。 最終的には、技術的に詳しくない人でも手軽に地図システムを導入できる環境を提供し、地図開発の民主化を推進して、誰もが最適な地図技術を活用できる世界の実現を目指す。MVP(Minimum Viable Product)開発とクローズドαテストを経て、商業化の可能性を探る計画である。

PM: 梶田 真実クリエータ: 大森 高明・勝又 雅史
採択金額: 16,000,000
2025年度未踏アドバンスト

電話での特殊詐欺被害を防ぐシステムの開発

本プロジェクトでは、通話音声をクラウド上でAIによって解析し、特殊詐欺の疑いがある通話を検知した際に利用者に音声や光による警告を行うことで、リアルタイムに特殊詐欺被害を防止できるシステムを搭載した、特殊詐欺の検知・警告デバイスを開発する。 日本国内の特殊詐欺の被害総額はこれまでに700億円を超えており、抑止対策は喫緊の課題となっている。中でも被害の約7割が高齢者を対象とした固定電話経由の特殊詐欺であり、依然として固定電話が主要な特殊詐欺の手段となっている実態がある。従来のサービスでは、通話内容の検知は通話終了後に行われるため、リアルタイムでの被害の防止は困難であり、また、専用の回線や機種、及び、設置工事が必要であり、導入コストの高さもハードルとなっている。 そこで本プロジェクトでは、固定電話に後付け可能で、ハードウェアコストを抑えた、実用性と経済性を両立したデバイスの開発を目指す。 具体的には、従来エッジ側で実行していた音声データの解析処理をクラウド上で実行することで、最低限のマシン実装を実現し、家庭の固定電話に簡単に取り付けが可能で、安価なデバイスを開発する。 また、近年のスマートフォンを通じた特殊詐欺被害の拡大に対応するため、固定電話向けに構築した詐欺検知アルゴリズムを基盤として、スマートフォン向けアプリケーションの開発も同時に行う。 本プロジェクトにより、AI技術を活用して特殊詐欺被害を未然に防止し、誰もが安心して通話ができる社会環境の構築に寄与することが期待できる。プロジェクトの初期段階では、被害件数・金額ともに多い固定電話領域に注力し、段階的にスマートフォンを用いた通話などへ対応範囲を拡大することで、全世代を対象とした包括的な特殊詐欺対策の実現を目指す。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 西谷 颯哲・平良 文哉・尾島 睦月・緒方 宏太朗
採択金額: 16,000,000
2025年度未踏アドバンスト

エージェント協調のための次世代ワークフローエンジンの開発

本プロジェクトでは、LLM(大規模言語モデル)やAIエージェント技術の発展を背景に、従来型のバッチ処理中心の業務自動化から、より柔軟で対話的な業務プロセスへの転換を支援する次世代ワークフローエンジンの開発する。現在広く用いられているワークフローエンジンは堅牢な運用機能を備える一方で、LLMとの連携やHuman-in-the-loop(HITL)対応、動的な意思決定プロセスとの統合に課題を抱える。また、近年はエージェント特化型のツールも登場しているが、スケジューリングやエラー処理、監査など運用面で成熟しておらず、企業利用には適さない。本プロジェクトでは、HITLによる人間の承認や分岐指示を自然言語でシームレスに組み込める機構を備え、エージェントの動的判断、LLM活用、ETL処理を一体化した高機能なワークフローオーケストレーションエンジンを実現する。開発後は、実業務に即したシナリオによる大規模な検証を行い、OSSとして公開することで広く普及を図る。クラウドベースのサービス提供形態も視野に入れ、エンタープライズ領域での実用化を推進する。

PM: 首藤 一幸クリエータ: 油井 誠・渡辺 博之
採択金額: 16,000,000
2025年度未踏アドバンスト

バリスタのサンプリング業務を高度化するコーヒー豆解析システムの開発

本プロジェクトでは、バリスタの主観的な感覚に依存していた従来のコーヒー豆の評価手法に代わり、香りセンサーによる客観的な空気質データを活用して、豆の品質を定量的に判定するシステムを開発する。 コーヒー豆は、収穫年や焙煎度によって風味が大きく変化するため、従来の評価手法では一貫した品質管理が難しいという課題がある。また、豆の品質をバリスタ自身が評価するサンプリングと呼ばれる工程では、大量の豆を対象に主観的評価が行われており、比較の精度や再現性にも限界がある。 そこで、本プロジェクトでは香りセンサーによって取得できる空気質の多次元データを活用し、客観的かつ再現性の高い品質評価を実現する。さらに、開発した技術をもとに事業者と連携して実証実験を行い、香り情報を顧客に提示し、好みの香りを探求できるインターフェースのプロトタイプ開発を進める。 加えて、一般消費者の香りに対する評価を収集する場として、実店舗型の体験カフェを運営し、香りに対する印象評価ラベル付きデータを収集する。そしてこのデータを製品開発やマーケティング戦略へ活用し、香りによる飲食体験の向上を目指す。

PM: 原田 達也クリエータ: 岡田 拓真・長谷川 泰斗・中川 飛来・鈴木 広大
採択金額: 16,000,000
2025年度未踏アドバンスト

心不全予防に向けた在宅胸水判定システムの構築

超高齢社会で増加する心不全患者の再入院は、医療費の増大だけでなく、医療現場の逼迫の主因となっている。そのため、心不全の悪化予防に向けた対策は喫緊の課題である。“いつでも・どこでも・誰でも”自身の病態を定量的に把握したいという患者ニーズがあるにもかかわらず、心不全悪化の最重要サインである肺での体液貯留(胸水など)の診断は、レントゲン等の画像検査や植込み型デバイスによるインピーダンス測定に大きく依存している。このため、在宅での簡便な評価手段が不足しており、心不全患者の再入院率は依然として35%を超える。在宅での早期評価は、心不全悪化の早期診断と再入院抑制に非常に高い効果が期待される。本プロジェクトでは、体表からの多周波インピーダンス測定とAIを用いた予測システムにより肺での体液貯留を高精度に推定する、患者自身が使用可能なモニタリングシステムを開発する。これにより、日常的なセルフチェックを実現し、心不全悪化を事前に察知することで、将来的に再入院率の30〜50%低減を目指し、安心した日常生活を実現する。

PM: 原田 達也クリエータ: 野瀬 大補・松田 裕貴・松井 智一・猪口 翔一朗・安本 慶一
採択金額: 15,500,000
2025年度未踏アドバンスト

大型六脚ロボットによる適応的行動獲得システムの開発

近年、ロボットの行動をシミュレータ上の強化学習で獲得し、実機に適用するSim2Realが成功を収めている。この成功の要因の一つは、シミュレーションと実機の誤差が少ないQDD(Quasi-Direct Drive)ブラシレスDCモータである。QDDモータは、リアルタイムで正確なトルク値を取得できる利点がある。しかし、QDDモータは発展途上であり高トルク化が難しく、Sim2Realで成功しているロボットも4脚や2脚が中心である。そのため、可搬重量に限界があり、機体を大型化できないという課題があった。 本プロジェクトはこの課題を克服するため、QDDモータ技術と6脚ロボットを融合させる。6脚構造は自重を分散させることで可搬重量を増大させる。 さらに、従来のモータではマニピュレータと脚を兼用する構造は故障しやすく困難であったが、QDDモータは堅牢なため6脚構造において6本の脚のうち2本をアームとして兼用する構造が可能である。これは4脚に2本のアームを搭載する場合と比較し、歩行時にもマニピュレータを有効活用できる点で効率的である。 そしてそのような安定かつ多様な動作が可能なロボットの行動を、シミュレータ上での強化学習により獲得する。 このアプローチにより、Sim2Realを応用した多脚ロボットの新たな可能性を切り開き、実世界での応用をさらに推進することを目指す。

PM: 平野 豊クリエータ: 大嶋 友香子・大嶋 悠司
採択金額: 16,000,000
2025年度未踏アドバンスト

プライバシーファーストな記憶支援アシスタントの開発

情報過多な現代社会において、個人が知識を効果的に管理するためのPKM(Personal Knowledge Management)ツールが注目されている。しかし、多くのツールは利用者の能動的な情報整理を前提とし、その負担は決して小さくない。AI技術を用いてこの負担を軽減する試みも存在するが、その多くはクラウドベースモデルに依存し、個人情報のデータ安全性に関する懸念が存在する。 本プロジェクトはこれらの課題に対し、「自律的な情報整理」と「リアルタイムな関連情報支援」を、「プライバシーファースト」の原則のもとで実現する。その主要な手段として、個人環境で完結する情報処理アーキテクチャを構想し、PKMツールに蓄積された情報を、利用者の思考の流れに沿って動的に再構成する新たな記憶支援システムの開発を目指す。 本プロジェクトの技術的挑戦は、限られた計算資源の下で、高精度な情報解析と即時的な応答性を両立させる点にある。そのために、個人環境で動作する軽量な情報解析モデルの性能を最大限に引き出す独自の情報構造化技術と、効率的なリアルタイム解析手法を開発する。これにより、利用者は意識的な検索行為から解放され、自身の知識が持つ潜在的価値を自然な形で引き出すことが可能となる。 最終的には、個人の知的生産性向上に留まらず、チームや組織における集合知の安全な活用基盤へと発展させ、情報活用の新たな形を社会に提案する。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 門脇 宗平
採択金額: 7,000,000
2025年度未踏アドバンスト

ポストメディア型SNS時代の自然体SNSと、一次データ基盤の構築によるAI活用

本プロジェクトは、友人同士の写真撮影・共有体験を軸に、自己演出から解放された自然体の魅力を引き出すSNSプラットフォームの構築と、そこから得られる一次画像データを活用した技術の研究を目的とする。 背景には、既存のSNSが“映える”コンテンツを前提とするメディア型に偏重し、ユーザーが「発信者」であることを求められる構造への疲弊がある。自撮りや加工が前提となる中で、日常の何気ない瞬間や他者との関係性に根ざした表現が失われつつある現状に対し、他者の視点から自分を再発見できる環境が求められている。 現在公開中のアプリでは、友人が撮影した写真・動画を顔認識によって本人のもとに自動送信し、受け取った本人が「投稿」「保存」「非公開」のいずれかをワンタップで選択可能な仕組みを備えている。撮影者側には保存権限が与えられず、あくまで“撮られた本人”にコンテンツの管理権限を集中させることで、プライバシーと発信の自由を両立している。また、撮影された写真は本人のプロフィールに集まり、友人の視点で構成される自然な魅力が可視化される新しいプロフィールの在り方を提示している。 本プロジェクト期間中には、アプリの継続的な改善に加え、蓄積される一次画像データを活用した本人識別技術を始めとするAI技術の応用を進める。これにより、広告収益に依存するメディア型のSNSを回避し、一次データの基盤を元にしたAI技術を価値とする事業モデルの構築を目指す。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 郡司 大輝・近藤 祐綺・佐々木 雄大
採択金額: 15,522,500
2025年度未踏アドバンスト

オンプレと連携可能な Wasm に特化したクラウドサービス

本プロジェクトではオンプレミス環境に存在するIoTデバイスやエッジデバイスと連携可能な、WebAssembly(Wasm)に特化した実行環境を提供するクラウドサービスを開発する。Wasmとはバイナリコード形式の一種であり、軽量さやOS・CPUアーキテクチャを跨いだポータビリティといった利点を持っている。これらの性質によりWasmは環境の差異を吸収する次世代のアプリケーションの配布形式として期待されているが、実際にそのようなシステムを実現する構成やユースケースは十分に確立していない。 本クラウドサービスは、ユーザーのオンプレ環境にあるIoT・エッジデバイスとクラウド上のインスタンスを統一的に管理し、クラウド・エッジ・IoTが連携するシステムの構築をサポートする。本クラウドでは、クラウド上でのWasmに特化したインスタンスと、ユーザのオンプレのデバイスを同一のクラスタに参加可能な構成をとる。具体的にはK3sという軽量なKubernetesディストリビューションを活用する。ユーザーは各環境のワークロードをシームレスに管理でき、それらがオーバーレイネットワークで接続され、容易にスケール可能となる。さらに、クラウド上のインスタンスとしては、我々が独自に開発したWasmに特化したOSを用いる。これは単一のWasmアプリケーションを動かすために必要最小限の機能のみを備えた軽量なOSとして設計している。そのため、仮想マシン上で隔離性を保ちつつ、ゲストOSによるオーバーヘッドの削減を実現する。以上のようにクラウドからエッジ・IoTまでをWebAssemblyとKubernetesで抽象化する基盤を創出する。

PM: 藤井 彰人クリエータ: 野崎 愛・上田 蒼一朗
採択金額: 16,000,000
2025年度未踏アドバンスト

AIチャットボットを安全にするAI駆動セキュリティ診断プラットフォーム

近年、大規模言語モデル(LLM)を活用したAIチャットシステムが急速に普及する一方、プロンプトインジェクションなどLLM固有の攻撃手法による新たなセキュリティリスクが顕在化している。たとえば、内部プロンプトの上書きによって機密情報が漏洩したり、生成されたテキストが意図せずコードとして実行されることでクロスサイトスクリプティングやリモートコード実行が発生する事例が報告されている。LLMは極めて多様かつ動的な表現を生成するため、従来のキーワード検知や静的なルールに基づく防御策では、こうした巧妙な攻撃を防ぎきれないのが実情である。 本プロジェクトでは、LLM特有の脆弱性を自動かつ継続的に診断するSaaS型プラットフォームを開発し、誰もが安全にAIチャットを活用できる社会の実現を目指す。このプラットフォームの核となるのは互いに連携する二つのAIである。第一の「攻撃AI」は攻撃者の思考パターンを模倣して多様な攻撃プロンプトを自動生成し、対象システムに対して継続的に疑似攻撃を仕掛ける。第二の「検証AI」は、その応答を多面的に解析し、未知の脅威を即座に検出するとともに、リスクを正確に分類・定量化する。 本プラットフォームは直感的な管理画面と自動レポーティング機能を備え、専門知識がなくても自社のAIチャットの脆弱性を容易に診断できる。将来的には、機密情報や社内データを外部に送信できないケースを想定し、オンプレミスで動作するローカルLLMへの対応も視野に入れる。これにより、高度なセキュリティ要件を持つ企業でも安心して利用できる包括的な脆弱性診断ソリューションとして展開していく。

PM: 村上 明子クリエータ: 辻󠄀 知希・杉山 優一
採択金額: 16,000,000
2025年度未踏IT

アニメやドラマの字幕を活用した外国語学習アプリケーション

本プロジェクトでは、外国語の言語学習者が、その学習対象の言語環境にいない状況でも効果的に言語能力を向上させることが可能なアプリケーションを開発する。具体的には動画共有サイトや動画配信サービスに掲載されている映画・ドラマ・アニメなどの動画とその字幕を活用して、学習者が活きた外国語環境に浸りながら、その言語のリスニング、リーディング、スピーキング、ライティングをバランスよく学べるアプリケーションを実現する。 開発する具体的な機能としては、以下のようなものを想定している。 本アプリケーションは、動画本体の保存・改編は行わないスマートフォンアプリケーションとして実現することを想定している。字幕情報の取得については、動画投稿サイトの公式APIや音声認識技術を用いることで、著作権やプラットフォームの利用規約を遵守できるようにする。また、保存される台詞や語句は、ユーザが個人学習を目的に選択した断片的な情報に限定し、原作品の台詞の全文再現や不特定多数の第三者への共有・公開はできない設計とする。 以上のように、本プロジェクトでは動画コンテンツの権利者や配信事業者の権益を侵害することのないよう、十分に配慮をした開発を行う。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 蒋 理嘉
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

生徒の興味に基づいた教材を動的に生成するプログラミング教育支援システムの開発

プログラミングを、ゲームや音楽などの「やりたいこと」や「好きなこと」をきっかけとして学習し始める人は多い。しかし、従来のプログラミング教育は、生徒の理解度や進捗に応じた適応学習システムや個別指導型スクールは存在するものの、生徒自身の興味関心を具体的な学習目標や実践的なプロジェクトとして反映する仕組みが十分ではなかった。結果として、生徒が自身の興味を学習に結びつけることが難しく、主体的な取り組みや意欲が低下している現状がある。 そこで本プロジェクトでは、日常に潜む生徒個々の「好き」や「興味」を教材やプロジェクトとして自動生成して生徒に提供する教育支援システムを開発する。具体的には以下のような機能を実装する。 これらにより、生徒が自らの興味を起点に、次の学習ステップを主体的に選択・実行できる環境を実現する。さらに本システムで、従来明確ではなかった「興味」と「プログラミング」の結びつきを可視化できるようにすることで、日常生活のさまざまな分野に対するDXや、多様な学習効果が生み出せるようになると期待する。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 品川 朝陽・柴田 登麻
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

スポーツ現場での怪我を予防するための筋骨格解析システムの開発

本プロジェクトでは、カメラ映像を活用した姿勢推定技術とGPS・加速度センサ・インソールセンサのデータを統合して筋骨格解析を行うことで、関節や筋肉の負荷をデータ化し、怪我予防やリハビリを支援するシステムを開発する。 近年、スポーツ現場においてフィジカルデータの活用が進んでいるが、関節や筋肉の深刻な怪我に対しては、従来のGPSや心拍数データでは十分な対応ができない。実際の動作中の負荷を定量化するには、映像を基にした解析が不可欠だが、既存の姿勢推定技術のみでは精度が不十分である。 そこで本プロジェクトでは、姿勢推定の結果を、現場導入のハードルが低い各種センサデータと統合することで補正し、より高精度な身体解析を可能にする。また、単なる姿勢推定にとどまらず、筋骨格シミュレーションを組み合わせることで、直感的に解釈しづらい姿勢データを負荷として可視化し、怪我リスクの評価や練習強度の調整の支援も可能にする。 本プロジェクトはスポーツ分野にとどまらず、医療やリハビリテーションの領域にも応用可能であり、幅広い社会的貢献が期待できる。

PM: 五十嵐 悠紀クリエータ: 福島 隆人・梶尾 直哉
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

議論を構造化するエージェント型ファシリテーションシステムの開発

本プロジェクトは、議論にありがちな「脱線しがち」「結論が出ない」「一部の人しか話さない」といった課題を解決するためのファシリテーションを支援するシステムを開発する。 多くの企業やチームでは自動文字起こしや要約Botを導入し始めているが、それらはリアルタイムに議論を最適な方向へ導くためのツールとしては不十分である。また、株式会社識学が2025年1月に行った20代から50代の会社員に対する調査によれば、会議に対し「意味がなかった」と感じた人が75%に上るなど、会議でのファシリテーションの不備や結論の曖昧さなどに対する不満が根強い状況がある。 そこで本プロジェクトでは、議論の進行そのものを支援するシステムを開発する。具体的には、「議論のリアルタイムなビジュアル構造化」機能で、飛び交う発言を即座に解析し、グラフィックレコーディングのような形式で、論点を直感的に理解できる“議論ビジュアル”として提示する。加えて「エージェントによるナレッジ参照と話題提案」機能で、AIエージェントが事前に登録・取得された背景情報を参照し、関連ドキュメントの提示、論点の抜け漏れのチェック、さらには議論を収束させる提案までを、その場にふさわしいキャラクターを通じて行うことで、最適なファシリテーションを支援する。これらの機能により、単なる議論の事後要約にとどまらず、議論“中”に適切な情報整理と意思決定を促進する。結果として、参加者全員の理解度と生産性を飛躍的に高め、「質・弾みの良い議論の場」を形成することを目指す。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 田中 魁
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

自己表現のためのモジュール型ソーシャルロボットの開発基盤の構築

本プロジェクトでは、自己表現やコミュニケーションを重視したモジュール型ソーシャルロボットを開発する。 ロボットや通信技術の発達により、テレプレゼンスという技術が登場した。これは遠隔地のロボットを操作し、自分が実際にはその場にいなくても、まるでその場にいるかのように行動できる技術である。現在のテレプレゼンスロボットは既製品が多く、ユーザが自分らしさを反映しにくい課題がある。一方、VRのようなアバター空間では自由な自己表現が可能である。そこで本プロジェクトでは、この豊かな自由度をテレプレゼンスロボットに導入するために、ディスプレイ、アクチュエータ、移動、センサの機能をもつ立方体状のモジュールを開発し、ユーザがこれらを組み合わせることで自由にロボットを設計できるようにする。ユーザはモジュールの組み立て、3Dモデルへの埋め込み、日用品への貼り付けという3つの方法で、自分の好みに合ったロボットを作成できる。また、人体にはない身体構造(尻尾など)の動きを再現するため、座標空間のマッピングに加えて周波数空間でのリズムベースの動作生成アルゴリズムを開発する。 本システムを、個人のアイデンティティを自由に表現できる新しいソーシャルロボットプラットフォームとして確立し、コミュニティによってモジュールが活発に提案される世界の実現を目指していく。

PM: 稲見 昌彦クリエータ: 横井 総太朗・四反田 直樹・松尾 健登
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

浸水予測用の都市インフラデータベースの機械学習による自動作成

近年、地球温暖化の影響で、線状降水帯による豪雨が大都市で頻発している。早稲田大学の関根らが開発したリアルタイム浸水予測システムS-uiPSは、降雨予測を入力値として約20分後の浸水深の予測を可能にしており、この予測を参考に企業や自治体は道路規制や地下空間の封鎖等の対策を立てることができる。この浸水予測は、道路や下水道などの都市インフラ情報で構成されるデータベースを基に、力学計算を行っている。力学計算は半永久的に不変な計算式だが、都市インフラデータベースは都市ごとに作成する必要があり、年月経過による都市改変が起こると作り直さなければならない。S-uiPSで行われる雨水の流出入計算に利用されるデータは、大規模で複雑なインフラ網であっても交差点を1計算単位としてデータベース化しておく必要があり、従来手法では東京都心部のデータベース作成に8か月もの時間を要していた。S-uiPSを全国の都市への適用するのであれば、その際のデータベース更新の工程の自動化が望まれる。 以上を踏まえ本プロジェクトでは、浸水予測計算に必要な道路の長さ・幅・標高データ等で構成されるデータベースを、地理情報システム(Geographic Information System, GIS)を基に、機械学習によって自動作成するシステムを開発する。本プロジェクトにより、浸水予測システムの適用範囲の拡大が容易になるのみならず、予測精度の向上も可能にする。 本プロジェクトは、S-uiPSの即時性と精度の向上を目的としている。具体的には「YOLOを活用した交差点の自動検出モデル」によって即時性と精度の向上を、「オープンデータの点群データを処理することによる詳細な標高データの取得」によって精度の向上を目指す。また、「交差点の自動検出からS-uiPS用のデータベース作成までのワークフローの最適化」によって広範なユーザ獲得を目指す。

PM: 岡 瑞起クリエータ: 竹内 望
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

「みんなで楽しくできる」XRリハビリテーション空間の構築

一般的にリハビリテーション(以降、リハビリ)のフェーズは、急性期、回復期、維持期へと移っていく。本プロジェクトでは、在宅にて行う維持期リハビリに着目した。維持期リハビリは回復した身体機能の維持を目的に行われ、これを怠ると回復した身体機能の低下や日常生活に支障が出ることがある。維持期リハビリの継続性が病後の生活の質に直結するが、そのリハビリの内容は単純動作を繰り返す自主リハビリである場合が多く、極めて退屈である。 そこで本プロジェクトでは、Extended Reality(XR)を活用した「みんなで楽しくできる」リハビリテーションソフトウェアを開発する。本ソフトウェアにより、患者はその身体機能に合わせたヘッドマウントディスプレイや3Dプロジェクタなどのデバイスを使い、XR空間でのリハビリができるようにする。加えて、ローカルエリアネットワークを介して患者それぞれのXRリハビリ空間を共有できるようにすることで、患者どうしや家族などのケアラーだけではなく、地域の人なども含めた誰もがそのリハビリに参加できるようにする。リハビリで行う退屈な単調動作は、ゲーミフィケーション化することで楽しく行えるものに置き換える。さらに、XR技術によって物理的制約を取り払うことで、現実空間でのリハビリを超えた、患者により適したリハビリを可能にする。 本ソフトウェアによって、従来の一人で行うつらいリハビリを、みんなで行う楽しいリハビリに置き換えた社会の実現を目指す。

PM: 岡 瑞起クリエータ: 平塚 心太朗
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

クリエイターの制作フローをトレースできる画像生成モデルの開発

近年、テキストや音声といった多様な入力情報から高品質な画像を生成できる画像生成モデル(例:Diffusion ModelやRectified Flow)に注目が集まっている。特にStable DiffusionやFluxのようにモデルがオープンソース化された事例では、学術分野のみならず一般ユーザを含む幅広いコミュニティで急速に応用が進んでいる。こうした先端技術を活用すれば、アニメ産業をはじめとする日本のクリエイティブ現場において、過酷な労働環境を改善できる可能性が高い。 しかしながら、アニメ制作やゲーム産業、広告業界などでは、構図を考え、前景を整え、背景を仕上げるというような段階的な制作フローが主流であるのに対し、多くの画像生成モデルは一括で1枚の画像を生成する、ランダム性の高い”ガチャ”のような手法となっており、これがクリエイターにとっての使いにくさを生じさせている。具体的には次のような問題が生じる。 これらの問題を解決するために、本プロジェクトではクリエイターの実制作プロセスに寄り添いつつ、最新の画像生成技術の強みを活かしたユーザフレンドリな画像生成モデルを開発する。本モデルにより、画像生成モデルの人間に対する説明可能性を高め、クリエイターが慣れ親しんだ段階的な作業手順に対応しながら、必要に応じて局所的な修正や要素の差し替えができるインタラクティブな操作を実現する。

PM: 岡 瑞起クリエータ: 守田 竜梧・永井 大地
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

芸術文化文脈の直感的編集・共有プラットフォーム

本プロジェクトでは、芸術文化の研究者やキュレーターが展示や文章を通じて特定の文脈を伝える際に、文脈情報の直感的編集や共有をサポートするプラットフォームを開発する。本プラットフォームによって、ユーザが調査した文献から作家や作品、概念(コンセプトや場所など)の関係性を抽出し、半構造化されたデータを直感的に編集・共有できる仕組みを提供する。これにより、芸術文化領域における関係性の整理や新たな言及を促進し、文脈のアーカイブ化と新たな芸術や文化の動向が創出される環境づくりを行う。 芸術文化領域では、文脈的な価値づけが重要な要素となっている。研究者やキュレーターは文脈に基づく論を作成し、読者や鑑賞者に分かりやすく伝えながら情報をアーカイブすることで、特定の作家や動向に価値を見出してきた。しかし、このプロセスを遂行する上では、大量の文献から関係性を整理する労力や、それを分かりやすく視覚化して伝えるための可視化技術の習得など、複数の課題が存在する。 この複合的課題を解決するため、下記4点の実現を目指す。 本プラットフォームによって芸術文化領域での調査から発表までの人手の負担を軽減しつつ、文脈がアーカイブされることで、文脈が活発に編集され、作家や芸術動向に新たな価値が見出されていく環境の創出を目指す。

PM: 落合 陽一クリエータ: 松野 仁志
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

共感覚に基づく視覚化によって直感的な音作りを可能にするシンセサイザー

本プロジェクトでは、共感覚を深層生成モデルとしてモデル化し、それによって音色をテクスチャ画像として視覚化することで、直感的に音作りができるシンセサイザーを開発する。 シンセサイザーは豊かな音色を奏でられる一方、欲しい音色を実現する「音作り」は非直感的で難易度が高いという問題がある。従来の音作りの方法の一つは、プリセット音源から目的の音色を探すという方法である。しかし、プリセット名からどのような音色かを想像することは困難なため、検索性が低く、目的の音色を見つけるまでに時間がかかる。もう一つは、シンセサイザーのパラメータを直接編集するという方法である。しかし、膨大な数のパラメータそれぞれの効果が複雑な相互作用を及ぼしあうため、設定値と音色の関係を直感的に把握することは困難である。このように、シンセサイザーでの音作りでは時間と手間と熟練が必要とされてきた。 そこで本プロジェクトでは、共感覚を深層生成モデルとしてモデル化し、音色からテクスチャ画像を生成するように訓練を行う。そして共感覚モデルによる視覚化を利用した新しいインタフェースを持つシンセサイザーを開発することによって、直感的な音作りを可能にする。プリセットの選択では、視覚化によって音色の違いを一目で把握できるようにする。パラメータの編集では、設定値と音色の関係をテクスチャ画像のグラデーションとして表現することで、その効果を予測しやすくする。加えて、シンセサイザーパラメータの生成モデルを用いた反復的なパラメータ探索手法にグラデーションによる可視化を組み合わせることによって、さらに直感的な音作りを可能にする。演奏者がこのシンセサイザーを使用することで、自由自在に音色を探索し、シンセサイザーが秘める音色を最大限に活用できるようにする。

PM: 落合 陽一クリエータ: 真家 彩人
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

布状・板状3Dプリント構造物と一体造形可能な、自由曲線に沿うインターロック構造の開発

本プロジェクトでは、任意の立体形状の繋ぎ目の接合部品として、ジッパーやスナップフィットなどのインターロック構造をコンピュテーショナルに設計する手法、およびそれを利用した作品を制作する。本設計手法による接合部品により、追加の部品や接着剤等を用いずに立体形状を組み上げられるようにすることを目指す。本プロジェクトでは特に薄い布状・板状のパーツに特化した接合部品を開発する。 複雑な形状をした3Dプリント造形物をパーツに分割すると、その分割線も複雑な曲線になる。そのため、接合部品の要件としては「自由曲線に沿う」ことが重要となるほか、使用中に意図しないパーツの脱落が起こらないような強固さも必要となる。そこで本プロジェクトでは、インターロック構造と呼ばれる強固な接合部品を任意の目標形状に対して生成する手法を開発する。具体的には、3D CAD Rhinoceros/Grasshopper上で利用可能な設計支援ツールを実装する。開発した接合部品は、目標とする造形物に後から取り付けるのではなく、造形物のパーツと一体になった形で3Dプリントできるようにする。この接合部品は素早く強固な組み立てが可能なだけでなく、組み立て後に形状を保つ骨組みとして働くなど、新しい機能を持ちうる。 さらにこの独自手法を活かした、ファッションやプロダクトデザイン分野でのアプリケーションを提案する。この技術だからこそできる新しいフォルムやデザインの応用可能性を示すべく、我々クリエータ自身がエンジニア兼デザイナーとなって、服、鞄、家具などを制作する。

PM: 落合 陽一クリエータ: 増田 凌・永田 莉紗・金田 昌也
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

ライブマイグレーション可能なWebAssemblyランタイムとWASIをインタフェースとするライブラリOSの開発

本プロジェクトはプログラムをセキュア・高速に実行し、かつ、効率的に移行をすることも可能にするシステムを開発する。具体的には、クロスプラットフォームなライブマイグレーションが可能なWebAssemblyランタイムと、WebAssembly System Interface(WASI)をインタフェースとするライブラリOSを開発する。 WebAssembly(Wasm)は2015年に発表されたプログラム形式であり、様々なプラットフォーム上でプログラムをセキュアかつ効率的に実行するための技術である。ライブラリOSはユーザ空間上でOSの一部の機能を実行する手法である。本プロジェクトでは、次世代のOSインタフェースであるWebAssembly System Interface(WASI)を採用したライブラリOSを開発する。これにより、従来のライブラリOSと比較して、移植性と性能が向上する。さらに、本システムはライブマイグレーション機能をサポートする。ライブラリOSとWasmランタイムを組み合わせることで、ファイルやソケットを開いたまま実行中のプログラムを異なるコンピュータに移行することができるようになる。

PM: 曾川 景介クリエータ: 田村 来希
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

簡単な操作で高度な組版を行える文書作成システム

本プロジェクトでは、直感的な操作性と高度な組版機能を兼ね備えた、新しい文書作成システムを開発する。 従来の組版システムは、専門的な表現力と使いやすさがトレードオフの関係にあった。例えば、LaTeXは高度な専門表現に強みを持つ一方で、操作性が低く、初心者には扱いづらいという課題がある。一方、Microsoft Wordに代表されるWYSIWYGエディタは、誰でも簡単に使用できるものの、数式の入力や組版機能が弱く、厳密な意味での組版を行わなくても文書が作成できてしまうという問題がある。そこで本プロジェクトでは、これらの「良いとこ取り」をする文書作成システムを開発することで、直感的な操作と高度な表現力を両立した組版を実現する。 本システムでは、CUIとGUIを並列に表示し、どちらからでも文書の編集を可能にする。両者はリアルタイムに同期し、CUI側ではLaTeXエディタのように独自のマークアップ言語を用いたコードベースでの文書の編集、GUI側ではMicrosoft Wordのような視覚的な編集ができるようにする。この構造により、CUIを活用した高度な組版と、GUIの直感的な操作性を両立させた文書作成環境を実現する。 GUI側の操作では、LaTeXでは難しかった図表の挿入や編集をドラッグ&ドロップで行うことを可能にし、数式や表の作成もMicrosoft ExcelのようなGUI上で操作を可能にする。これにより、専門知識がなくても高度な組版を手軽に行えるようになる。また、CUIとGUIのリアルタイム連携によって編集内容を即座に反映されるようにするため、作業の効率が大幅に向上する。 さらに独自マークアップ言語では、LaTeXよりも簡単で可読性の高い記述を可能にする。バックスラッシュ記法を廃止し、ユニコードに対応した記法によって可読性を向上させ、プログラム的にも扱いやすい構造を持たせる。また、組版結果のリアルタイムプレビュー、分かりやすいエラーメッセージの表示により、初心者でも学習しやすい環境を整える。

PM: 曾川 景介クリエータ: 丸山 貴楽・石田 天歩・中村 健
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

ソフトウェア設計のコード化と数学的検証を実現するGoフレームワークの開発

ソフトウェア開発では、設計と実装の乖離はシステムの品質低下や開発コストの増大を招く要因となっている。設計はMicrosoft PowerPointやMicrosoft Excelなどで管理されることが多く、それでは実装のコードと管理場所もライフサイクルも異なるため、実装との整合性の確認や維持は極めて困難である。その結果、仕様の不整合や論理的矛盾が後から発覚し、手戻りや障害につながるケースも少なくない。さらに、ITゼネコン構造の影響で、設計と実装の担当者が分断されてエンジニアが設計に主体的に関与しにくい状況を生み出し、この問題をさらに悪化させている。 この課題を解決するために、本プロジェクトでは「Design as Code」の概念を導入した、設計をコードとして記述し検証可能にする論理設計ツールを開発する。かつてDevOpsの思想に基づき「Infrastructure as Code」の導入が開発と運用の在り方を大きく変えたように、本ツールは「Design as Code」の思想により、開発における設計と実装の在り方を根本から変革することを目指す。 本ツールはGo言語を用いた論理設計ツールであり、システムの動作をステートマシンとイベントのやり取りとして定義し、数学的なモデル検査を適用することで、設計の妥当性を保証する。Goを活用することで直感的に設計を記述でき、学習コストを抑えつつ高度な検証を可能にする。また、設計がコードとして一元管理されることで、設計と実装の統合が進み、設計プロセスへのエンジニアの主体的な関与を実現する。 本ツールにより、単なる設計の自動検証の実現にとどまらず、設計と実装の統合、設計プロセスの標準化、エンジニアの設計スキル向上を果たすことを目指す。

PM: 曾川 景介クリエータ: 戸田 朋花
採択金額: 2,000,000
2025年度未踏IT

OSとWebブラウザを統合したローカルLLM支援型オペレーティングプラットフォームの開発

本プロジェクトは、ローカルLLMを搭載しつつ、ローカルOSとWeb環境を完全に統合したオペレーティングプラットフォームを開発する。なお、ここで言う「オペレーティングプラットフォーム」とは、ローカルOSとWeb環境の両方を操作するメタ的なOSを指す、従来のOSと区別をするための本プロジェクトでの呼称である。 近年のWebブラウザはWebアプリケーションを実行することが可能になったが、ローカル環境で動くOSとは隔離されているため、Webアプリケーションとローカルアプリケーション間の作業連携やデータの相互利用が困難である。また、昨今の商用OSやWebブラウザは大規模言語モデル(LLM)を機能として組み込んでいるが、それらのLLMは主にクラウド上で動作しており、機密情報漏洩リスクや従量課金制のコストが課題となっている。 本プロジェクトでは、Webブラウザをプラットフォームの中心に据えた、ローカルOSとWeb環境をシームレスに統合したオペレーティングプラットフォームと、それに搭載するローカル環境で動作するLLMを開発することによって、これらの課題を解決する。ユーザの自然言語での指示に基づいてWeb環境とローカル環境を跨ぐワークフローを自動化できるようにすることで、ユーザはローカルデータを安全かつ簡便に処理できるようにする。また、サンドボックス化されたプラグイン機構により、外部開発者が独自の機能を容易に追加できる拡張性を持たせる。これらにより、企業や教育機関、高齢者など幅広いユーザ層に、安全で直感的、効率的なコンピューティング環境を提供することを目的とする。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 髙橋 侑大・浅野 凌輔・鮎澤 颯人
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

ロボットコンテストのための3Dプリントプリプロセッサの開発

本プロジェクトは3Dプリントにおける、軽量性、製造時間、部品強度という3要素のトレードオフを一挙に解決するソフトウェアを開発する。 現在、日本国内外含め、さまざまなロボットコンテスト(ロボコン)が存在する。それらのロボコンに広く共通する制限として、重量制限がある。ロボットにはバッテリやモータなど重い部品がたくさんあるため、それ以外の外装パーツや部品同士の固定パーツなどは可能な限り軽くしつつ、丈夫で壊れないことが求められる。近年のロボコンではこうしたパーツの製造で、複雑な三次元形状の機械部品を自由に製造できるために3Dプリンタが活用されている。一方で、3Dプリンタでの造形には外壁部分と内部の格子状の充填部分(インフィル)という構造があり、内部格子を密にすれば強度は高まるが重量と製造時間が増し、疎にすれば軽くなり素早く製造できるが壊れやすくなるというトレードオフが存在する。さらに、従来の3Dプリントでは内部格子の密度は調整できるものの、パーツ全体で一様な密度になってしまうため、力がほとんどかからない部分にも無駄に材料を使用してしまい、不要に時間がかかり重量も増加をしてしまうという問題もある。 本プロジェクトではこれらの問題を解決するために、パーツの使用時の固定方法や力のかかり方を考慮した3Dプリントの前処理ソフトウェア(プリプロセッサ)を開発する。具体的には応力解析によって応力が低い部分には疎、応力が高い部分には密な内部格子を生成することで、材料を効率的に使用し製造時間を短縮しながらも、必要な強度の維持を実現する。さらに、本手法による軽量性・剛性・製造時間の両立を、ロボットコンテストに限らずあらゆるロボット開発や機械部品の製造にも応用できるようにすることを目指していく。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 谷口 朝洋
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

AIと学習者と教育者の協調によるプログラミング課題の採点システム

本プロジェクトでは、プログラミング課題に対するLLM(大規模言語モデル)によるコードの自動評価と、学習者同士のクラウドソーシング型の相互評価を組み合わせた新しい採点システムを開発する。従来の自動採点システムは、標準出力を基にした正誤判定が主流であり、視覚的・動的なプログラムの採点には対応しきれていなかった。また、手作業での採点では、受講者数の増加に伴い、教育者やTAの負担が増大し、迅速なフィードバックが困難になるという課題があった。本システムでは、学習者が課題を提出する際、まずLLMによるコードの自動評価を受ける。さらに、他の受講者の提出物の実行結果を操作しながら評価するプロセスを組み込むことで、採点作業を分散し、教育者の負担を軽減する。このアプローチにより、学習者は他者の提出物を評価する過程で仕様の不備に気づき、自ら修正する機会を得る。また、採点を事前に分散させることで、フィードバックの待ち時間を短縮し、学習のサイクルをよりスムーズに回すことができる。 本プロジェクトを通じて、動的なプログラムの評価を効率化し、教育現場での採点業務の負担を軽減するとともに、学習者自身が主体的に学べる環境を整備する。さらに、大規模なプログラミング講義への導入を視野に入れ、他の教育機関でも容易に運用できるシステム設計を目指す。

PM: 竹迫 良範クリエータ: 関口 祐豊
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

超小型ピンアレイによるポータブルな形状提示装置

本プロジェクトでは、4mmピッチの高密度ピンアレイ構造を備えたポータブル形状提示ディスプレイを開発する。従来の形状提示ディスプレイは、大型の卓上機構が主流であり、ピン間隔も最小でも6mm程度にとどまるため、携帯性や触覚分解能に課題があった。また、従来のピン配置は6mm x 6mm格子配置に制限されていたが、本装置では4mmのピンを最密充填構造で配置し、約2.6倍のピン密度を実現する。掌の二点識別域(約3mm)を踏まえた4mmピッチの最密充填ピン配置を採用することにより、細かなテクスチャから把持可能な大きさの形状まで、ユーザが直感的に触知できる高精細な触覚提示を実現する。 デバイスの構成要素としては、底面直径4mmの超小型DCモータとリードスクリュー機構を組み合わせた個別駆動ピンをモジュール化し、小型化と高精度な位置制御を両立させる。エンコーダを内蔵しないモータに対しては、フォトリフレクタを用いたセンシングやブラシノイズの検出と推定を用いた疑似エンコーダ手法を統合することで、精密なフィードバック制御を確立する方策を検討する。 本装置が可能とする高解像度の触覚提示は、サイネージ、卓上インタフェース、遠隔触覚コミュニケーション、VR上での触覚提示など、幅広い領域での応用が期待できる。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 杉本 隆平
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

高性能で耐故障なMySQLの開発

本プロジェクトは、MySQLのトランザクション処理エンジンであるInnoDBを先進技術に基づく高性能なLineairDBへ置換することで、既存のMySQLに対し大幅な性能向上と高い耐故障性を同時に実現することを目的とする。 LineairDBはSilo法やNWR法に基づく並列性制御とCPR法に基づく高速ログ処理を取り入れており、マルチコアやSSDといったモダンなアーキテクチャの性能を十分に活用可能な、高い並列性制御と効率的なリカバリを可能にしている。本プロジェクトでは、耐故障性の向上のためのRaftプロトコルをLineairDBに組み合わせる。耐故障化は性能を大幅に犠牲にするが、本プロジェクトではバルク転送技術によってこの性能低下を防ぐ。開発するシステムはLineairDB拡張、MySQL/LineairDBラッパ、複製器の3モジュールから構成され、範囲検索やGROUP BY、ORDER BYといった重要なSQL機能、およびTPC-Cベンチマークの要件も満たす設計とする。 本プロダクトの開発により、MySQLを利用するシステムは応答速度が大幅に向上し、大規模なトランザクション処理やデータ解析が迅速かつ安定して実施することが可能になる。その結果、金融システムやWebサービスなど、ミッションクリティカルな環境において、システムダウンタイムの低減と運用コストの削減が期待できる。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 宮﨑 祐介・中森 辰洋・李 浩文
採択金額: 2,880,000
2025年度未踏IT

新しい機構を持ったアシストスーツと、その人間工学設計

本プロジェクトは、独自の機構を用いた歩行補助アシストスーツ(エクソスケルトン)と、その自動設計ツールを開発する。具体的には、特殊歯車とバネを組み合わせた独自の機構を内蔵する、動力源を要さない歩行アシストシステムを構築する。本システムは、ユーザの歩行動作に合わせて特殊歯車が回転し、その形状に応じた外力がバネにかかることで、歩行アシストに必要な力を適切なタイミングで発生させる。これにコンピュータによる制御を組み合わせることによって、高いアシスト効果と身体適応性を備え、かつ充電の手間がほとんど発生しないスマートアシストスーツを実現する。 本アシストスーツのユーザは子どもから大人、高齢者など、全ての自立歩行が可能な人間を対象としている。つまり本アシストスーツは人類の移動手段の幅を広げる期待がある。現状、手軽な移動手段として自転車が選ばれるが、自転車は移動が済んだら駐輪が必要で、電車への乗り継ぎも難しいなどの欠点がある。しかし、アシストスーツであれば、自転車ほどの速度は出ないが楽に目的地に到達でき、装着したまま車両にも乗れ、駐輪場も必要ない。また、移動だけではなく階段の上り下りの補助や、転倒防止の効果もあり、リハビリテーションなどへの活用も見込まれる。

PM: 田中 邦裕クリエータ: 村木 雄太・田邊 寛生
採択金額: 2,880,000